結婚を前提にした同棲やルームシェアなどで新たな場所で2人暮らしを始める場合、まずは引っ越しをすることになります。引っ越し費用がどのくらいかかるか気になる人も多いでしょう。この記事では2人暮らしの引っ越し費用の目安と、安くすませる方法について解説します。
2人暮らしの引っ越し代金の内訳とは
最初に、引っ越し代金の仕組みと2人暮らしを始める場合の引っ越し費用について解説します。
引っ越し費用の仕組み
引越しの際にかかる料金は、主に以下の費用で構成されています。
基準運賃
割増料金(休日・深夜・早朝など)
人件費などの実費
付帯サービス料(エアコンの取り付け・ハウスクリーニングなど)
基準運賃の種類
運送会社の運賃は、国土交通省が定める基準運賃をもとに設定されています。業者は運賃を自由に決められますが、基準運賃と大きな差はないことがほとんどです。基準運賃には、時間制と距離制の2種類あります。
時間制
運搬作業をした時間によって運賃が決まる方式を、時間制といいます。時間制は、荷物を運ぶ距離が100 km以内のときに適用されます。4時間制と8時間制があり、1時間を超えるごとに追加料金が発生する仕組みです。
距離制
荷物を運ぶ距離が100kmを超える場合は、基準運賃には距離制が適用されます。200km超の場合、超過する距離に応じて追加料金がかかります。
2人暮らしを始める場合
別の場所に住んでいた人同士が新たな場所で2人暮らしを始める場合、単身の引っ越し費用の2倍がかかることになります。すでに同居している人が別の場所に引っ越す場合と比べて、費用が割高になることを頭に入れておきましょう。
2人暮らしの引っ越し費用総額の目安
引っ越し費用はトラックの運賃が基本で、作業時間や移動距離によってかかる金額が変わります。2人暮らしの引っ越しで使われるトラックは主に2トン車クラスです。ここでは、2トン車クラスの時間制・距離制の運賃の一例を九州運輸局のデータから紹介します。
九州運輸局のデータから引越し運送の運賃の例
国土交通省の「標準的な運賃」である、九州運輸局の2トンクラスのデータを紹介します。
標準的な運賃(九州運輸局)/時間制 | |
4時間制 | 1万8,530円 |
8時間制 | 3万890円 |
基礎走行距離から10kmごとの追加料金 | 280円 |
8時間を超え1時間ごとの追加料金 | 2,840円 |
標準的な運賃(九州運輸局)/距離制 | |
100km超110kmまで | 2万7,580円 |
140km超150kmまで | 3万3,660円 |
190km超200kmまで | 4万1,250円 |
200km超500kmまで 20kmまでごとの追加料金 | 3,020円 |
500km超 50kmまでごとの追加料金 | 7,560円 |
出典:国土交通省「トラック輸送の標準的な運賃」より作成
その他の費用
引っ越し費用の内訳は運賃が大半を占めますが、それ以外にかかる費用もあります。
割増し運賃
休日や深夜・早朝には以下のような割増し運賃がかかります。
休日割増し:2割高
深夜・早朝割増し:3割高
付帯サービス料
利用者の希望により行う付帯サービスの費用の目安は、以下のとおりです。
エアコン取り付け:1万円 ~1万5,000円
エアコン取り外し:5,000円 ~ 1万円
ハウスクリーニング:7,000円 ~ 5万8,000円
家具処分:3,000円 ~ 3万円
出典:国土交通省近畿運輸局「引越料金のしくみ」
人件費の目安
引っ越しにかかる作業員の人件費の相場は、1人あたり1万円から2万円といわれています。一般的に2人暮らしの引っ越しの場合、ドライバーの他に作業員1人が必要です。
繁忙期の割増し
通常、引っ越しシーズンと呼ばれる3月と4月には料金が割増しになることが多いです。割増しの幅は、引っ越しの規模や業者によって異なります。通常より5割以上高くなることも多いので、注意が必要です。
データをもとに引っ越し費用を試算
たとえば、福岡県に住む実家暮らしの男女が同居を始める場合の引っ越し費用を試算してみましょう。
基準運賃:1万8,530円(4時間制)
人件費:3万円(1人あたり1万5,000円だとして、運転手と補助員1名分)
通常期で平日の引っ越しで、付帯サービスは利用しない
この場合、1人分の引っ越し費用は4万8,530円(1万8,530円+3万円)となります。別々の場所からの引っ越しなら、2人分で約10万円かかるというわけです。
値段を抑えるために!6つの節約ポイント
結婚を考えているカップルの場合、2人暮らしを始めてからもお金のかかるライフイベントが続くと考えられます。引っ越し費用はなるべく抑え、他にお金を回したいところでしょう。ここでは、引っ越し代金を抑える方法を紹介します。
繁忙期の依頼を避ける
どの業者も料金を値上げする3月・4月の繁忙期での引っ越しは、しないほうが得策です。通常の時期の引っ越し料金が5万円で繁忙期が5割増しだとすると、約7万5千円もの費用がかかります。また繁忙期に依頼すると、希望の日の引っ越しができないことも考えられます。費用の節約のためには、なるべく依頼が集中しない時期を狙うようにしましょう。
平日の時間指定なしを利用する
引っ越しの多くは週末や祝日に行われるので、平日は費用が安くすむケースがあります。また、朝からの作業を希望する人が多いので、時間指定なしや午後便を利用すると割安です。時間指定なしとは、引っ越し業者の都合で手が空いたら来るというやり方です。ただし、午後便や時間指定なしは、長距離やファミリータイプの引っ越しの場合では深夜時間になったてしまう可能性もあるので向きません。短時間の引っ越しで、少しでも安くしたい人には利用価値があるでしょう。
複数の業者から見積もりを取る
引っ越し業者から見積もりを取る際には、複数の業者に依頼しましょう。繁忙期はどの業者も通常料金より値上げしますが、値上げ幅はさまざまです。同じ条件で複数の業者の見積もりを比較し、安い業者を選べば費用も抑えられます。他社の見積もりと比較することで値下げに応じてくれることがあるので、料金交渉のためにも複数の業者の見積もりを取っておきましょう。
不用品は引っ越し前に処分する
それぞれが持っている家具や家電で、新居で使わないものは引っ越し前に処分してしまいましょう。荷物の量が多いと大きなトラックや追加の作業員が必要になり、引っ越し料金が高くなります。家具や家電を持ちよる場合、使うものと不要なものを事前に決めておきましょう。不用品は引っ越し業者に処分してもらえますが、余分な費用が発生します。中古買取りに出すと処分代の節約が可能です。
できる作業は自分たちでする
引っ越しに伴う荷造りや荷ほどきは、自分たちで行いましょう。運送業者の引っ越しサービスの中には、荷造りから荷ほどきまでが含まれるプランがあります。忙しい人には便利ですが、料金は割高です。通常のプランは旧居からの荷物の運び出しから、新居への運び入れまでです。自分たちでできる作業を業者に頼まなければ、費用の節約になります。ただし、忙しい人には負担が大きくなるので、時間的に余裕のある計画を立てましょう。
単身者向けサービスを利用する
多くの引っ越し業者に用意されている単身者向けのパックを利用できると、引っ越し費用が格安になる可能性があります。単身者向けのパックは、サイズの決まったコンテナボックスに荷物を積み、格安料金で輸送するサービスです。コンテナボックスに荷物が積みきれれば、単身世帯でなくても利用できます。ただし、コンテナボックスの大きさは業者ごとに異なり、積みきれない荷物がある場合は追加料金がかかります。
引っ越しの際に必要になる手続き
引っ越し前後は、荷物を運ぶ以外にやるべきことがたくさんあります。必要な手続きを時系列でリスト化して、漏れのないように実行していきましょう。
市区町村の役所での手続き
引っ越しに伴う住民票の異動などは、転居先の市区町村が同一か異なるかで手続きが異なります。
同一市区町村内の引っ越しの場合
引っ越し先が同一市区町村のときは、市区町村の役所に14日以内に転居届を提出します。同じタイミングでマイナンバーカードや国民健康保険、国民年金の住所変更を行いましょう。同一市区町村内での転居の際には、印鑑登録の手続きは必要ありません。なお、会社員など社会保険加入の人は、国民健康保険と国民年金の手続きは必要ありません。
別の市区町村内の引っ越しの場合
別の市区町村へ引っ越す場合の旧居と新居の市区町村の役所での手続きは、以下のとおりです。役所での手続きは、一度にまとめてすませるとよいでしょう。
旧居のある市区町村の役所 | 新居のある市区町村の役所 | |
住民票 | 転出届を提出し、転出証明書を発行してもらう 印鑑登録廃止申請(転出届により自動的に抹消される自治体もあり) | 転出証明書を添えて転入届(転入後14日以内) |
印鑑登録 | 印鑑登録証(カード)返却 | 印鑑登録 |
国民健康保険・国民年金(第1号被保険者) | 資格喪失手続き | 加入手続き(転入後14日以内) |
電気・ガス・水道の手続き
引っ越しに伴い、電気・ガス・水道については旧居の使用停止、新居での使用開始の連絡が必要です。使用停止も使用開始も引っ越しの1週間前を目安に行うとよいでしょう。ガスの使用開始に際しては、立ち合いが求められます。引っ越した当日から使えるようにするため、忘れずに連絡しましょう。引っ越しの多い3月・4月の場合、間際の連絡では希望日に開栓されない可能性もあります。
運転免許証の住所変更
住所が変わった人は、必ず運転免許証の住所変更をしなければなりません。手続きは、最寄りの警察署または都道府県の運転免許試験場・運転免許センターで行います。警察署では、車庫証明の申請も行えます。運転免許証の住所変更に期限はありませんが、車庫証明は住所が変わってから15日以内の手続きが必要です。どちらも速やかに、できれば1週間以内にすませておきましょう。
車検証の住所変更手続き
自動車を持っている人が引っ越した場合、車検証の住所変更が必要です。普通自動車の住所変更では車庫証明が必要で、軽自動車では必要な自治体と不要な自治体があります。普通自動車は陸運支局で、軽自動車は軽自動車検査協会でそれぞれ手続きします。
郵便局への転居届
引っ越しにあたり、郵便局に転居届(はがき)を提出すると、旧住所あての郵便物を1年間、新住所に転送してもらえます。どこの郵便局でもすぐに手続きできるので、引っ越しが近くなったらすませておきましょう。
その他の住所変更
銀行や保険会社、クレジットカード会社への住所変更届も、引っ越し後速やかに行います。金融機関からの郵便物は転送の対象外になることもあるので、忘れずにすませましょう。
まとめ
今回は、2人暮らしを始めるにあたっての引っ越し費用の相場と節約法を紹介しました。別々の場所からの引っ越しの場合、1人分の料金の2倍かかることになり費用がかさみがちです。2人暮らしから晴れて結婚する場合、その後マイホームの取得を考えることもあるでしょう。西日本シティ銀行の住宅ローン「NCB建築名人」では住宅購入のためのお金のシミュレーションなどもでき、来店不要で申し込みもできるので参考にされてください。
合わせて読みたい記事
松田聡子
群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー
国内生保で法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。