住まい選びにおいて、「持ち家と賃貸はどっちが得か」はよく話題となるテーマです。持ち家と賃貸では、選べる物件の種類やリスクが異なります。費用面はもちろん、ライフスタイルや価値観も考慮して選ぶことが大切です。今回は、持ち家と賃貸のメリット・デメリットやコストの比較、向いている人の特徴について解説します。
持ち家のメリット・デメリット
持ち家は、住宅が自身の所有となるのが最大の特徴です。物件の種類が豊富で、購入後のリフォームなどが自由に行えます。一方で、物件を所有することで発生するコストやリスクもあります。
まずは、持ち家のメリット・デメリットを確認していきましょう。
持ち家のメリット
設備や内装を自由に決められる
注文住宅なら間取りや設備、内装を自由に選んで好みに合った建物を建てられます。ライフスタイルの変化に応じて、間取り変更などのリフォームも自由に行えます。
賃貸物件に比べて選べる間取りや設備の種類が多く、グレードが高いのも魅力です。
住宅ローン完済後は住居費の負担が軽くなる
住宅ローンを完済すれば毎月の返済がなくなるため、住居費の負担が軽くなります。
高齢化によって老後の期間が長くなり、老後資金の確保が課題になっています。将来退職して年金生活に入ると、住居費は家計に大きな負担となる可能性があるのです。
定年までに住宅ローンがない住まいを確保すれば、安心して老後を迎えられるでしょう。
資産として活用できる
持ち家は自身の所有物件なので、資産として活用可能です。
たとえば、まとまったお金が必要になれば、売却して現金化できます。「自宅を担保に融資を受ける」「賃貸に出して家賃収入を得る」といった選択肢もあります。
持ち家のデメリット
簡単に引っ越しできない
住宅を所有すると転勤や人間関係のトラブル、ライフスタイルの変化などで住み替えたいと思っても、簡単には引っ越しできません。
住み替えをするには、持ち家を売却する必要があるかもしれません。しかし、買い手が見つかるまでに時間がかかることがあり、希望価格で売却できるとも限りません。住宅ローンが残っている場合は、売却代金で残債を完済しなくてはなりません。
「最寄り駅から近い」「自然災害に強い地域」など、資産価値が下がりにくい物件を選ぶと比較的売却しやすいでしょう。
住宅ローンの返済が負担となる可能性がある
住宅ローンを組むときは、借入額を十分に検討しないとローン返済が負担となるかもしれません。返済期間は30年程度の長期にわたるため、返済中に収入が下がる可能性も考えられます。ローン返済が困難となれば、持ち家を手放すことになりかねません。
住宅ローンで持ち家を購入する場合は、無理なく返済できる金額で借りることが大切です。
固定資産税がかかる
固定資産税とは、所有している土地や建物に対して課税される税金です。自治体から年1回届く、納税通知書に基づいて税金を払います。土地や建物を所有している限り、固定資産税は継続的にかかるコストです。
住宅を購入する前に、固定資産税がいくらかかるか不動産会社に確認しておくとよいでしょう。
修繕、メンテナンス費用がかかる
建物や設備は、時間の経過とともに劣化します。安心して住むには、定期的な修繕やメンテナンスが欠かせません。
持ち家の場合、修繕にかかる費用は自身で負担しなくてはなりません。台風などの自然災害で建物に被害が出た場合も、修繕費用は所有者の負担となります。ただし、保険に加入して災害リスクに備えることは可能です。
マンションの場合、大規模修繕への備えとして毎月修繕積立金の支払いが必要です。
賃貸のメリット・デメリット
賃貸は住み替えが簡単にできるので、住む場所を自由に選べるのが魅力です。ただし、家賃を払い続けても、物件が自分のものになることはありません。
続いて、賃貸のメリット・デメリットを確認していきます。
賃貸のメリット
ライフタイルの変化に対応しやすい
転勤や子どもの独立、離婚、定年退職といったライフスタイルの変化に対応しやすいのが特徴です。
簡単に引っ越せるので、急に転勤が決まっても対応できます。子育て中は広い家に住み、子どもが独立して夫婦だけの生活になったら小さな家に移ることも可能です。
人生は何が起こるかわかりません。ライフスタイルに合わせて住まいを変えられるのは、賃貸の強みといえます。
修繕費はオーナーが負担してくれる
賃貸物件の場合、設備の交換や建物のメンテナンス費用は基本的にオーナー負担です。災害などで建物に被害が出ても、オーナー負担で修繕してくれます。賃貸は突発的な支出が発生しにくいので、収支計画を立てやすいでしょう。
賃貸のデメリット
家賃の支払いが一生続く
賃貸物件は、家賃を一生払い続けなくてはなりません。物件によっては、定期的に更新料が発生することもあります。
安定収入がある現役時代は、賃貸住まいでも問題ないかもしれません。しかし、十分な資金を確保できていないと、家賃が老後の家計を圧迫する恐れがあります。
一生賃貸で過ごすなら、家賃を考慮して老後資金を準備することが大切です。
間取りや設備を自由に選べない
賃貸は持ち家に比べると物件の種類が少なく、間取りや設備を自由に選べないのもデメリットです。
貸主であるオーナーが間取りや設備を決めて貸し出すため、入居者側に選択の余地はほとんどありません。また、介護のためにリフォームしたいと思っても、オーナーの許可が得られなければ実行できません。
高齢になると契約が難しいケースもある
賃貸物件は、高齢になると新たな賃貸借契約の締結や契約更新が難しくなることがあります。
退職すると勤労収入がなくなるため、身元保証人を求められるケースが増えます。保証人を頼める人がいないと、契約を断られる可能性もあります。
老後も住み続ける場合にかかるコストを比較してみよう
持ち家と賃貸の選択によって、生涯コストに大きな差が生じる可能性があります。
ここでは、持ち家と賃貸それぞれでかかるお金と、老後も同じ家に住み続けた場合のコスト比較について説明します。
持ち家と賃貸ではどんなお金がかかる?
持ち家の場合
持ち家の場合は、以下のようなコストがかかります。
初期費用(頭金、印紙税、登録免許税、司法書士への報酬、仲介手数料、不動産取得税、住宅ローンの事務手数料など)
住宅ローンの返済(元本、利息)
固定資産税
火災保険料(地震保険含む)
修繕・メンテナンス、リフォーム費用
不動産を購入するときは、登記費用として登録免許税と司法書士への報酬が発生します。物件を紹介してもらった不動産会社への仲介手数料、不動産取得税もかかります。住宅ローンを利用する場合は、契約時に事務手数料などの諸費用が必要です。
購入後は住宅ローンの返済のほかに、固定資産税や火災保険料などが継続的にかかります。必要に応じて建物の修繕やメンテナンス、リフォーム費用も必要です。
賃貸の場合
賃貸の場合は、以下のようなコストがかかります。
初期費用(敷金、礼金、仲介手数料)
家賃、更新料
火災保険料(主に家財)
持ち家に比べると、賃貸でかかるコストはシンプルです。継続的にかかる費用は、基本的に家賃と更新料、火災保険料のみです。
初期費用として、敷金や礼金などが必要です。使用状況によっては、退去時の原状回復で入居者負担が発生する可能性もあります。
持ち家と賃貸のコストを比較
持ち家と賃貸は選べる物件の種類や間取りが異なるため、金銭的にどちらが得かは簡単に比較できません。しかし、簡易的なシミュレーションで、生涯コストをざっくりと比較することは可能です。
ここでは生涯同じ物件に住み続けると仮定して、持ち家と賃貸のコストを比較します。
持ち家のコスト
35歳の人が4,000万円の住宅を購入し、85歳まで50年間住み続ける場合の生涯コストを計算します。住宅ローンは返済期間35年、固定金利1.6%、頭金・ボーナス払いなしとします。この条件で計算すると、持ち家の生涯コストは約7,027万円となります。
持ち家の生涯コスト | |
初期費用 | 200万円(物件価格の5%) |
住宅ローン返済総額 | 5,227万円(毎月の返済額12.5万円) |
固定資産税 | 500万円(年10万円) |
火災保険料 | 100万円(年2万円) |
修繕・リフォーム費用 | 1,000万円(10年ごとに100万円+大規模な修繕500万円) |
コスト合計 | 7,027万円 |
賃貸住宅のコスト
35歳のときに賃貸物件を借りて、85歳まで50年間住み続けるケースについて考えます。賃貸は、家賃によって生涯コストは大きく変わります。持ち家と同じくらいの予算で物件を選ぶと、家賃は月11.2万円となります。
賃貸の生涯コスト | |
家賃 | 6,720万円(月11.2万円) |
更新料 | 280万円(2年に1回、家賃1ヵ月分) |
火災保険 | 50万円(年1万円) |
コスト合計 | 7,050万円 |
持ち家は土地建物が手元に残り、資産として活用できます。生涯コスト(支出額)が同じであれば、持ち家のほうが有利といえるかもしれません。
上記シミュレーションの場合、持ち家の住宅ローン返済額は月12.5万円です。ローン返済期間中は、想定家賃の月11.2万円よりも支払額が高くなる点には注意が必要です。
得なのはどっち?持ち家が向いている人・賃貸が向いている人
ここまで確認してきたように、持ち家と賃貸はメリット・デメリットが異なります。住宅は高額の買い物なので、お金の損得を考えるのは大事です。しかし、金銭的な損得だけでなく、住まいに対する価値観やライフスタイルも考慮する必要があります。
持ち家が向いている人の特徴
まずは、持ち家が向いている人の特徴を確認しましょう。
定年までに住宅ローンを完済できる見込みの人
安定収入がある人
家族が多くて広い家が必要な人
引っ越しの予定がない人
生涯独身の可能性が高い人
住宅ローンの返済が長期化すると、老後の生活費が不足する恐れがあります。遅くとも、定年までには完済できるのが理想といえます。
賃貸は、ファミリー向けの物件が比較的少ない傾向にあります。そのため、広い家が必要な人も持ち家が向いています。
また、ライフスタイルや住む場所が固定されており、引っ越しの予定がない人も持ち家がよいでしょう。
賃貸が向いている人の特徴
賃貸が向いている人の特徴は、以下のとおりです。
ライフスタイルに合わせて住み替えたい人
転勤などで住む場所を固定するのが難しい人
収入が不安定な人
借金をしたくない人
賃貸は簡単に引っ越しができ、住む場所を自由に選べるのが強みです。価値観や転勤などを理由に住み替えの可能性がある場合は、賃貸が向いています。
持ち家は、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。収入が不安定で住宅ローンを組むのが難しい人、借金をしたくない人も賃貸がよいでしょう。
まとめ
持ち家と賃貸は、どちらがよいという正解はありません。ただし、持ち家は賃貸に比べて選べる住宅の種類が豊富です。また、住宅ローン完済後は住居費の負担が軽くなり、資産として活用することも可能です。
持ち家を検討している場合は、西日本シティ銀行の住宅ローンサービスまで気軽に相談してみましょう。
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大西 勝士
AFP、2級FP技能士
フリーランスの金融ライター。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆しています。得意分野は個人の資産形成。お金に関する疑問・不安を解消していただけるように、お金の知識をわかりやすく伝えることを心掛けています。