30歳を超えると、将来への不安から貯金を始める人も少なくないでしょう。仕事に加え結婚や子育て、老後のことなど、30代はお金の心配がつきものと言えます。そして、同年代の人がどれくらい貯金しているのかについても気になるところでしょう。今回は、30代の平均貯蓄額を見ていくとともに、効率的な貯蓄方法を解説していきます。
【男女別】30代の平均年収は?
30代前半・後半の平均年収(男女計・男性女性別)
30代の貯金額を知る上でまず押さえておきたいのは、30代の平均年収です。民間企業が調査した2019年(令和元年)度の30代全体(男女)の平均年収は、以下のようになっています。
年齢 | 男女計平均 | 男性平均 | 女性平均 |
30歳~34歳 | 428万8,000円 | 464万円 | 370万2,000円 |
35歳~39歳 | 467万7,000円 | 514万2,000円 | 386万4,000円 |
【参考】doda「年代別・年齢別 平均年収情報【最新版[2019年(令和元年)]】」
30代の平均年収の特徴
同じ30代であっても、男性と女性では約120万円の差があることがわかります。
30代男性の平均年収
30代前半と後半では約50万円ほどの差があり、30代半ばで収入が一段階増える傾向があります。30代男性の全体平均は、500万円前後と考えていいでしょう。
30代女性の平均年収
30代女性全体の平均年収は380万円程度となっています。また、30代前半と後半であまり差がないのが特徴です。
30代の世帯別の平均貯蓄額
30代となれば家庭を持ち、家族が増える人も多く、それにともないマイホームの購入などのライフイベントが続きます。将来に向けて、30代の人はいくらくらい貯蓄しているのでしょうか。
30代の平均年収を確認したところで、次に世帯別の平均貯蓄額を見ていきましょう。
【独身・二人以上世帯別】30代の平均貯蓄額は?
金融広報中央委員会の調査によると、2019年(令和元年)の単身・二人以上世帯それぞれの平均貯蓄額は以下のような金額となっています。
世帯区分 | 平均貯蓄額 | 中央値 |
単身世帯 | 359万円 | 77万円 |
二人以上世帯 | 529万円 | 240万円 |
【参考】金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」
【参考】金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」
30代貯蓄額の特徴
この調査によると、二人以上世帯の貯蓄額が高くなっています。これは共働きの世帯が多くあるとともに、子どもの養育のために、独身の人よりも貯蓄の意識が高いためと考えられます。
二人以上世帯の平均貯蓄額が単身世帯の2倍未満であるにもかかわらず、中央値は約3倍になっていることからも、二人以上世帯の貯蓄に対する意識の高さがうかがえます。
(参考)中央値とは
この中央値とは、簡単に言えば「異常に高い数値や低い数値は除外して、もっとも多くの数値が集まっているデータをもとにした平均値」というイメージです。統計データの分析をする際には、平均値よりも中央値の方がより実態に近いリアルな数値とされています。
30代の貯蓄ゼロの割合
上記の統計データをさらに詳しく見ていくと、30代でも約5割の人が「貯金ゼロ」となっています。具体的には、30代独身世帯の36.5%、二人以上世帯の15.8%は貯金がないということがわかります。
30代の理想の貯蓄額・目安はいくら?
多くのライフイベントが想定される30代の貯蓄額は、理想としていくらあればよいのでしょうか。以下のパターンに分けて、30代の貯金の目安・目標額について見ていきましょう。
(1)最低限準備しておきたいお金
まず、どんな人でも最低限準備しておきたいお金についてお伝えします。具体的には以下の2つが挙げられます。
緊急予備資金
老後資金
緊急予備資金とは
真っ先に準備するべきお金が、「緊急予備資金」です。緊急予備資金は、病気やリストラなどで突然収入が途絶えてしまった場合など、生活が立ちいかなくなるような最悪の事態を想定して用意しておくお金のことです。緊急予備資金の確保は生活の安定を生み、精神的な安定にもつながります。
緊急予備資金の目安は「生活費の6か月分」
緊急予備資金として用意しておきたい金額は、毎月の生活費の6か月分が目安と言われています。単身世帯の平均消費支出は約16万3000円であることから、約100万円は用意しておきたいところです。
【参考】総務省「家計調査報告 家計収支編 2019年(令和元年)平均結果の概要」
老後資金とは
老後資金も30代から気にかけておきたいお金です。平均寿命が延び、退職金が出ない会社が増える一方で、将来受け取る年金は減ることが予想されています。
定年が65歳とすると、それから20年かそれ以上の老後が待ち受けていますが、年齢を重ねるごとに病気になるリスクも高まります。なんの準備もしていなければ、長期にわたる老後生活の途中で貯金が底をついてしまった、ということも現実に起こり得ます。
そうならないためにも、老後資金は前もって計画的に準備しておきましょう。
老後資金の目安は「2,000万円」
後に撤回されているものの、金融庁が2019年(令和元年)に「老後資金が2,000万円不足する」と発表したことも話題となりました。人によって必要な資金は異なりますが、長期的には年金以外の老後資金として「2,000万円」を一つの目標に、30代からコツコツとお金を貯めていきましょう。
(2)ライフイベントごとに必要なお金
次に、ライフイベントごとに必要なお金について見ていきます。30代は仕事だけでなくプライベートも忙しくなる時期と言えます。以下で述べる内容をもとに、総合的に必要な資金をイメージしてみましょう。
結婚費用
妊娠・出産費用
教育費
住宅購入費
結婚費用は平均「470万円」
入籍するだけでしたら、「戸籍謄本」を取り寄せて役所に提出するだけなので、お金はほとんどかかりません。それでは、結婚式を行う場合はいくらの費用がかかるのでしょうか。
ゼクシィが行った調査によると、結婚費用として約470万円が必要となっています。この額には、結納や婚約、挙式、新婚旅行の費用も含みます。
具体的には、結婚にあたり主に以下の費用がかかります。
婚約指輪:平均35万7,000円
結婚指輪:平均25万1,000円(二人分)
挙式・披露宴:平均362万3,000円
新婚旅行:平均65万1,000円
また、両親などからの資金援助や、挙式で受け取る祝儀などもありますが、結婚費用のうち約311万円をあらかじめ貯金として貯めている夫婦が多いという結果になっています。
【参考】ゼクシィ「ゼクシィ結婚トレンド調査2020 首都圏」
妊娠・出産費用は平均「100万円」
子どもが生まれる場合、まず妊娠・出産費用として約100万円がかかります。たとえば、妊娠前の検診で約10万円、出産費用で約50万円、そこにマタニティグッズやベビーグッズの購入費が加わります。
ただし「出産育児一時金」として、1児につき健康保険から約42万円が支給されるため、実質的な負担は50万円~60万円と考えていいでしょう。
【参考】国民健康保険中央会「正常分娩分の平均的な出産費用について[2016年(平成28年度)]」
教育費は幼稚園〜大学まですべて公立で「950万円」
子どもの教育費は、幼稚園から高校まですべて公立に通学させた場合は1人につき約520万円、すべて私立の場合はその3倍以上の1,700万円程度の教育費がかかります。
現在は教育費の負担を軽減する施策もあり、今後も検討課題とされていますが、すべての費用が無料となることはないでしょう。そのため、幼稚園から高校卒業までの15年間で多額のお金がかかると見積もっておかなければなりません。
また、大学進学となると上記に加え、国公立大学で約250万円、私立大学で約360万円が学費としてかかります。さらに塾などの教育費用や受験費用を含めると、幼稚園から大学まで国公立に進んだ場合であっても、子ども1人あたり約950万円を用意しておく必要があります。
【参考】文部科学省「2018年(平成30年)度子どもの学習費調査の結果について」
【参考】文部科学省「私立大学等の2018年(平成30年)度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
住宅購入費は頭金が必要
ライフイベントごとに必要なお金の中で、もっとも計画的に慎重に検討しなければならないのが「マイホームの購入」です。住宅購入費はおおよそ3,000万円~4,000万円ほどかかるのが一般的です。
購入費用についてローンを組むことになると考えられますが、頭金として物件価格の約20%を購入時に支払うことになります。たとえば、3,500万円の物件を購入した場合は、700万円程度の頭金が必要となります。
頭金が不要や少額という物件もありますが、その分毎月やボーナス月のローン返済額が増えることになります。住宅購入時は将来のことまで考え、長期に渡っての返済が可能かどうかを慎重に検討しましょう。
【参考】住宅金融支援機構「2019年(令和元年)度 フラット35利用者調査」
30代が効率的に貯金する方法
効率的に貯金をするための心構え
ここまで、30代が準備しておきたいお金について見てきました。結婚やマイホーム購入などは人それぞれだとしても、緊急時に備えて貯めておくべきお金、また老後資金は、どんな人であっても用意しておきたいものです。
しかし、貯金は必要ですが、お金を貯めることを意識しすぎるあまり、日々の生活が苦しいものになってしまうことは避けたいところではないでしょうか。そこで、効率的にお金を貯めることが重要になります。
「小さな節約」ではなく「大きな節約」を心がける
気を付けたいのが、「電気をこまめに消す、安い商品を求めて遠くのスーパーに買い物に行く」といった、「小さな節約」を追い続けてしまうことです。
これらも長期的には効果がありますが、効果が見えにくい分、ストレスが溜まっていってしまう可能性があります。効果の高い「大きな節約」を意識し、無理をせずにしっかりとお金を貯めていきましょう。
保険を見直す
「大きな節約」をするにあたって、真っ先に取り組みたいのが保険の見直しです。社会人になったばかりの頃、知り合いに言われて加入したなど、中身がよくわからないまま加入し続けている保険はありませんか。
保険は、今の状況や今後のライフプランによって見直すべきであり、節約としても高い効果が期待できます。たとえば、保険料を1万円減らすことは、毎月の給料が1万円増えることと同じ効果があり、貯金に回せる額が増えるでしょう。
保険料の解約や減額は簡単な手続きで済むので、不要な保険の見直しを検討してみてください。
「貯金専用の口座」を作る
つい浪費してしまいがちで、なかなか貯金ができないという人は、メインで使っている口座とは別に、「貯金専用の口座」を開設してみましょう。そして、給料が入った日に貯金したい額を貯金専用の口座に移すようにします。
残ったお金だけで生活する習慣をつけると、日常的に節約への意識を強く持てるようにもなり、無理なく貯金を継続できるでしょう。あるいは、金融機関の「自動積立定期預金」や勤務先の「財形貯蓄制度」などがあれば、ぜひ利用するのがおすすめです。
資産運用を検討する
貯金にはインフレリスクがある
貯金はお金を貯める方法としてもっとも基本的な方法ですが、十分な資産を作るという意味では効率的とは言えません。なぜなら、銀行にお金を置いておいても現況ではほとんど利息がつかず、さらにインフレでモノの値段が上がれば、貯金していたお金の価値が相対的に減ってしまうからです。
そこで検討したいのが、資産運用です。資産運用と聞くと「損をしそう」と思う人も少なくありませんが、きちんと仕組みを理解すれば、リスクを最小限に抑えることも可能です。
投資信託でリスク分散
資産運用の中でも「投資信託」は、投資初心者であっても始めやすく、リスクを減らしながら資産運用ができる方法として知られています。
たとえば、毎月3万円を20年間貯金した場合、利息がほとんどつかないとすると約720万円になりますが、投資信託で毎月3万円を20年間、3%のリターンで積み立てた場合、20年後には約985万円となります。その差は約265万円です。
投資状況やリターン、銀行預金の利率などが変化する可能性もありますが、長期的な資産形成として、貯金よりも投資信託の方が効果が高いと言えます。さらに「つみたてNISA」を利用すれば投資運用益が非課税となり、より効率的に資産を作ることができます。
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・ノーロード投資信託とは?意味やメリット・デメリット、選び方まで解説
個人型確定拠出年金制度(iDeCo)の活用
法改正により現役世代のほぼ全員が、個人型確定拠出年金制度(iDeCo)に加入できるようになりました。掛け金の全額が所得から控除できるとともに、将来の「自分年金」を作ることができます。
大きな資産を作るには、税制優遇措置のある個人型確定拠出年金制度(iDeCo)をぜひ活用してみましょう。
30代の平均貯蓄額を目安に、自分のペースで貯めていこう
今回は30代の平均年収から貯蓄額、理想の貯蓄の目安などを見てきました。30歳を過ぎると、将来に不安を抱き始める人も少なくないでしょう。老後の安心やライフイベントに備え、上で述べた30代の平均貯蓄額を目安に、毎月数千円からでも自分のペースで貯金を始めてみましょう。
- 貯金
河野 雅人
公認会計士、税理士、CFP
大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。