全国のさまざまな特産品などを返礼品として受け取れる「ふるさと納税」。お得なのは知っていても、確定申告が不安だったり、「ワンストップ特例制度」などはよくわからなかったりする人も多いのではないでしょうか。
今回は、ふるさと納税やワンストップ特例制度の概要および申請方法について解説していきます。
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ふるさと納税とは?どんな制度?
地域産業への貢献、返礼品の受け取り、税金の控除
「ふるさと納税」とは、都道府県や市区町村などの自治体にお金を寄付することにより、税金が減額されるという制度です。
寄付した先の自治体やその地域の産業に貢献することができ、自治体からは寄付のお礼としてさまざまな返礼品を受け取ることができます。また、寄付したお金は税金の控除という形で戻ってくるため、実質2,000円で地域の返礼品をもらえるという、大変お得な制度となっています。
控除額の引き上げ、ワンストップ特例制度によってさらに便利に
2015年(平成27年)の税制改正により、寄付に対して控除される金額(戻ってくるお金)の上限額が約2倍に引き上げられました。さらに「ワンストップ特例制度」により確定申告が不要になるなど、その仕組みはますます便利になっています。
【地方自治体・個人】ふるさと納税のメリット
ふるさと納税は、地方自治体・個人それぞれにメリットがある制度といえます。
地方自治体のメリット1:各地方の地域産業の発展
ふるさと納税によって各地方に資金が集まることで、全国各地で地域産業の活性化などが期待できます。
地方自治体のメリット2:地方自治体の税収の増加
ふるさと納税により、都市部に集中している税金の一部を、地方自治体へ分配することが可能となります。地方自治体は税収を確保することができ、地域活性化につなげることができます。
さらに、各地方自治体がホテルの宿泊券や地域の特産品などのお礼の品を寄付した人へ送ることで、地元の魅力をアピールすることもできます。
個人のメリット:寄付した個人は、実質2,000円でお礼の品がもらえる
ふるさと納税は、たとえば3万円の寄付をした場合、3万円に応じた各自治体の返礼品を受け取ることができると同時に、所得税や住民税から最大で2万8000円の還付・控除を受けることができます。
つまり、実質的に2,000円の寄付で、自治体から2,000円以上の価値のある返礼品をもらうことができる仕組みになっています。
ふるさと納税の申請方法から控除を受けるまでの手順とは?
手順1:寄付する自治体と返礼品を決める
まずは寄付する自治体と、返礼品として欲しいものを決めましょう。返礼品は多種多様で、地域の特産品、四季折々の農産物や水産物、旅行やお店で便利に使える割引券など、バラエティーに富んだ返礼品が揃っています。
手順2:インターネットなどから各自治体に申し込む
寄付をする自治体が決まれば、自治体に申し込みを行います。現在はインターネットを利用することで、直接ふるさと納税の申し込みができるウェブサイトがたくさんあります。支払い方法はクレジットカードやキャッシュレス決済、銀行振込などから選ぶことができます。
手順3:返礼品が届くので、受け取る
申し込み後、自治体から指定した返礼品が届きます。自治体や返礼品によっては、届くまでに時間がかかるケースもあります。
手順4:自治体から「寄付金受領証明書」が届くので保管しておく
寄付先の自治体から、「寄付金受領証明書」という証明書が送られてきます。この証明書は確定申告を行うために必要な書類となりますので、大切に保管しましょう。
「寄付金受領証明書」の発送は、自治体によって異なります。たとえば、返礼品に同封されている場合や、返礼品とは別に後日送られてくる場合もあります。あるいは確定申告の時期になる2月中旬までに、1年分の寄付金総額がまとめて記載されたものが送られてくる場合もあります。
手順5:確定申告で税金の控除を受ける
「寄付金受領証明書」を確定申告書に添付して税務署へ提出し、確定申告を行います。具体的な必要書類や申告方法について、次の章で詳しく説明します。
ふるさと納税の確定申告の方法とは?
確定申告に必要な書類
ふるさと納税の確定申告で必要となる書類は以下のものがあります。
寄付金受領証明書
上述の通り、「寄付金受領証明書」はふるさと納税として寄付した自治体から届く書類です。失くしてしまった場合は寄付先の自治体へ再発行を依頼しましょう。
通常は確定申告書とともに税務署へ提出しますが、インターネットを経由して申告する「e-tax」を利用する場合は、「寄付金受領証明書」を別途郵送により提出することになります。
源泉徴収票
年度末に勤務先から受け取る「源泉徴収票」も確定申告の際に必要です。受け取っていない・失くしてしまったなどの場合には、勤務先に再発行依頼を行いましょう。ただし、「源泉徴収票」は確定申告書とともに提出する必要はありません。
マイナンバーカードなど本人確認書類
確定申告の書類には個人番号を記入しなければなりません。マイナンバーカードや通知カードを持っている人はそのコピーを、持っていない人はマイナンバーカードが記載された住民票などを提出します。「e-Tax」の場合は、本人確認書類の提出は必要ありません。
確定申告書の入手・作成・提出方法
税務署や国税庁ホームページから入手する
確定申告書を入手するには、税務署で入手する方法と国税庁のホームページから入手する方法があります。
「確定申告書作成コーナー」から作成する
確定申告の申告書は税務署以外に、国税庁のサイト内にある「確定申告書等作成コーナー」からでも作成することができます。申告書を作成した後、印刷して税務署窓口に提出または郵送しましょう。
「確定申告書等作成コーナー」では、申告書を作成した上で「e-Tax」を選択すると、インターネットを経由して申告することもできます。
ワンストップ特例制度とは?
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税について確定申告をしなくても寄付金控除の適用を受けられる制度です。
本来ふるさと納税をすれば、確定申告の際に受領書を提出して寄付金控除の申告をしなければなりません。これは、サラリーマンなど確定申告をする必要のない人にとっては非常に手間となります。
ワンストップ特例制度なら確定申告の必要がないため、簡単な手続きで控除を受けたい人にとってはぜひ利用したい制度といえるでしょう。
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ワンストップ特例制度の利用条件
ワンストップ特例制度を利用するには、以下の2つの条件を満たさなければなりません。
条件1:確定申告が不要な給与所得者であること
確定申告が不要とは、ふるさと納税以外に申告するものがないということです。たとえば、多くのサラリーマンの人は会社が年末調整を行ってくれるので、確定申告をする必要は原則としてありません。
条件2:寄付した自治体の数が1年間で5か所以内であること
ワンストップ特例制度では、年間に寄付した自治体数が5か所以内であることが利用条件となっています。6か所以上の自治体へ寄付した場合は制度を利用できません。この場合は、確定申告をすることで寄付金控除の適用を受けることになります。
ただし、1つの自治体に対して何度も寄付した場合であっても、自治体数は1つと数えます。
次の章からは、ワンストップ特例制度の申請方法について詳しく説明します。
ワンストップ特例制度の申請方法・書類の書き方
申請に必要な書類
「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」
ワンストップ特例制度を申し出た場合、通常は寄付した自治体から「寄付金受領証明書」とともに、「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」という書類が送られてきます。この申請書に必要事項を記入し、改めて自治体に提出することになります。申請書の書き方については後述します。
もし、申請書が送られてこない・失くしてしてしまったなどの場合は、申し込みをしたサイトから専用の様式をダウンロードし、必要事項を記入した上で提出すれば問題ありません。
マイナンバーカードなど本人確認書類
本人確認書類として、以下の3つのパターンのいずれかの書類が必要となります。
パターン1 | マイナンバーカード(表面・裏面)のコピー |
パターン2 | ・次のうちいずれか1点のコピー(マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票) ・次のうちいずれか1点のコピー(運転免許証、パスポート) |
パターン3 | ・次のうちいずれか1点のコピー(マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票) ・次のうちいずれか2点のコピー(健康保険証、年金手帳、提出先の自治体が認める公的書類) |
「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」の書き方
「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」は総務省のホームページからも入手できます。申請書自体はA4サイズ一枚で記入欄も少なく、それほど難しいものではないので簡単に記入できるでしょう。
記入場所は下記の通りであり、切り取り線より下は各自治体が使用する欄なので、特に記入する必要はありません。
申請書の上部
申請書の上部に記入日、自身の住所や電話番号、氏名、性別、生年月日などを書きます。捺印を忘れないよう注意しましょう。
「○○殿」の欄
「○○殿」の欄には寄付した自治体名を記入します。たとえば○○市長、○○町長と書きます。
申請書「1. 当団体に対する寄付に関する事項」
申請書「1. 当団体に対する寄付に関する事項」には、ふるさと納税をした年月日と寄付金額を記入します。
申請書「2. 申告の特例の適用に関する事項」
①の「地方税法附則第7条第1項(第8項)に規定する申告特例対象寄附者である」は、簡単にいえば「あなたは確定申告をする必要がない人ですか?」という内容です。
②の「地方税法附則第7条第2項(第9項)に規定する要件に該当する者である」は、「寄付した自治体数が年間で5か所以内ですか?」という内容です。
いわばワンストップ特例の対象者であるかどうかの確認ですので、問題がなければ①と②の2か所にチェックマークを入れましょう。
ワンストップ特例制度の申請の手順とは?
手順1:ワンストップ特例制度の利用を申請する
ワンストップ特例制度を利用するためには、自治体に制度の利用を申し出なければなりません。
ウェブサイトからふるさと納税を行う場合は、一般的に申し込みフォーム内に「ワンストップ特例制度を利用する」かどうかのチェック欄がありますので、そこにチェックマークを入れて申し込みましょう。
手順2:申請書・必要書類を寄付した自治体に郵送する
申請書に必要事項を記入し、本人確認書類とともに寄付した自治体に郵送します。提出書類に不備があると制度を利用できなくなりますので注意しましょう。
手順3:申請書の提出期限・時期
たとえば、2020年(令和2年)の1月から12月までにふるさと納税をすれば、寄付金額に応じて2021年(令和3年)度分の住民税が安くなります。この場合、2021年(令和3年)1月10日(必着)までに寄付した自治体に申請書を提出しなければなりません。
年末近くにふるさと納税をした場合は、自身で申請書をダウンロードの上、必要事項を記入して提出しましょう。
ふるさと納税の申告方法における注意点
注意点1:医療費控除など他の控除の適用を受ける場合
ワンストップ特例制度は、多くのサラリーマンなど確定申告をする必要がない人のための制度といえます。しかし、医療費控除や住宅ローン控除の初回申請などは、サラリーマンであっても確定申告を行わなければ税制優遇を受けることができません。
ワンストップ特例制度は確定申告が不要の人のみ利用できる制度のため、ふるさと納税の寄付金控除についても確定申告で申告する必要があります。また、確定申告を行った場合は、ワンストップ特例制度の申し出は無効となります。
注意点2:申請内容に変更があった場合
ワンストップ特例制度の申請書を提出した年の翌年1月1日までに住所・氏名に変更があった場合は、1月10日までに申請書を提出した自治体へ「申請事項変更届出書」を提出します。「申請事項変更届出書」は総務省のホームページから入手できます。
注意点3:返礼品の価格合計が50万円を超えた場合
返礼品は所得税法上、一時所得に該当します。50万円以上の一時所得があった場合は所得税が課されます。つまり、返礼品の合計が50万円相当額を超えた場合、または他の一時所得の金額と合わせて50万円を超えた場合は、所得税が課されるので注意しましょう。
注意点4:寄付の回数が多い場合
ワンストップ特例制度では、必要書類を寄付した回数分提出しなければなりません。2か所以上の自治体に寄付した場合はそれぞれの自治体へ、または1か所に何度も寄付した場合でも、その回数分提出する必要があります。
そのため、寄付した自治体数が5か所より少ない場合であっても寄付の回数が多い場合は、確定申告を行う方が少ない手続きで済むケースもあります。
まとめ
今回は、ふるさと納税における確定申告の方法やワンストップ特例制度について解説しました。ふるさと納税は国や地方、個人にとって大きなメリットのある制度です。バラエティーに富んだ返礼品を受け取り、適切な方法で税金の控除を受けましょう。
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ふるさと納税を始めるなら、まずは「ふるさとチョイス」を覗いてみませんか?
「ふるさとチョイス」は、お礼の品の掲載数が日本最大級なだけあって、品揃えが充実しています。旬の名産品、お肉・海鮮・お米などの25万品目を幅広いジャンルから選択可能です。
ふるさと納税のポータルサイトはいくつかありますが、「ふるさとチョイス」は2012年(平成24年)4月2日に開設された老舗です。「お礼の品」、「自治体」、「使い道」、「ランキング」などの多様な観点からお礼の品を探すことができます。また、「寄附金額」や「カテゴリー」から絞り込むことも可能です。
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- ふるさと納税
河野 雅人
公認会計士、税理士、CFP
大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。