HSPとは「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略称で、非常に繊細な人を指します。最近では書店に多くの本が並んでいたり、有名人・芸能人がHSPであることを公表したりと、HSPという言葉を見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?
では、HSPにはどのような特徴があり、どう対処すればよいのでしょう。HSPの基礎知識について、簡単にできるセルフチェックとともに紹介いたします。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?どんな意味?特徴は?
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の意味:繊細な性格特性(気質)を持つ人
HSPは性格特性(気質)のひとつであり、大まかにいうと「繊細な人」を指すもので、米国の心理学者であるエイレン・アーロン博士が世界に広めた概念です。他人の言動や感情への共感性が高い、音や光などの環境からの刺激に対して敏感などの特徴が挙げられます。
人口の2割ほどがHSPといわれるほか、人間以外の動物にもHSPの傾向が見られることがあります。HSPだと集団生活がしんどくなったり、生きづらさを感じたりすることもあります。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の特徴:刺激に対する敏感さ・繊細さ
HSPの特徴は、空気を読み過ぎて疲れてしまうことや、刺激に対して敏感となりやすい傾向があります。また、先ほど触れた音や光のほか、臭いや身体感覚、気候など、五感で体感する刺激に敏感だとされています。
映画や漫画などに感情が入ってしまったり、人の考え方に影響されたりするケースもあります。このほか、人込みで気疲れしてしまう、自己否定してしまうなど、繊細であるがゆえにストレスがかかってしまうと考えられます。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という病気はなく、あくまでも「気質」であり、治療法はない
HSPは一見すると病名のようですが、HSPはあくまでも性格特性(気質)であり、精神医学上の概念ではありません。一般的に、「精神疾患」として診断名が付く場合、「DSM-5」という精神疾患の国際的な診断基準に基づいて判断されます。HSPの場合は、この「DSM-5」に現在のところ記載がなく、「精神医学上の概念」というよりは「心理学上の概念」であると考えられます。
したがって、HSPは何らかの病気・障害というよりは、人が誰しも持っている性格特性(気質)と考えるのが適切でしょう。性格特性(気質)ということは、病気・障害のように「薬等を使って治療する」というよりは「日常の中でどう付き合っていくか」がより重要です。考え方や環境を変えるなどの工夫が必要といえるでしょう。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)を「繊細さん」と呼ぶことも
HSPは忌避すべき存在ではなく、向き合っていくべき存在です。したがって、親しみをもって接する必要があります。親しみを込めた呼称のひとつに「繊細さん」があります。この呼称は、山口由起子さんが名付け親で、最近では武田友紀さんの著書が人気ですね。
■「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本
■今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト
■仕事、人間関係の悩みがスーッと軽くなる! 「繊細さん」の知恵袋
これらの書籍を書店等で目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
武田友紀さんいわく、「繊細さを克服すべき課題と捉えるのではなく、いいものとしてとらる。自分の気質を肯定し活かすことで、元気に生きていける」とのことで、HSPに対する基本的な向き合い方を端的に示した言葉といえるでしょう。
あなたはHSP?診断テストでセルフチェック
もしかしたら自分はHSPではないかと思ったら、まずは簡単な診断テストでセルフチェックをしてみましょう。下記の4項目を確認し、これら4つがすべて当てはまることがHSPの前提となります。仕事やプライベートの場を思い起こしながらチェックしてみましょう。
HSP診断チェックポイント①:思考が複雑で、深慮の上で行動する
調べごとを入念にしたり、お世辞にすぐに気付いたりするケースが挙げられます。また、行動する前に熟慮して踏み出せないような人が当てはまります。
HSP診断チェックポイント②:刺激に対して疲れやすい
「刺激に対して疲れやすい」とは、混雑する場所が嫌いであったり、人付き合いに疲労感を持ちやすかったり、他人の言動に影響を受けやすかったりすることが典型例として挙げられます。
また、ちょっとしたことに対してオーバーリアクションするケースや、感動しやすく涙もろいケースなども当てはまります。
HSP診断チェックポイント③:相手の気持ちに影響されやすい
映画やドラマなどの登場人物に感情が入ってしまう、他人が叱責されているときに自分も叱責されている気持ちになるなどが挙げられます。
また、相手のしぐさや表情を読み取り、マイナス感情を持たれているのではないかと気にしてしまう傾向があります。このほか、話ができない動物や幼児などの考えを読み取ることができるのも特徴です。
HSP診断チェックポイント④:あらゆることに対して感受性が強い
たとえば、家電製品のブーンという音が耳についたり、明るさが苦手であったり、体臭や口臭に敏感であったりします。喫煙者が吐く煙や、身体に付いたタバコの臭いで気持ちが悪くなることなどが挙げられます。
このほか、カフェインや添加物への反応、直感が当たる、服の肌触りが気になるなど、さまざまなことに敏感という特徴があります。
知っておきたいHSPの基礎知識
HSPは大人に対する呼び方!子供のHSPはHSCと呼ぶ
HSPは「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」だと紹介しましたが、実はこれは大人だけの呼び方です。子どもの場合にはHSCと呼び、HSCとは「Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)」の略称です。
いずれにせよ、特徴は同じであるため、大人と子どもで呼び方を変えているものだと理解しておくとよいでしょう。HSCの子どもは「育てにくい」と思われることがありますが、HSCの特徴を理解して広い心で接することが大切といえます。
HSPとうつ病・適応障害との違い
「HSP=うつ病・適応障害」ではない!
HSPの人は、自分のことをうつ病だと感じてしまうケースがありますが、「HSP=うつ病・適応障害」ではありません。HSPが病気ではない一方で、うつ病は「心の風邪」と呼ばれ、早期治療が必要なものです。
ただし、HSPであることから、結果的にうつ病や適応障害になるケースはありえます。ちなみに日本人が月曜日にブルーな気持ちになるのは、一種のうつ病だといわれています。
HSPかな?と思ったら、早めに受診することが大切
軽度のうつ病であれば休養だけで改善することもありますが、慢性化や重症化してしまうと、休養だけでは治りにくいと考えられます。ひと口にうつ病といっても症状の幅が広いため、早めに心理カウンセリングや精神科などを受診して改善を目指しましょう。
HSPと発達障害との違いは?
HSPは発達障害とも混同されるケースがあります。発達障害とは注意力や衝動性、多動性の問題があり、注意力が散漫になりがちとされています。また、衝動的な行動をしてしまうケースもあります。
発達障害もある種の個性と捉えるケースがあるため混同されやすいですが、内面の繊細さを表現するHSPと、先天的不得手を持つ発達障害は別物だといえます。
自分がHSPの場合の向き合い方や対処方法は?
カウンセリングを受ける
HSPの対処法として、カウンセリングを受ける方法が挙げられます。日本ではカウンセリングを受ける習慣がまだまだありませんが、アメリカなどでは一般的となっています。生きづらさを感じるなら、一度カウンセリングを受けてみるとよいでしょう。
心理カウンセラーへ気軽に相談してみる
心理カウンセリングと聞くと、「専門的な資格を持っている先生に対し、精神疾患者が相談する」というイメージが強いかもしれません。しかし、心理カウンセラーは心理資格を必置としていないため、お悩み相談のような軽い相談も可能です。
反対に、精神疾患の場合は医師が診察する必要があります。したがって、HSPの場合は、カウンセラーに相談するほうが向いているともいえます。まずは楽な気持ちで相談してみましょう。
心配なときは有資格者に相談する
心理カウンセラーは必置資格でないことから、相談したカウンセラーがスキルに乏しいことも考えられます。心配な場合は、公認心理師や臨床心理士など心理系の資格を保有している人に相談しましょう。
自分にとっての安全基地をつくる
安全基地=心の拠りどころ
自分にとっての安全基地をつくるというのもよい方法といえます。安全基地とは、心の拠りどころとなる存在のことです。
子育てなら、親との信頼関係が盤石だからこそ、子どもはすくすく成長できるといえるでしょう。つまり、子どもにとって親は安全基地だと考えられます。
「安全基地」に依存的にならないように注意
親以外に、恋人や親友、メンターなども安全基地として挙げられます。また、先述のカウンセラーを拠りどころとしてもよいでしょう。ただし、相手に依存的になると対等の関係でいられなくなるため、その点には注意が必要といえます。
無理のない範囲で刺激に慣れる
HSPの場合、刺激を回避し続けていると、かえって刺激に弱くなってしまうと考えられます。反対に、活発な活動を続けることで刺激に慣れて、少しずつ和らいでいくこともありえます。
無理に刺激を受け続けるとストレスとなってしまいますので、無理のない範囲を超えないように活動を続けることが大切といえます。
刺激を緩和するアイテムの活用も視野に
視覚や聴覚からの刺激で疲れてしまうといった人もいるのではないでしょうか。そういった場合には、アイマスクや耳栓の活用も有効的です。常時着用は難しいかもしれませんが、集中したいときや落ち着きたいときなど、ここぞというときに活用することを検討してみるのも一手でしょう。まずは、使い捨てのものから試してみてはいかがでしょうか。
参考1:アイマスク 目隠し 安眠 遮光 眼精疲労 快眠 昼寝 睡眠 シルク素材 軽量 バンド2本 圧迫感なし ARIALK (1 ブラック)
参考2:色がきれいな使い捨て耳栓 MOLDEX スパーク・プラグ (10ペア)
人との距離感を保つ
人に影響されすぎたり、人に振り回されたりするのであれば、距離感を保つのも一つの方法です。好きな人とだけ付き合う、人と会う頻度を少し減らす、SNSの利用を制限するなど、付かず離れず程度に割り切ってみましょう。
人間関係をリストアップして棚卸する
今の人間関係が苦痛なのであれば、人間関係の棚卸もおすすめです。自分の夢や目標と無関係な人、利害関係がない人に誘われても応じないようにしましょう。今の自分や将来の自分にとってプラスの人間関係かどうかがチェックの基準となります。
一人ひとりとの付き合い方や頻度を設定することで、無理のない範囲での人付き合いがしやすくなるでしょう。
スルーすることを覚える
気持ちを楽にするためには、スルーすることを覚えるのも有効といえます。他人の言動を真に受けて振り回される場合、実は気にするような内容ではないケースもあります。
笑顔で大人な対応をし、心では相手にしない方法を身につけられれば、気持ちの和らぎ方が違ってくるでしょう。
ミラーニューロン効果を防ぐ
人間の脳は、あくびが伝染するのと同様に、人の感情が伝染する性質があります。このことをミラーニューロンといいます。
イメージで自分の周りにバリアを張ると、ミラーニューロン効果をシャットアウトできるとされています。これにより、相手に振り回されることを回避しやすくなるでしょう。簡単にできる方法ですので一度試してみてください。
相手がHSPの場合はどう付き合う?
相手がHSPの場合の対処法①:理解を示す
もし自身の周りにHSPの人がいれば、理解を示すことが大切といえます。HSPは繊細であるため、不用意な言動で傷つく可能性があります。先述したHSPの特徴に配慮して、相手の尊厳を大切にする姿勢を持ちましょう。
相手がHSPの場合の対処法②:適切に褒める
人は、褒められると脳の扁桃核という部分が心地のいい状態になります。扁桃核が心地のいい状態になると、大脳辺縁系という感情の脳がプラス思考になるため、相手は喜びを感じやすくなります。
ただし、「おべんちゃら」はあざとくなってしまうので注意が必要です。思ってもいないお世辞ではなく、本当に思っている褒め言葉を相手に投げかけましょう。
相手がHSPの場合の対処法③:やわらかなコミュニケーションを心がける
HSPの人は刺激に敏感であるため、辛辣な接し方は控えたほうが無難といえます。穏やかな心地のいいコミュニケーションを心がけましょう。トークスピードを緩やかにしたり、自然な笑顔で接したり、優しい口調で話したりするのが、やわらかなコミュニケーションの手法です。
まとめ
HSPは非常に繊細な人を指し、空気を読み過ぎることで疲れてしまう、刺激に対して敏感になりやすいなどの傾向があります。セルフチェックにすべて当てはまる場合の対処法としては、カウンセリングを受ける、人との距離感を保つなど、さまざまな方法が挙げられます。当記事を参考に、自身に合った方法を試しましょう。
(参考)HSPに関するオススメの本をご紹介
最近では多くのHSP(繊細さん)に関する書籍が出版されています。以下のような書籍は、概要の理解に役立つでしょう。
■「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本
■今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト
■仕事、人間関係の悩みがスーッと軽くなる! 「繊細さん」の知恵袋
■「敏感すぎて疲れやすい人」がおだやかに暮らしていくための本