明日の日本は今日より良くなる?(SDGs)NHKの大河ドラマ「晴天を衝け」が好調のようです。江戸時代から近代社会に激変した維新から明治にかけての時代は、コロナで生活の環境が激変した今と共通するものがありそうです。その厳しい時代におよそ500の会社を設立して(今も上場企業としてたくさん残っています)、日本経済に多大な功績を残した渋沢栄一の言葉には、150年も前の日本人とは思われないものがたくさんあります。特に私が感銘を受けたのは、「その経営者一人がいかに大富豪になっても、そのために社会の多数が貧困に陥るようなことでは、幸福は継続されない。」というものです。まさに「誰一人取り残さない」というSDGs(持続可能な開発目標)と同じメッセージを、はるか昔に渋沢は発していました。日本資本主義の父といわれる渋沢の会社を作るときの思いや、祖国日本に対する気持ちの源流がこの言葉に込められていると思います。コロナ禍で私たちに見えてきたものは、(1)人の命と健康の大切さ、(2) IT技術・デジタル化の有益性、(3)持続可能な社会(SDGs)の重要性です。私たちはコロナ感染拡大により、人の命と健康の大切さを改めて学び、治療薬やワクチンの開発が急務であることを実感しました。IT技術が新しい生活様式では最重要のツールであることも再認識しました。そして最後に最も大事なことは、「持続可能(サステナブル)な社会」がいかに尊いことかを身に染みて感じたことです。このため、今回のコロナ禍で世界には新たな目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」の考え方がより深く浸透しているのだと思いますし、渋沢の言葉の大切さが胸に染入るのだと思われます。 SDGsが目標だとすると、株式市場で今猛烈な勢いでメインストリームになりつつあるESG投資は、目標を達成するための手段になります。ESGとはE(環境)企業が環境に配慮しているか。S(社会)は女性活躍推進や地域貢献など社会に貢献しているか。G(企業統治)は収益を挙げつつ不祥事を防ぐ経営をしているかになります。資産運用の分野では、このESG投資が今後ますます重要性を増すことになりそうです。 新型コロナの感染拡大が収まらないなか、日本、中でも九州は記録的な豪雨による被害に毎年苦しめられています。過去に経験したことのないこうした災いの発生は、気候変動による影響が大きいとされ、地球規模の対策が急務になっています。社会の持続性に焦点をあてたSDGsとESG投資は、コロナと共生せざるを得ないこれからの世界では、株式市場でも最も重視されるメインストリームに浮上してゆくと思います。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公渋沢栄一に関心が高まっています。150年も前に活躍した経済人がブームになるのは、コロナ禍の今の時代の変化が渋沢栄一的な考え方を求めているからだと思います。渋沢さんは「その経営者一人がいかに大富豪になっても、そのために社会の多数が貧困に陥るようなことでは、幸福は継続されない」と「誰一人取り残さない」という今のSDGsやESGと同じメッセージを150年前に発しています。渋沢さんの言葉は、今日よりも良い明日の日本を拓こうと努力しなさい、という未来志向の考え方です。(6月14日放送分)
株価調整局面で年末の株価を予測する新年度に入り欧米株式が上昇するなか、日本株はさえない動きが続き、足元では欧米でワクチン接種が進み、景気過熱からインフレの心配まで起きて、欧米株式が調整局面に入ると、日本株は欧米株以上に下落幅が大きくなっています。 もともと5月は「セル・イン・メイ(株は5月に売りなさい)。」という諺(ことわざ)が欧米では有名で、日本でも決算発表で保守的(慎重)な業績見通しを、期初に示す企業が多いことから、初夏から初秋までは投資に向かない時期と言われています。 今年も例年通りの5月の売りが出て、日経平均は急落し、27,448円と昨年末の水準27,444円と同水準まで下落(13日)し、3度チャレンジした30,000円定着はかなり遠くなってしまい、「株はバブルだ」と主張していた人達からは「やっぱり」という言葉が出ているようです。 しかし、一旦株が調整局面に入り、仕切り直しになった現時点で、マーケットの今後を予測することは、せっかく投資を始める人が増加している、今の時期・今の日本では意義があることではないかと思います。 まず、新年度以降の日本株の不振の要因は、ひとえに国際的にみたワクチン接種の遅れにあります。米国がマスクなしの生活を容認した今、コロナ新規感染者増に苦しむ日本の周回遅れは奇異にすら映り、これでは外国人の投資意欲が日本に対して向くわけはありません。 しかし、周回遅れとはいえ、日本でもワクチン接種の進捗が見え始めれば、徐々に景気も明るさを増すはずです。まして、今年の世界経済は、米中がけん引して6%台の高成長といわれており、世界の景気敏感株といわれている日本株も、遠くない時期に脚光を浴びるはずです。世界的な低金利環境の中で景気回復が鮮明になれば、株式等の資産価格に上昇圧力がかかるのは当然です。1970年以降で日本の景気が底を付けたことが9回ありますが、翌年の日経平均の変化率の平均は22.5%のプラスです。今回にあてはめれば、今年年末の日経平均は33,618円になります。今年度の企業業績は40%前後の増益が予測されており、22.5%という上昇率はむしろ控えめといえるかもしれません。今回のような株価の下落した局面では、少し強気のスタンス(投資姿勢)をとってみることも、今年の場合は有効といえそうです。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 GW(ゴールデンウィーク)を挟んだ日本株市場は重苦しい値動きが続き、史上最高値更新を続ける米国やドイツ株との格差が広がっていました。これは台湾問題や中国の人権問題が意識されたことや、GWを控えていたこともありますが、何といってもワクチン接種が極めて遅いことが投資家に嫌気されたためです。しかし、欧米市場では国内のワクチン接種比率が10%を超えると、株価が上昇に転じています。福岡での感染拡大は心配ですが、日本の株式市場が上昇を再開する時期は遠くないと思います。(5月10日放送分)
これからの日本はどうなる? コロナ禍での2度目の新年度が始まりました。昨年の4月はコロナ第1波の緊急事態宣言下で、博多駅は閑散としていましたが、もはや遠い昔のようにも思えます。新年度の日本は、まん延防止措置で相変わらずの騒ぎです。しかし、世界を見渡せば、ワクチン接種が進んだ国では、徐々に「アフターコロナ」が意識され、英国のジョンソン首相は「パブでビールを飲もう」と、本人がコロナで重態になったうっ憤を晴らす、リベンジ消費の典型といえる呼びかけをしています。 4月6日に発表されたIMFの世界経済見通しでは、ワクチンの普及と米国の積極的な財政政策がドライバーとなり、2021年の世界経済は1月の見通しに比べて0.5%上方修正され、前年比+6.0%の高い成長見通しになりました。しかし、肝心の日本経済はわずか0.1%の上方修正で、+3.3%と昨年の▲4.8%の落ち込みを取り戻すことが出来ません。それでも3%成長は久々の高成長になりますし、日経平均株価が30年ぶりの水準にまで上昇していることもあって、コロナ以前の閉そく感の強い日本経済の状況からは、少し変化の兆しが感じとれるように思います。 経済の世界では景気には波動があるとされます。40か月のキチンサイクル、10年のジュグラー、20年のクズネッツ、技術革新のコンドラチェフの波は50年です。日本の場合は社会的にも、15年、25年、30年周期の波動がよく語られます。私は中でも30年周期が、日本の近代社会の変化を良く表していると考えています。 1900年からの30年間は、日露戦争から始まる「坂の上の雲」に代表される日本の「上り坂」の時代。逆に1930年からの30年間は軍国主義と戦後復興に苦しむ「下り坂」。1960年からの30年間は日本社会が最も輝いていた、高度成長の「繁栄への上り坂」。そして、1990年からの30年間は「失われた20年」を経た衰退と不安の「急降下の下り坂」でした。2020年は新型コロナウイルスの年として歴史に残りそうですが、今年以降の30年間はどうなるのでしょうか。これまでの交互の順番からいえば、「上り坂」の30年になるはずですがどうでしょう。これまでも繰り返し指摘されていることですが、成功体験の記憶から抜けきれない戦後システムを、今度こそ本当に変革することが出来るかが、次の30年間の日本社会を決めることになります。しんどい時代になることは確かでしょうが、新しい時代の芽や次の30年間のヒントは、既に日本経済に見えています。SBGの孫社長の破天荒に世界で戦う姿勢ほどではなくとも、日本企業はハイテク企業だけでなく、内需型企業でも「世界で稼ぐ」実績を積み重ねています。それは貿易黒字に依存していた戦後型の経済から、第一次所得収支(海外子会社からの配当金等)で稼ぐ、現在の日本の海外での黒字形態に如実に反映されています。 今年2月に日経平均株価は30年ぶりに3万円を付けましたが、日本企業の「稼ぐ力」の強さにより、株価は今の3万円に近い水準でも欧米諸国と比べると、「割安」といえる状況にあります。「これから30年間の日本は繁栄の時代(上り坂)になる。」と断言したいところですが、今は、(私たちが歯を食いしばって頑張れば)これからの30年は「上り坂になる可能性が高い」くらいには言ってみてもよさそうです。
アフターコロナの日本経済を展望すると お正月の当ブログで、コロナ後の世界経済を展望して、「つらいコロナ禍の我慢の後は、元の平時に戻るのではなく、反動で明るい経済状況になる」と予測しました。2か月が過ぎて、ワクチンが普及し始めた世界は、まさにその方向に向かっているようです。 しかし、一番肝心なことは、アフターコロナで日本経済がどうなるかということです。歴史を振り返ると、コロナのようなパンデミックは二つの教訓をもたらしてきました。一つは、パンデミックの後には、それ以前とは大きく異なる社会が訪れること。二つ目は、パンデミックの混乱によりその社会が持つ弱点が表れることです。 今回のコロナ禍の日本では、まさに二つ目の「デジタルシフトの遅れ」という弱点が露呈しました。しかも一つ目の、コロナ後のこれまでと大きく異なる社会とは、デジタル資本主義の世界です。今まで日本が一番できていなかった方向に世界は向かうことになります。 それでは、コロナ後の日本経済には期待できないのかと問われれば、私は「NO」と答えます。日本人の特性は目標が決まれば、それを達成するために、一丸で全力を尽くすことにあります。デジタル対応も、明治維新や戦後の復興のように、世界に追いつき追い越すことができるはずです(文系の人間が理系の仕事をなんとかこなすのが、日本人の特性の一つといわれています)。 デジタルシフトとは別の話ですが、アジアの金融センターとして繁栄してきた香港が、中国化により落日を迎えることも、日本の大きなチャンスになります。ポスト香港を東京が担うことは、世界からの強い要求になるはずです。中国への対抗軸としての日本に対する期待は、米国だけではなく世界の先進国からの願いといえます。 コロナ後の日本の評価を象徴する存在になると私が(勝手に)思っているのは、一昨年決定した次の紙幣の顔となる三人です。1000円札は破傷風の治療法を確立し、ペスト菌を発見した、日本の医療のシンボル、北里柴三郎です。5000円札は津田梅子で、女性の教育や社会進出、女性が活躍する社会のシンボルです。そして10,000円札は大河ドラマ「晴天を衝け」の澁澤栄一です。澁澤さんは、まさに日本経済の父ですから、アフターコロナの日本経済が再興することを、応援してくれることになります(と私が勝手に思っています)。そう考えれば、2月に日経平均株価が30年半ぶりに30,000円台に到達したことも、アフターコロナの日本経済を前向きに評価してのことと考えられます。 アフターコロナの日本経済には大きなチャンスが待っていると思われます。しかし、そのチャンスを活かせるかどうかは、私たちのこれからの頑張りにかかっているようです。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 今年のNHKの大河ドラマ晴天を衝けが始まりました。日本経済・資本主義の父といわれる渋沢栄一を描くもので、第1回は子役の演技力が話題になっていました。渋沢栄一といえば、3年後から使用される次の1万円札の顔にもなります。次の紙幣は千円札が日本の医療のシンボル北里柴三郎で、五千円札は津田梅子と、女性の教育や社会進出のシンボル、そして1万円が経済の渋沢栄一と、紙幣の顔はまさに、これからの日本が進むべき道を象徴的に物語っているといえます。日経平均が3万円をつけた日本経済には、意外に明るい未来が開けているのかもしれません。(2月17日放送分)
日本株はバブルなのか 実はこの表題は昨年9月以来2度目になります。それくらいこの質問を受ける回数が多いことを察していただければと思います(日本人は実はバブルが好きなのか?)。前回9月時点の日経平均は23,000円台でしたが、今回は昭和から平成にかけての本当のバブル期以来、30年ぶりの30,000円台を付けるまで上昇しています。ちなみに9月の回答は、『「株は少し先の経済を映す鏡」なので、来年の景気回復を予測して株価は上昇しており、バブルではありません。』としていました。 実際に今年の経済がどうなるかを、一番信頼できる(と世界でいわれている)国際通貨基金(IMF)が、1月26日に発表した世界経済予測でみてみましょう。昨年の世界経済はコロナ禍で▲3.5%と非常に厳しい状況でしたが、今年は5.5%成長と昨年のマイナス分を埋めて、好不況の分岐点といわれる3.0%を大きく上回る予測です。中国が8.1%、米国が5.1%の高成長で世界をけん引しています。日本は昨年の▲5.1%に対し、今年は3.1%成長と、10年ぶりの高成長になります。IMFは今年の高成長の要因として、「政策支援とワクチンが経済活動を活性化させる」としています。 今年の世界と日本の経済については、水準はともかく、方向性は確実にプラスの方向と考えてよさそうです。そうであれば、問題は実体経済ではなく、「現在の株価(日経平均)の水準が企業業績と比べて高すぎるのかどうか」、ということになります。 2月に入り、10~12月期の企業決算発表が出そろいました。私の30年を超えるマーケット経験でも、これほど上方修正の多い四半期決算は記憶にありません。開示される業績水準には驚かされるばかりです。4年前には700億円しかなかったソニーの純利益が1兆円を超え、ソフトバンクグループは3兆円の利益を計上しています。企業業績は日経平均が3万円台に乗っても、割高とはいえないほどの好業績といえます。 既に1980年代のバブル期から30年以上経過しました。当時のNYダウは2,600㌦程度でしたが、現在のNYダウは31,000㌦を超えています。しかし、2002年以降の日経平均とNYダウの動きを重ね合わせてみると、ほぼ同じような動きをしていることが解ります。私はNYダウと日経平均が同じような動きになっている意味を、日本企業がリーマン・コロナのショックを乗り越えて、米国企業と同様の「稼ぐ力」を付けたためとみています。したがって、日本株の上昇はバブルではなく、日本企業の稼ぐ力の向上を素直に反映したものと考えています。急速な株価上昇には警戒も必要になります。とはいえ長い目で見ると、産業構造やマネーの動きに着実な変化があることも確かです。バブルだと決めつけるのではなく、そうした日本の変化も冷静に見極めたい局面といえます。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 日米の決算発表がピークを迎え、日立やソニーのように、コロナ禍でも好業績や、赤字幅縮小が多く、それがストレートに株価に反映されています。特に日本では製造業の好業績が際立っています。製造業の業績回復は中国をはじめ世界経済が緩やかに回復し、貿易環境が改善していることが背景です。昨年11月から急上昇した株式市場ですが、業績との関係からは過熱感はありません。好業績を冷静に織り込む日経平均は、3万円に向けて静かに上昇していきそうです。(2月4日放送分)
アフターコロナの世界を展望すると 今年の正月はどこへも出かけず静かに過ごし、「箱根駅伝」を全て見尽くしました。「コロナが終われば…」という言葉を何度メールしたり、頂いたりしたことでしょう。しかし、これだけは信じてほしいのですが、コロナ禍はいつか必ず終わります。これまでも終わらなかったパンデミックはありません。 欧米各国で外出制限が強化され、日本でも緊急事態宣言が再発される中でも、世界の株式市場は静かな強気に包まれています。ドイツ銀行による市場関係者へのアンケート調査では、2021年の最も有望な投資対象は株式で、最も避けるべき投資対象は「現金・預金・債券」と、かつてないほどのリスク選好・強気な展望になっています。これはワクチンへの期待も当然ありますが、それ以上にアフターコロナの明るい社会、世界経済の高い成長への期待もありそうです。 参考になるのは今から100年前の世界です。1917年から19年にかけて、スペイン風邪が流行し、世界で約5000万人が亡くなり、日本でも45万人がなくなりました(当時の日本の人口は今の半分弱)。お伝えしたいのはスペイン風邪パンデミックが終了した1920年代の世界のことです。1920年代の社会はスペイン風邪流行前の平常に戻るどころか、パンデミックで怖い思いをした反動で、後に「狂乱の20年代」と呼ばれるほどのはじけかたをみせました。先進国では洗濯機や冷蔵庫が普及し、トーキー(音響付き映画)が爆発的に流行しました。日本でも大正デモクラシーという平和な時代を謳歌しました。 100年前と今では異なるのでは、と考える方もいるかもしれませんが、現在のオーストラリアでの個人消費の伸びは参考になります。豪州は一時コロナ禍に苦しみましたが、昨年終盤には台湾と並んでコロナを克服しています。豪州の現状で特筆すべきは、個人消費が驚くほど伸びていることです。11月のレストランの予約件数は前年同月比(コロナ以前と比べて)で80%の伸びで、豪州国民がはじけているのが反映されています。 つらい我慢の時代の後は、元の平時に戻るのではなく、反動でもっと明るい時代になるのではないでしょうか。「AIやEVなど新しい技術も後押しして、世界経済は思いのほか高成長の時代になる。」というのは世界の株価を見る限りあり得るシナリオです。私のブログを悪い初夢と切り捨てて、「株価はバブル」と言うよりは、少しだけでも投資に回す金額を増やした方が良いのかもしれまん。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 老後資金2000万円問題や人生100年時代が言われ、資産形成や退職準備に変化が出始めています。フィデリティが実施したアンケートでは、資産形成に関する大きな変化が起きていることが解ります。回答のうち投資をしているという人が40.5%に達し、2015年の30.4%から比率が10%以上高まり、初めて投資家比率が4割をこえました。市場の上げ下げに関わらず投資家比率が上昇しており、積立投資を続ける若年層が多くなっているようです。コロナ禍で生活が大変でも投資家比率は上昇を続けており、若い人を中心に投資をする人が増えたことは素晴らしいことです。これからの日本を考えるうえで高く評価すべきだと思います。(1月6日放送分)
2020年の振り返りと2021年の日本経済の行方 2020年はほとんどの人にとって、これまでと違う特別な一年で終わったのではないでしょうか。年末恒例の流行語大賞や、ヒット商品番付はそれを如実に示しました。経済の分野では4-6月期のGDPはリーマンショック時を上回る落ち込みで、飲食店やサービス業、医療関係の方には特に苦しまれた一年になったことと思います。一方で、経済を映す鏡であるはずの株価は、コロナ禍で3月に大幅な下落を記録したものの、年末にかけてはするすると順調に上昇し、日経平均は29年ぶりという歴史的な水準まで上昇しました。 今年の日本経済を予想する時に考えるべき大事な前提は、①コロナワクチンの接種開始時期と接種率、②東京五輪開催の有無、③景気回復の速度と企業利益の水準になります。①②③はそれぞれが密接に絡む事象です。そこで、今年の世界の潮流を私なりに考えてみると、世界経済はこのままコロナ禍をいなして、改善を続ける方向ではないかと考えます。医療崩壊の起きない状態を維持でき、狭い地域でのロックダウンを積み重ねることで、経済への影響は限定的にすることができます。当ブログをお読みの皆さまには、必要以上に運命論的になり、長期投資のタイミングを見失わないようにしてほしいと思います。 世界経済が私の見通しどおりであれば、日本経済を予想する前提として、①ワクチン接種は年前半から徐々に進み、②東京五輪は(規模の縮小の可能性は相当高そうですが)実施の方向で、③国内景気もなんとか2020年のマイナス分程度は取り返すことができ、企業利益は前年比4割程度の増益になりそうです。株価は「少し先の」経済を映す鏡です。それを勘案すれば、歴史的な水準を回復して前向きになった昨年の株式市場は、次第に明るくなる今年の日本経済を映し出していると考えた方が良いはずです。見えないものと戦った2020年は、見えない力に支えられた特別な一年だったのかもしれません。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズ マーケット インフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 11月の日経平均は史上3番目の上げ幅を記録し、29年ぶりの高値を付けるなど、歴史的な上げ相場となりました。コロナという見えないものと戦ったこの特別な年に、実体経済がリーマンショックを上回る不振を記録しながら、この株高の理由は、株価の将来を見抜く力・先見性といえるかもしれません。コロナの影響は残っても、来年の経済が上向きになることを、株価は予見しているのだと思います。NTTによるドコモ買収に代表されるように、企業の構造改革は大きく進んでいます、日本の将来は明るいと株価は語っているのかもしれません。(12月1日放送分)
米大統領選挙と歴史的高値の日経平均 4年ごとの米国大統領選挙は今回、記録と記憶に残る大接戦(大混戦?)となりました。投票率はこの100年間で最高となり、バイデン氏の得票数も過去最高となりました。一方で、敗れたトランプ大統領の得票数も共和党候補としては過去最高の7,100万票超えで、根強い人気を物語り接戦の要因となりました。今後は次第に政権移行やバイデン大統領の政策遂行に焦点が移ります。地球環境や人種問題・国際融和に配慮した政策は世界から支持を集めそうですが、組閣人事次第では、経済等の面で日本に対して厳しい姿勢を取る面もあるかもしれません。日米の報道が米大統領選一色となるなかで、金融市場は急激にリスクオンの方向に動き、特に日本株はコロナ禍にも関わらず、この3年間強い上値抵抗線となってきた日経平均24,270円の水準をあっさり上回り29年ぶりの高値をつけました。歴史的な視点で日経平均をみると、戦後日本の株式市場は3つの局面に分けられます。東証が再開された1949年から1989年までの40年間は、最後が昭和バブルの高値38,915円となり、日本の高度経済成長を背景にした長期上昇局面でした。その後バブル崩壊やデフレを背景とした2009年の安値までの20年間の下落局面がありました。しかし、2009年のリーマンショックでの安値7,054円の後は上昇に転じ、今回上値抵抗線をブレイクしたことで、新しい長期上昇局面入りが確認されたといえます。今回の上昇は昭和の上昇局面のように、日本全体が潤い、ほとんどの上場企業の株価が上昇するのではなく、『コロナ禍でもコロナ後でも成長可能な企業の株価が高く評価される』、という点でバブルとは明確に異なっています。コロナ禍で世界や社会の様相が変化する中で、株式市場での評価の仕方も大きく変化し、これまで現状維持を続けた日本企業にも、親子上場廃止や大型M&Aなど変化の胎動はあります。日本の株式市場に強気な投資家は少数派ですが、意外にその少数派に加われば大きなメリットが得られるのではないかと思っています。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズ マーケット インフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。日米株式市場はファイザーのワクチン開発のニュースで急騰しています。ワクチンは社会と市場のゲームチェンジャーになると何度か話しましたが、やっと実用化の時期が近づいていますし、それは東京五輪開催やマスクなしの生活に繋がる最初の第1歩になりそうです。株式市場は日経平均25,000円を付け短期的には上昇スピードが速すぎで調整もありそうですが、何よりも人類がコロナを克服する時が近づいているのを喜びましょう。(11月10日放送分)
株式市場はバブルか? コロナ禍による今年の世界経済は、主要都市のロックダウンや日本の自粛要請もあって、戦後経験したことのないほどの落ち込みとなりました。4-6月期の日本のGDPは年率で▲28.1%とリーマンショック時の▲17.8%と比べ10%以上悪いマイナス成長を記録、世界でも国際通貨基金(IMF)は6月に発表した世界経済見通しの表題を「類例のない危機、不確実な回復」として危機感を露わにしました。一方で「経済を映す鏡」である株価をみると、日本は3月19日の日経平均16,552円が最安値となり、その後は順調に戻り歩調を辿り、既にコロナ急落前の23,000円台を回復しています。主要国の株価もほぼ同様の値動きで、米国のナスダック市場や日本のマザーズ市場など「新しい生活様式」に対応した銘柄が多い市場は、コロナ前の水準をはるかに上回る高値水準に達しています。主要国の株価が底入れした3月19日前後は世界的にみればコロナ流行初期といえ、イタリアをはじめ欧州諸国がロックダウンに入った時期でしたが、株式市場はその時期に4-6月期の景気最悪期入りと、その後の緩やかな景気回復を織り込んでいたかのようです。「株価は経済を映す鏡」ですが、実は少しだけ未来の経済を映す鏡であると考えれば、3月中旬の株価底入れや今の緩やかな株価上昇も説明できます。私たちの生活についても、「ウイズコロナからアフターコロナの社会に移行が進む可能性が高い」ことを、株価という未来の鏡が示してくれている、と思えば希望もみえてくると思います。コロナ禍での株価上昇を「バブルでは?」と聞かれることが多いのですが、私はいつもこの株価と経済の関係の話で説明しています。ワクチン開発や政府・中央銀行の景気対策など、コロナ対策は少しずつ実を結びつつあり、回復が進む近未来の経済を株価は織り込んでいるといえます。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズ マーケット インフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を一部紹介いたします。米国の大統領選挙は11月3日ですが、今年は大統領候補の討論会が3回予定されています。中でも最初の討論会はゴールデンタイムの生中継で視聴率が高く、投票する候補を決めていない人に大きな影響を与えます。米国大統領の世界経済や市場への影響力の大きさは、トランプ大統領のおかげで私達も再認識させられました。但し、今回はどちらが選ばれたとしても、就任して最初の目的はコロナの収束と経済を立て直すことしかありません。大統領選挙が終われば不透明感は消え、市場は期待感からプラスの反応をするはずです。(9月30日放送分)
予測困難なリスク要因との共生時代 人類は歴史上新たな環境に適応する過程で、新しい感染症と遭遇してきました。中世のペストはヨーロッパの封建制度の衰退時に流行し、産業革命の遠因となりました。およそ100年前に流行したスペイン風邪は、グローバリゼーションの負の側面といわれ、第一次世界大戦を終わらせました。第二次世界大戦後今回の新型コロナウイルスまで、医学の発達などで感染症の大流行はなく、我々は経済等多くの面でグローバリゼーションの恩恵を受けてきました。しかし、グローバリゼーションの一段の進展という新たな環境下で、コロナウイルスの痛撃を受けました。今後コロナを克服したとしても、(人類が撲滅できた感染症は天然痘だけであることを考えると)感染症のような予測困難なリスク要因と我々は共生していく必要がありそうです。 そうした意味合いから考えると、新型コロナウイルスによる経済の極端な落ち込みと、世界の政策当局の懸命な政策努力による景気底入れ、多分に楽観的に過ぎる面はあるにしても世界的な株価の戻り歩調は、アフターコロナの金融市場を考えるうえで、我々に貴重な経験値を授けてくれているといえます。 身近な問題としてもコロナによるロックダウンや自粛期間を経て、「新しい生活様式」や「新常態」としてのテレワークやソーシャルディスタンスが、当たり前の生活環境となりそうです。一方で、コロナウイルスに対するワクチンの普及が社会や経済のゲームチェンジャーとなる時期も近づいています。感染者数が比較的少ない国にとっては来年には安心できる日々が訪れそうです。人間はコロナ禍のような大きな事件が起きると、その状態がずっと続くように思い込んでしまいがちですが、ワクチンでコロナは克服できます。 しかし、コロナ禍で一気に進んだIT・デジタル社会では国や企業間で大きな格差が開き、為替や株価の動きもそれを評価することになります。今後の金融市場はIT・デジタル社会での個別の優劣の評価に加えて、(必ず戻ってくる)グローバリゼーションのメリットを受ける国や企業が評価されるマーケットになりそうです。しかし、最初に書いたように、未知の困難なリスク要因と共生する覚悟を常に必要とする時代に入ったと考えておきましょう。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズ マーケット インフォメーション」 最後に私が平日12:48から2分間だけマーケットについてコメントをしている、FM福岡「西日本シティTT証券 presents トゥデイズ マーケット インフォメーション」の内容を一部紹介いたします。 今週はボックス圏に入った日経平均が動き出すかどうかが焦点ですが、日経平均の移動平均線の75日線が200日線を下から上に突き抜けるゴールデンクロス(GC)が先週現れました。2008年以来9回目ですが、GCは株価上昇のサインといわれ、過去8回のGCではその後平均で20.9%日経平均は上昇しています。今回に当てはめると27,722円になります。これまでの大きな上昇相場では市場をリードする先導株が現れていました。今回は「あつ森」の任天堂や「鬼滅の刃」のソニーなどが先導役の候補になりそうです。コロナ禍での株価上昇は実現するでしょうか。(8月24日放送分) 先週は安倍首相辞任で日経平均は一時600円を超える下げとなりましたが、当日に300円ほど値を戻し、今日はコロナショック安を克服する上げ相場になっています。株高は世界的な動きで、世界の株式時価総額は連日で最高を更新しています。世界的に買い手として注目されているのは個人投資家で、日本でもネット証券の新規口座開設数は6か月連続で20万件超を記録しています。実際の景気や企業業績に比べ株価が高すぎるのは否めず、一旦株価調整もあると思いますが、個人投資家の積極的な投資への参加姿勢は、今後中長期的な日本経済へのプラス要因として評価すべきと思います。(9月3日放送分)【監修】
東京五輪・パラリンピックと日本経済いよいよ東京五輪が始まります。今回の東京五輪はコロナという災厄に、徹底的に祟られながら幕を開けることになりました。 昨年の開催延期から始まり、今年に入っても、開催の是非が政治問題化し、最後の最後には無観客開催となってしまいました。大会主催者の舌禍も含めて、これだけ国民に歓迎されない五輪は初めてでしょうし、いざ開幕が近づいても、期待よりも不安の方が数倍大きな状態が続いています。 それでは、今回の東京五輪開催は日本経済にとって、どういう位置づけになるかを考えてみましょう。「こんなに嫌われて、しかも無観客では経済にマイナスだ。」という極端な論調も聞かれますが、純経済的にみれば少なくともマイナスの点はありません。 五輪開催前には一般的に、大規模なインフラ投資が景気にプラスになりますが、五輪開催後はどうでしょうか。コロナ禍のなかでの不安な開会式は23日ですが、一部競技の予選は21日に始まります。そうなれば途端に、大会に対する世の中の雰囲気は、変わっていくのではないでしょうか。 ゴルフの米国メジャー大会での男女の優勝や、大リーグでの大谷選手の活躍に感動や快哉を覚えた人は多いと思います。東京五輪・パラリンピックでも、これまでの五輪やスポーツ大会同様に、新しいヒーロー・ヒロインが数多く生まれるはずです。これまでのメダリストの多くが、地元や日本全国のあこがれとなり、人材育成に貢献し、結果として大きな経済効果をもたらしてきました。それは今回の東京大会も同じになるはずです。 コロナ禍に苦しめられた今大会だからこそ、アスリートやパラアスリートをリスペクトして、暖かく応援する日本人は増えてくると思います。私は同じ公園で練習されている、パラアスリートの道下美里さんをリスペクトし、一生懸命応援しています。それは大会期間中から大会が終了しても、必ず経済効果として繋がるはずです。 最後に東京大会以前の8回の五輪を経済の面から見てみると、すべての国で大会開催後の経済成長率は開催前を上回っており、大会開催1年後の株価は8回中7回でプラスになっています。今回の東京大会はコロナ禍で、過去に比べて条件は厳しい中ですが、それでも、経済的にみれば成功を収めると私は考えています。FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。 先週の日本株は大きく下落して、今年度3度目の日経平均27千円台となりました。しかし、週末の米国株市場が最高値を記録したことや、五輪の無観客・東京都の緊急事態宣言等を織り込んだこと、決算を発表した安川電機が市場予想をはるかに上回る好決算だったことなど好材料が揃い、今週の日経平均は600円を超える上げで始まっています。安川電機やファナックなどの設備投資関連株が高く、ソニーなど好業績への期待の高い銘柄も大幅高で始まっています。 今年後半の金融市場には、2つの大きな課題があります。米国の金融政策の行方と衆院選を控えた日本の政治です。先週までに米金融政策や、東京五輪とコロナの不透明感に加えて、東京都議選を交えた日本の政治不安から下落したことで、2つの大きなリスクはほぼ織り込みました。これまで悲観が先行していた東京市場は、これから日本企業の好業績を評価する明るい動きになりそうです。(7月12日放送分)