出産・子育て

「男性にも育休を」休業制度の内容を法改正のポイントも含めてわかりやすく解説

最近では国が男性の育休取得を推進するようになり、その一環として育児・介護休業法が改正されました。2022年(令和4年)10月からは男性版産休制度である「産後パパ育休」が新設されたのです。この記事では、男性の育休をサポートする改正前の制度と、改正によってどう変わったのかを解説します。

男性の育児休業とは?改正前の制度を確認

育児休業は女性だけの制度ではなく、従来から男性も取得が可能です。最初に、男性が育児休業を取得するための改正前の制度の概要を解説します。

男女問わず取得できる育休

育児休業は男女問わず、子どもが1歳(一定の場合は最長2歳)になるまで取得可能です。育児休業は育児・介護休業法に基づき労働者に保証されている権利で、勤務先に育児休暇制度がなくても取得が認められています。また、配偶者が専業主婦(夫)であっても、取得は可能です。

育児休業は子どもが1歳以降または1歳6カ月以降に保育園に入所できない等の一定の要件を満たすと、延長が認められています。延長できる期間は子どもが1歳6カ月までで、その期間での復職ができない場合は2歳に達するまで再延長が可能です。

パパ・ママ育休プラス

育児休業は父母そろっての取得も可能です。パパ・ママ育休プラスは対象となる子どもが1歳2カ月までの間に、父母がそれぞれ1年間休業できます。また、通常の育児休業の延長のような特別な事情がなくても、取得が可能です。

ただし、父母1人につき1年間までの取得になります。それぞれの取得時期をずらすことで、1歳2カ月までの取得が可能な点に注意しましょう。

男性の育休期間の日数

男性の育児休業取得は推進されていますが、実際のところ男性は何日くらい育児休業を取得しているのでしょうか。以下の表は、2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日までの間に育児休業を終了して復職した男性の取得期間の割合を示しています。

日数

割合

5日未満

25.0%

5日以上2週間未満

26.5%

2週間以上1カ月未満

13.2%

1カ月以上3カ月未満

24.5%

3カ月以上6カ月未満

5.1%

6カ月以上8カ月未満

1.9%

8カ月以上

3.6%

出典:厚生労働省「2021年(令和3年)度雇用均等基本調査

2018年(平成30年)度の同調査では5日以上2週間未満の取得が35.1%でしたが、2021年(令和3年)度は26.5%となりました。また、1カ月以上3カ月未満が11.9%から24.5%に増加しました。現状、3カ月未満の取得が全体の90%近くを占めています。

男性の育休取得例

男性が育児休業を取得する場合、どのようなタイミングで何日間休むかを各家庭の事情や妻の体調などから考える必要があります。男性の育休取得の例を紹介します。

育児休業を夫婦で同時取得するパターン

妻の出産後から男性が育児休業をスタートさせ、産後の一定期間を夫婦で家事・育児を協力して行うパターンです。特に初めての出産で里帰りができない場合、産じょく期の妻への身体的なサポートが必要です。

産じょく期が終わってからも男性が育休を取得すると、夫婦で同レベルの家事・育児ができるようになります。これにより、ワンオペの防止につながるでしょう。

交代で育児休業を取得するパターン

妻の職場復帰後に、男性が子どもの保育園入園まで育児休業を取得するパターンです。妻が希望する時期に職場復帰したい場合などに男性が育児休業を取得できると、妻のキャリアサポートにつながります。また、お互いに家事・育児を実践することでワークライフバランスを考え、価値観のすり合わせが期待できます。

男性の育休取得促進のための法改正

男性も仕事と育児を両立できるように、2022年(令和4年)4月1日から育児・介護休業法が3段階で改正されています。ここでは、改正内容について解説します。

育休を取得しやすい雇用環境の整備等

2022年(令和4年)4月1日から、雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が義務化されました。具体的な内容は以下のとおりです。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

育休や新設の産後パパ育休が取得しやすくなるように、事業主は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施

  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置

  3. 自社の従業員の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供

  4. 自社の従業員へ育児休業・産後パパ育休制度と取得促進についての方針の周知

本人または配偶者の妊娠・出産の申し出をした従業員への個別の周知・意向確認の措置

事業主は育児休業に関する次の事項の周知と休業の取得意向の確認を、対象の従業員に個別に行わなければなりません。

  1. 育児休業・産後パパ育休の制度内容

  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先

  3. 育児休業給付について

  4. 育児休業期間中の社会保険料について

産後パパ育休の創設・育休の分割取得

産後パパ育休と改正後の育児休業の概要は、以下のとおりです。


産後パパ育休

改正後の育児休業

対象期間・取得可能日数

子の出生後8週間以内に4週間まで

子が1歳(最長2歳)まで

申し出期限

休業の2週間前まで

休業の1カ月前まで

分割取得

分割して2回取得可能

分割して2回取得可能

休業中の就業

労使協定を締結している場合のみ、合意した範囲で休業中の就業が可能

原則就業不可

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内

2022年(令和4年)10月1日からは「産後パパ育休」が創設され、さらに育児休業の分割取得が可能になりました。「産後パパ育休」とは、妻の出産後8週間以内に4週間までの休業を2回に分割して取得できる「男性版産休」ともいえる制度です。通常の育児休業とは別枠で取得できます。

通常の育休も分割取得が可能に

産後パパ育休だけでなく、これまで分割できなかった通常の育児休業も2回に分けての取得が可能です。これらの改正により夫婦の育児休業の取得が一層柔軟にできるようになり、さまざまなパターンでの取得が考えられます。

たとえば、出産後すぐに産後パパ育休を取得し、妻の育児休業終了後に通常の育児休業を取得するような方法も可能です。

育児休業取得状況公表の義務化

2023年4月1日から、従業員1,000人以上の企業は育児休業等の取得状況を年1回公表しなければなりません。公表する内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。誰でも閲覧できるようにインターネット等で公表するため、就職活動の際にも参考にできるでしょう。

育休中の給料と育児休業給付金

育児休業の取得をためらう理由の1つに、休業中のお金の不安が考えられます。ここからは、育児休業中の給料や育児休業給付金などを確認しておきましょう。

育休中の給料は?

育児休業中は給料を支払わない企業も多いです。労働基準法24条により、事業主は働いていない従業員に対して賃金を支払う義務はないからです。

男性の育休中にもらえる育児休業給付金

育休中に勤務先から給料はもらえなくても、一定の条件を満たすと雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の支給率(休業前の給料に対する給付金の割合)が、2段階に分かれています。支給率は最初の6カ月は67%、それ以降は50%です。

支給額の計算式は、以下のとおりです。

  • 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 支給率

休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前6カ月間の賃金を180日で割った金額です。

育児休業前の給料の月額が30万円だった場合、育休が始まってから6カ月間は毎月約20万円、以降は約15万円受け取れます。

給料をもらうとどうなるか

育児休業給付金は事業主から給料が支払われた場合、以下のように調整されます。

支払われる給料の割合

育児休業給付金の調整

13%(30%)※以下

全額支給

13%(30%)※超80%未満

「賃金月額×80%」と給料の差額を支給

80%以上

支給なし

※支給日数が181日以降からは13%から30%になります。

育休中の社会保険料

育児休業中は、厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が免除されます。また、育児休業給付金は非課税で受け取れます。これは育児休業中の手取り収入を、通常時の80%にするという国の考え方からです。

毎月の給料からは所得税・住民税と社会保険料が引かれるため、育休開始後6カ月の手取り収入は育休前の約80%となるわけです。会社から給料がもらえなくても手取りの80%が受け取れるのであれば、家計も助かるのではないでしょうか。

男性が育休を取得するメリット

男性の育児休業取得には、さまざまなメリットがあります。主なものを見ていきましょう。

ワークライフバランスが整う

男性も育児休業を取得すると子育てにかかわりやすくなり、終了後も夫婦で協力していけるようになります。そのためワークライフバランスが整い、公私ともに充実した生活を送れるでしょう。

夫婦どちらかの育児の負担が減る

男性が育児休業を取得して子育てにかかわると、夫婦で同じレベルの育児ができるようになります。そのため、どちらか一方にばかり育児の負担がかかることを避けられ、ストレスが溜まりにくくなります。夫婦関係も長期にわたり良好に保てるでしょう。

子どもの成長のプラスになる

夫婦で協力して子育てにかかわると、1人だけの育児より多くのことを子どもに伝えられます。また、仲のよい両親に育てられた子は自己肯定感が高くなるといわれています。男性の育児休業取得は、子どもの健全育成のプラスになるでしょう。

妻のキャリア形成のプラスになる

男性が育児休業を取得して妻の復職が早まると、妻のキャリアロスも少なくなります。子育てとキャリア形成を両立させたい女性にとって、夫の育児休業取得は大きなキャリア支援です。

視野が広がり新たな発想につながる

子どもを育てるようになると教育やレジャーなど、それまで目に入らなかった新たな世界に触れる機会が増えます。育児休業で家事や育児を経験すると、仕事では得られない気づきも多いでしょう。それらをきっかけに社会人としても視野が広がり、ビジネスの発展が期待できます。

男性が育休を取得するデメリット

男性の育休取得には多くのメリットがありますが、いくつか知っておくべきデメリットもあります。

無給のため家計が苦しくなる

育休中に給料が支払われない会社もあるため、育児休業給付金を受け取っても育休中の家計は通常時より苦しくなります。収入が減るだけでなく、出産や育児に伴う支出や家族が増えることによる支出増があるからです。

子どもの誕生による支出増は、育児休業終了後も続きます。早いうちに出産後の家計のやりくりや子どもの教育費準備について、夫婦で話し合っておきましょう。

キャリアへの影響に懸念が残る

育児・介護休業法では育児休暇を取得した従業員に対して、会社による解雇など不当な扱いを禁じています。しかし、将来のキャリア形成に負の影響を及ぼすおそれがあると考える人は、少なくありません。法改正によって会社の相談窓口の設置も義務づけられ、不利益のない男性の育児休業取得が望まれます。

同僚に業務の負担をかける可能性がある

多くの会社は限られた人員で業務を回しているため、メンバーの育児休業取得が他の社員の業務量の増加につながる可能性はあります。できるだけ業務が円滑に進むよう、育児休業に入る前に引き継ぎなどをきちんとすませましょう。

また、職場の他のメンバーが育児休業を取得した際には率先して協力し、組織全体で助け合う雰囲気作りも大切です。

男性も利用できる育児支援制度

育児・介護休業法に定められた育児と仕事の両立支援は、育児休業だけではありません。以下の制度は男女問わず利用できるので、それぞれどのような内容か知っておきましょう。

短時間勤務

3歳に達するまでの子どもがいる従業員は男女に関係なく、希望すれば1日の労働時間を6時間とする短時間勤務が選択できます。

子の看護休暇

小学校入学前の子どもがいる従業員は、病気やけがによる子どもの看護のための休暇を有給休暇とは別に取得できます。

取得できる日数は対象となる子どもが1人であれば年5日、2人以上であれば年10日までで、時間単位での取得も可能です。

法定時間外労働の制限

小学校入学前の子どもがいる従業員は時間外労働の上限を月24時間、1年間150時間以内にするよう事業主に請求できます。

転勤についての配慮

事業主は従業員を転勤させる場合、育児の状況について配慮しなければなりません。配慮とは転勤についての従業員本人の意向確認や、育児の代替手段の有無(転勤先の保育所調査など)の確認を指します。

所定外労働の制限

3歳未満の子どもがいる従業員は、事業主への請求により所定外労働(残業)を制限してもらえます。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合を除きます。

不利益取扱いの禁止

事業主は従業員に対し、育児休業等の申し出・取得等を理由とする解雇その他の不利益取扱いをしてはいけません。もしそのような扱いを受けた場合は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。

都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

まとめ

男性の育休取得にはお金には替えられないメリットがあり、制度拡充を機に多くの人の活用が期待されます。活用した人やこれから活用する人が協力して、全体で仕事と育児の両立を目指していきましょう。

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