子どもが生まれて間もないころは、産後の体力低下や睡眠不足で、子どもを客観的に見るということは難しい状況です。子どもが成長して少しずつ生活範囲が広がったり、健診に行って他の子と比べたり、言われたりすることの中から"あれ…?"と思うことが出てきます。運動発達は大丈夫だけど、言葉のことや、遊び方のこと、人との関り方に違和感がある場合は、ASD(自閉症スペクトラム障害)を心配されると思います。この記事は、ASDの特徴や、教育や支援の仕方に関する考え方を紹介しています。子どものことを理解して関わるきっかけになれば幸いです。あわせて読みたい・ADHD(注意欠如多動症)の理解と支援、教育・LD(学習障害)の理解と支援、教育(1) ASD(自閉症スペクトラム障害)の疑いから診断まで①親の気持ち「うちの子、ちょっと違うみたい…?」 発達障害や自閉症スペクトラムについて、各種メディアから簡単に情報が得られるようになった現在、子どもの育ちや気になる姿から「この子は、もしかしたら自閉症スペクトラムかもしれない」と不安に思い、悩まれている保護者の方は多くいらっしゃると思います。また、乳幼児健診の結果を聞いたり、同じ年齢の子どもと比べたりすることで、発達の遅れを心配される方もいらっしゃると思います。 そのようなときには、「子どもがどのように育っていくのか」というプロセスを知っておくことが、理解と対応を考えるうえでの手掛かりになります。子どもの発達は様々で、個人差も大きいです。ある部分の特徴によって、「障害がある」と決めつけたり、ある特性がないからと言って、可能性を全く考慮せず無理をさせたりしないように、専門家と相談しながら発達の支援や教育について考えていくことが大切です。②早期発見・早期支援の意義 焦らず慌てずにじっくり子どもが成長していく姿を見ていくことは大切なことです。同時に、気になる行動の原因に早くから気付き、早い段階から適切な支援や必要な教育を受けられるようにすることにもメリットがあります。・家族の理解ある対応を早い時期からできる・時間的な見通しをもち、腰を据えて問題に向き合うことができる・子どもに合った適切な教育によって成長が促される・ネガティブな感情の積み重ねから引き起こされる二次的な問題を予防できる ここに挙げたメリットの真逆を想像すると怖くなりますが、十分に起こり得ることです。専門家へ相談するにあたり、子どもに障害があるかどうかという問題に向き合うことはつらい面もあると思います。しかし、理解と対応のスタートが早ければ早いほど、子どもが感じる困難は軽減できると考えて判断していただけたらと思います。③ASD(自閉症スペクトラム障害)という診断の受けとめ方 専門家につながってASDの可能性を指摘されたり、実際に医学的な診断を受けたりした時にはとにかく不安だと思います。その原因は、以下のようなことが考えられます。・自分の生き方や育て方に問題があったのかを反省する・描いていた将来像や将来設計が揺らぐ・今後の見通しを持つために必要な情報がない日頃仲良くしている人も気持ちを理解してくれるかわからないし、自分に合うアドバイスをしてくれるかどうかもわかりません。この状況では強い孤独を感じます。今後の見通しを持つために、インターネットでブログを見たり、動画を見たり、専門家が監修しているHPを見て情報を集めたり、わかりやすい本を読んだり、たくさん行動をされていると思います。それでもなかなか孤独感は消えないと思います。その理由は、頼りになる伴走者がいないからです。ASDの診断を受けるということは、"できないことの烙印"を押されることではありません。一時的にはそう思いますが、医学的な診断を受ける本当の意味は、社会からの理解と支援を受ける根拠を得るということです。具体的に言うと、医学・教育・福祉の専門家が伴走者になってくれるということです。専門の資格・免許を持った人が味方になってリードしてくれたり、相談に応じてもらえたりすると安心感が出てきます。診断は多くの人にとって理解の基礎になります。そこから"この子らしさ"を理解していくことが始まります。診断があることによって、困っていることをある程度予測してもらえるというふうに受けとめていただけたらと思います。(2) ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴 ASDの子どもはもちろんみんな違います。しかし、特徴的な言動の根底には共通している特徴があります。ASDのある子どもにある3つの特性とその背景について説明します。ASDの特性ASDには大きく分けて以下のような特性があります。① 人とのかかわり、コミュニケーションが独特② 興味の偏りがあり、こだわりが強い③ 感覚の過敏性、鈍感性があるこの3つの特性について、以下解説します。① 人とのかかわり、コミュニケーションが独特ASDのある子どもたちは、周りの物事の見え方や感じ方、対応方法の選択と実行が典型的な子どもたちと違います。また、「人」に対して安心感を抱きにくく、どちらかというと「物」に関心が向きやすい傾向があります。生まれつきの特徴と生活体験の違いから、対人関係や場に応じた振る舞い方、コミュニケーションなどにおいて、困難が生じてしまうことがあります。生まれつきの特徴とは、以下がその具体例です。・視線が合いにくい、あやしても笑わないなど表情が少ない・抱かれることや触れられることを嫌がる・名前を呼んでも振り向かない・人見知りをしない、親の後追いをしない、一人遊びが多い・「あー」「まんまん」などの喃語・ジェスチャーを使ったコミュニケーション・指差しの遅れ・話し言葉がでなかったり、相手が話した言葉を繰り返して言うことが多い、一方的に話す、独自の言葉遣いがある・たとえ話や冗談を理解できない・アイコンタクトや身振り手振りが理解できない・その場の雰囲気や表情を読むことが苦手 など※これらの特徴には個人差があります。② 興味の偏り、こだわりが強い 私たちは数分後あるいは数時間後の未来を何となくイメージすることができます。しかも、そのイメージを多くの人と共有することができます。一方で、ASDのある子どもたちは未来をイメージすることが難しいため、変化への対応が苦手です。不確かな「先のこと」や「変化」に不安を感じやすいため、気持ちが張りつめています。「いつも同じ」であれば、この不安は生じません。その結果、「同じ行動の繰り返し」や「こだわり」という行動が現れます。また、興味の偏りは遊び方を見ていると気づくことがあります。以下にその具体例を示します。・同じ物(服・おもちゃ・食べ物など)、道順、手順、スケジュールなどを強く望む・変更に対して強い不安を感じて抵抗をしめす・物を一列に並べて遊んだり、物の配置にこだわる・興味・好みの範囲が限定的・物の用途に沿った遊びや見立て遊びよりも、感覚的な遊びを好む (例)ミニカーのタイヤの回転やボールの模様を見つめる、跳んだり回ったりするのが好き・ルールや約束をきっちり守り、人のルール違反などを見逃さない・自分の得意分野で知らないことがあると許せない、一番にこだわる など※これらの特徴は個人差があります。③ 感覚の過敏性、過鈍性がある ASDのある子どもたちの中には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚などの感覚器が鋭かったり鈍かったりするために、ある特定の刺激に対して、独特の感じ方を見せる子どもがいます。この特性は個人差が大きく、特徴を感じさせない子どももいれば、音だけ過敏という子どももいます。これは、脳内での感覚処理の仕方に特徴があるために起こります。以下にその具体例を示します。・突然の物音に過剰におびえる・多くの子どもが気にしていない音、光、においなどがとても気になる・多くの子どもは気にしない特定の感触や音などを嫌がったり好んだりする・文字を読むのが苦手だったり、集中できなかったりする・食べられるものと食べられないものの偏りが大きい・痛みを感じにくく、自分をひどく傷つけることがある・「暑い」「寒い」を感じにくく、衣服の調節がうまくできない など※これらの特徴は個人差があります。 ASDの子どもを理解して教育・支援する時には、ASDの子どもが見ている・感じている世界を想像することが重要です。ASDの子どもの行動について、わがまま、好き嫌いが多いという程度の理解であれば、関わる中で衝突する可能性はかなり高いです。自分とは違うということを前提に、方法を考えながら一緒にやっていこうという心構えが欠かせません。そのような気持ちをもって関わると子どもと一緒に成長していくことができます。(3)ASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもを理解して支援するということ ASDについては様々な研究が進められています。根本的な原因と治療法の解明、脳の働きの特徴に関する研究、心理に関する研究、教育や支援に関する研究、周囲の人への教育や支援に関する研究などです。これらの研究からはっきりしていることは、生まれつきの脳のはたらきが特徴的なのであって、親の育て方を責めたら解決するようなことではないということです。しかしながら、生活をする中で本人や家族が困ってしまうことが起きるのは避けられないことですから、具体的に方法を考えなければなりません。①"あたりまえ"を見直す 困ったことが起きたときに多くの人が考える教育や支援の仕方は、多くの人に通用しそうな方法です。しかし、ASDの子どもの場合にはその方法が合わない、むしろ逆効果であることもあります。困っている原因や子どもの気持ちを考えることなく対応することは大きなリスクがあります。だから理解が欠かせないのです。②ASDは治すもの? また、ASDは完治させるという考え方で向き合うものでもありません。多くの人と同じように感じたり、考えたり、行動したりするように矯正するようなものでもありません。とは言っても、困っている状況を放置することはできません。結局のところ、社会生活に必要なことについて、子どもの特徴を理解して合わせながら教育するというところに着地します。学校教育であれば、これは特別支援教育になります。(4)ASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもへの具体的な支援 理解して対応してすることが大切な理由は概ね理解していただいたと思います。ここからは、最初に取り組んでみる価値がある支援について具体的にお伝えしていきます。①特性に合わせた伝え方(コミュニケーション方法)を探る 子どもにはそれぞれ理解しやすい伝え方・教え方があります。日頃の様子について以下のようなポイントをチェックすると、伝え方のヒントが見つかるかもしれません。・言葉で言うと伝わりやすいですか?・文字を書いて見せると伝わりやすいですか?・絵や写真、動画などのイメージを使うと伝わりやすいですか?・感情的に伝えるとパニック(感情的になったり思考停止)になりませんか?・冷静に伝えると伝わりやすいですか?・一度にたくさんのことを伝えるとパニックになりませんか?・短く伝えると伝わりやすいですか?・あいまいな表現を理解できないことがありませんか? (例)ちゃんとしなさい、少し待ちなさい、できるだけ早くしなさい・具体的な言い方をすると伝わりますか?(例)話すのをやめて体を向けて聞きなさい、タイマーが終るまで待ちなさい・言葉で言い聞かせた後に子どもは返事をするが、改善しないことがありませんか?・言葉で伝えた後に、実行させて理解を確認すると改善しますか? これらはコミュニケーション方法を探るときに私が口頭で確認することの一部です。どのような伝え方が子どもに合っているのかを客観的にチェックする方法が知能検査です。知能検査は心理専門家による実施と検査結果の解釈・説明が重要です。知能検査を受けて子どものことを深く理解したいという方は、お住まいの地域の児童精神科、教育委員会にある教育相談室、児童相談所にお問い合わせください。"〇〇市 児童精神科"、"〇〇市 教育相談室"のような検索ワードで調べると、専門家に出会うことができます。②見通しを持てるように伝える 少し先の未来をイメージすることが難しくて、不安が強くなったり、抵抗したりするという特徴に対しては、文字や絵や写真などの視覚情報でつくられたスケジュールや手順を見せるという方法が効果的です。初めて行く場所、初めてやること、いつもと違う手順、急な変更などへの対応が苦手ですが、これから何が起きて、自分がどうしたらいいのかがわかれば、ある程度安心したり対応できたりするようになります。 ここでは「少し先の未来」という言い方をしていますが、不安の原因になっている未来のことは子どもによって様々です。今から始まる活動、次の活動、1日の予定、1週間の予定、1ヵ月の予定、1年間の予定などです。子どもによっては1年後のことを過剰に心配する場合もあります。「そんな先のことを心配しても仕方がない!」、「何度も同じことを確認しないで!」と言いたくなりますが、スケジュール表やカレンダーなどを一緒に見ながら、先を見通せるように支援すると子どもは安心して落ち着きます。"自閉スペクトラム症 スケジュール"のような検索ワードで調べると、様々な工夫を知ることができます。③気持ちが落ち着く人、物、場所などを尊重する 保護者や学校の先生にとっては、子どもの「こだわり」とどう折り合いをつけて行くかは重要な課題になります。ASDの子どもは自分なりに過ごしていますが、保護者や先生としては、子どもの豊かな人生のために楽しめる物事や進路の選択肢を増やしたいと願います。この考え方は教育として間違っていません。しかし「こだわり」の背景にある子どもの気持ちへの配慮・対応を見逃すと、子どもは安心材料を奪われ、強いフラストレーション(欲求不満)を感じてしまいます。パニックの引き金になる可能性があります。子どもの「こだわり」の背景には安心・安全を求めている気持ちがあります。「こだわり」を減らして違う活動に置き換えたいと願うのであれば、伝え方の工夫をして、見通しをもって取り組めるようにリードしましょう。焦らずに、じわじわと新しい物事にチャレンジする気持ちが成功の鍵です。3歩進んで2歩下がるくらいの気持ちです。あわせて、自由時間には気持ちが落ち着く物や場所や活動をのびのびとできるようにすることも大切です。※なかなかやめられない行動の中には、子ども自身や他人を傷つけるリスクがあったり、命の危険に関わるような行動をしたりすることもあります。一人で抱え込んだり、強引な対応が事態を悪化させたりする場合もあります。緊急性が高く深刻なケースの場合には、児童精神科の受診や児童相談所へ相談するなど、必ず専門家と対応を協議してください。④感覚の特性に配慮する 感覚の過敏さがある場合には、ASDの子どもを攻撃する感覚刺激から保護しましょう。音の感覚過敏に対してはイヤーマフを使う方法があります。視覚過敏については明るさや色など視覚刺激を遮光眼鏡で調整する方法があります。なお、感覚過敏は嗅覚、味覚、触覚で生じる場合もあります。それらの感覚刺激を完全に遮断することは不可能なので、子どもが受け容れられる範囲を探りましょう。感覚過敏の子どもは刺激を遮断するような行動をとりますが「防御している」と理解してください。疲労や不安があるときには特に防御がかたくなります。新年度、休み明け、学校行事の前後などは特に配慮が必要です。耳を塞いだり、突っ伏したり、トイレのような狭い部屋に入ってなかなか出て来なかったり、集団から距離をとったりします。それらは、良い方法が見つからない、教えてもらっていない段階での子どもなりに編み出した方法です。イヤーマフ、遮光眼鏡、受け容れられる肌触りの服、人との距離など、効果的な対応を学ぶことで行動が変わる可能性があります。家庭と学校が協力して子どもと一緒に試してみることをおすすめします。※なお、"特別な道具"を使って障害状態の軽減を図ることはいわゆる"特別扱い"とは異なります。弱視の子が眼鏡をかけたり、難聴の子が補聴器をつけたり、肢体不自由の子が車いすに乗ることと同様だと考えてください。⑤好きなことを一緒に楽しむ 子どもの心を支えるためには、何気ない日常生活を大切にして、今できていることを認めるたりほめたりすることも大切です。園や学校に通っていると、他の子どもと比べて不安を抱いたり、次々と課題が見つかったりして子どもとの時間を楽しめなくなってしまいます。また、不安や疲労を抱えて子どものことを考えるとネガティブになってしまいがちです。時には、子どもと一緒にのんびり過ごしたり、一緒にできることがあったりすれば、じっくり時間を使って楽しんでいただけたらと思います。テレビを見る、工作をする、料理をする、動物園に行く、図書館に行く…。何気ないことであっても、一緒に楽しむことはかけがえのない時間になるはずです。電車に対する興味関心が強い子どもと一緒に、ローカル線に乗る旅を楽しんでいる保護者もおられます。子どもの世界に入り込んで一緒に楽しんでみましょう。⑥得意なことや成長をほめる 学校生活では、得意なことと不得意なことがあると思います。不得意なことを何とかしたいという気持ちがどうしても強くなりがちですが、得意なことをほめる・認めることが大切です。できないことばかりに注目されると「自分はダメ、できない、価値がない」と子どもが考え始めます。このような体験が積み重なっていくとうつ状態、不登校のように状況が複雑化していきます。 できていないことや難しいことを話題にしてはいけないということではありません。伝えるべきこと、教えなければならないことは子どもの特徴に合わせて伝える必要があります。恐怖や苦痛だけを与えるような、ASDの子どもの成長につながらないかかわりは避けましょう。特徴に合った伝え方を冷静に判断して子どもに伝える、子どもができたことはほめるという関りが大切です。成長をほめることを忘れやすいので意識しましょう。⑦専門機関に相談する 子どもが幼い間は、専門機関につながる主体は保護者になります。専門機関につながっていると以下のようなメリットがあります。・子どもの理解者が増える・子どものことをうまく説明してくれる専門家が味方になる・悩みや心配事を専門家に話すと必要な情報提供を受けられる・同じ立場にある人と出会って、気持ちを分かち合える・先輩保護者から経験談を聞いて見通しをもつことができる・子どもと一緒に専門的な教育を受けることができる気持ちを分かってもらえる安心感は、保護者自身の支えになります。同じ立場にある人との出会いによって孤独感がやわらぎ、頑張ろうというエネルギーにつながるでしょう。 子どもが成長すると、子ども自身が相談の主体になります。自分が小さい頃から知っている、頼れる専門家がたくさんいる状況は子どもの強力な後ろ盾になるでしょう。(5)おわりに 今回の記事では、ASDの子どもの理解と対応に関する入り口をお伝えしました。実際には学校のこと、進路選択のこと、人間関係づくりのこと、就労のこと、余暇の過ごし方のことなど、トピックはたくさんあります。このようにお伝えすると重荷に感じられるかもしれませんが、家族や専門家とタッグを組んで一つ一つのことに取り組んでいただけたらと思います。私も専門家として応援していきます。あわせて読みたい・ADHD(注意欠如多動症)の理解と支援、教育・LD(学習障害)の理解と支援、教育ASDの理解を深めるためのおすすめ書籍リスト入門編・発達って、障害ってなんだろう?(発達と障害を考える本12)、日原信彦(監修)、ミネルヴァ書房・もっと知りたい!自閉症のおともだち(新しい-発達と障害を考える本1)、内山登紀夫(監修)、伊藤久美(編)、ミネルヴァ書房・もっと知りたい!アスペルガー症候群のおともだち(新しい-発達と障害を考える本2)、内山登紀夫(監修)、伊藤久美(編)、ミネルヴァ書房・なにがちがうの?自閉症の子の見え方・感じ方(新しい-発達と障害を考える本5)、内山登紀夫(監修)、伊藤久美(編)、ミネルヴァ書房・なにがちがうの?アスペルガー症候群の子の見え方・感じ方(新しい-発達と障害を考える本6)、内山登紀夫(監修)、尾崎ミオ(編)、ミネルヴァ書房・自閉症スペクトラムがよくわかる本(健康ライブラリーイラスト版)本田秀夫(監修)、講談社・自閉症のすべてがわかる本(健康ライブラリーイラスト版)、佐々木正美(監修)、講談社・アスペルガー症候群・高機能自閉症のすべてがわかる本(健康ライブラリーイラスト版)、佐々木正美(監修)、講談社・光とともに…―自閉症児を抱えて全15巻、戸部けいこ(著)、秋田書店・この地球にすんでいる僕の仲間たちへ―12歳の僕が知っている自閉の世界、東田直樹・東田美紀(著)、エスコアール・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心、東田直樹(著)、エスコアール・自閉症の僕が残してきた言葉たち―小学生までの作品を振り返って、東田直樹(著)、エスコアール・続・自閉症の僕が跳びはねる理湯―会話のできない高校生がたどる心の軌跡、東田直樹(著)、エスコアール・あるがままに自閉症です―東田直樹の見つめる世界、東田直樹(著)、エスコアール実践編・アスペルガー症候群・高機能自閉症の子どもを育てる本―家庭編(健康ライブラリーイラスト版)、佐々木正美(監修)、講談社・アスペルガー症候群・高機能自閉症の子どもを育てる本―学校編(健康ライブラリーイラスト版)、佐々木正美(監修)、講談社・発達障害がある子どもを育てる本―中学生編(健康ライブラリーイラスト版)、月森久江(監修)、講談社・アスペルガー症候群就労支援編(こころライブラリーイラスト版)、佐々木正美・梅永雄二(監修)、講談社・完全図解アスペルガー症候群(健康ライブラリースペシャル)、佐々木正美(総監修)、梅永雄二(監修)、講談社・マンガでわかるよのなかのルール、横山浩之(著)、明野みる(マンガ)、小学館・自閉症スペクトラム親子いっしょの子どもの療育相談室、白石雅一(著)、東京書籍・自閉症スペクトラムとこだわり行動への対処法、白石雅一(著)、東京書籍上級編【参考】専門家のための本※専門書ですので、ASDに限らず、幅広く説明されています。・DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル、American Psychiatric Association、日本精神神経学会(日本語版用語監修)、高橋三郎・大野裕(監訳)、医学書院・今日の精神疾患治療指針 第2版、樋口輝彦・市川宏伸・神庭重信・朝田隆・中込和幸(編集)、医学書院・発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン、辻井正次(監修)、明翫光宜(編集代表)、金子書房・特別支援教育-特別なニーズをもつ子どもたちのために、ウィリアム L. ヒューワード(著)、中野良顯・小野次朗・榊原洋一(翻訳)、明石書店・自閉症治療の到達点、太田昌孝・永井洋子・武藤直子(編)、日本文化科学社あわせて読みたい・ADHD(注意欠如多動症)の理解と支援、教育・LD(学習障害)の理解と支援、教育
子どもが学校での勉強につまずいている時、親あるいは担任の先生としては何とかしてあげたいという気持ちになるのではないでしょうか?では、どのように教えたらできるようになるのか。これが最大の問題のように思われると思います。この記事では、LD(学習障害)がある子どもの特徴と、教育をする上での考え方についてお伝えしたいと思います。この情報をきっかけにLD(学習障害)の理解を深め、支援や教育がより良くなっていくことを願っています。▼あわせて読みたいADHD(注意欠如多動症)の理解と支援、教育1. LD(学習障害)が疑われるときLD(学習障害)を疑うきっかけ①│学習の停滞 LDを疑うきっかけの多くは、学校での学習でつまずくことです。例えば以下のようなことがあります。・文字の書き間違いが多い・枠の中におさめて書くことが難しい・学習した漢字がほとんど定着しない・音読が難しい・文章の内容を理解が難しい・算数の学習内容の理解が難しい上記のような、学校の先生が気づいた”特定領域の学習が困難”という様子がLDの特徴です。上にあげた特徴のいくつが当てはまったらLDという判断をするものではありません。“特定領域”ということですから、一つでも当てはまっていればLDの可能性があります。LD(学習障害)を疑うきっかけ②│適切な理解がないこと、学習が停滞する苦しみもしもLDの症状のことを知らなければ、多くの人は以下のようなことを考えます。・先生の教え方が悪い・親が家庭学習をちゃんとさせていない・本人の努力不足が原因・知的障害があるのではないか・高校や大学に進学できず、就職もできないのではないかこのような誤解が原因で、苦しまなくてもいい人が必要以上に苦しんでしまう場合があります。言われた通りにやっても成果が出ない、成果が出たと思ったときには周りの子どもたちは先に進んでいて、次から次へと課題が積みあがっていく…。この苦しみから解放されるためには、正しい理解とサポートが欠かせません。2. LD(学習障害)とは?①LD(学習障害)は気づかれにくい障害ここからは、LDの特徴をお話していきます。LDは知的障害と異なり、全般的な知的発達の遅れはありません。知的発達の遅れがないということは簡潔に言えば以下の通りです。つまり、会話ができたり、運動ができたり、他の子どもたちと明らかな違いは見えにくいです。しかしながら、以下の“学習に関わる力のいずれか”に著しい困難が生じます。・聞くこと・話すこと・読むこと・書くこと・計算すること・推論すること幼児期では個人差として“様子を見ていきましょう”とされていたことが、学校生活の中でその困難が徐々に明らかになっていきます。ただし、困難の状況が見えていても問題意識を強く感じない先生もおられますので、親の方から学校へ相談することも必要です。②LD(学習障害)の原因と子どもの気持ち 「LDの原因は、中枢神経系に何らかの機能障害があること」だと推定されています。視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害や、子育ての環境や学習を怠けていることが直接的な原因となるものではありません。過去を振り返って親の育て方や子どもの努力を責めるのではなく、特徴を理解して適切な学習方法を見つけていく方へ踏み出していくことが大切です。LDの子どもの中には、学年が上がるにつれて以下のような無力感が強くなっていく場合があります。・がんばってもどうせできない・成果がでないなら、やってもやらなくても一緒・一生懸命にやっても、みんなよりできないのはカッコ悪いから最初からやらない・できないことを見られるのが恥ずかしいから、やる気がないフリをしよう・自分は将来、人の役には立てない・勉強ができないから自分は愛されないこのような本人の自己認識は、人から認めてもらえない経験の積み重ねが原因です。実際は読むことの困難、書くことの困難、計算することの困難など一部分の困難であって、できることは数えきれないほどたくさんあります。子どもの認識ですから“もう何もかも全部ダメ!”と感じていることが多くあります。周囲の大人も同じように“もう全部だめだ”なんて思って日頃接していませんか。大人の子どもを見る目が、子どもにも影響します。3. LD(学習障害)のタイプ・特徴LDのタイプLDは大きく3つのタイプに分けることができます。(a)書字表出障害(ディスグラフィア)(b)読字障害(ディスレクシア)(c)算数障害(ディスカリキュリア)(a)書字表出障害と(b)読字障害が一緒になって発現する場合もあります。それぞれどの様な、特徴があるのか紹介していきます。タイプ(a):書字表出障害(ディスグラフィア)の特徴とは?書くことに困難のある状態です。文字を書き写すこと、書くための細かい動作をすることが難しく、知的発達に比べて書くことに関する成績が極端に低くなります。学校生活では、テストで答えはわかっているのに、書くことに時間がかかりすぎて本来持っている力が表現できない・評価されない状況が生じます。タイプ(b):読字障害(ディスレクシア)の特徴とは?文字を認識し学ぶことの困難さがある状態です。文字を音読したり、読んで内容を理解したりすることが難しくなります。ぎこちない読み方、文字や行をとばすといった特徴があります。音読に精いっぱいで内容が頭に入ってこないということもあります。学校では国語以外にも読むことがたくさんあります。例えば算数の文章問題などです。他の教科で学習が遅れる場合が多くありますので、どのように伝えると本人がわかりやすいのかを早めに判断することが大切です。中には、聞いて記憶できる子が音で覚えて、あたかも音読しているかのように見えることもあります。これは“ごまかしている”と捉えるのではなく、子どもに合っている伝え方・学び方を判断する上での大きなヒントになります。タイプ(c):算数障害(ディスカリキュリア)の特徴とは?数字を扱う上で困難がある状態です。私たちは何気なく、具体的なモノを個数、長さ、重さなど様々な側面からとらえて、数字と単位で表現します。8個とか6gとか7cmなどという具合です。また、算数の計算では数の関係を考えながら足し算とか引き算とか掛け算とか割り算とか、いわゆる“式”を立てます。こういった頭の中での作業に困難が生じます。学校では算数の学習成績が極端に低くなります。算数ではひっ算をよく使いますが、ひっ算では計算間違いをしないために位を整えて書くことも大切です。書字表出障害が算数の計算間違いにつながることもあります。4. LD(学習障害)の子どもを理解し、サポートするために知っておきたいこと①LD(学習障害)の子どもをサポートするための心構えLDの子どもの多くは学習意欲が低下しています。理由は以下のことがあげられます。・頭ではわかっているのに表現できない・聞いたら理解できるのに見ていることが頭に入らない・問題を解く上での学習のコツに自分では気づけない・努力の成果がなかなか得られない加えて、周りの人が自分のことを認めてくれないと感じたり、努力しているのに𠮟責したり、バカにしてくることがあったりすると、子どものパーソナリティ(人格)の発達に重大な影響を与えます。サポートする上で重要なことは、まずは本人の困っている気持ちと、その背景にある原因に理解を示すことです。特に、子どもですから自分自身で解決策を導き出すことはとても難しいです。特別支援教育に詳しい学校の先生と相談して、子どもの特徴を正しく把握して、子どもに合った方法を見つけていく、“子どもと一緒に成長していく”という心構えをもつことが大切です。②LD(学習障害)の子どもの特性を理解するために 子どもの特徴を正しく把握するためには、過去の出来事(エピソード)の振り返りと観察をします。ポイントは以下の通りです。・いつ(〇歳の時に、〇年生の時に、国語の時間に、お友達と遊んでいる時に…)・どこで(家庭で、幼稚園や保育園で、学校で…)・どんなことが起きたか(漢字を全然覚えていない…)・どのように対応したか(〇回繰り返し練習させた…)・その結果どうなったか(その時は書けたけど次の時は忘れていた…)上記のポイントを踏まえて過去を振り返ったり、現在進行形で観察したりしていきます。子どもの行動の中に困難のサインがあります。一方で、支援のヒントになるエピソードも見つかるかもしれません。専門家はエピソードを聞きながら解決策を探っていきます。もしかしたら“なんであの時に気づいてあげられなかったのか”と悔やむ気持ちが出てくるかもしれませんが、これからより良くしていくという前向きな気持ちでいてください。③学校の先生との連携LDの子どもの困難は学校生活の中に多くあります。また、家庭では宿題をするときにその困難に向き合うことになります。家庭や学校での様子を、担任の先生と相談・共有できる関係性をつくることが大切です。その中で、子どものために家でできる支援と学校でできる支援を整理・計画するとより効果的な指導・支援が期待できると思います。“先生は〇〇してくれない”という気持ちをもつこともあるかもしれませんが、みんなで成長していくという気持ちで取り組んでください。④LDの問題とはいつまで向き合っていくのか?現在のところ、LDは完治することを期待するのではなく、対応方法を身に着けて生活や学習に困らないようにすることをめざします。将来、職業生活を含めた社会生活に活きる力を育んでいくことがねらいです。自分のことを理解し、対処していくために必要な力を身に着ける学習は小学校の段階からスタートすることができます。⑤通級指導教室と自立活動 LDの子どもの多くは、通常の学級に在籍しながら通級指導教室に通います。通級指導教室では、自分に合った学習の仕方を学んだり、自分に合った環境を選んだりつくったりできるようになることをめざした自立活動に取り組みます。自立活動とは障害による学習上または生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度、及び習慣を養うことが目的です。現在の困りごとへの対応や、将来のために必要な力をつけられるように、学校と家庭が連携しながら取り組んでいくことが大切です。⑥LDの子は日々の学習はどうなるの? 従来は、読み・書き・計算は筆記による表現が必須でしたが、少しずつ状況が変わってきています。その要因は次の通りです。・タブレット端末や小型パソコンなどのサポートツールが入手しやすくなった。・学校で育む力について、社会の認識が徐々に変わりつつある。・LDの子どもの学習支援に使えるアプリケーションが増えてきた。これらの社会的な変化によって次のような学習上の支援が可能になっています。・書くことに困難がある場合はフリック入力やキーボード入力で置き換える。・読むことに困難がある場合は読み上げによるサポートをする。・計算に困難がある場合はプレゼンテーションソフトを使ってイメージしやすくする。 学校現場ではまだまだ少数事例ではありますが、サポートを受けながら学習を進めている子どもはいます。熊本市はいち早く1人1台端末が実現した地域ですが、その利点を生かした支援が徐々に全国でも増えています。GIGAスクール構想によって1人1台端末環境が実現します。LDの子どもへの支援も急加速することでしょう。 ここで、入力の仕方やアプリの使い方について子どもはわかるの?と疑問に思われた方もいるかと思いますが、そこで出てくるのが先ほどの自立活動です。通常の時間割の中では特別な使い方は学べませんので、自立活動の時間に学べるようになることが予想されます。小学校で差がつく!幼児におすすめの通信教育・講座9選|レベル・年齢・特徴別に比較|話題のタブレット学習もあり⑦子どもの気持ちを支えていくために大切なこと最後に、子どもの心の安定に必要なことについてお伝えします。周囲の人の日頃の声掛けや、友達の存在、好きなことや得意なことの存在は欠かせません。これらに加えて、将来の心理的な自立を考えると次のようなことが大切です。・年齢や発達の状況に合わせて、原因の理解や、得意なことと苦手なことを整理する。・学習の進み具合や将来の進路について学校の先生と相談する習慣をもつ。・スクールカウンセラーの先生(非常勤で学校にいる公認心理師や臨床心理士)と話して自己理解・自己肯定感(自分を前向きにとらえる気持ち)を高める。・LDのことを受け容れながら、できることを認めて後押ししてくれるよう家族に協力を得る。・自分にあるLDの特徴を説明してサポートをお願いするコミュニケーション力を身につける 読み・書き・計算のサポートと、心理的なサポートの両面を大切にしていきましょう。5. LD(学習障害)の子どもが周囲の人から理解とサポートを得る方法①まずは専門家に相談を現在では学習障害への認識が徐々に広がっていますので、医療機関で診断を受けると子どもに合った環境での学習・生活に一歩近づくことができます。LDの心配があれば、まずは学校の担任の先生、特別支援教育コーディネーターの先生(学校に必ずいます)に相談して、学校での様子を確認しましょう。教育委員会には専門家がいる教育相談室がありますので、お住いの地域の教育相談室に相談することもできます。“〇〇市 教育相談室”のような検索の仕方ですぐに見つけられます。医療機関を探す場合にはお住いの地域の児童精神科を探してください。予約で数カ月待つ可能性もありますので、不登校や家庭内暴力などの深刻な状況になる前に、少しでも心のゆとりがあるうちに予約を取ることをおすすめします。②苦手なことは専門家、得意なことは家族と一緒に 丸投げするわけではありませんが、苦手なことはプロフェッショナルにお願いして、家庭では子どもの得意なことやできることを一緒に楽しむことをおすすめします。好きなことや得意なことが人のために役に立つようになると、LDがあるという重荷は少しずつ軽くなるでしょう。好きなことや得意なことも、苦手なこともどちらも成長・変化していきます。焦りはプレッシャーになりますので、少しずつの変化を楽しむ心構えでいきましょう。「あの時期は、この子のLDのことしか見えてなかったな」と思える日がきっとくるはずです。子どもの良いところ、できること探しを楽しんでください。LD(学習障害)の理解を深めるためのおすすめ書籍LD本│入門編・発達って、障害ってなんだろう?(発達と障害を考える本12)、日原信彦(監修)、ミネルヴァ書房・もっとしりたい!LD学習障害のおともだち(新しい-発達と障害を考える本3)、内山登紀夫(監修)、神奈川LD協会(編)、ミネルヴァ書房・なにがちがうの?LD学習障害の子の見え方・感じ方(新しい-発達と障害を考える本7)、内山登紀夫(監修)、杉本陽子(編)、ミネルヴァ書房・LDの子の読み書き支援がわかる本(健康ライブラリーイラスト版)、小池敏英(監修)、講談社・文字の読めないパイロットー識字障害(ディスレクシア)の僕がドローンと出会って飛び立つまで、髙梨智樹、イースト・プレスLD本│実践編・発達障害のある子の学びを深める教材・教具・ICTの教室活用アイデア(特別支援教育サポートBOOKs)、金森克浩・梅田真理・坂井聡・冨永大悟(著)、明治図書・特別支援教育はじめのいっぽ!ー個別の支援が今すぐ始められる、小林倫代・杉本陽子(著)、Gakken・特別支援教育はじめのいっぽ!算数のじかんー通常学級でみんなといっしょに学べる、井上賞子・杉本陽子(著)、小林倫代(監修)、Gakken・特別支援教育はじめのいっぽ!国語のじかんー通常学級でみんなといっしょに学べる、井上賞子・杉本陽子(著)、小林倫代(監修)、Gakken・特別支援教育はじめのいっぽ!漢字の時間80字ー個に応じた「漢字の学びの基礎」が身に付く、小林倫代・杉本陽子(著)、Gakken・特別支援教育をサポートする読み・書き・計算指導事例集、梅田真理(監修)、ナツメ社・読み書きが苦手な子どもへの<基礎>トレーニングワークー通常の学級でやさしい学び支援1巻、竹田契一(監修)、村井敏宏・中尾和人(著)、明治図書・読み書きが苦手な子どもへの<つまずき>支援ワークー通常の学級でのやさしい学び支援2巻、竹田契一(監修)、村井敏宏(著)、明治図書・読み書きが苦手な子どもへの<漢字>支援ワーク1~3年編ー通常の学級でのやさしい学び支援3巻、竹田契一(監修)、村井敏宏(著)、明治図書・読み書きが苦手な子どもへの<漢字>支援ワーク4~6年編―通常の学級でのやさしい学び支援4巻、竹田契一(監修)、村井敏宏(著)、明治図書・<特別支援教育>学びと育ちのサポートワーク1文字への準備チャレンジ編、加藤博之(著)、明治図書・<特別支援教育>学びと育ちのサポートワーク2かずへの準備チャレンジ編、加藤博之(著)、明治図書・<特別支援教育>学びと育ちのサポートワーク3国語「書く力、考える力」の基礎力アップ編、加藤博之(著)、明治図書・<特別支援教育>学びと育ちのサポートワーク4算数「操作して、解く力」の基礎力アップ編、加藤博之(著)、明治図書・発達障害がある子どもの進路選択ハンドブック(健康ライブラリーイラスト版)、月森久江(監修)、講談社・発達障害の子どもの視知覚認知問題への対処法-親と専門家のためのガイド、リサ・A・カーツ(著)、川端秀仁(監訳)、泉流星(訳)、中村尚広(協力)、東京書籍・LD・ADHD等関連用語集、一般社団法人日本LD学会(編)、日本文化科学社LD本│上級編【参考】専門家のための本※専門書ですので、LDに限らず、幅広く説明されています。・DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル、American Psychiatric Association、日本精神神経学会(日本語版用語監修)、高橋三郎・大野裕(監訳)、医学書院・今日の精神疾患治療指針 第2版、樋口輝彦・市川宏伸・神庭重信・朝田隆・中込和幸(編集)、医学書院・発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン、辻井正次(監修)、明翫光宜(編集代表)、金子書房・特別支援教育-特別なニーズをもつ子どもたちのために、ウィリアム L. ヒューワード(著)、中野良顯・小野次朗・榊原洋一(翻訳)、明石書店▼あわせて読みたいADHD(注意欠如多動症)の理解と支援、教育
この記事を読んでいる人の中には、以下のような人もいるのではないでしょうか。子どもがADHDかもしれないと心配している子どもがADHDと診断され、子どもの将来や自身の教育の仕方に不安がある今すぐ状況をなんとかしたい、今後の見通しを持ちたいなど、不安な気持ちで生活されていることと思います。この記事を通じて、ADHDを理解したり、不安が解消されたり、子どもと共に一歩踏み出す勇気につながれば幸いです。▼あわせて読みたいLD(学習障害)の理解と支援、教育1. ADHD(注意欠如多動症)が疑われるとき幼児期の行動 幼児期の子どもと一緒に生活しているとき、以下のような行動が気になった経験はありませんか?そわそわと落ち着きがない自分の順番を待てない自分が気になるものの方へしきりに近づいていく危険をかえりみずに行動する片付けができない何かをしている途中で別のことを始める 多くの子どもは年齢を重ねたり園や学校で生活したりすることで、自分のことは自分でできるようになってきたり、集団行動がとれるようになってきたりします。こういった変化を通じて、多くの保護者はわが子の成長を感じているのではないでしょうか。親の気づきから不安へ ところが、園や小学校で教育を受けていても、以下のような行動特徴が続く子どももいます。先生が話している最中でもしゃべる授業中にじっと座っていられない道具の片づけができずに部屋や机の周りがぐちゃぐちゃ宿題を終わらせられない落とし物や失くし物が多い先生からの連絡や提出物を忘れる危険な場所で走ったり高いところに登りたがる こういった行動を直接見たり、先生から指摘された保護者は、「人に迷惑をかけているのではないか」、「私の育て方が悪いのではないか」、「親として恥ずかしい」、「こんな状態が一生続いたらどうしよう」といった不安を抱きます。“障害”の捉え方 子どもは園や学校に通って教育を受けており、また、家庭で教育をしているにもかかわらず、周囲の子どもと比べて成長や変化が見えにくい…。 このような場合に、私たち専門家は“発達の障害”を考えます。言い換えると、“ある部分の発達が停滞している”、あるいは、“ある部分の発達が障害されている”と考えます。ここから、医学的な対応や教育上の支援を検討しはじめます。 ここまで示してきた行動特徴があり、学校や家庭での生活に支障がある時に「ADHD」という診断がつくことがあります。医師の診断は“できない子”という烙印を押す行為ではありませんが、ショックを受けて苦しむ保護者も少なくありません。しかし、診断がつくことはネガティブなことだけではありません。医学的な対応が可能になったり教育上のサポートを受けたりするための根拠になるからです。2. ADHD(注意欠如多動症)の特徴 ADHDは(a)不注意、(b)多動性および衝動性が特徴です。(a)不注意と(b)多動性および衝動性が混合している場合でも、a)不注意が優勢の場合と、(b)多動性および衝動性が優勢の場合に分けられます。(a) 不注意が優勢な場合不注意が優勢である子どもには、次のような傾向が見られます。教室では一見したところ静かに過ごしているが内容を聞き逃していることがよくある勉強している途中で集中が途切れることがよくある忘れ物や失くし物がよくあるケアレスミスが多い不注意が優勢なADHDの子どもは、教室の中では目立ちにくいタイプなので、困っていることに気づかれないことがあります。(b) 多動・衝動が優勢な場合多動性および衝動性が優勢である子どもには、以下の傾向が見られます。落ち着きなくそわそわとからだを動かしている授業中に席を離れる何かに突き動かされているかのように動き続ける待てずに発言したり行動したりするので他者と衝突する危険をかえりみずに行動するその結果、教室でのルールを守れずに、先生や周りの子どもから怒られたり注意されたりすることが増えます。(c) 不注意と多動性・衝動性が混合している場合(a)と(b)が混合している子どもは上記の傾向を併せ持つため、勉強への集中、集団活動への参加、物の管理や計画的な行動などの自己管理や、秩序だった行動が苦手です。そのような行動が求められる場では様々なことが困難となり、周囲から注意されることも多くなります。保護者をはじめとする周囲の人は「かわいい子どものできているところを見つけて褒めたい」と心では思っていても、子どもの多動性や衝動性の高さが目立つと、注意する気持ちが強くなりがちです。(d) 共通して気をつけたい特徴 (a)~(c)のどの場合であっても気をつけなければならないことがあります。それは、子どもの気持ちです。注意されたり怒られたりすることが積み重なると、子どもの気持ちが以下のような言葉でいっぱいになってしまいます。どうせ自分はだめなんだどうせ失敗する頑張ってもムダなんだ自分の周りはみんな敵だ学校や人間関係、大人であれば、いわゆる“社会”を避けるようになる状態です。この状態を避けるために大切なのは、正しく理解して教育・支援することです。3. ADHD(注意欠如多動症)の子どもを理解してサポートするために知っておきたいことADHDの子どもへの最も危険な対応 ADHDのことを理解していない人が陥りやすい対応は以下の通りです。「根性がない」、「良くしようとしない」、「やる気がない」と言って怒ったり叱り続けたりする。「そんなことだとだめだよ」と不安にするようなことを言い続ける。厳しい対応が必要だと考えて心理的・身体的な罰を与える。 このように、具体的な改善策を示すことなく、恐怖や不安で子どもの行動を改めさせようとすることは危険です。子どもに持続的に恐怖や不安を与え続ける大人のかかわりは、虐待につながります。保護者に適切なかかわり方を知る機会がなければ、これらの行動がエスカレートして悲劇的な事件になることもあります。子どもと一緒に成長する 親子あるいは先生も子どもも努力しているのに成果が出にくいという時には、子どもに合った別の方法を考えていくことが大切です。“考えていく”というのは子どもと一緒に考えていくという意味です。「自分で考えなさい!」と子どもに言うということではなく、子どもの気持ちに寄り添いながら「あれはどうかな?これはどうかな?」とやってみて、成果を一緒に確かめて、一緒に歩んでいく、そうやって大人と子どもが一緒に成長していくことが望ましいです。4. ADHDの子どもへの具体的なサポート生活や学習の環境を整える ADHDの子どもは環境の影響を強く受けます。興味のある物を見たり聞いたりすると、すぐにそのことに気持ちが突き動かされます。集中して学習するためには気になるものを極力減らすことが大切です。例えば以下のような方法が挙げられます。前方の席にして他の子どもの様子が見えにくいようにする棚にはカーテンなどをかけて中が見えないようにする教室の掲示物などを減らすイヤーマフやノイズキャンセリング機能の付いたイヤホンを使う また、忘れ物や失くし物といった不注意の特徴については以下のような方法が挙げられます。見逃さない場所にリストを書いて貼っておく場所を決めて片付ける習慣を作るわたされた大事な紙は決められたファイルに入れる習慣をつくるチェックリストを作ってうっかりとした間違いを避けるようにする これらの方法がどのくらいで効果が出るのか、絶対的な効果が見込めるかは個々によりますが、これらはスタートとして取り組んでみる価値があります。学校の先生と相談して、効果を確認しながらちょうど良いものをみつけていってください。自分に合っているかどうかは子どもにも判断させることをおすすめします。将来、自分に合った環境やサポートを獲得していくために欠かせない経験になります。得意なことを発揮できる場を大事にする 落ち着きがなかったり、不注意であったりするからといって、得意なことがないというわけではありません。得意な教科があったり、からだを動かすのが好きだったり、絵を描くのが好きだったり、人に親切な一面があったり、ADHDという特徴以外にその子のキラリと光るところが必ずあります。「〇〇ができないから好きなことはさせない」というのではなく、“障害”として難しいことと本人が夢中になって取り組むことは分けて考えて、生きがいを持てるようにしてください。好きなことをきっかけに大きな目標を見つけることができたら、苦手なことへの向き合い方もきっと変わってくると思います。自己対処の仕方を学ぶ 学校教育の中には自立活動という授業があります。特別支援教育に関わったことがない人にとっては馴染みのない授業名だと思いますが、特別支援学校や小学校や中学校の特別支援学級に在籍している子ども、通常の学級に在籍しながら通級による指導を受けている子どもが受けられる授業です。障害による学習上または生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養います。ADHDの子どもの場合には、どのような環境であれば学習に集中できるのかを体験しながら理解したり、忘れ物や失くし物をしないための工夫を学んだり、授業中に落ち着いて過ごすことがどうしても難しい場合に先生にどのように伝えたらいいのかを学んだりするチャンスになります。並行して家庭でも取り組み、親子で達成感をもつことができればより高い効果が期待できます。必要に応じて薬物療法を検討する 環境調整薬物療法によって学習や生活がしやすくなることがあります。対応の基本は環境を整えたり、自己対処の仕方を学んだりすることです。しかし、それらの取り組みが難しいほど症状が強い場合には、薬物療法と並行することが効果的です。薬物療法は医師との相談が必須です。予約で待つ期間があったとしても、児童精神科の先生とつながって薬物療法の相談をしてください。薬物療法を開始したら、副作用も含めて子どもの変化は主治医の先生と共有してください。薬物療法の効果が出てきたら、子どもを褒めるチャンスが増えます。環境調整や自己対処の成果を共有して、親子で成長していきましょう。5. ADHDの子どもについて深く知るためにできること インターネットでの情報をきっかけに、本を読んだり、映像を見たり、人に話を聞いたりしながら、自分の子どものことを少しずつ理解していかれると思います。ADHDという診断があっても、子どもはそれぞれの個性があります。学ぶ環境、育っていく環境も異なります。最終的には、原則をおさえながらオーダーメイドの環境を作っていくことになります。そのためにも、是非、専門家とつながってください。児童精神科の医師、発達支援に詳しい公認心理師などの心理専門家、特別支援教育を専門とする大学教員、特別支援教育に詳しい学校の先生などが考えられます。居住地域の”都道府県名“と“児童精神科”で検索したり、各自治体にある教育相談室や学校の特別支援教育コーディネーターの先生(各学校に必ずいます)に尋ねたりすることからスタートしてみてください。 ADHDの特徴が整理できると、わが子らしさが見えてくると思います。ひとりで抱え込まずに、信頼できる専門家と、子どもに合った教育環境や支援の仕方を見つけてください。ADHDの理解を深めるためのおすすめ書籍ADHD本│入門編・発達って、障害ってなんだろう?(発達と障害を考える本12)、日原信彦(監修)、ミネルヴァ書房・もっと知りたい!ADHD(注意欠陥多動性障害)のおともだち(新しい-発達と障害を考える本4)、内山登紀夫(監修)、伊藤久美(編集)、ミネルヴァ書房・なにがちがうの?ADHD(注意欠陥多動性障害)の子の見え方・感じ方(新しい-発達と障害を考える本8)、内山登紀夫(監修)、高山恵子(編集)、ミネルヴァ書房・ADHDのすべてがわかる本(健康ライブラリーイラスト版)、市川宏伸、講談社・最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本(発達障害を考える心をつなぐ)、ナツメ社、榊原洋一・リエゾン-子どものこころ診療所、竹村優作(原著)、ヨンチャン(著)、MORNING KCADHD本│実践編・発達障害がある子どもの進路選択ハンドブック(健康ライブラリーイラスト版)、月森久江(監修)、講談社・読んで学べるADHDのペアレントトレーニング-むずかしい子にやさしい子育て、シンシア・ウィッタム(著)、上林靖子・中田洋二郎・藤井和子・井澗知美・北道子(翻訳)、明石書店・ADHDのすべて、ラッセル A.バークレー(著)、海輪由香子(訳)、山田寛(監修)、VOICE・発達の気になる子の「困った」を「できる」に変えるABAトレーニング(発達障害を考える心をつなぐ)、小笠原恵・加藤慎吾(著)、ナツメ社・LD・ADHD等関連用語集、一般社団法人日本LD学会(編)、日本文化科学社ADHD本│上級編│【参考】専門家のための本※専門書ですので、ADHDに限らず、幅広く説明されています。・DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル、American Psychiatric Association、日本精神神経学会(日本語版用語監修)、高橋三郎・大野裕(監訳)、医学書院・今日の精神疾患治療指針 第2版、樋口輝彦・市川宏伸・神庭重信・朝田隆・中込和幸(編集)、医学書院・発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン、辻井正次(監修)、明翫光宜(編集代表)、金子書房・特別支援教育-特別なニーズをもつ子どもたちのために、ウィリアム L. ヒューワード(著)、中野良顯・小野次朗・榊原洋一(翻訳)、明石書店▼あわせて読みたいLD(学習障害)の理解と支援、教育