教育資金の中でも多額になりがちな大学資金。大学資金準備は、子どもの夢を聞き親としてできることを伝え、お互いに理解と協力をすることが大切です。そこで今回は、奨学金や教育ローンなど、親子がそれぞれでできる資金準備についてわかりやすくお伝えします。子どもができること(奨学金)進学率同様、奨学金の利用率も上昇傾向にあります。大学等の高等教育機関で50%以上、約2人に1人が何らかの奨学金を利用(※1)しており、日本学生支援機構の貸与型だけでも年間約96万人へ8,329億円という事業規模(※2)です。福岡県内の大学だけでも、年間で給付型は約2万人へ99億円、貸与型は第一種が約3万人へ175億円、第二種が約3.6万人へ314億円の実績(※3)があり、併用を含むとはいえ、とても身近な制度と考えられます。そもそも奨学金とはどのようなものか?日本学生支援機構の例を中心にお伝えします。出典 ※1:日本学生支援機構 「令和4年度学生生活調査結果(奨学金の受給状況)」 ※2:日本学生支援機構 「令和7年1月奨学金事業に関するデータ集(令和5年度)」 ※3:日本学生支援機構 「奨学金に関する情報提供(令和5年度給付・貸与実績)」 奨学金とはどんな制度? 奨学金とは、学ぶ意欲がある若者が経済的理由で進学を諦めないための制度であるため、子ども(学生本人)が申し込みや返済を行います。実施団体は多種多様奨学金事業は、日本学生支援機構以外にも、学校、自治体、公益団体、企業などが行っており、要件が合えばよりよい奨学金が見つかるかもしれません。例えば、福岡県には、公益財団法人福岡よかトピア国際交流財団による福岡市内対象大学在学などの要件を満たす学生への留学資金奨学金制度、株式会社三好不動産による福岡県内の大学等進学などの要件を満たす学生への返済不要奨学金制度などがあります。大学や地方公共団体の奨学金は、以下の検索ページを参考にするといいでしょう。【参考】日本学生支援機構 「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」奨学金の種類と要件の違い奨学金は、返済不要の給付型と返済が必要な貸与型に大別され、貸与型は無利子(第一種)と有利子(第二種)があります。なお、入学時特別増額貸与奨学金という入学時のみの制度もありますが今回は省略します。【国内進学奨学金の種類】日本学生支援機構 「奨学金制度の種類と概要 給付奨学金(返済不要)」日本学生支援機構 「奨学金制度の種類と概要 貸与奨学金(返済必要)」等を基に筆者作成奨学金の利用で押さえておきたいポイントここから、奨学金利用について、日本学生支援機構の貸与型を中心にお伝えします。申し込み方法とスケジュールは事前に確認を 奨学金の初回振り込みは、予約採用で早くて5月、在学採用で早くて7月です。進学後に安心して学生生活を送るためにも、早め早めの行動を意識しましょう。■申し込み方法進学前に高校を通じて行う予約採用と進学後に進学先で行う在学採用があります。予約採用は、進学先が決まっていなくても申し込めますし、後で辞退もできるので、予約採用を活用するとよいでしょう。予約採用は、高校3年生の春に説明会や受付が始まります。高校により、回数やスケジュール、募集内容が異なるので、必ず確認してください。申し込みには、マイナンバー、提出用書類やスカラネットIDなどが必要です。高校から書類をもらい、スカラネットで申し込み、書類提出という流れですので、説明会で確認しましょう。【スカラネット・パーソナル(スカラネットPS)について】スカラネット・パーソナル(スカラネットPS)とは日本学生支援機構の奨学金インターネットシステムのことで、申し込みや採用結果の確認、進学届の提出など各種手続き、情報閲覧、貸与返還シミュレーションや進学資金シミュレーターなどが利用できるサービスです。日本学生支援機構 「スカラネット・パーソナル」等を基に筆者作成■スケジュール春と秋の2回実施の場合、秋は第二種のみの場合がほとんどです。給付型や第一種は春に申し込み、不採用であれば秋に第二種を申し込みましょう。【予約採用の一般的な申し込みスケジュール】4月~6月 奨学金説明会 第1回予約採用申し込み(給付型・第一種・第二種)10月頃 第1回結果通知10月~11月 第2回予約採用申し込み(第二種のみ)2月頃 第2回結果通知日本学生支援機構 「申込手続きについて(予約採用)」等を基に筆者作成申し込みの機会は、進学前の春と秋の予約採用、進学後の在学採用の計3回ありますが、給付型や第一種は採用枠に限りがあるため春の予約採用の申し込みをお勧めします。なお、在学採用は、被災や家計急変などの事由がある場合で、要件を満たせば年間を通じて申し込むことが可能です。この場合は、進学先の窓口で申し込みます。利用の際の注意点もお忘れなくここでは、奨学金の申し込みから利用に際しての注意点をご紹介します。■奨学金の適正額貸与型は返済が必要で、第二種は利息も付きます。例えば、大学4年間の貸与総額240万円を15年で返済する場合の返済総額は、約273万円(令和6年度3月中の貸与終了者で利率固定方式を選択した場合の基本月額の貸与利率1.641%で計算)になります。適正額のイメージは、金融機関などへ相談し、親の支援などを含めシミュレーションするのもいいでしょう。■保証方法の決定日本学生支援機構の貸与型では、申し込み時に「機関保証」「人的保証」のどちらかを選択し、延滞した場合の対応を決めます。人的保証の連帯保証人や保証人には要件があり押印などが必要なため、事前に確認や承諾を済ませておきましょう。【機関保証と人的保証の主な違い】日本学生支援機構 「第一種奨学金の機関保証制度」 日本学生支援機構 「第一種奨学金の人的保証制度」等を基に筆者作成■進学後の重要な手続き・進学届まず、「進学届」の提出です。せっかく予約採用されても、提出を忘れると辞退となり、遅れると振り込みが遅れます。手続きの流れは、進学先へ「採用候補者決定通知」を提出、下書き用紙やIDなどをもらい、それをもとにスカラネットで進学届を提出、とシンプルですが、期限などは進学先により異なるので、入学後の説明会へ参加して確認しましょう。・奨学金継続願奨学金の利用は年度ごとに手続きが必要です。次年度についてはスカラネットで「奨学金継続願」を提出します。こちらも進学先により期限が異なります(年末年始前後が一般的)。■アルバイト収入アルバイトをし過ぎて奨学金の採用基準に影響が出ないようにしましょう。■奨学金の併用日本学生支援機構以外の奨学金は併用を認めていないものもあるので確認しましょう。もし不採用になった場合はどうする?予約採用で申し込んでも、家計基準や成績基準、書類不備などで不採用になる場合もあります。在学採用で再度申し込みができますが、採用枠や基準は厳しい傾向にあります。その場合、日本学生支援機構以外の奨学金を検討しましょう。前述の「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」での検索や、進学後であれば学生経済支援課への相談も有効です。奨学金の返済で気をつけたいこと貸与型は卒業後に返済が始まります。ここでは気をつけたい点をお伝えします。返済方法やスケジュール返済は、貸与終了月翌月の7カ月後から始まり、毎月27日が口座振替日です。返済方法は、申し込み時に指定しますが、進学届提出時に変更もできます。第二種の場合、毎月一定額返済の「月賦返還」または月賦返還と併せて1月と7月に多く返済する「併用返還」があります(第一種は前年課税所得で返済額が決まる「所得連動返還」または「月賦返還」)。利率は「固定方式」と「見直し方式(上限3.0%)」があります。併用返還は1月と7月に多く返済でき毎月の返済額を抑えられますが、1月と7月の負担が大きくなるなど、それぞれメリットデメリットがあるので事前にシミュレーションしましょう。【参考】日本学生支援機構 「奨学金貸与・返還シミュレーション」返済は確実に、難しい場合は必ず相談を!返済中、スカラネットを通じて「繰上返還」ができるので積極的に活用しましょう。第二種の場合はその分期間短縮ができるため利息返済額の軽減効果があります。もし、返済が難しい場合、絶対に避けたいのが「何もしない」ことです。滞納をすると、個人信用情報機関に延滞情報が登録され、卒業後、車や住宅の購入でローンを利用する際の審査に影響する場合もあります。また、人的保証では連帯保証人や保証人に迷惑がかかり、機関保証では日本学生支援機構への返済がなくなるだけで保証機関への返済義務から逃れることはできません。従業員に対し日本学生支援機構の「代理返還制度」を行う企業や独自の返済支援を行う企業・自治体などもあります。福岡県など都道府県を指定した検索も可能ですので、就職先を検討する際に参考にしてもいいでしょう。【参考】日本学生支援機構 「企業等の奨学金返還支援制度」 検索なお、卒業後の話で時期尚早ですが、返済が難しい、難しくなりそうなどの事情がある時は、まず相談をしましょう。要件を満たせばスカラネットでも返済額減額手続きも可能ですが、下記の相談センターでは返済について相談できます。ひとりで悩まずに必ず相談してください。【参考】日本学生支援機構 「奨学金相談センター」親ができること(教育ローンなど)ここまでは子どもができることとして奨学金についてお伝えしましたが、ここからは親ができることは何があるのか一緒に考えていきたいと思います。親ができる資金準備は何がある?親の資金準備で気をつけたいのが、入学金・諸経費・授業料などの初年度納付金です。一般に、納付期限は合格発表後1~2週間と早いため、進学後に振り込まれる奨学金では間に合いません。そのため、親の自己資金などで賄う必要があります。初年度納付金は国公立大学約82万円・私立大学約118万円程度ですが、自宅外通学の場合は引越し費用なども考慮しましょう。出典: 文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」では、親ができる資金準備の主な方法をご紹介します。借り入れをする利用の多い教育ローンについては後述しますが、大切なのは、子どもそれぞれの支援方法や親のライフプランも考慮した全体の資金バランスです。家族でよく話し合いましょう。贈与してもらう祖父母に協力してもらえる場合は贈与も検討しましょう。贈与税負担を軽減できる方法3つを簡単にまとめました。相続時精算課税制度などもありますが、選択の際は専門家へ相談しましょう。【贈与方法の主な違い】国税庁 「贈与税がかからない場合」 文部科学省 「教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置」等を基に筆者作成将来のための資産運用も視野にまた、可能であればNISAなどの中長期の資産形成も考えましょう。子どもの返済支援への活用、進学まで時間があれば資金準備にも活用できます。ただし、運用成績により金額が増減するため時期や金額は未確定な点に注意してください。>>資産形成のためのNISAについてはこちらへ教育ローンは大きく分けて2つある!親の資金準備の中でも利用の多い教育ローンには、国と民間の教育ローンがあり、年収制限や上限額の有無などの違いが異なるため、目的や事情に合わせて選べます。手続きは、申し込み?審査?入金とほぼ同じ流れですが、どちらを選ぶにせよ、初年度納付金納付期限に間に合うように相談だけでもしておくなど、早めに準備を始めましょう。特に、指定校推薦や総合型選抜は一般入試よりも数カ月早いので注意が必要です。国と民間の教育ローン、主な違いを比較主な違いをまとめました。どちらも奨学金との併用や他教育ローンとの併用が可能です。【教育ローンの主な違い】>>西日本シティ銀行の教育ローンについてはこちらをご覧ください。日本政策金融公庫 「教育一般貸付(国の教育ローン)」 西日本シティ銀行 「NCB EZ教育ローン」等を基に筆者作成選択は状況に応じて検討しましょう上記から、国の場合は世帯年収が一定以下の場合に利用しやすく、民間の場合は必要額が多い場合に利用しやすいという違いが見えてきます。このように、家庭の状況や進学先などの目的に応じて検討するとスムーズです。また、民間の方は融資実行までが早い傾向にあるので、その点もポイントになるかもしれません。大学無償化との関係は?扶養する子ども3人以上の世帯が対象の大学無償化は、2025年度から所得制限撤廃などの拡充が行われます。進学先が制度対象校か調べ、減額後の不足分を奨学金や教育ローンで準備するのもいいでしょう。筆者確認時は福岡県内で対象の大学が30校以上ありましたが、最新情報は以下で確認してください。【参考】 文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」 検索まとめ今回は大学資金準備について、親子それぞれでできることをお伝えしました。奨学金や教育ローンは、子どもの将来への先行投資という側面もあります。大学での学びが卒業後の収入に影響する場合もありますし、生活設計の選択肢を増やすかもしれません。また、家族全体のライフプランに影響を与えることもあります。そのため、進学目的や意欲、費用や経済状況など親子間の情報共有が大切です。具体的な進学先を聞いた時は、なぜそこなのか?を尋ねてみましょう。目指す職業により特定の学部を卒業する必要がある、学びたい分野により大学が限定されるなど、譲れない理由がある場合は、まずは思いを優先する準備計画を検討しましょう。まだ具体的ではない場合は、経済状況を共有しつつ、実現可能な範囲を話し合いましょう。私立・自宅通学と国立・自宅外通学(下宿など)の費用がほぼ同じになることもあります。複数の候補から検討しましょう。そして、借り入れをする場合は、受験方法や進学先などからスケジュールや金額の目安を作り、まずは金融機関などで相談やシミュレーションをしましょう。早めに動くことで、家庭全体の資金計画も含めて検討するゆとりが生まれ、親子で安心できます。親子で協力できる部分は協力しながら、頑張っていきましょう。■あわせて読みたい記事・学生のうちから身につけよう!|中村学園大学短期大学で金融リテラシー&資産形成セミナーを開催・申請すればもらえるお金の一覧表!福岡県の補助金や給付金なども確認してみよう
ここ最近、個人の消費意欲も緩やかに回復しつつあるようです。実際に、日本銀行福岡支店「九州・沖縄の金融経済概況(2024年3月)」では、「個人消費は、物価上昇などの影響を受けつつも、堅調に推移している」とされ、「スーパーの売上高は底堅く推移」「旅行・観光は増加している」などの動向が公表されました。出典:日本銀行福岡支店 「九州・沖縄の金融経済概況(2024年3月)」とはいえ、この物価高では収入と比べ支出が増えたと感じる人も多いでしょう。本来、物価とともに賃金も上昇すると考えられていますが、物価高に賃金の上昇が追いついていないのが現状です。そこで、賃金が上昇するまでの救済措置(時限的措置)として、2024年6月から「定額減税」が実施されることになりました。>>家計のやりくりに、減税、節約、そしてフリーローンそこで今回は、定額減税の仕組みや手取り額の変化などについてわかりやすく解説します。定額減税とは1人につき4万円の減税定額減税は、急激な物価上昇に対する家計の負担軽減を目的とした国の総合経済対策のひとつで、対象者1人につき所得税3万円・住民税1万円の計4万円が減税されます。たとえば、納税者本人と扶養親族3人の場合4人分の計16万円が減税されるので、物価上昇の影響を受けやすい扶養親族の多い世帯や低・中所得層は恩恵が大きくなりますね。また、定額減税は時限的措置のため、2024年6月以降、所得税は2024年12月まで、住民税は2025年5月までの期間限定で減税されるなど、独自の仕組みがあります。ここからは、定額減税の仕組みについて詳しくみていきましょう。どのような人が対象になる?まず、対象要件です。要件を満たせば、納税者本人と扶養親族の人数分が減税されます。納税者本人の要件納税者本人は、以下3つの要件をすべて満たす必要があります。① 2024年分の所得税納税者② 日本国内居住者③ 合計所得金額が原則1,805万円(給与収入2,000万円)以下海外居住の人や合計所得金額1,805万円超の人は対象外なことがわかりますね。扶養親族の要件に注意が必要な場合も!扶養親族の要件は、納税者本人と同一生計、合計所得金額48万円以下、日本国内居住者などがありますが、年末調整とは要件が異なるため、以下のような人は注意が必要です。2つ例をあげますので、気になる人は勤務先などへ確認しましょう。「年末調整では以下の理由で対象外の人」→定額減税の要件を満たせば対象に納税者本人や同一生計配偶者の合計所得により、対象とならない場合や減税のタイミングが変わる場合があります。■ 納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除等の対象外■ 16歳未満の年少扶養親族は、扶養親族控除の対象外定額減税では、納税者本人の合計所得金額の要件は1,805万円以下で、さらに、扶養親族16歳未満という要件がないため、例年の年末調整では対象外の人も定額減税の要件を満たせば対象になります。「年末調整では配偶者特別控除の対象の人」 →定額減税の要件を満たさず対象外に配偶者特別控除は、合計所得金額48万円超133万円以下の配偶者が対象です。この配偶者が2024年も例年同様の所得がある場合、定額減税では扶養親族の要件を満たさないため対象外となります。ただし、このうち合計所得金額48万円超95万円以下の配偶者は、配偶者本人が定額減税の対象となります。どのように減税される?次に、減税方法です。所得税と住民税とでは減税方法が異なるので、それぞれ会社員の場合で整理しました。所得税の減税方法(会社員の場合)所得税の減税は、2024年1月1日から12月31日までの所得を対象に、6月から減税が始まり12月までの間で減税額に達するまで控除します。これは、所得税がその1年間の所得に対して課税され、所得が高いと税率も高くなる超過累進課税方式で算出するためです。会社員の場合、源泉徴収で概算額を先に納税し、年末調整で個人の事情を考慮した再計算を行って精算、納めすぎた税金があれば還付されます。住民税の減税方法(会社員の場合)一方、住民税の減税は、原則2023年の所得を対象に、住民税年額から減税分を控除した残りを7月から翌年5月までの11か月(6月は徴収なし)で均等に振り分けて納めます。これは、住民税は前年所得に対して課税されるためで、会社員の場合、前年所得から算出した納税額が6月から翌年5月までの間に源泉徴収されています。会社員以外の場合会社員以外の自営業者などや年金受給者は減税方法が異なるため簡単にまとめました。「会社員以外の場合」控除しきれなかった場合定額減税は時限的措置のため、所得税額や扶養親族の数などによっては期間内に減税分を控除しきれない場合があり、それでは減税の恩恵が不十分になってしまいます。そのため、控除しきれない分は1万円単位(1万円未満は切り上げ)で給付されます。非課税世帯の場合では、非課税世帯の場合はどうなるのでしょうか。この場合、所得税・住民税とも非課税の世帯へは先に決定した3万円に追加して7万円が、所得税のみ非課税の世帯へは10万円が、住所地の自治体(市町村)から給付されます。さらに、上記と併せて、18歳以下の子ども1人につき5万円の給付があります。なお、対象の世帯へは、すでに住所地自治体(市町村)から「支給案内通知書」などが送付されていますので、届いた人は必ず確認しましょう。【参考】 福岡市ホームページ 「令和5年度福岡市物価高騰緊急支援給付金」※福岡市以外の人は住所地自治体(市町村)の情報を確認してください。定額減税で手取り額はどうなる?定額減税の仕組みがわかったところで、次に手取り額の変化をみてみましょう。なお、ここでは、6月以降の賞与の定額減税、7月の住民税端数処理、12月の年末調整などを考慮せず、定額減税に係る税額のみで試算しています。また、それぞれの違いをわかりやすくするために、計算過程で端数処理などをしているので、実際の金額とは異なります。あくまでもイメージとして、おおまかな目安にしてください。扶養親族の有無で比較それでは、会社員の場合で扶養親族の有無や月収の違いから4つのパターンを比較します。扶養親族なしの場合まずは、扶養親族なし、月収30万円と40万円の場合です。この場合、本人分の所得税3万円・住民税1万円が減税されます。所得税は減税額が3万円になるまで毎月控除、住民税は住民税年額(住民税現状×12)から減税額1万円を控除した残りを11か月で振り分け、という流れで計算しています。「扶養親族なし」上記の「扶養親族なし・月収40万円」で9月以降手取り額が減るのは、前述の所得税と住民税の減税方法の違いによる影響です。月ごとに一覧すると、所得税の減税分を控除しきった月または翌月から、所得税の減税期間中に比べると納税額が増え、手取り額が減ります。扶養親族ありの場合次に、扶養親族(配偶者と子ども2人)あり、月収40万円と60万円の場合です。この場合は、本人を含む4人分の所得税12万円・住民税4万円が減税されます。計算の流れは「扶養親族なし」と同じです。「扶養親族あり」上記の「扶養親族あり」はどちらも所得税の減税額12万円すべてを12月までに控除しきれませんので、年末調整で精算し、控除しきれない分が給付されます。ただし、実際は6月以降の賞与も減税対象のため、控除しきれない分は上記より少なくなります。夫婦共働きの場合の考え方ところで、配偶者も一定以上の収入があり扶養から外れている場合はどうでしょうか。この場合、夫婦とも定額減税の本人要件を満たせば、どちらも納税者本人となります。なので、扶養親族がいない場合はそれぞれ「扶養親族なし」と同じ方法、扶養親族がいる場合は扶養者が「扶養親族あり」、そうでない方が「扶養親族なし」と同じ方法で減税されます。比較してみてわかることこのように月収の違いや扶養親族の有無で比較すると、2つの傾向がみえてきました。■ 所得が低い人は、高い人よりも減税回数が多くなる■ 扶養親族の数が多い人は、少ない人よりも減税額が大きくなるつまり、物価上昇の影響を受けやすい扶養親族の多い世帯や低・中所得層は、より大きな恩恵を受けられるようになっていますね。気になるポイントもチェックこれまで定額減税の仕組みや手取り額の変化などについて解説しました。最後に、ほかの控除や確定申告との関係など気になるポイントもチェックしておきましょう。ほかの控除に影響はある?結論からいえば住宅ローン控除やふるさと納税への影響はありませんが、少し説明します。住宅ローン控除住宅ローン控除は原則所得税額から直接控除するため、定額減税で所得税額が減ると、人によっては控除額が少なくなるのでは?という声がありました。こちらについては、定額減税をする前に住宅ローン控除をすることで恩恵が守られ、さらに、定額減税で控除しきれない分は前述のとおり給付されることになりました。ふるさと納税ふるさと納税は、自治体への寄付金額のうち2,000円を超える部分が所得税や住民税から控除される制度です。所得により控除の上限額が決まるため、定額減税の影響で上限額が低くなるのでは?という声がありました。こちらも、定額減税前の所得税額をもとに控除上限額を算出するので、所得金額などに変更がなければ例年どおりの算出方法で大丈夫です。確定申告をした方がいい人も!会社員や年金受給者は原則手続き不要です。すでに減税された給与や年金を受け取りますし、詳細は給与・賞与の明細や源泉徴収票などで確認できます。また、前述のとおり、自営業者などは原則確定申告で減税されます。一方、以下に該当する人などは確定申告をして、定額減税を受けましょう。■ ダブルワークや給与が日払い制のため、勤務先で手続きできない人■ 退職所得がある人で、月収から減税額を控除しきれなかった人■ 海外転勤などで、途中から居住者ではなくなった人まとめ 「有意義に使いましょう!」今回は、定額減税について執筆時(2024 年 3 月)の情報をもとに解説しました。定額減税は、物価高による家計の負担軽減を目的として、1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)が分割して減税される、1年の時限的な救済措置です。減税されるとはいえ、収入や扶養親族により減税額が大きく異なること、原則、自営業者などは2024年分の確定申告時の減税になることや会社員や年金受給者などは減税後の額を受け取ることなどから、なかなか実感が湧かないかもしれません。ですが、手取り額が増えるせっかくの機会です。減税分を意識しながら、レジャーや必要なものへの消費、または、貯蓄や投資にまわすなど、有意義に使いましょう!■あわせて読みたい記事・どうする?退職金!上手に活用して長く付き合うために知っておきたいこと・NISAとiDeCoの賢い活用法|上手に使い分けるためにもライフプランを作成しましょう!
金利上昇への警戒感から住宅ローンの見直しを検討する人が増えています。住宅金融支援機構「住宅ローン借換えの実態調査」によると、前回調査と比較し、借り換え理由が、すべての金利タイプで「金利上昇や返済額の増加の不安」が増加、「金利負担や返済額の軽減」が減少となりました。住宅ローンは長期かつ高額なため返済中も金利などの動向が気になるところですが、実は、住宅ローンの見直しは住宅以外の資金準備について考える良い機会でもあります。そこで今回は、住宅ローン見直しの重要ポイントとNISAとの併用についてお伝えします。※住宅金融支援機構「2022年度住宅ローン借換えの実態調査結果」を基に一部抜粋し、筆者作成住宅ローンの基本をおさらいまずは、住宅ローンの基本についておさらいしましょう。提供元により3種類ある住宅ローンは、提供元の違いから「公的ローン」「民間ローン」「協調ローン」に大別されます。「公的ローン」には、財形制度利用者向けの財形住宅融資や自治体融資などがあります。「民間ローン」は、金融機関がそれぞれ工夫を凝らしていて多種多様です。また、フラットに代表される公民連携の「協調ローン」もあります。なお、新旧ローンの組み合わせによっては見直しができない場合もあるので、あらかじめ確認しましょう。金利の特徴としくみ金利タイプ別の主な特徴を簡単にまとめました。金利の決まり方固定型は長期金利(今後の見通し)、変動型は短期金利(現状)を基準に決まります。今後の見通しは現状よりも先に変化するので、固定型の金利は変動型よりも先に変化することになります。金利の推移では、今はどのような局面なのか、過去15年のフラット35借入金利推移から眺めてみましょう。金融機関ごとに金利などが異なるため、同時期の最低と最高の値を示しました。その時々の「今後の予想」に合わせて上下していることが分かりますね。ちなみに、2003年フラット35創設来では、過去最高が2004年7月4.5%、最低が2016年8月0.9%です。また、変動型の基準金利は、1990年に8%台まで上昇しましたが、2000年以降はおおむね2%台で推移しています。※住宅金融支援機構フラット35「借入金利の推移」を基に筆者作成激変緩和措置固定型と比べ変動型の低金利は魅力ですが、先述のとおり、今後の金利上昇に不安を感じる人も増えています。変動型には、金利上昇の影響を抑えるための激変緩和措置(一部適用外)があります。金利を半年に1度見直しつつも返済額は5年間変更しない「5年ルール」、5年後の返済額は125%を超えない「125%ルール」です。安心できる措置ですが、金利上昇の影響に気付きにくい面もあります。金利が、いつ、どのくらい上がるのかは誰にも分かりませんので、見直しを機に今後の変化に対応できる仕組み作りの検討もおすすめです。借り換えの諸費用諸費用は金融機関や諸条件で異なり、数十万円から100万円程度と幅があるため、借り換えの内容によっては諸費用の負担が大きくなる場合もあります。そのため、比較検討は、金利差だけでなく諸費用も含めた「総返済額」で考えましょう。一般に、効果的な見直しの目安は、残債1,000万円以上、残期間10年以上、金利差1%以上(残債や残期間により金利差1%未満でも効果的な場合も)と言われます。ですが、例えば、金利差が小さい・残債が少ないなどの場合で、さらに諸費用の負担が大きい場合は、借り換え効果がなくなることもあるので注意が必要です。また、繰り上げ返済制限特約を付加することで金利が優遇された住宅ローンを利用中の人は、制限期間中の全額繰り上げ返済に対して違約金が発生する場合もありますので、気になる人はローン契約の内容を確認しておくと安心です。このように、諸費用の額や諸費用の借り換え効果への影響は人それぞれです。詳細な比較検討やシミュレーションは、実際の金額や条件・諸費用をもとに金融機関などで行い、より具体的な比較検討をしましょう。自分に合う見直しに大切なポイント住宅ローンの基本をおさらいしたところで、次は、見直しで大切な2つのポイントです。見直しに求めるものを整理しましょう自分に合う見直しをするためには、まず、見直しに求めるものを整理します。そのうえで、複数の視点から比較検討しましょう。そもそも見直しの目的は?月々の返済額の軽減、総返済額の軽減、金利上昇への備えなど、見直しの目的はさまざまです。見直す際「最も、優先したいこと」は何でしょうか?見直しの目的を明確にしておくと、今後の比較検討がしやすいだけでなく、情報収集や相談の機会を上手に活用できるようになりますので、最初に考えるようにしましょう。金銭面・環境面・心理面など、見直しの効果は人それぞれ一般に、効果的な見直しの目安は、残債1,000万円以上、残期間10年以上、金利差1%以上と言われますが、残債や残期間により金利差1%未満でも効果的な場合もあります。一方、数字だけでは計れない、資金の有無・相談体制などの環境面、金利上昇への不安軽減など心理面の効果は、金銭面の効果と同じくらい重要です。人によっては返済額が軽減できなくても、低金利の魅力より金利上昇へ備える安心を優先することもあるでしょう。金銭面・環境面・心理面の効果は人それぞれですので、整理することをおすすめします。見直し後のことも考慮しよう意外に忘れがちなのが、金融機関の相談環境です。見直し後も不安な時や困った時に相談しやすい体制が整っているか、または、実際に相談に行きやすいかなど、安心して長く付き合えるか確認しましょう。人によっては今後の安心に繋がることも多く、考慮したいポイントです。比較検討の際に見逃しがちなこと比較検討時に見逃しがちな点をまとめましたので、参考にしてください。借り換えと条件変更の違い借り換えと条件変更の違いは金融機関との関係です。効果は残債や残期間によって異なり、条件変更は現在利用中の金融機関への相談が必要です。キャンペーンもチェック金融機関独自のキャンペーンの特別金利もチェックしましょう。最近では、借り換え・リフォームなどの用途、セカンドライフ・子育てなどの世代、耐震性・環境対応の設備など、事情に合わせ選びやすくなっているテーマ別のキャンペーンが人気です。>>ZEH住宅、 LCCM住宅の購入、建築で金利を割引繰り上げ返済のこと 手数料など繰り上げ返済のしやすさと同時に、時期や金額、準備方法も検討しましょう。繰り上げ返済はすべて元本に充当するため利息負担が大きい早めの時期が効果的とされますが、住宅ローン控除期間中は総借入期間が10年未満にならないよう気をつけましょう。また、繰り上げ返済をしすぎて他の資金準備ができなくなるのは本末転倒ですので、住宅以外の資金準備とのバランスをとるためにも、全体を俯瞰することが大切です。併せて、繰り上げ返済資金の準備方法も検討しましょう。後述しますが、繰り上げ返済の予定時期により準備方法が変わります。NISAの併用も視野に入れよう冒頭で、住宅ローンの見直しは住宅以外の資金を考える良い機会とお伝えしました。なかでも、教育や老後の資金は時間をかけて準備することが多く、住宅ローンの返済期間と重なります。また、たとえば、教育資金は学資保険、老後資金は個人年金など、保険を活用して資金準備の基礎にしている人も多いでしょう。この基礎をより充実させる方法のひとつが資産運用です。資産運用といっても多種多様ですが、今回は住宅ローンの見直しとNISAの併用に焦点を当てました。無理なく時間をかけることが前提ですので、長期的な視点で考えましょう。NISAの併用で何ができる?NISAなどの資産運用は使途が限定されないため、ローンや保険などと比べ柔軟な資金準備ができます。反面、あらかじめ金額を確定することができないことに注意が必要です。繰り上げ返済資金の準備資金準備は、すべてNISAでするのではなく、準備方法のひとつとしてNISAを併用することが大切です。たとえば、10年以内など数年先の繰り上げ返済のためには定期預金などの元本保証の金融商品を選択するなど、時期に合わせた準備方法を考えましょう。なお、将来に向けた資金準備のNISAの活用は、繰り上げ返済以外の資金準備でも同様です。数年先に必要な資金は元本保証を重点において準備しましょう。見直し結果とNISA見直した結果、月々の返済額が軽減した場合、軽減分でNISAを併用してもいいですね。例えば、残債2,000万円、残期間20年、金利1.8%の固定型、月々の返済額9万9,293円を見直した場合、金利0.8%の変動型への変更で9万0,205円へ、金利1%の固定型への変更で9万1,978円へと、月々の返済額が1万円弱軽減されます。※ 残債と残期間は同じ、諸費用含まず、変動型は0.8%のままで比較※西日本シティ銀行「ローンシミュレーション」を基に筆者試算そして、月々1万円を年率2%で20年間積み立てた場合、元本と運用収益の合計は約294万円になります。※金融庁「資産運用シミュレーション」に筆者試算こちらはイメージをしやすくするための簡易的な試算ですので、詳細なローンシミュレーションは実際の金額や条件・諸費用をもとに金融機関などで行ってください。(上記はシミュレーションによる概算値です。手数料、税金等は考慮しておらず、実際値とは異なる場合があります。また、将来の運用成果を予測し、保証するものではありません)では、NISAの併用を検討しながらも、見直し後の返済額が同じまたは増額した場合はどうすればよいのでしょうか?この場合、保険料や通信費など固定費の見直しや家計簿アプリの活用などで、家計全体を見つめ直しましょう。一つひとつの削減効果は数千円でも複数を合わせると数万円になることもあります。住宅ローンの見直しを機に、もう一歩先へ進み、全体的な資金準備の仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。デメリットも理解して始めることが大切NISAの併用でできることをお伝えしましたが、デメリットもあります。主なデメリットは、常に評価額は変動する、元本保証ではない、利益がでなければ非課税メリットを享受できないなどです。このデメリットも理解して、納得した上で併用することが無理なく続けるためのポイントです。自分のリスク許容度に合わせて長期的な視点で付き合うようにしましょう。まとめより良い住宅ローンの見直しのためには、まず見直しに求めるものを整理し、その上で、金銭面・環境面・心理面など複数の視点での比較が大切です。また、NISAの併用は、時間をかけることで柔軟な資金準備ができますが、デメリットも理解して無理のない範囲で続ける必要があることをお伝えしました。そして、住宅ローンの見直しは今後の生活への影響が大きいため、住宅以外の資金についても考える良い機会です。金融機関などの専門家への相談も活用しながら、長期的な視点をもって変化に対応できるようにしましょう。>>西日本シティ銀行へお気軽にご相談ください。■あわせて読みたい記事・NISAとiDeCoの賢い活用法|上手に使い分けるためにもライフプランを作成しましょう!・どうする?退職金!上手に活用して長く付き合うために知っておきたいこと*投資信託のご留意事項について商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会
私たちのシニアライフを支えてくれる、退職金。一般的に金額が大きいこと、退職後は現役時と比べ生活環境や家計が大きく変化する場合が多いこともあり、退職金の管理についてはしっかりと考えることが大切です。自分らしく、「上手に」そして「長く」 退職金と付き合うために何から考えていけば良いのでしょうか?この記事では、最近の退職金事情と退職金について考える際に重要な視点2つをお伝えします。>>セカンドライフも西日本シティ銀行がサポートします。各種セミナーもご案内人生100年時代の退職金事情まずは最近の退職金事情について見てみましょう。受け取り額はどのくらい?厚生労働省「令和5年度就労条件総合調査結果の概況」によると、 平均退職金額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者(管理・事務・技術職))は、大学・大学院卒1,896万円、高校卒1,682万円となっています。出典:厚生労働省「令和5年度就労条件総合調査の概況」 何に使う?一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書」によると、退職金の使い道(予定も含む)のTOP5は、預貯金59.3%、生活費充当25.6%、旅行等趣味21.7%、住宅ローン返済20.8%、資産運用のための金融商品の購入20.3%、となっています。出典:一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書(2021年)」皆さんは、退職金の使い道としての「資産運用のための金融商品の購入20.3%」という数字を見て、どのように感じますか?併せて、老後のための資産形成を始めた年齢を見てみましょう。資産形成を始めた年齢「老後のための資産形成を始めた年齢」一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書(2021年)」を基に筆者作成最近では、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)が身近になったこともあり、定年退職を見据えて現役時代から資産形成を始める人が多いようです。だからと言って、60代からでは遅すぎるということはありません。今後の暮らしに合わせた運用を心がけることで、上手に長く付き合えるようにしましょう。受け取り方法退職金の受け取り方法には、「一時金制度」と「年金制度」の2つの制度があり、併用も可能です。一時金制度は、原則、退職時に一括で受け取る方法です。一方、年金制度は、原則、退職後一定期間(または終身)年金形式で受け取る方法です。一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書」によると、退職金を受け取る(予定も含む)人のうち、全額一時金47%、一時金と年金の併用10%、全額年金2.6%、退職金がないまたは分からない40.4%、となっています。出典:一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書(2021年)」受け取り方法と税金では、受け取り方法と税金の関係はどのようになるのでしょうか?上記で最も多い一時金制度を選択した場合、退職所得控除が使えます。これは、勤続年数に合わせて、退職収入から一定額を控除することで、課税所得を小さくしてくれるものです。シニアライフの基盤となる退職金なので控除額が大きくなることが特徴で、結果、所得税や住民税が抑えられ、退職時の手取り額が多くなります。対して、年金制度では、退職金を原資とした運用益が上乗せされるため、退職金総額が一時金よりも多くなります。こちらは、受け取り期間中は毎年雑所得として扱い、公的年金等控除が使えます。ただし、他の所得がある方は税負担や社会保険料負担が発生することもあります。どちらもメリット・デメリットがあるため、一時金制度か、年金制度か、併用か、悩ましいところですが、早めに相談やシミュレーションするなどして、自分に合う受け取り方法を見つけましょう。上手に活用するために!退職金の色分け大事な退職金を無計画に使ってしまい、いつの間にか減っているという事態は避けたいところです。さらに、より上手に活用して安心して暮らせるようにしたいですね。大まかで良いので、退職金の振り分けをイメージしましょう。ノートに付箋やカラーペンを使って書き出すだけでも整理ができます。それぞれの例とポイントをまとめましたので、参考にしてください。つかう(赤)数年以内につかう予定がある、生活費の充当、旅行などレジャー費、リフォームや車の買い替えなどの一時支出、など■生活費の充当:再就職や継続雇用、個人年金など、他の収入がある場合は、不足分を充当額として考えます。■旅行などレジャー費:特に旅行は、いつ、どこに行きたいのか?など少し具体的なイメージを持つことで金額が明確になります。■一時支出:リフォームであれば修繕なのか改装なのか、車の買い替えであれば要不要や車種の選択など、生活環境の変化を前提に考えると、現実的なイメージを持つことができます。備える(黄)いざという時のための、緊急資金、病気や怪我をした時のための保障、判断能力がなくなった場合の準備、など■緊急資金:人によりますが半年から1年の生活費を目安に、必要な時にすぐ現金化できるようにしておきます。■病気や怪我をした時のための保障:内容が現役時代のままの場合は見直してみましょう。一般に、遺された家族のための必要保障額(死亡保険金額など)は年齢とともに減少します。反対に、入院・通院・手術などの医療保障は現役時代よりも必要度が上がりますので、保険期間が定められている定期型よりも保険期間が一生涯続く終身型の方が安心です。■判断能力がなくなった場合の準備:随分先の事のように思われがちですが、将来高齢者施設入居を検討中の人など、判断能力がなくなった場合に生活資金の管理を誰かに託せるよう、あらかじめ準備することもできます。>>認知症や寝たきりなどの備えにNCBシニアサポート信託活かす(緑)将来のために時間をかけて作る、新たな収入を生むための自己投資、10年以上先のための資産運用、など■自己投資:退職前の経験や知識を活かして働く人が増えています。経験や知識を客観的に判断できるのが資格制度です。民間のスクール、公共教育訓練などで、資格取得を目指すのも自己投資の一つです。福岡労働局では「シ二ア・ハローワーク」を県内2カ所に設置しています。また、在職中の50代という要件はありますが「福岡県生涯現役チャレンジセンター」では無料のキャリアプラン相談窓口を設置しています。気になる方は問い合わせてみましょう。■資産運用:資産運用は、短期で利益を求めるのではなく、中長期的な視点で無理なく継続することが大切です。こちらについては、次の「長く付き合うために!金融商品の活用」で詳しく解説します。長く付き合うために!金融商品の活用自分らしいシニアライフを送るために、金融商品の活用は無視できません。前述した退職金の色分けと主な金融商品の特徴との組み合わせを考えましょう。主な金融商品の特徴を知る金融商品には、「流動性(現金化しやすい)」「安全性(元本保証がある)」「収益性(利益を求める)」という3つの特徴があり、全てを満たす金融商品は無いとされています。下記は、退職金の色分けと主な金融商品の特徴との組み合わせの一例です。退職金の色分け優先したい特徴金融商品の例つかう(赤)数年以内につかう資金流動性・安全性普通預金、定期預金、個人向け国債など備える(黄)何かあった時の備え安全性・流動性定期預金、保険、信託サービスなど活かす(緑)将来のための資産運用収益性・流動性投資信託、外貨預金などメリットとデメリット金融商品には、それぞれメリットとデメリットが存在します。例えば、一般に、安全性があるものは収益性が低い、収益性があるものは安全性が低い、などです。なかでも、「安全性が低い(元本保証がない)」というデメリットは、人それぞれ許容度が異なります。これを「リスク許容度」と言います。心理的な面もですが、実際に資金が必要になった時に予定していた運用結果ではないこともありますので、中長期の視点とリスク許容度を忘れずに、金融商品と付き合うようにしましょう。物価上昇を意識福岡県の「消費者物価指数(福岡市、北九州市)」によると、2023年平均の消費者物価指数(2020年を100とする)は、福岡市104.9、北九州市105.8となっています(全国105.6、九州地方105)。更に、前年比にすると、福岡市が3.3%、北九州市が3.2%の上昇となり、同程度の上昇が継続しています。特に、中長期的な資産運用をする場合は、物価上昇を意識した金融商品の選択をしたいものです。出典:福岡県「消費者物価指数(福岡市、北九州市)令和5年平均」 資産寿命を延ばす資産寿命とは、資産の取り崩し可能期間の長さです。退職金と長く付き合えるような仕組みを作り、資産寿命を延ばすことが、シニアライフの経済面での安心につながります。前述した物価上昇傾向や長く続く低金利の状況では、収益性の低い金融商品だけではまかないきれないことが多いので、ある程度収益性のある金融商品も組み合わせることも必要と言えます。そのための方法の一つとして、NISA(少額投資非課税制度)が挙げられます。この制度を活用すれば、元本保証ではありませんが、国が一定基準で選別した投資信託等を活用し、少しずつ収益性を求めることも可能です。さらに、その収益分が非課税となるメリットがあります。まとめそれでは、今回お伝えした内容をまとめてみましょう。シニアライフのイメージを持ちましょう退職金の使い道は、取り崩すだけでなく、お金に働いてもらう「資産運用」もあることが分かりました。さらに、知識や経験を活かして自分も働き「収入」を得るという選択肢もあります。人によっては、公的年金受給とのバランスを考える必要がありますが、これまで積み上げてきたスキルを社会で活かすこともシニアライフの醍醐味です。>>セカンドライフも西日本シティ銀行がサポートします。各種セミナーもご案内資産寿命を延ばしましょう退職金の色分け「つかう」「備える」「活かす」と、金融商品の特徴「流動性」「安全性」「収益性」とをバランスよく組み合わせて、資産寿命に反映させましょう。完璧ではなくても、まずは、「今」の自分が思い描くもので大丈夫ですので、どんな組み合わせが考えられるかをイメージしましょう。1人で考え込むよりは、まずは相談を!「退職金の色分け」や「今後の働き方」などは自分で大まかなイメージを作り、その上で、「金融商品の選択」や「バランスの取り方」については経験豊富で客観的な視点を持っている金融機関や信頼できる専門家へ相談しましょう。とは言え、「頭では理解できるけど、実際にイメージするのは難しい…」という声も意外に多いものです。その場合は、それらも含めて相談することをお勧めします。1人で考えるよりも、可能性や選択肢が広がります。シニアライフを経済面から支えてくれる退職金と、自分らしく、「上手に」そして「長く」付き合いましょう。>>資産運用のご相談はネット予約がおすすめです。■あわせて読みたい記事・新しいNISAの5つのポイントをわかりやすく解説!「何がどう変わったの?」にお答えします*投資信託のご留意事項について商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会