子育てするなら、できるだけ支援が充実した地域に住みたいでしょう。福岡県内でも子育てをしやすいよう、さまざまな取り組みを行っています。本記事では福岡の子育て支援について解説しますので、これから子どもを持ちたい人や子育て中の人はぜひ参考にしてください。
全国共通の子育て支援
子育て支援策の中には、国と自治体が連携して行っているものや、法律にもとづき行われているものがあります。こうした子育て支援策は、全国共通です。まずは、福岡県でも当然受けられる、全国共通の子育て支援策の一覧を確認してみましょう。
全国共通の子育て支援 | 内容 |
出産育児一時金 | 子どもを出産したときに公的医療保険から支給される |
児童手当 | 中学校卒業までの子どもがいる世帯に、子どもの年齢や人数に応じて支給される |
出産・子育て応援交付金 | 子ども1人につき10万円程度の支援が受けられる |
子どもの医療費助成 | 医療費の一部負担または完全無料(自治体により異なる) |
幼児教育・保育の無償化 | 保育所や幼稚園にかかる費用の一部を無償化 |
出産育児一時金
子どもを産んだときには、加入している公的医療保険(健康保険または国民健康保険)から、出産育児一時金が支給されます。日本では誰もが公的医療保険に加入しているため、出産育児一時金は出産すれば必ずもらえるお金です。
ただし、出産したら自動的にもらえるわけではなく、加入している健康保険等に申請しなければなりません。
支給額・支払方法
出産育児一時金の額は、2023年(令和5年)4月1日以降、原則として1児につき50万円です。なお、出産育児一時金には直接支払制度が設けられています。健康保険等から産院に直接払ってもらえるため、高額の出産費用を一旦立て替える必要がありません。
参考:厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」
参考:協会けんぽ「出産育児一時金について」
参考:福岡市「出産育児一時金直接支払制度」
児童手当
中学校卒業までの子どもがいる世帯には、子どもの年齢や人数に応じて児童手当が支払われます。児童手当は、法律にもとづき支給されるものです。児童手当をもらうには、子どもが生まれた後、住んでいる市区町村に申請する必要があります。
支給額・支払方法
児童手当は、次の表のとおり月額が定められています。
年齢等 | 児童1人あたりの月額 |
3歳未満 | 1万5000円 |
3歳~小学校卒業まで(第1子、第2子) | 1万円 |
3歳~小学校卒業まで(第3子以降) | 1万5000円 |
中学生 | 1万円 |
児童手当の支給は年3回で、6月、10月、2月に4か月分ずつ振込されます。なお、児童手当には所得制限があり、所得が一定額を超えると月5000円もしくは月0円となります。
参考:内閣府「児童手当制度のご案内」
参考:福岡市「児童手当について」
児童手当は拡充される見込み
政府は2023年(令和5年)6月、「こども未来戦略方針」を発表しました。この中で、2024年度中に児童手当を拡充する方針を明らかにしています。児童手当拡充の内容は、主に次の3つです。
所得制限の撤廃
支給期間を高校生まで延長
第3子以降の支給月額を3万円に引き上げ
参考:内閣官房「こども未来戦略方針」
出産・子育て応援交付金
国は、妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援と経済的支援を一体的に行うため、2023年(令和5年)1月より出産・子育て応援交付金事業をスタートしました。出産・子育て応援交付金事業では、子ども1人につき10万円程度の支援が受けられます。
自治体ごとに支援内容は異なる
出産・子育て応援交付金による支援の内容は、自治体が地域の実情に応じて決める仕組みです。主に、次のようなパターンがあります。
出産・育児関連用品の商品券(クーポン)
妊婦健診交通費やベビー用品等の費用助成
産後ケア、一時預かり、家事支援サービスなどの利用料助成・減免
現金給付
福岡市の「出産・子育て応援給付金」
福岡市では、「出産・子育て応援給付金」として、妊娠届出時に妊婦を対象に1人あたり5万円、出生後に子ども1人あたり5万円の現金給付を行っています。双子を出産した場合には、妊娠時に5万円、出生後に10万円の合計15万円の給付が受けられます。
子どもの医療費助成
子どもの医療費については、乳幼児医療費助成事業として、全国の自治体で支援が行われています。ただし、支援の内容は自治体によってかなりの違いがあります。対象となる年齢にしても、就学前のみ、中学まで、高校までなどさまざまです。
医療費は一部自己負担のことも
医療費の支援額については一部自己負担になるケースが多いですが、完全無料になるケースもあります。子育て家庭が住む地域を探すときには、子どもの医療費助成が手厚いかどうか比較しておくとよいでしょう。
幼児教育・保育の無償化
2019年(令和元年)10月より、保育所や幼稚園にかかる費用の一部を無償化する幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)がスタートしています。これにより、3~5歳児は、幼稚園、保育所、認定こども園等を無料で利用できます。また、0~2歳児については、住民税非課税世帯の場合に、保育所等の利用料が無料となります。
参考:内閣府「幼児教育・保育の無償化」
福岡県で行われている子育て支援
福岡県では、他の自治体と比較して、子育て家庭に手厚い支援や取り組みを積極的に実施しています。福岡県で行われている子育て支援一覧をみてみましょう。
福岡県で行われている子育て支援 | 内容 |
不妊に悩む方への先進医療支援事業 | 先進医療を用いた不妊治療にかかる費用の一部を助成 |
若年者専修学校等技能習得資金貸付金 | 就業のための修学資金を借りられる |
子育て応援の店 | 18歳未満の子どもがいる家庭を応援するサービスを提供 |
男性の子育て応援ハンドブック | 妊娠・出産・子育てに関する基本的な知識や、パパ目線での家事・育児に役立つ情報を掲載 |
不妊に悩む方への先進医療支援事業
子どもが欲しいけれどできない場合、不妊治療をしようにも費用がかかります。福岡県では、先進医療を用いた不妊治療にかかる費用の一部を助成する事業を行っています。
助成の対象となるのは、保険適用となる特定不妊治療と併用して実施される先進医療です。本来、先進医療については全額自己負担となるため、助成が受けられれば経済的負担を軽減できます。
助成金額
1回の治療につき、自己負担額の7割もしくは5万円のいずれか低い金額が助成されます。助成回数の制限は、次のとおりです。
妻の年齢 | 回数の上限 |
40歳未満 | 1子ごとに6回まで |
40歳以上43歳未満 | 1子ごとに3回まで |
福岡県「不妊に悩む方への先進医療支援事業」
若年者専修学校等技能習得資金貸付金
就業のための修学に意欲がありながら、経済的な理由により専修学校、各種学校への修学が困難な場合、若年者専修学校等技能習得資金を借りられます。若年者専修学校等技能習得資金貸与事業は、福岡県内の各自治体で行われています。
参考:福岡県「若年者専修学校等技能習得資金貸与事業」
子育て応援の店
「子育て応援の店」とは、18歳未満の子どもがいる家庭を応援するサービスを提供する店です。全国で「子育て応援の店」を認定する事業が進められています。福岡県でも、18歳未満の子どもがいる家庭に「子育て応援パスポート」を発行し、安心して子育てできる社会づくりを推進しています。
パスポートの登録・利用方法
子育て応援パスポートは、スマホのアプリから申し込みができます。スマホでパスポートを表示し、お店で提示すれば登録者限定のサービスが受けられます。
男性の子育て応援ハンドブック
福岡県では、男性の子育てを応援するために、パパ向けのハンドブック「FUKUOKA PAPA BOOK」を発行しています。「FUKUOKA PAPA BOOK」には、妊娠・出産・子育てに関する基本的な知識や子育ての楽しさ、パパ目線での家事・育児に役立つ情報が掲載されています。
県内の自治体で母子手帳と一緒に配布されているほか、ホームページからもダウンロード可能です。
産後のママをサポートする心得も
「FUKUOKA PAPA BOOK」には、マタニティブルーや産後クライシスなど、産後のママの不安定な気持ちの理解を促す内容も掲載されています。これから子育てを始める男性は、ママの心や体をケアしながら一緒に育児をする重要性を認識できるでしょう。
福岡市独自の子育て支援
福岡県には、子育てしやすい街がたくさんあります。福岡市は特に子育て支援が手厚く、これから子育てしたいファミリーにおすすめの地域です。福岡市独自の子育て支援や取り組みを、一覧で確認してみましょう。
福岡市独自の子育て支援 | 内容 |
第2子以降の保育料無償化 | きょうだいの年齢関係なく、第2子以降は0~2歳も含めた全世帯が無償化 |
第3子優遇事業 | 18歳以上の子ども3人以上を育てている場合、第3子以降にかかる経済的負担を軽減 |
子育て世帯住替え助成事業 | 子育てしやすい住宅への転居を支援 |
子ども医療費助成の拡大 | 乳幼児に限らず、中学3年まで医療費助成が受けられる(2024年(令和6年)からは高校生まで拡大予定) |
おむつと安心定期便 | 乳幼児のいる家庭を対象に、おむつなどの育児に必要なアイテムを届ける |
第2子以降の保育料無償化
福岡市では、2023年(令和5年)4月から、第2子以降の保育料無償化をスタートしました。0~2歳児については、国の制度では住民税非課税世帯のみが無償化の対象です。福岡市に住んでいれば、第2子以降は0~2歳も全世帯が無償化の対象となります。
きょうだいの年齢は関係ない
第2子以降の保育料無償化は、福岡市内に住民票がある人に適用されます。きょうだいの年齢も関係なく、他のきょうだいが同時に幼稚園や保育園を利用している必要もありません。福岡市に住んでいて子どもが2人以上いる人は、負担が軽減されるでしょう。
福岡市 「第2子以降の保育料無償化について」
第3子優遇事業
福岡市では、18歳未満(18歳に達する年度の年度末まで)の子ども3人以上を育てている保護者を対象に、第3子以降にかかる経済的負担を軽減する事業を行っています。支援が受けられる期間は、第3子以降が小学校に入学する前の3年間です。対象期間中は、幼稚園や保育所での副食費が無料になるなどの支援が受けられます。
福岡市「第3子優遇事業」
子育て世帯住替え助成事業
福岡市が行っている「子育て世帯住替え助成事業」とは、子育てしやすい良好な住宅への転居を支援する事業です。対象となる住替え経費の2分の1(上限15万円)が支援されます。親との同居・近居、子ども2人以上の世帯はそれぞれ上限が5万円引き上げられるため、最大25万円の支援となります。
新築住宅の購入は対象外
住替えに際して助成を受けられるのは、福岡市に転居してきた場合です。転居前の住居は、福岡市外であってもかまいません。転居後の住居は民間賃貸住宅か購入した既存住宅でなければならず、新築物件を購入した場合は対象外となります。その他、面積や家賃などの条件もあり、すべての要件をみたさなければなりません。
住宅ローンの金利引き下げも
福岡市の「子育て世帯住替え助成事業」を利用し、既存住宅購入のために住宅ローン【フラット35・地域連携型】を利用する場合には、当初10年間の金利を0.25%引き下げる支援も設けられています。
福岡市「子育て世帯住替え助成事業について」
子ども医療費助成の拡大
福岡市では乳幼児に限らず、中学3年まで医療費助成が受けられます。通院については3歳未満は自己負担なし、3歳以上は1か月の自己負担額の上限が500円です。入院や薬局での自己負担は発生しません。
なお、2024年(令和6年)からは子ども医療費助成の対象が、高校生まで拡大する予定です。
所得制限はない
福岡市では、保護者の所得に関係なく、子ども医療費助成を受けられます。子どもが高校を卒業するまで医療費の負担が軽減されるのは、大きな安心につながるでしょう。
福岡市「子ども医療費助成制度」
おむつと安心定期便
福岡市では、乳幼児のいる家庭を対象とした新たな見守り・支援策として、2023年(令和5年)8月から「おむつと安心定期便」という取り組みをスタートします。子どもプラザや産後ケア、産後ヘルパーなど子育て関連施設やサービスを利用した際に電子スタンプを受け取り、おむつなどの育児に必要なアイテムと交換できる仕組みになっています。
福岡市「おむつと安心定期便」
その他福岡県内の市町村で受けられる子育て支援
福岡市以外でも、独自の手厚い子育て支援を行っている地域はいくつもあります。福岡県内の自治体の取り組みを一覧で紹介しますので、比較する参考にしてください。
受けられる子育て支援 | 対象の地域 | 内容 |
みんなの子育て・親育ち支援事業活動支援補助金 | 北九州市 | 未就学児とその保護者を対象に活動している団体に対し、2万円を交付 |
子ども・子育て支援基金 | 久留米市 | 子育て支援の環境を整えるための寄附金 |
ブックスタート | 久留米市 | 絵本2冊が入ったブックスタートパックをプレゼント |
子育てアプリ「春っこ」 | 春日市 | 子どもの成長記録の保存や最適な予防接種スケジュールの提案など |
子育て講座 | 苅田町 | 子育てや子育て支援に関する講習の実施(無料) |
子育て世帯ホームヘルプサービス | 大野城市 | 妊娠中または18歳未満の子どもの子育て中、サポーターによる家事や育児のサポート |
北九州市:みんなの子育て・親育ち支援事業活動支援補助金
北九州市では、「みんなの子育て・親育ち支援事業活動支援補助金」の交付を行っています。これは、未就学児とその保護者を対象に活動している団体に対し、活動支援補助金として2万円を交付するというものです。乳幼児向けの育児サークルや、子育て支援のボランティアグループなどが支援の対象となります。
北九州市「みんなの子育て・親育ち支援事業活動支援補助金について」
久留米市:子ども・子育て支援基金
久留米市では子育て支援の環境を整えるため、「子ども・子育て支援基金」を設け、寄附金を募っています。子ども・子育て支援基金を活用して、子育て交流プラザや児童センターなどの運営が行われています。
久留米市「子ども・子育て支援基金」
久留米市:ブックスタート
赤ちゃんのときから本に親しむことは、言葉や心の発育に役立ちます。ブックスタートの取り組みは、全国の多くの自治体で行われていることです。
久留米市では、市内に住んでいる赤ちゃんと保護者に、絵本2冊が入ったブックスタートパックをプレゼントしています。赤ちゃんと保護者が一緒に絵本を開いて楽しむきっかけになるでしょう。
久留米市「ブックスタート」
春日市:子育てアプリ「春っこ」
春日市は、「春っこ」という愛称で、地域密着型の子育てアプリを提供しています。子どもの成長記録を写真付きで保存できたり、最適な予防接種スケジュールの提案が受けられたりするなど、充実した機能を利用できます。
春日市「子育てアプリ 春っこ」
苅田町:子育て講座
苅田町では、「子育て講座」として、子育てや子育て支援に関する講習を無料で行っています。乳幼児の父母や未来のパパ、ママに限らず、おじいちゃん、おばあちゃん、その他子育てに関心がある人ならだれでも受講可能です。
苅田町「子育て講座」
大野城市:子育て世帯ホームヘルプサービス
大野城市では、子育て世帯ホームヘルプサービスを行っています。妊娠中または18歳未満の子どもの子育て中、希望すればサポーターによる家事や育児のサポートが受けられます。利用料金は世帯の所得状況によって変わりますが、1時間あたり0~700円と負担にならない金額です。
大野城市「子育て世帯ホームヘルプサービス」
まとめ
福岡の子育て支援を一覧で紹介しました。福岡では、子育て支援が手厚い地域がたくさんあります。ただし、自治体ごとに支援内容は少しずつ違います。ここに書いた以外の支援や取り組みが行われていることもありますので、調べてみましょう。子育てする地域を選ぶときには、子育て支援の内容も比較してみるのがおすすめです。
森本由紀
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。