まだ寒さ厳しい早春の朝、博多駅から大分県日田市の日帰り旅へ向かいました。到着した日田は薄っすら雪景色でしたが、晴れた青空も良いけれど雨でも雪でも小京都と呼ばれる風情を感じるのは日田ならでは。
コロナ禍で人出は少なくなったとはいえ、人気の観光スポットが盛りだくさん。果たして、日田への小旅行、何が待っているのでしょう。
希望を見つけに行く場所 天瀬
まず到着したのは、2020年7月、豪雨災害に見舞われた天瀬。コロナ禍での緊急事態宣言が開けて間もなくの被害。ニュース映像は痛々しく、見るものでさえ心をえぐられるような思いをしたものです。旅館組合に加盟している14施設のうち7施設が被災し、今もまだ営業は再開されていません。
玖珠川を渡るシンボリックな赤い吊り橋も、その形を失ったままです。平静時は穏やかな川の流れが、ひと度牙をむくと手のつけられない恐ろしさをあらわに向かってくる。人間の力では抗えない無力さを感じます。
しかし、多くの旅館では被災を機に、他県へ出ていた後継者たちがUターンし、家族一丸となって営業再開に向けて動いています。
その動きをまとめているのが、地域団体の天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクトのメンバーたち。多くのボランティアとともに行政や地域の人々と連携して、天瀬の未来に向けて力強く前進しています。「被災にあった可哀相な天瀬」ではなく、人間は、どんなに辛い不幸なことがあっても立ち上がって前に進めるんだよ、という夢と勇気と希望を与えてくれる天瀬の姿でした。
3月1日にはJR久大本線も全線運転再開し、アクセスも良くなりました。たくさんの人が訪れることで、天瀬はますます元気になることでしょう。
週末は、天ヶ瀬温泉で英気を養う旅も良さそうですね。
おひなさま観光の旗手 豆田町
春の日田といえば、「天領日田おひなまつり」は、外すことができません。おひなさまを「まちおこし観光」にしたのは、ここ日田にある国指定重要文化財の草野本家が発祥と言われています
ここには、暴れん坊将軍として有名な江戸幕府八代将軍吉宗公の時代のものから明治時代のものまで178体の雛人形をみることができます。その貴重な作品は、いかに草野本家が栄華を誇ったかを窺い知れるものでもあります。
ひな人形ミュージアム ひな御殿
訪れたのは「ひな人形ミュージアム ひな御殿」。天保14年創業の日田醤油のお店の中を進むと、雛人形が待ち受けています。段飾り、収納飾り、箱雛、おきあげ雛、立ち雛、座り雛、衣装着人形に木目込み人形など様々な種類の雛人形が、なんと約4000体!見るだけで、ひな人形酔いしそうなほどに鎮座しています。
これだけ多くの人形がありながら、ホコリひとつかぶっておらず、丁寧に保管・管理されてきたことにも驚きを隠せません。
江戸時代のものや歴史的に価値のあるものも多い中で、りかちゃん人形のおひな様や、こけし形の鉄アレイが紛れていたりと、首を傾げたくなるものもありますが、雛人形で溢れる館内で、箸休め的な存在になってくれています。
49歳で急逝した節句人形作家、後藤由香子さんの作品の美しさに目を奪われます。必ず、お気に入りの雛人形に出会えることでしょう。
『第38回天領日田おひなまつり』は、日田市豆田地区を中心に3月末まで行われます。雛人形だけでなく、精巧に作られた道具も必見です。日本の美に存分に触れられるこの時期に、ぜひ訪れてみてください。
【38回 天領日田おひなまつり】
令和3年2月15日(月)~3月31日(水)
日田市豆田地区・隈地区・その他
※新型コロナウィルス感染症の状況により中止・変更になる場合があります
日田でうなぎを食す
散策でお腹がすいてきたところで訪れたのは、「日田まぶし 千屋」
豆田を訪れる観光客で行列ができる店として有名なのだそう。日田まぶしは、ひつまぶしをイメージしていただければよいでしょう。国産うなぎの蒲焼をふっくらご飯に混ぜ合わせていただきます。日田でうなぎ?と思いましたが、外はカリッと中はしっとり。うなぎそのものに甘みがあり、本当に美味しいんです。
お櫃の中には、たっぷりのご飯にこれまたうなぎがたっぷりと乗っています。薬味が4種類。ネギ・大根おろし・わさび・ゆずごしょうそしてお出汁で供されます。
おすすめの食べ方は、まずはそのまま。ご飯とうなぎを存分に味わいます。水郷日田と言われるだけあって、良質の水で育った米自体も美味!
2杯目は、薬味を混ぜていただきます。4種の薬味は、ネギ&わさび・大根おろし&ゆずごしょうというコンビが良いそうです。
これまた、それぞれに味に変化をもたらし、お腹がいっぱいになってきたにもかかわらず、箸が止まりません。最後に、ネギとわさびを加えた上にだし汁をかけて、お茶漬けのようにさらりといただきます。
行列ができるのも納得の美味しさ。並んででも食べたい絶品日田まぶし、量もたっぷりなのでお腹を空かせてお出かけください。
【日田まぶし 千屋】
・所在地:大分県日田市豆田町4-14
・問合せ:0973-22-3130
・営業時間:月~金 11:00~18:00、土日祝 11:00~20:00
・定休日:不定休
レトロな薬局は見どころ満載 岩尾薬舗日本丸館
お腹がいっぱいになったところで、「日田まぶし 千屋」の隣にある岩尾薬舗日本丸館へ。岩尾薬舗は、安政2年に開業された薬局。明治20年「日本丸」という万能薬製造で一躍有名になった薬局です。
中は薬の資料館となっており、当時の薬作りに使われた機械や生活用品が展示されています。また、昔の薬のパッケージの可愛らしさは、アートとしても一見の価値ありです。
展示品だけでなく、建物そのものも見どころがあります。国登録有形文化財に指定されている建物は木造4層3階建と建増しを繰り返し、忍者屋敷を思わせる複雑な作り。廊下が松の1本造りだったり、ちょっとした中庭に気持ちがほっこりしたり、タイル張りのお手洗いがキュートだったりと見落としはもったいないですよ。
最近では見かけなくなった、三遊亭圓右の首ふり人形もありました。ラムネでさえ、薬袋に入っていると体に良さそうに感じますね。
ここの2階の大広間でもおひなさまが公開されています。江戸時代から伝わる雛人形とお道具。その中でもぜひ見て欲しいのは「百歳雛」、この雛は長寿を願って作られたもので、白髪の雛人形なんです。
夫婦ともに白髪の生えるまで幸せに暮らせるようにとの願いが込められているそう。白髪のお雛様の展示は全国でも珍しいとのことですから、岩尾薬舗を訪れたらぜひ見てください。
【岩尾薬舗日本丸館】
・所在地:分県日田市豆田町4-15
・問合せ:0973-23-6101
・営業時間:10:00~16:00
・入場料:大人350円、小中高生250円
進撃の巨人 in 日田 大山ダム
昨秋、日田に新しい観光スポットが誕生しました。
大山ダムの麓に、「進撃の巨人」に登場するエレン・ミカサ・アルミンの少年期の銅像が設置されたのです。「進撃の巨人」の作者、諌山創さんが、故郷である大山のために書き下ろしたデザインから製作された銅像です。大山ダムをウォール・マリアに見立て、3人が初めて巨人を目にした瞬間が表現されています。驚愕と恐怖、そして絶望までが入り混じっているような表情は圧巻です。
もちろん、正面からその表情をじっくりと見て欲しいのですが、銅像の後ろに回って、同じ目線でダムを見上げてみてください。まるで自分が「進撃の巨人」の世界に入ったような感覚を覚えるでしょう。
このとき、スマホに「進撃の巨人 in HITA」アプリをインストールしてダムを見上げると、ARでダムの上から巨人が顔を覗かせるので、より世界観を味わうことができてかなりのおすすめです。アプリは、銅像の近くに設置されたQRコードから読み取れます。
銅像の誕生を期に、日田ではコラボ商品が続々誕生中。3月には、日田駅前にリヴァイ兵長の像が公開、進撃の巨人ミュージアムも開館準備中とのことで、進撃の巨人ファンにはたまらない聖地となりつつあります。
【大山ダム】
所在地:大分県日田市大山町西大山2008-1
梅の香りに酔う 梅酒蔵おおやま
大山といえば、梅も有名ということで「梅酒蔵 おおやま」にもお邪魔しました。
大山に梅が多い理由は、昭和36年、「梅栗植えてハワイに行こう」をキャッチフレーズに大山町の農業改革が行われたのが発端。そう、梅や栗を植えることで所得を増やそうと試みたのです。結果、パスポート所持率が全国一になったということですから、夢のある話ですね。
私が訪れた時期は敷地内の梅の木は、ほぼ満開の梅の花。寒さの中、可憐に咲く梅の花には、清らかさや気品すら感じます。
ここで作られる梅酒は、大山の農家で、一粒一粒丁寧に作られた大山の梅だけを使っています。しかも、朝採った梅をその日のうちに漬け込みをし、長期熟成しています。
オーク樽で長年眠っていた梅酒は、木樽の香りと梅の香りが絶妙なバランスで国内外で高い評価を得ているのも頷けます。
ここは梅酒の種類も多く、約10種類の梅酒を無料で試飲することができます。さっぱりと味わえるものから、重厚で深みのあるものまで、必ずあなたの「美味しい」に出会うことができるはず。大切な人へのお土産にも喜んでもらえるでしょう。
予約をすれば、工場や樽貯蔵庫の見学もできますし、オリジナルのMY梅酒を作ることもできますよ。もちろんこちらはスタッフさんが丁寧につくり方を教えてくれます。
一人旅でも友達同士でもご家族でも楽しめる梅酒蔵おおやま、梅酒だけでなく、厳選されたセンスの良い地域の商品も多いので、ついつい買いすぎてしまいそうです。
【梅酒蔵おおやま】
所在地:日田市大山町西大山4587番地
問合せ:0973-52-3004
営業時間:9:00~17:00
まとめ
日田の日帰り旅を体験し、1日も早く気兼ねなく旅行に行ける世の中になって欲しいと心から願わずに入られませんでした。
全国の観光地と同じく、日田の町も観光客が激減し、皆大変な思いで営業を続けています。コロナが落ち着いたら多くの人が観光に戻ってきてくれると信じ、戻ってきてくれた人にさらに喜んでもらおうと努力し続ける姿がそこにはあり、若い才能ある力も町に新しい風を起こしつつあります。
静かで平和な町に癒され、同時に元気をもらえる魅力ある日田の情報をお届けしました。