株式会社匠でロボットの機械設計を務める本村さん。妻、和美(かずみ)さんとの遠距離恋愛を経て結婚し、2020年12月に長男、侑詩(ゆうし)くんが誕生。これまで仕事を最優先に走って来ましたが、先月2週間取得した育児休暇を機に心境の変化があったそう。育休の前後における子育てに対する意識について伺いました。
■Profile
本村 昌寛(もとむら まさひろ)さん
株式会社匠/機械設計
1991年生まれ。長崎県出身、大野城市在住。九州大学卒業後、某大手機械メーカーに入社し、三重県伊勢市にて3年間機械設計に携わる。2019年、妻・和美(かずみ)さんとの結婚を機に福岡に戻り、株式会社匠に入社。現在11ヶ月の男の子、侑詩(ゆうし)くんの子育て中。
バンド好きで意気投合
――お二人の出会いをお聞かせください。
共通の友人の結婚式の二次会で知り合いました。カラオケで妻が入れたバンドの曲がちょうど僕の18番だったので、2人で一緒に歌うことになったんです。僕は大学のサークルでバンドをやっていたことがあって、妻と音楽の趣味が合うこともあり、それから連絡を取り合うようになったんです。当時、僕は三重、妻は福岡で働いていたので、翌月、妻が大阪に出張するタイミングで初めてデートしました。また、次のデートでは伊勢に来てくれて、そのときスカイラインという山道の頂上の景色が良い場所で僕から告白して付き合い始め、1年ぐらい遠距離恋愛して結婚しました。
――結婚前から、二人で子どもを持つことや育て方などについてお話されましたか?
育て方とか具体的な話まではしませんでしたが、子どもが何人欲しいかという話はしていましたね。僕は、2人か3人欲しいと思っていて、妻も2人は欲しいと。お互いに子どもを持つことに意識はしていたと思います。
――子どもができたことを知ったときの気持ちはいかがでしたか?
嬉しさと同時に不安もありました。子どもを一人前に育てるとなると、きちんと責任を持たなければいけないので、僕にちゃんとできるんだろうかという不安が大きかったです。
――出産前の本村さん自身や奥さんの心の変化、日常生活の変化などはどうでしたか?
妻は保険会社に勤めていて、生まれる1ヶ月前まで働いて産休に入りました。妻のお腹が大きくなるにつれて、命の重さを感じていましたが、辛そうにしているときも、僕はただそばにいることしかできていなかったと思います。妻に薦められた、男の育児の本を読んで心の準備はしていました。
――育児本は役立ちましたか?
はい、みんな子育て1年生だから分からないのは当たり前だということが書かれていて、勇気付けられました。僕にとっては良い心構えになりましたね。
――コロナ禍で出産の立ち合いは難しかったんじゃないでしょうか?
出産前夜につわりが来て、翌日帝王切開が決まったんですが、病院側が気を使ってくれて、僕の同意を得るための説明のときに、分娩室で少しだけ立ち会わせてもらいました。
――側にいてくれて奥さんも心強かったでしょうね。はじめて子どもを抱っこしたときいかがでしたか?
当時のことは覚えていますが、その気持ちはなんとも言葉にできないです。嬉しいとか不安とかももちろんあったんですが、あったかいとか、そういう、感覚から来る感情の方が大きかったような気がします。
子どもと向き合うため育休の取得を決意
――10月に育休を取得されたそうですが、取ろうと思った理由や、取ったタイミングについて教えてください。
それまで仕事が忙しく、月60~80時間くらい残業していて、帰りが深夜になることもあったので、子育てにあまり参加できていませんでした。子どもとの時間をちゃんと作りたいという気持ちはずっとあったんですが、つい仕事を優先してしまっていて。自分の中で、どこかバランスが崩れて来ているのを感じて、仕事に関しても、育児に関してもモヤモヤが溜まって限界が来たんです。そこで、取るなら今だと思って、仕事が一段落した時期に2週間の育休を取ることを決めました。
――育休取得は社内第一号とのことですが、スムーズに取得できましたか?
はい、所定の手続きはありましたが、すぐに取ることができました。取得の条件は女性と同じです。2週間という期間も自分で決めました。
――2週間はどのように過ごしましたか?
以前は、妻が子どもと寝ていたんですが、育休中は毎日僕が子どもと2人きりで寝ました。また、リストを作成して家事と育児を分担することにしたんです。まず、今お互いがやっている家事育児を書き出し、それから、育休中やる家事育児をリストにして、2人のバランスを修正しました。書いてみないとお互いの負担のバランスが分からなかったので、これはやって良かったなあと思っています。あとは、これまで自分の時間が取れず、新しく学ぶことができていなかったので、育児本を読む時間も作りました。
――育休中、仕事のことは忘れられましたか?
ほとんど思い出してないです。仕事は仕事をしているときに考えれば良くて、育児中に考えてもしょうがないので、今は子どもと面と向かって接する時間だと、しっかり切り替えができました。
育休を通して変わった子育てへの意識と夫婦の関係性
――育休を取得してみていかがでしたか?
あっという間だったので、欲を言えば1ヶ月はあったら良かったなあとは思いますが、2週間とは言え取って良かったです。以前は仕事ばかりに集中して、妻との会話もほとんど休日のみで、だんだん心がすれ違っていました。もちろん妻も初めての育児なので、毎日ボロボロになりながらやっていたんですよね。育休によって、妻と話す時間を取れるようになったので、気持ちのすり合わせができて、夫婦間の関係性がよくなったと思います。
――夫婦間のコミュニケーションが大切だと分かったのですね。育休から戻っての生活はどうですか?
意識が変わったので、もとの生活に戻ってからも子育ての優先順位が高くなりました。育休前の仕事と育児の比率が9:1だとしたら、今は、6:4ぐらいに変わったと思います。子どもと1日一緒にいるということを一度経験したことで、子どもへの気持ちや愛情が高まりました。自分はまだまだ子どもと向き合えていなかったんだと反省して、これからもっと参加しようという意識を持つことができました。平日子どもと会えない分、休日はできるだけ子どもと一緒に過ごすことを大事にしています。
――パパになって自身が変わったことはありますか?
子どもが生まれてからというより、育休を通してかもしれませんが、責任感がちょっとずつ増えてきたと思います。もともとマメに家事をするタイプじゃなくて、洗濯物や洗い物を後回しにすることもありましたが、今は手をつけられることから早めに終わらせるようになりました。育休後も、家事育児のリスト化を続けているので、今は、洗濯と皿洗い、掃除、ゴミ出しを担当しています。
可愛いと思う気持ちを素直に表現する
――子育てで大切にしていることはありますか?
子どもが今何をしたいのかをよく見るように心がけています。まだ言葉での意思疎通は取れないですが、子どもの目を見て、何を感じているのか、どこが気になっているのか、何に興味をもっているのか、などを感じ取るようにしています。子どもの目線の方向に行かせてみたり。それから、「可愛い」とか「愛おしい」という気持ちを大事にして、そのまま言葉をかけてあげることも大切にしています。自分の気持ちを確認して表現しないと、つい育児の大変さばかりに目を向けてしまうので。
――大変なところはどんなところですか?
体力を使うことですね。夜2~3時間おきに起きているので、ちゃんと寝ることができません。それから、最近子どもがすごく動くようになってきたので、誤飲しないようにとか、常に目を離せない状態なので気も抜けません。体力が全回復することはないという感覚ですが、これが子育てなんだなと思っています。
――子どもにはどんなふうに育ってほしいですか?
基本、子供って思い通りにならないものだと聞くので、自分の好きなこと・得意なことに対して夢中になってほしいです。好きで夢中になることに勝る才能はないと思っているので、そこを伸ばしてあげられるような教育をしたいですね。人生の選択をする上で、自分の気持ちが1番大事だと思っています。もちろん、ある程度稼げる能力や社会性は身につけないといけませんが、それ以上に、自分の気持ちを基準にして生きていった方が、人生のゴールとして実りあるものになるんじゃないかと思っています。
――最後に、これからパパになる人たちや子育て中のパパにメッセージをお願いします。
僕も11ヶ月の新人パパなので、大層なことは言えませんが、奥さんに嫌われないようにお互い頑張りましょう(笑)!
取材後記
ずっと抱えていた育児に参加できないモヤモヤを、育休を通して解消でき、育休前後で大きく変化があったのが伝わりました。今は、忙しい中でも、お子さんと過ごす時間を楽しまれていて、休日はよく一緒にお出かけされているそうです。まだまだ男性の育休取得は少ないように思いますが、本村さんのエピソードが、取得を迷っているパパたちの背中を押してくれるのではないでしょうか。
長澤由紀
フリーライター・エディター
福岡県久留米市出身。明善高校、福岡女子大学卒業後、株式会社アヴァンティで2年間雑誌・Web媒体の編集に携わる。その後、ライター・エディターとして独立。K-POP鑑賞と韓国旅行が好きな“韓国オタク”。