FPになり、子どもへの金銭教育を一つの柱として仕事をしてきました。親子のコミュニケーションについても学んだ視点から、「心を育てる金銭教育」というタイトルでの講演も行っています。最近「金融リテラシー※1」という言葉もネット上で見かけるようになりました。今回は、お小遣いを使って子どもに金融リテラシ-を身につける方法を考えてみましょう。今回は、子どもの年齢と成長に合わせた「できること」を考慮しつつ、渡し方を① そのつど② 一週間単位③一か月単位④年単位でご紹介します。また、任せるものを成長とともに増やしていくことで、大人になった時にしっかりと金融リテラシーが身についていることを目指します。最後に定額制と報酬制についても考察してみます。※1 経済的に自立し、より良い生活を送るために必要なお金に関する知識や判断力のこと(政府広報オンラインによる)1. そのつど渡し『初めの一歩』①そのつど渡し4~5歳になると買い物に行った時に「あれ買って」「これ買って」が始まります。その時はいよいよ、本格的な金銭教育の始まりです。その子にあった金額を渡し、自分で考えて買うという経験をさせてみましょう。最初は一緒に買い物に行ったとき、その日の予算を決め、その範囲内で買う経験をさせるといいですね。つまり「そのつど渡し」です。ただし「そのつど渡し」は幼い時だけに限ります。なぜならそれは、お金を使い切る経験になるからです。大人になって最もやってはいけないことは、もらった給料をその月に使い切ってしまうことですよね。ある程度慣れてきたら、週・月に1回など任せていくやり方に変えていくことが大事です。② お金についてまた、お金の役割や扱い方についても教えていきたいですね。何か欲しいものがあった時に、私たちはお金を支払ってそれを手に入れます。それは「物を買う」ということです。そして物を買う時、相手の人と客である私たちは対等であることも教えたいですね。お店の人から「ありがとうございました」と言われれば、こちらも「ありがとうございます」を言うことが大切。そして買ったものをお店の人が丁寧にあつかってくれることと同じくらい、お金を丁寧にお渡しすることも教えましょう。最近はキャッシュレスが増えていますが、機会を見つけて教えていくことはできると思います。小さい子どもにはこれらのことを言葉で説明するというよりは、保護者がその姿を見せてあげるといいでしょう。子どもは親の「言うこと」よりも「すること」で学んでいます。2. 一週間単位のお小遣い『幼児期』①慣れてきたら一週間単位に挑戦少し大きくなり慣れてきたら、一週間単位で考えさせましょう。たとえば週に4日お買い物に行き、そのたびに100円ずつお菓子などを買っているのであれば、400円を一週間の予算として子どものサイフに入れ、お買い物に一緒に行ったときに欲しいものを買うようにします。高いものを買ってしまうとお金は減って、次からはあまり買えなくなります。その時に子どもは学ぶのです。お金には限りがあるということを。使ったらなくなるということを。② 大人と一緒また、子どもが追加のお金を要求してきた時には怒らずに伝えましょう。「一週間に使えるお金は決まっていたでしょう?だから次の一週間がくるまでがまんしようね」と。子どもが悲しんでいる時は「残念だったね」と気持ちを受け止めるだけで十分。「どうしたら良かったのか一緒に考えてみようね」と優しく言うのもいいでしょう。さらに、子どもの理解できる範囲で、大人になった時のことも少し話して聞かせるチャンスかもしれません。つまり、お父さんやお母さんが働いてもらえるお金『給料』には限りがあり、月に一回しかお金がもらえないこと。使いすぎてなくなってしまったら次のお給料日まで待たないといけないこと。だからあなたのお小遣いも使えるお金が決まっていて、なくなったら次の時まで待たなくてはいけないということ。その子にわかる言葉で優しく説明しましょう。必要なら何度でも同じ話を伝えましょう。3. 一か月単位のお小遣い『小学生』①一か月単位のお小遣い小学生くらいになれば、一か月単位でお小遣いを渡しても大丈夫になってきます。また、算数も習い始めるこのタイミングでお小遣い制を始めるのもいいと思います。一か月単位で渡すことで、計画的に使うということが身につきます。②文房具はお小遣いで!私は、お小遣いで文房具を買わせることをお勧めしています。講演会などでこの話をすると驚かれる方も多くいらっしゃいますが、大人になった時のお金の使い方はどうかということを考えてみてください。私たちは給料をもらったらまず何をするかというと、必ず支払わなければならないものから支払っています。住居費、光熱費、教育費、携帯代、交通費、食費などです。万が一に備えるための保険料の支払いや将来のための貯蓄もしなければなりません。つまり生活するのに『必要なもの』に支払いをして、次に『備えること』に支払い、その残りを自分が『欲しいもの』に使うのです。子どもに教えるのは大人になった時に考えていかなければならない、これらの視点だと思います。そのためにお小遣いから文房具を買うという提案をしています。子どもにとって文房具は「欲しいもの」ではなく「必要なもの」です。だからこそあえてお小遣いから文房具を買うことが大事になります。子どもによって理解力は違いますが、その子にあったペースで繰り返して教えていくことで、わかるようになります。③ 任せるものを徐々に増やすお金の扱いに慣れてきたら、任せるものを増やしていきましょう。本人名義の交通系ICカードを作り、お出かけの時にはそれにチャージをさせ、本人に管理を任せるのもお勧めです。移動するのにお金がかかることがわかります。お小遣いの額も増やした上で、チャージをさせましょう。交通機関を利用して移動するとあっという間に残高がなくなることを経験します。お出かけした時、急に欲しくなった飲み物なども任せていると、出かける時に飲み物を持参するようになったりします。お友だちとのお出かけや、誕生日プレゼント、地域のお祭りなどのイベント参加時のものも、お小遣いの中から出してもらいます。そのためには日ごろのお小遣いを多めに渡し、どんな時にそれを使うのかを何度も話し合っておくことが肝心です。これらのことはわが子で実践して、効果を実感してきました。「そのつど渡し」では見られないわが子の行動の変化に何度も驚かされました。たとえば地域のお祭りの時。多くの子どもはその日に渡されたお小遣いを持って参加しています。すると子どもは「このお金をどうやって使い切るか」という行動になります。けれどわが子は限られたお金の中で「ほんとうに私が使いたいものはどれなのか」という優先順位を考えた行動をとります。お友だちが買っているからではなく、おサイフの中身と相談して考える姿には、グッとくるものがありました。がまんする姿に思わず追加でお金を渡したくなったりもしましたが、そこは保護者のがまんのしどころ。家に帰って「お友だちが買っていたのに買わずにがまんしていたね。お母さん、気がついたよ」と伝えた時の嬉しそうな、そして自慢気なわが子の顔は忘れられません。でも、大人になった時にとても大事なことというのはお分かりいただけるでしょう。④ お小遣い帳もう一つ大切なことは、お小遣い帳をつけることです。ただし、これは叱る道具にならないように注意が必要。「お小遣い帳の残高とおサイフの中身が合わないと、翌月のお小遣いは0円です」という保護者の方もいらっしゃいますが、その人は毎月、家計簿の残高とおサイフの中身が合っているのですか?と聞きたくなります。お小遣い帳は自分の行動の振り返りのため、次により良い選択ができるようになるためのものです。自分の買い方のくせに気づいたり、衝動買いをすることのデメリットに気づいたり、きっと子どもたちは学ぶことが多いと思います。また、残高が合わない時はどうすれば良かったのかを話し合うチャンスです。レシートをもらうことだったり、帰ったらすぐに記帳することだったり、大人になっても大事な習慣。親子でしっかり話し合うことで、今後の使い方にも良い影響がでるでしょう。4.年単位のお小遣い『中学生以降』① 年間予算お金の扱いに慣れてきたら、任せるものをさらに増やしてみましょう。この頃わが子でやっていたのは、被服費の年間予算を決めて任せること。10歳を過ぎるころからブランド物に興味を持ち始め、私との価値観が合わなくなり、もめることが増えたタイミングで提案をしました。年間予算を5万円とし、その範囲内で身につけるものすべてを買ってもらうことにしました。最初に提案したのは小学5年生のお正月。わが子はとてもビックリし、大喜びでした。けれど私は知っていました。育ち盛りの子どもの被服費は年間ではそれくらいかかるということを。靴も下着も帽子も何もかもだから。お金を渡したのではなく、私が家計簿の中で管理をします。買い物をする時には残高を確認して出かけます。そしてその範囲内で自由に買ってもらいます。やがて本人は買い物に慎重になり、メリハリをつけて買うようになりました。ある時わが子はブーツを買うことであれこれ悩んでいるようでした。予算を聞くと2万円超えのもの。ネットで調べ、直接お店に行き履き心地を確かめ、買っていました。もし、被服費を予算制にしておらず、私に「買って」と言われていたとしたら、絶対に買わなかったでしょう。私には、ブーツを2万円で買うという価値観はないからです。けれど任せていたからこそ、わが子はそれを手に入れることができました。選び抜いたブーツを履いた時、とても嬉しそうだったことを鮮明に覚えています。そしてそのブーツは帰宅すると玄関には置かれず、自室にもってあがっていました。5.定額制と報酬制① 目的によって考えましょうここまで、子どもの年齢に合わせたお小遣いの渡し方についてお話ししてきましたが、お小遣いの渡し方には大きく2つあります。定額制と報酬制です。定額制は一定のルールのもとに決められた額を渡すやり方。報酬制はお手伝いなどをしたことに対する報酬として支払うやり方です。家のお手伝いに対してお小遣いを渡すことに抵抗を示す保護者もいらっしゃいます。そもそも家事を担っている保護者はお金をもらってしているわけではないし、子どもには家のお手伝いをお金のためにしてほしくないからと。一方で、働いてお金を得ることを教えない定額制のお小遣い制度は子どもをダメな大人にしてしまう、という主張もあります。これはどちらが良いとか悪いとかいう話ではないと私は思います。大人になった時にどんなお金の使い方をして欲しいのか、どんな失敗をしてほしくないのか、どんなことを身につけて欲しいのかを考えて、家庭ごとに一番合ったやり方を見つけていくことが大事だと思います。お仕事の対価としてお小遣いを渡すのであれば、きちんと家族に役に立つことでその子に合った手伝いをさせるのがいいでしょう。わが家でも定額制のお小遣いにプラスして報酬制のお小遣いを渡していた時期がありました。小学生の頃のお風呂掃除です。わが家は当時、義両親も合わせて7人で暮らしていて、一つしかないお風呂は、全員が入るとかなり汚れてしまっていました。その掃除を娘にお願いしました。ただし、仕事なのだから、仕上がりが悪かったらやり直しもしてもらいます。また、わが子の取りかかりが遅くて、義母が先に掃除をしてしまった時などは、翌月のお小遣いを渡す時にその分は減額する、というルールでした。彼女も納得していたので、夕方になると忘れないように取りかかる姿がありました。保護者としてはお小遣いも渡すのだからやって当たり前と思いがちですが、大事なことは「ありがとう。あなたが掃除してくれるので助かるよ。」という感謝の一言。大人になっても同じですよね。② 成績に対するごほうびこれもよく聞く話。私は反対派。理由もあります。子どもをしつける時に「ほうびと罰」でしつけないことは大事です。なぜなら、ほうびも罰も子どもを外からコントロールすることだからです。大人であれば、ほうびや罰が与えられなくても自分で考えて正しい選択・行動ができなければなりません。そのためには自分自身の価値基準や判断力を持っていることが大事になりますが、ほうびや罰を使って子育てをしていては、その力が育ちません。また、こんな話を聞いたことがあります。大人は仕事をしてお金をもらいます。子どもは勉強するのが仕事だから成績が良かったらお金を渡しているのですと。けれど大人がする仕事は他者のためのもの。子どもの勉強は自分のためにすること。自分のためにすることでお金をもらうのは違っていると私は思うのです。6.まとめ金融リテラシーを身につけるためのお小遣い制度について考えてきました。今回、私が書いたことはあくまでも一つの考え方であり、これが正解というわけではありません。これをきっかけに家族でお金の話をする習慣がつけば何よりです。◾️あわせて読みたい記事・子どものお小遣いの平均はいくら?福岡県の世帯別の金額と渡し方も解説・小学生こそ金融教育を!その必要性や今すぐできるおすすめの勉強方法をまるっと解説※LIFUQU noteのサイトポリシー/プライバシーポリシーはこちら。
高校から大学へ進学するには、それまでとは桁違いのお金がかかります。県外の大学へ行く場合は一人暮らしをすることにもなり、さらに費用は膨らみます。かわいい子どものためとはいえ、大金を出すからには、親の希望に沿った進路選択をしてほしいと思う気持ちになりがちです。ただ、ここは注意が必要です。子どもの気持ちを置き去りにしたまま、「お金を出すのは親なのだから」と押し切ってしまうと、将来、取り返しのつかない事態にもなりかねません。まずは、進学にどれくらいお金がかかるのか、そしてその時の親子のコミュニケーションの仕方について考えてみましょう。高校卒業までにかかるお金高校を卒業し、大学等に進学する時に「お金がかかる」ことは漠然とはわかっていても、どのタイミングでどれくらいかかるのかを正しく把握していない方もいらっしゃるでしょう。まず、全国大学生活協同組合連合会による「2023年度保護者に聞く新入生調査」より、受験から入学までにかかる費用を確認しましょう。《表1》(単位:円)参考:「2023年度保護者に聞く新入生調査」概要報告|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) (univcoop.or.jp)<図表2・3>をもとに作成こうしてみてみると、卒業までに100万円以上の金額がかかっていることがわかります。下宿して通学する場合だと200万円を超えてしまいます。また注意しなければならない費目に「入学した大学への学校納付金」があります。最近の入試はかならずしも2~3月ではなく、推薦入試や総合型選抜(AO入試)などは高校3年の秋ごろに実施されるところもあり、その場合は合格発表にともない、学校納付金の時期も早まります。はじめての子どもの場合、「入学するまでに納めればいい」と勘違いをされている保護者もいらっしゃるようで、慌ててお金の準備をすることになり、最悪の場合は納入期限に間に合わず、せっかく合格しているのに入学できないということも実際におきているようです。そうならない為にも、高校3年生になったら、早めの準備が必要です。では、つぎに進学後の費用についてみてみましょう。大学入学後にかかるお金入学年度に必要な授業料等《表2》(単位:円)※1 国立大学は文部科学省令第16号「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」の標準額を記載。※2 公立大学は文部科学省の「2023年度学生納付金調査結果」の大学昼間部99大学の平均値を記載。なお、公立大学の入学金は県内進学者と県外進学者で異なる場合があるため、「地域内」:県内進学者、「地域外」:県外進学者として分割※3 私立大学は文部科学省の「令和5年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに記載※ 専門学校(専修学校専門課程)は東京都専門学校各種学校協会の「令和5年度専修学校各種学校調査統計資料<概要版>調査研究事業部「在籍調査等」から調査2 令和5年度 学生・生徒納付金調査」(千円以下四捨五入)をもとに作成。※ 他にも実習費等の費用が必要となるケースもあります。※ 表1のところで話した「入学した大学への学校納付金」には、表2に示されている入学料と、授業料のおよそ半分にあたる前期分が含まれます。学生生活を送るために必要な費用《表3》(単位:円)※ 各費用は、日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査結果」(大学昼間部)Ⅳ.集計表1-1表をもとに作成参考:令和4年度学生生活調査結果 (jasso.go.jp)表1から表3までをまとめると、4年生大学へ進学した場合の費用は次のようになります。◎ 自宅から国立大学へ進学(最安コース) 約578万円◎ 自宅から私立大学文系へ進学約704万円◎ 自宅から私立大学理系へ進学約821万円◎ 下宿して国立大学へ進学約898万円◎ 下宿して私立大学文系へ進学約1,023万円◎ 下宿して私立大学理系へ進学約1,140万円データからはじき出した数字ですが、最安コースの自宅から国立大学へ進学した場合でも578万円もかかり、下宿して私立の理系へ進学すると1,100万円を超えるということです。しかもこれは一人分。子どもが複数人いる場合は、人数分が必要になるというわけです。子どもの進路選択と親子のコミュニケーション見てきたように、大学などへ進学するときには大きなお金がかかります。それは使わなければ保護者の老後の資金にもできるお金です。だからこそお金を出す私たちが納得する進路選択をしてほしいと思うのは当然のことです。ですが、ここはひとつ立ち止まって考えていただきたいことがあります。どんなに子どものためと思って保護者の考える進学先を薦めても、選択した進路を進むのは本人です。本人が納得していない進路選択は、後々トラブルを生むことにもなります。ある高校の先生から聞いた話です。とても成績優秀な生徒がいて、希望すれば医学部進学も夢ではないという成績だったそうです。その子の保護者は医者になることを希望しており、医学部以外の受験は認めない、という勢いだったそう。ただ、その子は血を見るのが嫌で、本人も「医学部には進学したくない」と言っているし、先生も「私も医学部は違うと思うのですよね」とおっしゃっていました。仮にこの子が親の意見に逆らえず、医学部に進学し医者になれたとして、本人は幸せな人生を歩めるのかどうか疑問です。最悪の場合、心を病む、ということも可能性としてはあると思います。その時、親はどうやって責任をとるのでしょうか。それは誰の課題?「それは誰の課題なのか?」という考え方があります。そのことの結果が誰にかえってくるのか、誰がそのことの責任をとらないといけないのかを考え、それは自分の課題なのか、相手の課題なのかを考えて行動を起こします。自分の課題ならば自分が積極的に考え、選択決断をする。相手の課題であれば、話を聴く(相談にはのる)ことはするけれど、「こうしなさい」とは決して言わないことが大事です。進路選択の場面においてはお金の問題は保護者の課題、進路選択は子どもの課題です。保護者はご自身のこれから先のライフプランと資金計画をしっかりしたうえで、その子に対していくらまでなら出せるのか予算を考えて子どもに伝える。けれど「お金を出すのは私たちなんだから、私たちが良いという進路しか認めません」というのは間違っているということです。子どもも納得しているのであれば問題ありませんが、子どもは違うところを希望しているのに、保護者がそれを頭ごなしに否定しては、それがいくら子どもを思ってのことだとしてもNGな行動です。進学した後で「親のいうことを聞いてこの大学を選んだけれど、やっぱりやめておけばよかった。あ~もう、勉強する気にもなれない」と言われた時、親はお手上げになります。また、その時に不満がでなくても、大人になり仕事を始めてからいろいろと思い悩む人の話を聞いたこともあります。「本当は、違う道に進みたかった…」と。子どもの課題に対する保護者の向き合い方とは?それでは、どうしても子どもと進路選択で意見が違う場合、保護者はどうすればよいかというと、子どもとしっかりコミュニケーションをとることです。まずは、子どもの気持ちをしっかりと聴く。それから親としての気持ちを伝える。そのうえで再度、話し合う。その過程で、なぜ子どもにその進路を選んでほしいと思っているのかを突き詰めていくと、親の見栄やエゴなど子どものためではなく、自分が安心・満足したいためだったことに気づくかもしれません。逆に丁寧に話し合うことで、子どもが気づかなかったリスクなどに気づくことができて、本人の意志で保護者が納得する進路選択に近づくこともあるかもしれません。子どもにかける教育費は何と交換するのかお金には「価値との交換手段」という役割があります。けれど、子どもにかける教育費は親が支払いはするものの自分の価値観に沿ったものとの交換にならないことがあるのは、これまで述べてきたとおりです。では、何と交換するのか、とある時じっくりと考えてみました。そこで思い当たったことは、「子どもの自立」との交換ではないかということです。その子によって、かかるお金は大きく違いますが、その子が心身ともに成長し、いろいろな経験を通して、将来自立して生きていくときに必要なあれこれを身につけ、自信をもって自立していくために必要なことにお金をかけるのだと思いました。そこには無駄になったお金もあるかもしれませんが、それもこれも、わが子が自立に向かうためには必要だったのだと納得するしかないのだと思います。失敗する経験も含め、子どもが納得して進路選択をし、その後の様々な選択も自分の課題として考え、決断していくならば、その子は自分の人生の主人公として生き生きと生きていくのだと私は思います。>>教育費の貯め方や教育ローンなど、教育資金のご相談はプロにお任せください。ご相談はこちらから。■あわせて読みたい記事・教育資金の貯め方にはコツがいる!必要な金額の目安や貯金におすすめな制度を紹介・NISAは学資保険の代わりにできる?それぞれの仕組みや違い、注意点を比較
はじめまして、福岡県在住のファイナンシャルプランナー(以下FP)、鶴田明子と申します。「お金の話もできる子育ての専門家」として活動しています。これから定期的に、家族や子育てとお金にまつわるお話をしていきたいと思います。よろしくお願いします。私がFPとして仕事を始めて20年以上が経ちました。その上で「日本人はお金の話が苦手なのだろうな」と感じることが多々あります。FPにお金のことを相談にこられる方もまだまだ少ないと感じています。でも、誰しもお金の悩みってあるのではないでしょうか。お金のことで悩んだとき、真っ先に相談するのは家族だと思うのですが、結構高いハードルがあるようです。あなたにも心当たりがありませんか?お金の話はケンカの種になる?あなたは日常的に家族とお金の話をしていますか?また、そのとき穏やかに話し合えているのでしょうか?お客様からよく聞くのは「家の中でお金の話をするとすぐにケンカになってしまうんですよね。だからここにきてFPの先生と一緒に話をすると落ち着いて話ができるんです」という言葉です。家族でお金の話をするとなぜケンカになってしまうのでしょうか。そもそもお金を使うのはどんな場面かというと、自分にとって価値があると感じたもの(こと)があるときです。それを手に入れるためにお金を使います。つまりお金のことで言い争いになるのは、お互いの価値観がぶつかり合うからです。さらに家族なので相手に対する甘えもあり、自分の価値観をわかって欲しい気持ちも強くなりがちです。あるいは、自分は間違っていないという気持ちや、なぜわかってくれないのかという悲しい気持ちから、お互いに強く主張してしまい、ケンカになってしまうのでしょう。お金に対するネガティブな意識また、お金の話をすることが「卑しいこと」「はしたないこと」などというネガティブな意識もあると感じます。子どものころ、お金のことを口にすると「子どもがお金のことなんか考えなくていい」などと言って叱られた経験がある人もいると思います。FPとして日常的にお金の話をしている私としては、少し残念な気持ちがします。そもそもお金は卑しいものでも、話すことがはしたないことでもありません。(もちろんTPOをわきまえず、他人の懐具合をずけずけと聞いてくるようなことは論外ですけれどね)お金は「人生を幸せに生きるための道具」お金はあくまでも「道具」です。それ自体が良いものでも悪いものでもありません。けれど時としてお金は、人生を幸せにも不幸にもする大きなエネルギーにもなります。それを扱う人の心の持ち方、お金の使い方が良い方向を向いているのか、悪い方向を向いているのかがとても重要になってきます。FPの願いとしては、お金を使って幸せになって欲しいと思っているのですが、お金を使った後で不安にかられ、幸せから遠ざかっている人も多いように感じます。人生の目的は「幸せに生きること」で、お金はそれを叶えるための手段です。大切なのはどんな人生を生きれば自分が幸せになるのかを考えることです。そしてお客様の希望を良く聞き、その人が幸せな人生になるように寄り添っていくのがFPの仕事です。家族で楽しくお金の話だからこそ家族で話し合う必要があるのです。つまりどういう暮らしをすれば家族が幸せになれるのかを考えることです。話し合いの一番の目的は、家族が幸せになること。そのためにお金をどう稼ぎ、どう殖やし、どう貯め、どう借りて、どう使うのかを話し合うのです。けれども「お金の話」を始めたとたんに機嫌が悪くなる人がいると、前向きな話し合いにはなりません。妻から「今月、少しお金が足りないみたい…」と言われただけで怒りだす夫。妻は事実を伝えただけ。けれど夫はなぜ怒りだしたのか。妻の言葉を「ぼくの稼ぎが少ないと言っている」「もっと働いてこいと言っている」「もっと高給取りと結婚すればよかったと思っている」などと勝手な解釈をし、勝手に責められたと思いこみ、不機嫌になってしまうということもあるかもしれません。最初の投げかけに夫が「なんで足りないの?」と聞きかえし、妻が怒り出すケースもあるでしょう。夫の言葉を「私のやりくりが下手だと言っている」「こんなに頑張って節約している私のことをちっともわかってくれてない」「物価が上がって足りなくなっただけなのに私が悪いみたいに責めている」とこれまた勝手な解釈でキレてしまうこともあるかもしれません。こうなってくるとお互いにヒートアップしてしまい、言わなくてもいいことまで言ってしまいそうですよね。お金の話をする時は、冷静に相手の話をよく聞きましょう。状況を確認し、それに対する相手の考えを聞き、その上でどうすればいいかを冷静に考え、具体的な解決策をいくつも考えて、より良い選択をしましょう。感情的になってしまうとそこからなかなか冷静な話し合いにはなりにくいですよね。日ごろの心がけが大切です。価値観を理解しあうお金を使う時にはその人の価値観が大きく影響します。お金の話をするということは、家族の価値観を理解しあうことでもあるのです。同じものを買うにしても、必要な時に必要な量を買うのがいいと思う人もいれば、大量に購入することで割安になることがいいと考える人もいるかもしれません。どちらの価値観が正しいというわけではありません。でもその買い方の話をきっかけに家族の会話を深めていってほしいのです。それはお互いをより深く理解しあうことにもつながります。生活のすべてにお金はからんでくるので、意見が違ったときには、まず自分の意見を通そうとするのではなく、相手の意見を理解しようと思って聞きましょう。人生の終わりに向けての話し合い「介護と相続とお金の話」そして長い人生の終わりには、介護や相続の問題が出てきます。まさに「家族でお金の話」をしなければならない場面です。日常的にお金の話をおだやかにしている家族は、きっと介護や相続の問題も冷静な話し合いになるでしょう。けれどお金の話を避けてきた家族はどうでしょうか。家族の一大事に、さらにお金の話までするのは至難の業です。それまでに家族に対して不満を抱いていた場合などはさらに話し合いはこじれ、専門家の力を借りないと解決できないことにもなりかねません。相続に関してはもめていなくても専門家の力を借りた方がいい場合も多くあると思いますが、「相続」が争いが続く「争続」とならないようにしたいものです。まとめ一生を通して必要なお金とのつきあい。大切な家族と幸せに生きていくためのお金の話を楽しく穏やかにしていただきたいと思います。>>相続、資産運用、保険、ローンなど、お金に関することのご相談はプロにお任せください。ご相談はこちらから。西日本シティ銀行ご来店予約サービス■あわせて読みたい記事・小学生こそ金融教育を!その必要性や今すぐできるおすすめの勉強方法をまるっと解説・「ワンオペ育児」はどこから?子育ての負担を軽減させるポイントを紹介