「ふるさと納税はお得」と聞いたことがあっても、実際のところは何がどうお得で、消費者にとってメリットがあるのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。本記事では、ふるさと納税の減税の仕組みについて、シミュレーションも紹介しながらまとめていきます。
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ふるさと納税の仕組みをおさらいしよう
まず、ふるさと納税の全体的な仕組みについて解説します。
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ふるさと納税は寄付金控除の一種
ふるさと納税は、税金の控除や還付が受けられますが、制度上の区分でいうと「寄付金控除」となります。寄付金控除とは、個人が所定の団体や地方自治体などに寄付をした場合、住民税(地方税の一種)や所得税が控除されるシステムです。
ふるさと納税では税金が控除されるメリットに加え、返礼品として品物などを受け取ることができます。
地方税などの減税につながる
ふるさと納税を行うことで控除対象となるのは、住民税と所得税です。寄付した金額から2,000円を差し引いた額が、すでに納めている所得税や、翌年納める予定の住民税から控除されます。
控除があるということは、課税所得を減らす効果があります。課税所得が減るということは、その所得に対してかかる税金も少なくなるということです。
このほかに課税所得を減らす効果があるのは、医療費控除や生命保険料控除などがあります。ただし、このほかの何らかの控除を受けている場合は、ふるさと納税における住民税や所得税の控除を受ける際のメリットは少なくなりますので注意が必要です。
免税と減税の違い
ふるさと納税を行うことで、減税の効果が期待できます。減税と類似する言葉で、免税という言葉があります。免税とは「税を免れる」ということです。つまり、まったく税がかからないことを意味します。
ふるさと納税では、いくら限度額を上手に活用しても、住民税がまったくかからない状態になることはありません。したがって、ふるさと納税は免税ではなく、減税ということになります。
ふるさと納税の対象期間
ふるさと納税は、1月1日から12月31日の1年間の間に行うことで翌年の減税につながります。1年間に行った方がよいとされる限度額については、この後に詳しくまとめます。
駆け込みでも間に合いますが、余裕のある申し込みを
先述のとおり、1年間のふるさと納税の対象期間は1月1日から12月31日までです。一般的に自治体窓口は12月31日(大晦日)になると閉所しています。また、年末になるとお歳暮のシーズンとも重なり、返礼品が品薄になることも予想されます。
これらのことから、申し込みや決済を早めに済ませておくことをおすすめします。
住民税の控除と計算方法
ふるさと納税を行う場合、住民税の控除には「基本分」と「特例分」の2種類があります。
【住民税の控除】基本分とは?
住民税からの控除額(基本分)の計算方法は以下のとおりです。
基本分=(ふるさと納税額ー2,000円)×住民税率(10%)
対象となる控除の上限額
基本分の控除対象となるふるさと納税額は、総所得金額の30%までです。
【住民税の控除】特例分とは?
住民税所得割額の2割を超える場合
住民税からの控除額(特例分)の目安は、「住民税所得額の2割」が限度とされています。
住民税所得割額の2割を超えない場合
特例分の求め方は上記の限度以外にもうひとつあり、住民税所得割額の2割を超えない場合は、以下の計算式で控除額を求めます。
特例分=(ふるさと納税額ー2,000円)×[100%ー10%(基本分)ー所得税の税率]
住民税が控除されるタイミングはいつ?
ふるさと納税をしたことを申告すると、翌年6月以降の住民税が控除対象となり、税負担が軽減されます。
所得税の還付と計算方法
所得税の控除額の計算式
所得税の控除額の計算方法は以下のとおりです。
所得税の控除額=(ふるさと納税額ー2,000円)×(※所得税率)
※2037年(令和19年)までは、復興特別所得税を加えた税率となります。
所得税率とは?
所得税率とは、所得に応じて変動する数値です。国税庁のホームページに記載の「所得税の速算表」を参考にするか、各ふるさと納税インターネットサイト上の控除上限額シミュレーションを活用して目安を確認してみましょう。
所得税控除の対象となる納税額
控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額の40%が上限となります。
所得税の還付金はいつもらえる?
確定申告をした後、1〜2か月後に指定した口座に所得税の還付金が振り込まれます。いつ、いくら振り込まれるかに関しては、事前に郵送される「国税還付金振込通知書」にて確認しておきましょう。タイミングによっては、還付金が振り込まれた後に通知書が届く場合もあります。
お得に利用できる上限額を把握しておこう
ふるさと納税を行う場合、むやみやたらに寄付をすると損をしてしまうかもしれません。ふるさと納税を最大限活用するためには、自身の控除上限額を把握しておくことをおすすめします。
控除上限額の範囲内で寄付を行う
ふるさと納税を行った金額のうち、自己負担額である2,000円を超えた部分について、すでに支払った所得税と来年の住民税から控除されます。この控除される金額の上限は、ふるさと納税を行う人の年収や扶養家族の有無、その他の控除(例えば住宅ローン控除など)の有無や金額によって変わります。
この控除上限額の範囲内で寄付をすることで、実質2,000円の自己負担額のみで、それ以上の価値がある返礼品を受け取ることができます。
上限額を超えるとどうなる?
寄付の金額が控除上限額を上回ったからといって、ペナルティがあるわけではありません。ですが、2,000円を超える分の自己負担額が増えてしまうため、控除上限額を上回らないよう注意しましょう。
ふるさと納税の控除上限額の計算式
控除上限額=所得税分の控除額+住民税基本分の控除額+住民税特例分の控除額
目安となる控除上限額の調べ方
2,000円を超えた部分が全額控除となる目安の金額を知るには、上記の計算式を用いるほか、インターネット上のシミュレーションを活用するのもおすすめです。会社員など給与所得のある人は、源泉徴収票などをあらかじめ準備しておくと、より正しい目安金額を調べることができるでしょう。
総務省「ふるさと納税ホームページ」内には、自己負担額2,000円で全額控除となるふるさと納税額(年間上限)の目安が一覧表として提示されています。こちらは、給与収入と家族構成別の概算となっています。複雑な計算が苦手な人は、一覧表を参考にしてはいかがでしょうか。
ふるさと納税の計算シミュレーション
ここでは、一般的な例として、ふるさと納税の控除上限額のシミュレーションを紹介します。ただし、ふるさと納税の減税効果については、所得に応じた所得税率の違いなどから一律同じとはいえないため注意しましょう。
【計算例】年収400万円・独身(給与所得者)
年収400万円の場合の所得税率は5%です。これまでに紹介した計算式を用いると、所得税分の控除が約2,100円、住民税(基本分)が4,100円、住民税(特例分)が約3万4,800円となり、これらの合計は4万1,000円となります。なお、今回はわかりやすく説明するため、復興特別所得税分は含めていません。
この合計額に自己負担額の2,000円を足すと、控除上限額は4万3,000円となります。
控除・還付を受ける方法
住民税の控除、所得税の還付をそれぞれ適用するためには、手続きをする必要があります。
書類を揃えて確定申告をしよう
ふるさと納税の申し込みをして寄付の決済をすると、自治体から「寄付証明書」が郵送で届きます。この「寄付証明書」を確定申告時に添付することで、住民税の控除と所得税の還付の手続きが完了します。
確定申告が必要な人とは?
自営業者は毎年の確定申告の際に、ふるさと納税に関しても申告するでしょう。一方、会社員などの給与所得者は、ふるさと納税の申告のみであれば、後述するワンストップ特例を利用できます。しかし、ふるさと納税と同じ年に医療費控除を申請する場合や、住宅購入初年度の場合は、個別で確定申告をする必要があります。
ワンストップ特例について
ワンストップ特例とは、会社員などの給与所得者が、ふるさと納税の寄付金控除を簡単に受けられる便利な制度です。
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ワンストップ特例の対象
ワンストップ特例は、確定申告が必要ではない給与所得者が、ふるさと納税のためだけに確定申告をする手間を省くために設けられました。寄付先が1年間で5自治体までであれば、ワンストップ特例を利用できます。
控除の仕組み
給与所得者は、寄付をした自治体に対してワンストップ特例の申請書を提出するだけで、税額控除に関する手続きが完了します。
寄付先の自治体と、住んでいる自治体の間で連絡などのやりとりを済ませてくれるため、確定申告をする必要はありません。つまり、寄付をした人が行うのは、「寄付先を選ぶ、寄付の決済をする、ワンストップ特例の申請書を提出する」だけです。
申請書の提出期限
ワンストップ特例の申請書は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日必着で郵送します。申請書以外の必要書類(マイナンバーカードの写しなど)も不備が無いように添付しましょう。
この申請書ですが、自治体によっては返礼品に同封されている場合もあります。寄付をする自治体のふるさと納税の詳細をあらかじめ確認しておくと安心です。
まとめ
ふるさと納税は、行う人の給与や家族構成などの条件によって、お得に利用できる限度額が違います。自己負担額が2,000円で済む範囲内で利用することで、住民税の控除や所得税の還付を受けながら、全国各地の返礼品を楽しむことができます。税制上もメリットのあるふるさと納税制度を、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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大野 翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。