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【2023】電気代はどのくらい値上げされる?高騰した理由や影響、必要な対策まで解説

2022年(令和4年)から電気代の値上げが続きましたが、さらに2023年(令和5年)6月から電力会社7社の電気料金が値上げさています。あまりに大きな値上げになると、節約だけでは対策が追いつかず、不安になる人も多いでしょう。今回は値上げ後の電気代や高騰している原因、私たちが取れる対策などについて解説します。

電気代はどのくらい値上がりしてきたか

最初に電気代の値上がり状況と、今後の電気料金がいくらになるかを確認しておきましょう。

電気代の推移

まずは、電気代がどの程度値上がりしているのか、変化を見てみましょう。以下のグラフは、東京電力の2020年(令和2年)1月からの平均モデルの電気料金の推移です。平均モデルとは、従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月の場合で、再生可能エネルギー発電促進賦課金、消費税等相当額を含んだ電気料金です。

2021年(令和3年)1月には6,317円でしたが、2022年(令和4年)3月には8,244円と約1.3倍に値上がりしています。

出典:東京電力「平均モデルの電気料金」より筆者作成

2023年6月からの電力各社の値上げ

2023年(令和5年)6月から、電力7社で電気料金が値上げされました。各社の平均値上げ幅は、以下のとおりです。

  • 北海道電力:20.1%

  • 東北電力:21.9%

  • 東京電力:15.3%

  • 北陸電力:39.7%

  • 中国電力:26.1%

  • 四国電力:23.0%

  • 沖縄電力:36.6%

出典:経済産業省「特定小売供給約款の 変更認可申請に係る査定方針 【概要版】

各社の平均で最低でも東京電力の約15%、北陸電力と沖縄電力では40%近い値上げ幅となっています。

値上げ後の電気料金は?

6月分からの値上げにより、各家庭の電気代はいくらになるのでしょうか。経済産業省では30A・400kWh/月の家庭をモデルとした各社の値上げ前後の電気料金を試算し、以下のようにまとめています。金額で比較しても、大きな値上げであることがわかります。

2023年(令和5年)6月からの電力7社の値上げ前後の電気代の比較

電力会社

値上げ前

値上げ後

北海道電力

1万5,662円

1万8,885円

東北電力

1万3,475円

1万6,657円

東京電力

1万4,444円

1万6,522円

北陸電力

1万1,155円

1万5,879円

中国電力

1万3,012円

1万6,814円

四国電力

1万2,884円

1万6,123円

沖縄電力

1万4,074円

1万9,397円

出典:経済産業省「特定小売供給約款の 変更認可申請に係る査定方針 【概要版】」より筆者作成

電気代の仕組み

電気料金は、複数の料金項目で構成されています。それぞれの電気料金の項目について解説します。

基本料金

電力会社が契約プランごとに設定した定額料金です。基本料金は、電気の使用量がゼロだったとしても発生します。たとえば、九州電力の従量電灯Bの場合、30Aの基本料金は948.72円(税込)です。

電力量料金

使用した電力量に応じて課される料金です。電力量料金は、1kWhあたりの単価に使用電力量を掛けて求めます。主な電力会社では1kWhあたりの単価が3段階に設定されており、電力を使う量が増えるほど単価が高くなる仕組みです。

たとえば、九州電力の従量電灯Bの場合、1kWhあたりの単価は以下のような3段階(税込)となっています。

  • 最初の120kWhまで:18.28円

  • 120kWh超300kWhまで:23.88円

  • 300kWh超:26.88円

出典:九州電力「従量電灯B

再エネ賦課金

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの買取に必要な費用をまかなうために、利用者が負担するお金です。再エネ賦課金単価は、年度ごとに国が一律の金額を定めています。再エネ賦課金は電力消費量に応じて金額が決まり、計算式は「再エネ賦課金単価×1カ月の電気使用量」となります。2023年度(令和5年度)の再エネ賦課金単価は、1.40円/kWhです。

電気代の値上げの原因

昨今の電気代の値上げの主な原因は、以下の3つです。

天然ガスと石炭の価格上昇

電気代の高騰に最も大きな影響を及ぼしているのが、天然ガスと石炭など燃料価格の上昇です。資源エネルギー庁の統計(2023年1月分)によると、火力発電は日本の電源で最も大きな割合(82.6%)を占めています。火力発電の主な燃料は、石炭(35.6%)と天然ガス(36.5%)です。

出典:資源エネルギー庁「電力調査統計 結果概要

ウクライナ情勢と円安

天然ガスと石炭の価格高騰の主な原因の1つは、ウクライナ情勢です。ウクライナに侵攻したロシアに対し、日本を含む西側諸国が経済制裁を行っています。ロシアは石炭・天然ガス・石油の世界有数の輸出国です。ロシアから燃料の輸入ができなくなった国が、他の国から調達しようとしたことが価格上昇につながっているのです。

また、2022年(令和4年)からの急激な円安も石炭や天然ガスの輸入価格に悪影響を及ぼしています。このように複数の要因で燃料価格が急上昇し、電気代の値上がりを招いたのです。

国内の電力供給の不足

以下のグラフは、日本国内の電力供給量の推移を表したものです。国内の電力供給量は、2010年(平成22年)以降減少していることが確認できます。

出典:資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告

原子力発電所の稼働停止

2011年(平成23年)の東日本大震災以降、日本国内では原子力発電所の稼働停止が相次ぎました。現在では稼働している原子力発電所もありますが、全面的な再開の目途は立っていません。原子力発電は2010年(平成22年)には日本の電源の約25%を占めていましたが、2021年(令和3年)には約7%となっています。国内の電力需要に大きな変化がない状況での原子力発電所の停止は、電力不足の原因になっているのです。

火力発電の縮小

原子力発電所の稼働停止により、電力の安定供給は主に火力発電が担うことになりました。しかし、2016年(平成28年)の電力自由化により価格競争が発生し、大手電力会社は不採算の古い火力発電所の停止を進めました。

また、世界的な脱炭素の広がりからの再生可能エネルギーへの転換も、火力発電所の廃止や休止を促進しています。

再エネ賦課金の継続的な値上げ

2023年度(令和5年度)の再エネ賦課金の単価は前年度の1.40円/kWhと前年度の半額以下に値下がりしましたが、再エネ賦課金は以下のとおり値上げが続いていました。

年度

再エネ賦課金単価

2012年度(平成24年度)

0.22円/kWh

2013年度(平成25年度)

0.35円/kWh

2014年度(平成26年度)

0.75円/kWh

2015年度(平成27年度)

1.58円/kWh

2016年度(平成28年度)

2.25円/kWh

2017年度(平成29年度)

2.64円/kWh

2018年度(平成30年度)

2.90円/kWh

2019年度(令和1年度)

2.95円/kWh

2020年度(令和2年度)

2.98円/kWh

2021年度(令和3年度)

3.36円/kWh

2022年度(令和4年度)

3.45円/kWh

2023年度(令和5年度)

1.40円/kWh

出典:東京電力「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」と経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します」より筆者作成

再エネ賦課金制度の始まった2012年(平成24年)には1kWhあたり0.22円だった再エネ賦課金が、2022年度(令和4年)には3.45円にまで値上がりしています。2023年(令和5年)に値下がりした主な原因は、再エネ賦課金の算出に関係する電力の市場価格が高騰したためです。再エネ賦課金は再生可能エネルギーの買取量が増えると高くなる仕組みのため、今後また値上がりする可能性もあるでしょう。

電気代値上げへの「激変緩和措置」とは?

2023年(令和5年)1月から国による電気代・ガス代の補助制度「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(激変緩和措置)が始まりました。この制度の内容について解説します。

政府による電気代・ガス代の補助

電気・ガス価格激変緩和対策事業は、政府が電力会社や都市ガス会社に対して料金を補助する制度です。電力会社やガス会社が受けた補助金は、そのまま利用者の電気代・ガス代の値引きに使用されます。この措置のため、2023年(令和5年)6月の電気料改定後の電気代の各家庭の負担増は限定的になるとされています。

参考:経済産業省「電気・ガス価格激変緩和対策の実施のため、電気・ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました

電気代の補助金額

主に一般家庭用の低圧電力の値引き単価は、以下のとおりです。

  • 2023年(令和5年)1月から8月使用分:7円/kWh

  • 2023年(令和5年)9月使用分:3.5円/kWh

標準的な家庭(30Aの契約で月間400kWhを使用)で、2,800円(7円/kWh×400kWh)が値引きされます(2023年1月から8月使用分)。

激変緩和措置はいつまで?

電気・ガス価格激変緩和対策事業の補助制度が適用されるのは、2023年(令和5年)1月使用分から2023年(令和5年)9月使用分までです。10月以降に継続されるかは未定ですが、燃料代の高騰などの諸問題が解消されないかぎり制度の延長が望まれます。

電気代の値上げによる負担を抑える方法

一度値上がりした電気代が元の水準に戻る見込みは少なく、各家庭での対策が必要です。ここでは、電気代の負担を少なくする方法を紹介します。

節電に取り組む

家計のためにも、地球環境のためにも節電の習慣は大切です。一例として、エアコンや冷蔵庫の節電方法を紹介します。

エアコンのフィルター掃除

エアコンのフィルターは2週間に1度は掃除をしましょう。フィルターが目詰まりしていると冷暖房の効率が下がり、電気代がムダになります。

その他、以下のような方法でエアコンの消費電力を抑えられます。

  • 遮熱カーテンなどで窓からの熱の侵入を防ぐ

  • エアコンの室外機の周りにモノを置かない

  • 扇風機などで空気を循環させる

  • 設定温度を適温にする

冷蔵庫に食品を詰め込みすぎない

冷蔵庫には食品を詰め込みすぎず、庫内をすっきりさせましょう。冷蔵庫にすき間なく食品を詰め込むと吹き出し口からの冷気が流れにくくなり、冷却効率が悪化します。

また、扉の開閉は最小限に抑え、冷気を逃さないようにするのも大切です。温度設定は夏でもできるだけ「中」にし、消費電力を抑えましょう。

省エネ性能の高い家電への切り替え

古いエアコンや冷蔵庫を使っている場合、最新の製品に買い替えると節電効果が期待できます。家電製品の省エネ性能の進化は目覚ましく、10年前の製品と今年の製品では消費電力量に大きな差があるからです。

たとえば、環境省によると、2020年(令和2年)の冷蔵庫は2010年(平成22年)の冷蔵庫より年間電気代が約4,740〜6,090円安くなるとされています。購入して10年以上経つ家電は、思い切って最新の製品へ切り替えてもよいでしょう。

参考:環境省「2020年 VS 2010年 最新家電と10年前の家電どのくらいおトク?

電気料金プランの変更

家庭に合った電気料金のプランに変更することで、電気代を安くできる場合があります。たとえば、電気使用量の多い家庭向けのプランで契約していたが、家族の人数が減って使用量が減ったケースなどです。

九州電力を例に挙げてみると、従量電灯Bの基本料金は50アンペアで1,581.20円です。40アンペアなら1,264.96で差額は316.24円、年間で3,794.88円となります。

太陽光発電や蓄電池の導入

節電で削減できる電気代がわずかな場合、太陽光発電と蓄電池の導入も検討の余地があるでしょう。資源エネルギー庁のデータによると2012年(平成24年)の住宅用太陽光発電システムの設置費の平均は1kWあたり46万5,000円でしたが、2021年(令和3年)は28万8,000円でした。導入費用は年々安価になっており、自治体によっては補助金も活用できます。

太陽光発電で発電した電気は自家消費でき、余った電気は電力会社に売電も可能です。

さらに蓄電池を併用すると太陽光発電と連携して発電した電気を充電したり、必要に応じて消費したりできます。

参考:資源エネルギー庁「太陽光発電について

まとめ

2022年(令和4年)以降、電気代以外も諸物価が値上がりし、私たちの生活はますます苦しくなっています。電気代が値上がり前の水準に戻る見込みは薄く、さまざまな方法で電気代を抑える工夫が必要です。家電の買い替えや太陽光発電の導入には費用はかかりますが、一定の効果が見込めます。手持ちの資金では不足する場合、西日本シティ銀行のローンの活用を検討してはいかがでしょうか。

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