相談者:Tさん(福岡県在住)
夫31歳(会社員)、妻31歳(派遣社員)、長男3歳
Q. 住宅ローン、繰り上げ返済してもいい?
住宅ローンとの向き合い方について、ご教授お願いいたします。
新築一戸建てを購入し、融資額3700万円、変動金利0.725%、元利均等方式のローンを組みました。令和2年から返済が始まり、残高が3500万円弱あります。
繰り上げ返済についてですが、例えば100万円分を今実施するのと、10年後に実施するのとでは、総支払額は変化するのでしょうか。変化するとすれば、どのくらい金額に差が出るのでしょうか。
また、うちの融資額は収入の割に高額だと思っています。住宅ローン控除(減税)額が上限だとすれば、減税適用期間であっても繰り上げ返済しても良いでしょうか? ちなみに令和3年度は、13万6500円の控除を受けているようです。
私(夫)は、控除額に影響が出ないなら、普通預金100万円を繰り上げ返済に充てたいです。生活防衛資金としては、200万円で十分と考えています。一方、妻は繰り上げ返済より投資に回すべきと考えています。団体信用保険を念頭に置いての考えと思いますが、変動金利ということもあり、不安があります。
A. 投資比率を増やすより繰り上げ返済の実行でOK
変動金利は総支払額試算不可。でも繰り上げ返済で支払利息軽減可能
繰り上げ返済は、約定返済(決められた日に返済)とは別に、任意のタイミングで返済をすること。その分はすべて元金の返済に充てられるため、総支払額を減らせるメリットがあります。
総支払額は、いつ実施するかで変わるほか、「返済期間短縮型」を選ぶか、「毎月の返済額軽減型」を選ぶかでも変わります。「期間短縮型」のほうが、総支払額の軽減効果は大きいです。
「今実施するのと10年後に実施した場合の差」をおたずねですが、Tさんのローンは変動金利なので、総支払額が分からず、返済差額も計算できません。
変動金利は半年ごとに金利が見直されますが、5年間は返済額を変えないルールや、5年後の見直し時に返済額を25%以上アップしないルールがあります。金利が急上昇すると返済額に占める利息の割合が多くなり、元金がなかなか減らない事態が起こりうることを知っておきましょう。
次に住宅ローン控除ですが、支払っている税金以上の減税(還付)はないので、お気づきのとおり、減税適用期間中でも、繰り上げによって支払い利息を軽減できます。
まだまだ低金利で利息軽減効果は小さいので、預金は繰り上げ返済でなく投資に回して運用益を稼ぎたい、というのが妻側の見解なのでしょう。でも、投資も不確実性が高く、家計にプラスに作用するかどうかわかりません。すでに貯蓄に占める投資比率が5割を超えていますし、命を担保にローンを組んでいるあなたの意思を尊重したく、繰り上げ返済の実行を支持いたします。
回答者 高橋伸子さん
生活経済ジャーナリスト。長年にわたり国の各種審議会委員を歴任。
消費者の声を国や企業に届ける活動にも注力。
相談者募集!家計の悩みを解決してもらいませんか
あなたの家計も高橋伸子さんにズバッと診断してもらいませんか。
1カ月の収支、家計状況と質問を書いて投稿フォームから応募を。
相談内容(保険、ローンなど)に関するデータは詳しく。
確認のため電話番号は必ず明記してください。
採用者には商品券2000円分を進呈。
転載元:
「リビング北九州・熊本・かごしま」2022年10月15日号掲載
■あわせて読みたい記事
・「金融教育」が義務化される理由とは?必要性や気になる学習内容について
・アプリでできる住宅ローンの残高の確認方法について
高橋伸子
生活経済ジャーナリスト
長年にわたり国の各種審議会委員を歴任。消費者の声を国や企業に届ける活動にも注力。2016年に内閣総理大臣より消費者支援功労者表彰を受ける。