国家資格や民間資格など、日本には数千から数万の資格があると言われています。
その数ある資格のなかでも日商簿記検定試験(以下:日商簿記)はとくに知名度が高く、受験者からも企業からも人気となっている資格です。
日商簿記は初級からはじまり、3級・2級・1級とステップアップしていく人が多いのではないでしょうか。
今回は日商簿記のなかでも受験者・企業双方から人気が高い2級について解説していこうと思います。
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日商簿記2級とは?
日商簿記を学ぶことで企業の規模や業態を問わず、企業における日々の経営活動を記録・計算・整理して財務状況や企業におけるお金の流れを把握できるようになります。
大半の企業における目的の一つとして利益を上げる事が挙げられるため、お金の流れがない企業はほとんどありません。
したがって、簿記を取って企業におけるお金の流れを把握できるようになれば、どの業界の企業でも通用すると言えるでしょう。
とくに日商簿記2級では中小企業規模で経営活動をするにあたって必要な仕訳処理の大半を学ぶことになります。
試験科目
日商簿記2級の試験科目ですが、大きく分けて
商業簿記
工業簿記
の2つに分かれます。それぞれの科目をもう少し詳しく紹介します。
商業簿記
商業簿記の内容は、商的企業における資産・負債・資本の増減を把握して、それをもとに帳簿記録を行います。
日商簿記2級の下位試験である、日商簿記3級でも中心的に取り扱われていた内容です。
一般的な企業では商品を仕入れ、そのまま販売する流れが主流なので、多くの企業では商業簿記に関する知識が必要です。
日商簿記2級では、割賦販売や未着品取引といった特殊な取引から、税効果会計や連結会計といった複雑な会計処理が学習範囲に加わります。
これら税効果会計や連結関係と言った科目は実務経験がないと理解しづらく、簿記2級が難しいと感じる要因の一つです。
工業簿記
工業簿記では、主にメーカー(製造業)で製品を製造する過程をもとに帳簿記録を行います。
工業簿記は仕入れた物を一旦加工し、部品として保有したり製品として在庫に要れたりする過程が問われることが特徴です。そのため、商業簿記よりも段階が増え複雑になる場合もあります。
図を書いてその都度、原料がどのように変化しているかを把握しなければいけないので、数学的な考え方が必要です。
試験時間
簿記2級の試験時間は13:30~15:30の2時間です。
商業簿記と工業簿記の試験時間は分かれていないため、商業簿記から解いても工業簿記から解いても問題ありません。
過去問演習を何度か行い、自分のなかで解く順番を決めておいてもよいでしょう。
日商簿記2級の難易度
日商簿記2級の難易度について、合格点や合格率の観点から解説します。
合格点
日商簿記2級では第1問から第5問までの5問構成で、第1問〜第3問が商業簿記、第4問〜第5問が工業簿記です。
1問辺り20点で全体として100点満点ですが、そのうち70点以上取得できれば合格となります。
問 | 分野 | 詳細 | 配点 |
第1問 | 商業簿記 | 仕訳問題 | 20点 |
第2問 | 個別論点 | 20点 | |
第3問 | 財務諸表作成 | 20点 | |
第4問 | 工業簿記 | 費目別計算 | 20点 |
第5問 | 原価計算 | 20点 |
多くの資格試験は合格ラインが6割ですが、簿記は7割の点数を取らなければいけません。
それだけ完成度を高くする必要があるので、細かな論点までしっかりと理解することを心がけましょう。
合格率
過去5回における受験者数と合格率は以下のとおりです。(155回は中止のため、除外しています。)
回 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
156 | 39,830人 | 7,255人 | 18.2% |
154 | 46,939人 | 13,409人 | 28.6% |
153 | 48,744人 | 13,195人 | 27.1% |
152 | 41,955人 | 10,666人 | 25.4% |
151 | 49,766人 | 6,297人 | 12.7% |
引用:2級受験者データ
合格率は大体10%~20%で推移しており、そこまで高くありません。
2017年までは合格率が30%台でしたが、試験範囲が改定され日商簿記1級の連結会計や税効果会計が日商簿記2級でも出題されるようになりました。
日商簿記1級の範囲も日商簿記2急に含まれるようになったことで合格率が下がり、最近では試験の難易度が難化していると言われています。
日商簿記2級に必要な平均勉強時間
日商簿記2級の取得に必要な勉強時間は独学なら4~6カ月(250~350時間)、通学・通信講座なら2~4カ月(150~250時間)と言われています。(foresightより)
日商簿記2級に合格するためには独学と通信講座、いずれにしても1日2時間ペースで数か月は勉強する必要があり、簡単に合格できる資格とは言い難いですね。
しっかりとスケジュールを立て、日々継続して勉強を積み重ねる努力が求められます。
日商簿記2級の勉強方法
日商簿記2級の具体的な勉強方法もご紹介します。
あくまで一例ですが、筆者は以下3つのポイントに気を付けて勉強した所、日商簿記2級に一発合格できました。今後日商簿記2級を受験するさいには参考としていただければと思います。
各科目を効率的に勉強する
自分にあったテキストを選ぶ
過去問をとにかく解く
それぞれのポイントについて、さらに解説していきます。
各科目を効率的に勉強する
日商簿記検定2級は大きく分けて商業簿記と工業簿記があります。
商業簿記と工業簿記それぞれの科目に簿記とついているものの、双方で特性がかなり異なるため勉強方法も変わってきます。
商業簿記の勉強方法
商業簿記は勘定科目だったり、特殊取引における一連の流れだったりが頭のなかに入っていなければそもそも問題を解けません。
試験問題を見て焦らないようにするためにもある程度の知識をつけ、暗記しておく必要があります。したがって、できるだけ多くの問題を解き、あらゆるパターンを身につける努力をしましょう。
過去問を解いて仕訳の基礎を身に着けることで、商業簿記の得点アップに繋がります。
第1問の仕訳問題はとくに、基礎的な仕訳ができるか問われます。そして1問4点で5問出題されるので、配点も高いです。ここで満点を取得できれば20点稼げるので、全問正解を目指しましょう。
一方で、問2や問3の問題では難問が出題される傾向にあります。
どんなに勉強をしていても得点できない場合があるので、「点を取れるところで手堅く取ること」をまずは意識しましょう。
工業簿記の勉強方法
工業簿記は暗記だけでなく、図を書いたり分析したりと言った数学的な思考力も必要です。
とくに原価を求める勘定連絡図だったり、差異を求めるシュラッター図だったりは実際に作図しない事には要領も掴めず中々点数が上がりません。
まずは覚える事よりも手を動かして図を書いて、感覚を掴むことを最優先しましょう。
どうしても解けなければ最初に答えを見てしまい、その値をどうすれば導き出せるか試行錯誤する方法がおすすめです。
自分にあったテキストを選ぶ
簿記試験の勉強をするさいは自分にあったテキストを選ぶ必要があります。
とくに簿記試験は範囲改訂も頻繁に行われるため、最新のテキストを用意しておきましょう。
簿記試験対策として、おすすめできる問題集や過去問を3種類紹介するので参考にして下さい。