40代は働き盛りではありますが、住宅ローンや教育費などの支出が増える年代と言えます。介護保険料の徴収も始まり、老後資金の準備を意識する人も多いのではないでしょうか。今回は、40代の平均貯金額を世帯別と男女別に紹介し、将来のために必要な貯蓄額や、今からすべき老後の備え方などをお伝えします。
40代の世帯別・男女別の平均貯金額は?
平均額と中央値の考え方
平均額とは
平均額とは、合計金額を人数で割った金額です。そのため、40代の平均貯蓄額のように規模の大きい統計の場合、必ずしも実態の数字とはならないことがあります。以下の既婚者世帯と単身世帯別のデータでは、こういった貯金額のばらつきも含めて紹介します。
中央値とは
中央値とは、昇順または降順に並べた中央の数値のことです。平均値は極端な数値による影響が大きいため、中央値がより実態を表す数値だと言われています。
40代の既婚者世帯の貯金額は?
金融広報中央委員会が2019年(令和元年)に行った「家計の金融行動に関する世論調査」によると、40代の2人以上世帯の貯金額は平均値が880万円、中央値が550万円となっています。
ただし、貯金額の分布には以下のようにばらつきがあります。
貯金額 | 割合 |
100万円未満 | 7.2% |
100万円 ~ 200万円未満 | 8.8% |
200万円 ~ 300万円未満 | 9.0% |
300万円 ~ 400万円未満 | 7.4% |
400万円 ~ 500万円未満 | 5.4% |
500万円 ~ 700万円未満 | 12.0% |
700万円 ~ 1,000万円未満 | 11.4% |
1,000万円 ~ 1,500万円未満 | 11.2% |
1,500万円 ~ 2,000万円未満 | 6.2% |
2,000万円 ~ 3,000万円未満 | 3.8% |
3,000万円以上 | 3.6% |
無回答 | 13.8% |
40代の単身世帯の貯金額は?
40代の単身世帯の貯金額は平均値が972万円、中央値が375万円となっています。
貯金額 | 割合 |
100万円未満 | 22.5% |
100万円 ~ 200万円未満 | 9.9% |
200万円 ~ 300万円未満 | 6.5% |
300万円 ~ 400万円未満 | 8.0% |
400万円 ~ 500万円未満 | 4.6% |
500万円 ~ 700万円未満 | 7.6% |
700万円 ~ 1,000万円未満 | 7.3% |
1,000万円 ~ 1,500万円未満 | 11.5% |
1,500万円 ~ 2,000万円未満 | 4.2% |
2,000万円 ~ 3,000万円未満 | 4.6% |
3,000万円以上 | 7.3% |
無回答 | 6.1% |
2人以上世帯に比べて平均額は高いですが、100万円未満の割合も高くなっています。つまり、貯金ができていない人も多いということがわかります。
40代独身男性と独身女性の貯金額は?
男女別のデータは平均値のみですが、40代の独身男性の平均貯金額は822万円、独身女性の平均貯金額は981万円となっています。
40代から貯めておきたい理想の貯蓄額の目安は?
40代で貯めておくべきお金の分類
一般的に、人生の3大資金は「教育資金、住宅資金、老後資金」とされています。40代では、これらすべてを同時進行で準備したいという人も多いでしょう。しっかりと貯金をしてしていくためには、必要なお金を分類し、目的別に金額を見積もることが大切です。
お金の分類は以下のように考えるといいでしょう。
日常生活費
近いうちに使う予定が決まっているお金
10年以上先に必要になるお金
緊急予備資金
このうち、日常生活費は給料などの収入から賄いますが、その他の資金は計画的に準備すべきと考えられるものです。
近いうちに使う予定が決まっているお金
こちらの項目には、40代でこれからマイホームの購入を考えている場合の頭金や、マイカーの購入費などが当てはまります。
例えばマイホームの場合、全額を現金で購入するのではなく、頭金を準備してローンを組むのが一般的です。頭金として必要になる費用の目安は、購入費用の1割から2割とされています。つまり、購入費用が3,000万円の場合、300万円から600万円ほど用意できればいいでしょう。
このような近いうちに使う予定が決まっているお金の準備には、定期預金や勤務先の財形貯蓄などが適しています。
定期預金の賢い使い方
定期預金は、使い道の決まっているお金を他の資金と分けておくのに便利です。例えば、定期預金の期間を予定している大きな買い物の時期までに設定し、毎月コツコツと預けていけば、うっかり手を付けることなく貯金ができるでしょう。
財形貯蓄は給与天引きの貯蓄制度
財形貯蓄とは、制度を導入している事業所の会社員や公務員が利用できる、給与天引きの貯蓄制度です。「一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄」の3種類があります。いずれの種類でも財形持家融資制度を利用できます。
コツコツと頭金の準備をしつつ、融資も受けられることから、住宅購入との相性がいい制度と言えます。
10年以上先に必要になるお金
10年以上先に必要になるお金には、老後資金や介護のための費用が当てはまります。また、子どもが小さいうちの教育資金の準備もこちらに分類されます。それぞれにいくら必要か、参考になる金額を紹介します。
教育費は私立・公立によって差がある
子ども1人あたりの教育費は、幼稚園から大学までが公立か私立かによって、かかる費用に大きな差があります。
文部科学省の「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によると、私立大学の4年間の学費は約400万円となっています。一方、文部科学省の「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」によると、国立大学の4年間の学費は約242万円となっています。
高校までの教育費のうち、授業料など毎月かかる費用を生活費から賄ったとしても、大学入学前には上記のような大きな金額を準備しておかなければなりません。
老後資金はいくら必要?
2019年(令和元年)に報告された「老後2,000万円問題」は、報告後に撤回されているものの、内容としては夫婦2人の老後の生活費が、年金だけでは毎月5万円の赤字になるというものでした。
例えば、夫65歳、妻60歳が30年後(夫95歳、妻90歳)まで夫婦ともに健在とすると、「5万円×12月×30年=1,800万円」となり、約2,000万円が不足するというわけです。
実際に必要と考えられる金額は、「ねんきん定期便」に記載の年金受給額と現在の生活費をもとに求めることができます。老後の見通しのために確認しておきましょう。
緊急予備資金
急な事故や病気でお金が必要になった場合や、家電が壊れて買い替えなくてはならない場合などに備えて、緊急予備資金を用意しておきましょう。すぐに使えるように、普通預金や解約できる定期預金などで準備するのがおすすめです。
緊急予備資金はいくら必要?
金額の目安は、一般的には生活費の3か月分から6か月分と言われています。余裕があれば1年分ほど備えられると安心でしょう。
例えば、毎月の生活費が20万円とすると、6か月分なら120万円、1年分なら240万円です。それ以上余裕がある場合は、「10年以上先に必要なお金」に回すのがおすすめです。
40代が堅実にお金を貯めるコツ
日常の支出に加え、将来のための準備もしていくのは簡単なことではないでしょう。ここでは、着実にお金を貯めていくためのコツをお伝えします。
貯蓄に回せるお金を把握する
家計簿をつける
計画的な貯蓄のためには、家計簿をつけるのがおすすめです。何にいくら使っているのかを把握し、その上で無理なく貯蓄に回せる金額を考えましょう。
貯蓄に回すお金の目安は無理のない範囲で考える
総務省の2019年(令和元年)の家計調査によると、40代の勤労者世帯の実収入から、社会保険料や税金などを引いた手取り額は、48万2,850円となっています。預貯金の平均は14万4,489円で、手取りの約30%を貯金していることがわかります。
ただ、大学生がいる世帯などは、家計を黒字にするだけで精いっぱいかもしれません。貯蓄に回す金額として、手取りの30%程度を目安にしつつ、無理のない程度の金額を確保しましょう。
貯金の王道は「先取り貯蓄」
毎月のお給料が入ったらすぐに決まった金額を貯金して、残ったお金で生活する方法を「先取り貯蓄」と言います。先取り貯金は、毎月の収入からお金を使っていって、余った分を貯蓄する方法に比べ、お金が貯まりやすいと考えられます。
給与天引きや自動積立などを活用して、お金が貯まる仕組みを作りましょう。
固定費を見直す
節約をすることは大切ですが、あまりに細かい節約方法を実施すると、負担に感じることもあるでしょう。手間がかからず、すぐに効果が出る節約術として挙げられるのが、固定費の見直しです。
固定費の見直しでお金を浮かせることができれば、積立の増額など貯金を増やすことができるでしょう。
ネット回線の見直し
コロナ禍によって、テレワークや子どものリモート授業などインターネットの利用頻度が増えているケースも多いでしょう。固定費の見直しとして、インターネットの通信費をできるだけ安くする工夫を検討してみるのがおすすめです。
具体的には、「現状の契約プランを見直す」または「プロバイダの変更」などを行い、通信環境の最適化と通信費の抑制を図りましょう。
携帯料金の見直し
携帯電話は生活に欠かせないものであるため、携帯電話の料金は通信費の中でも大きなウエイトを占めます。大手キャリアから格安スマホ(SIM)に変更することで、月額利用料を現在より抑えられる可能性があります。
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保険の見直し
生命保険は、子どもの誕生やマイホーム取得など、個人の状況の変化によって見直す必要があります。
例えば、住宅ローンを組んで団体信用生命保険に加入すると、世帯主が死亡しても住宅ローンは残らないため、住居にかかる費用を考えなくてもよくなるでしょう。保障を最適化して無駄な保険料を抑えることは、効果的な節約術と言えます。
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住宅ローンの繰り上げ返済
余裕資金があれば、住宅ローンの繰り上げ返済を行うことで利息を節約できます。
繰り上げ返済には2つの種類があります。毎月の返済額はそのままで、返済の終了時期が早まる「期間短縮型」と、返済期間は変わらずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」です。
返済期間が続く限り利息が発生するので、利息軽減効果が高いのは「期間短縮型」と言えます。一方で、「返済額軽減型」でキャッシュフローを改善するという選択肢も検討する価値はあるでしょう。
住宅ローンの借り換え
新たなローンを借りることによって、既存の住宅ローンを一括返済することを「住宅ローンの借り換え」と言います。
一般的に住宅ローンの借り換えは、残債が1,000万円以上で返済期間が10年以上あり、借り換え後の金利差が1%以上ならばメリットがあるとされています。
借り換えのシミュレーションをしてみて「効果あり」と判断できるのであれば、前向きに検討してみましょう。
毎月課金しているサービスの見直し
毎月課金している音楽や動画の配信サービス、習い事、新聞、スポーツジムなどで、利用しなくなったり、興味がなくなったりしたものはありませんか。一つひとつの金額は小さくても、年間で考えると大きな金額になることもあります。必要ないものを解約すれば、そのお金を貯金に回せるでしょう。
書籍から貯金のコツを学ぶのもおすすめ
お金を貯める方法を勉強するためには、本を読んで学びを得るのも一つです。参考までに、40代からの貯蓄に役立つ書籍を紹介します。
「遊んでいても勝手に貯まる ほったらかし貯金術」横山光昭著 永岡書店
「まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる! お金の貯め方・増やし方」川部紀子著 アスカビジネス
10年以上先に必要なお金の貯金には、資産運用を活用する
40代は短期的な支出に加え、老後資金などの長期的な資金準備を考えておきたいものです。老後資金に関しては、年金が受け取れる65歳まで働くと仮定すると、40歳なら25年の準備期間があります。
「お金を準備する」というと預貯金をイメージする人が多いかもしれませんが、準備期間が長期の場合は、元本保証でない金融商品で増やす運用に取り組むのもおすすめです。
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預貯金だけで十分な備えをするのは難しい
夫婦2人世帯に必要な老後資金を仮に2,000万円としましょう。この2,000万円、25年間かけて預貯金で準備するとしたら、毎月いくらの積立が必要でしょうか。バブル期と現在で比較してみます。
金利 | 毎月必要な積立額 |
【バブル期】6.33% | 2万7,200円 |
【現在】0.002% | 6万6,700円 |
参考:日本銀行「郵便貯金金利[2003年(平成15年)3月まで]」
参考:ゆうちょ銀行「金利一覧」
住宅ローンや教育費を負担しながら、老後のために毎月6万6,700円も貯めていくのは難しいのではないでしょうか。
中長期で取り組むことによって、リスクを減らすことができる
投資は元本保証ではないため、元本割れというリスクを避けて通れません。ゆえに、近い将来の資金準備には向かないと言えます。しかし、中長期の視点でリスクを減らす方法を知れば、資産を育てていくことは可能です。
投資でリスクを減らす方法には以下のようなものがあります。
長期投資で短期の価格変動の影響を減らす
投資対象を分散する
積立でタイミングを気にせずに投資を続ける
個人が投資や運用に取り組む環境が整っている
以前は、投資というと「リスクがあって怖い」というイメージのほかに、まとまった資金が必要であり、一般の個人には手の届かないものだと考えられていました。
しかし、今は毎月1万円程度の積立でも投資できるものがあります。また、それらを支援するNISAやiDeCoなどの税制優遇の制度も活用できます。NISAとiDeCoについて、次項で詳しく説明します。
40代が資産運用で活用したい制度
2001年(平成13年)に、政府から「貯蓄から投資へ」というスローガンが打ち出されました。そこには「公的年金など社会保障に頼らず、自助努力をしましょう」というメッセージが込められています。
国民が自助努力を行うために、国はNISAやiDeCoなどの税制優遇でバックアップしています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCoは、公的年金に上乗せする任意の私的年金制度です。個人である加入者が掛け金を拠出し、制度の中で用意された運用商品を自分で運用します。そして、60歳以降に運用した資金を受け取ります。
iDeCoには以下の3つの税制優遇があります。
掛け金が全額所得控除になる
加入者が拠出したiDeCoの掛け金は全額所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。
例えば毎月1万円ずつの掛け金の場合、年間の掛け金の合計は12万円です。所得税が5%の人なら、住民税10%と合わせると、税額軽減の効果は以下のとおりです。
12万円 × 15% = 1万8,000円
運用益が非課税になる
iDeCoを利用せずに投資信託などで運用した場合、運用益に対して20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoで運用して得られた利益には課税されません。
受け取り時にも所得控除が適用される
60歳以降にiDeCoの年金原資を受け取る方法は、一括で受け取る方法と、分割の年金形式で受け取る方法の2種類があります。
一括受け取りの場合は退職所得控除の対象となり、年金形式の場合は公的年金等控除の対象となります。
NISA(少額投資非課税制度)とつみたてNISAとは
上述のとおり、金融商品の運用益には20.315%の税金がかかります。NISAとつみたてNISAは、非課税口座内で毎年一定の非課税枠の範囲で金融商品を購入したとき、得られる運用益が非課税になる制度です。
注意点として、NISAとつみたてNISAはどちらか1つしか利用できません。投資をする際は、自分に合った方を選びましょう。
NISA
NISAは一般NISAとも呼ばれています。NISAで運用を行えば、年間120万円の非課税枠を最長5年間、最大600万円まで利用できます。1年分の非課税枠が大きいので、ボーナスなどを運用したり、使う予定のない預貯金を振り替えたりするのに向いています。
つみたてNISA
一方、つみたてNISAは、毎月一定額の積立として年間40万円の非課税枠を最長20年、最大800万円分まで利用できます。コツコツと堅実に資産を形成するのに適した制度と言えます。
まとめ
40代の貯蓄額は、既婚者世帯・単身世帯ともに平均値と中央値の差が大きく、しっかりとお金を貯めている人も、反対に蓄えがほとんどない人もいることがわかりました。
40代では住宅ローンや教育費を負担しながら、老後資金の準備も始めたいところです。少しでも多くの資金を用意できるよう、ぜひこの記事でお伝えした内容を実践してみてください。
- 貯蓄
松田 聡子
群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー
国内生保に法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。