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生前贈与と相続税の違い|節税対策するメリットや効果、デメリットについて

自分が所有している財産は、亡くなったら相続により子どもなどに引き継がれます。しかし、亡くなる前に生前贈与する選択肢もあります。生前贈与と相続の違いを知ったうえで、節税効果も含めメリットのある方法を選びましょう。

生前贈与とは?メリットや効果について

次世代に財産を引き継ぐ方法として、相続以外に生前贈与があります。生前贈与は相続とどう違うのかを理解しておきましょう。

相続発生前に財産を引き継ぐ方法

相続と生前贈与では、財産が移転する時期が異なります。相続では、亡くなった時点で財産が相続人に引き継がれます。これに対し生前贈与では、生きている間に財産が移転するのです。財産を譲る側の人が生存しているか死亡しているかが、大きな違いといえます。

生前贈与は受け取る側の承諾が必要

生前贈与とは、生きているうちに贈与するという意味です。贈与とは無償で財産を譲ることで、契約の一種として民法に定められています。契約は、申し込みと承諾の意思表示が合致して成立するものです。つまり、財産を譲る側の意思だけでは贈与はできず、財産を受け取る側の承諾が必要になります。

受け取る側は相続を放棄できる

相続では受け取る側が承諾しているかどうかは関係なく、死亡時に自動的に財産が相続人に引き継がれます。受け取る側が財産を受け取りたくない場合には、相続放棄をする選択肢があります。なお、相続放棄するには、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。

生前贈与なら時期や相手を選べる

生前贈与は財産を譲る側と受け取る側の契約により行います。当事者間で時期などを決められるため、自由度が高いのがメリットです。

受け取る側が都合の良いタイミングでOK

相続の場合、財産を譲る側が亡くならないと受け取る側は財産をもらえません。人が死亡する時期は予測ができないので、受け取る側にとっては不安定です。生前贈与であれば、双方が合意して時期を決められます。たとえば、子が結婚して住む家が必要になったタイミングで親から子へ家を贈与することも可能です。

相続人以外に生前贈与もできる

相続により財産を受け取れる人は民法で定められており、法定相続人と呼ばれます。法定相続人は、亡くなった人(被相続人)の配偶者と一定範囲の血族です。ただし、血族については以下のような優先順位が定められています。

第1順位

子(死亡していれば孫等)

第2順位

直系尊属(父母等)

第3順位

兄弟姉妹(死亡していれば甥・姪)

相続の際に、法定相続人以外に財産を譲る旨の遺言書を残すこともできます。しかし、相続人には遺留分という最低限の取り分があるため、全て自由に財産を譲れるわけではありません。一方、生前贈与では誰にでも好きなように財産を譲れます。法定相続人以外の親族や、親族以外の人に財産を贈与してもかまいません。

生前贈与すれば相続税の負担を軽くできる

相続税は、基礎控除額を超える遺産がある場合に課税されます。基礎控除額は以下の計算式で算出します。

  • 基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

生前贈与をすれば遺産を減らせます。遺産が基礎控除額以下になれば、相続税はかかりません。基礎控除額を超える遺産がある場合でも、財産が少ないほど税額を抑えられます。

生前贈与のデメリットは贈与税。相続税との違いは?

生前贈与には時期を選んだり相続税負担を軽くできたりするメリットがありますが、デメリットもあります。生前贈与の最大のデメリットは、贈与税がかかってしまうことです。

生前贈与すれば贈与税の負担が大きくなる

贈与税とは個人から一定額を超える贈与があったときに、贈与を受けた人にかかる税金です。生前贈与の際には、贈与税を考慮しておかなければなりません。贈与税は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産から基礎控除額を差し引いた金額に課税されるのが原則です。

年間110万円までの贈与は非課税

贈与税の基礎控除額は110万円です。年間110万円までの贈与なら課税されませんが、110万円を超えると課税対象になってしまいます。一方、相続税の場合には、遺産のトータルの額が基礎控除額以下なら課税されません。基礎控除額は最低でも3000万円(※法定相続人0人の場合)です。つまり、相続であれば課税されないものが、生前贈与にすると課税対象になるケースが多くなります。

贈与税の税率は相続税より高い

贈与税も相続税も、財産額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みです。ただし、同じ金額で比較すると、贈与税の方が税率が高くなっています。どちらにしても課税対象となってしまう場合、通常は相続まで待った方が税金の負担は軽くなります。

亡くなる前3年以内は相続税の課税対象

相続税を計算するときには、被相続人が相続開始前3年以内に贈与した財産も相続財産に含めます。これを生前贈与加算といい、相続税逃れを目的とした生前贈与を防止するための制度です。相続税の負担回避のために生前贈与をしても、3年以内に死亡すれば結局相続税がかかってしまいます。

贈与時の金額で相続税を計算

生前贈与加算を行う場合には、相続時ではなく贈与時の金額を加算します。そのため、相続時までに財産が値上がりしているケースでは、節税になることがあります。

相続時精算課税とは

相続を待って子の世代に財産を移転させた方が、税制上はメリットがあります。しかし、税負担を気にして財産を抱え込んでしまう高齢者が増えると、経済が活性化しません。そこで、次世代への資産移転を円滑化するために「相続時精算課税」という制度が設けられています。

父母・祖父母から子・孫への贈与が対象

相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について選択できる制度です。年齢は、贈与をした年の1月1日を基準に判定します。なお、2022年(令和4年)3月31日以前の贈与については、受贈者の要件は20歳以上です。

2500万円まで贈与税を非課税にできる

相続時精算課税を選んだ場合の贈与者からの贈与は、2500万円に達するまで贈与税が課税されません。複数年にわたって贈与しても、合計額が2500万円以下なら非課税です。なお、贈与額が2500万円を超えた場合には、超えた部分につき一律20%の贈与税が課税されます。

贈与者ごとに選択できる

相続時精算課税は、贈与者ごとに選択できます。父母両方からの贈与について相続時精算課税を選択した場合、5000万円までの財産を親から非課税で譲り受けられます。

贈与した財産額は相続財産に加算

相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、贈与者の相続時に相続財産に加算され、相続税の課税対象になります。贈与財産を加算しても基礎控除額以下なら、相続税はかかりません。相続時精算課税でも2500万円を超えて贈与税を払っているケースがありますが、その分は相続税額から控除されます。相続時精算課税は節税効果を期待できるものではなく、課税を相続時に先送りする制度です。

一度選択すると暦年課税に戻せない

相続時精算課税を利用する場合、贈与税の年間110万円の基礎控除は適用されません。一度相続時精算課税を選択すれば、その贈与者が亡くなるまで相続時精算課税が適用されます。110万円の基礎控除枠を利用する暦年課税には戻せないことにも注意しておきましょう。

生前贈与を利用した節税対策

生前贈与のデメリットは、贈与税が課税されてしまうことです。しかし、非課税枠や特例を利用すれば、税金を抑えられる可能性があります。

基礎控除の範囲内で暦年贈与

贈与税には、年間110万円の基礎控除額があります。毎年贈与しても年間110万円以下におさまっていれば、贈与税は課税されません。毎年の基礎控除額を利用した贈与(暦年贈与)により少しずつ財産を移転させれば、税金の負担を抑えられます。

連年贈与するなら注意が必要

10年にわたって100万円ずつ毎年贈与(連年贈与)すると、基礎控除額内で合計1000万の財産を移転できます。しかし、連年贈与をすると最初から1000万円を贈与するつもりだったとみなされ、合計額に課税されるリスクがあります。毎年の贈与がそれぞれ独立した贈与であることを証明するために、贈与契約書を作っておくなどの工夫が必要です。

子や孫への贈与は非課税特例を利用

父母や祖父母から子や孫へ現金を贈与する場合、利用目的によって一定金額まで贈与税が非課税になる特例があります。

住宅取得資金の非課税

父母や祖父母から自己の居住用家屋の新築・取得・増改築の資金の贈与を受けた場合の非課税額は、以下のとおりです。

  • 省エネ等住宅…1000万円まで

  • それ以外の住宅…500万円まで

受贈者は、贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上(2022年(令和4年)3月31日以前の贈与なら20歳以上)でなければなりません。また、受贈者の所得金額の要件(面積などにより1000万円または2000万円以下)があります。

教育資金の非課税

直系尊属から子や孫への教育資金の一括贈与に適用が可能で、受贈者ごとに1500万円まで非課税になります。この制度を利用するには、銀行などの金融機関で専用の教育資金口座を開設しなければなりません。使途を証明するために、領収証などの提出も必要です。子や孫が30歳に達したとき、口座に残っているお金には原則どおり贈与税が課税されます。

結婚・子育て資金の非課税

直系尊属から子や孫へ結婚・子育て資金を一括贈与する場合に適用が可能で、受贈者ごとに1000万円まで非課税となります。18歳以上(2022年(令和4年)3月31日以前の贈与なら20歳以上)50歳未満の受贈者が対象で、銀行などで専用口座の開設が必要です。なお、結婚関係で支払われる資金については、300万円が限度になります。受贈者が50歳に達したとき、使い残しがあれば贈与税が課税されます。

居住用不動産は配偶者控除を活用

婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合、2000万円まで贈与税が非課税になる制度があります。これは、贈与税の配偶者控除と呼ばれる制度です。配偶者控除は基礎控除と併用ができるため、最大2110万円までの非課税贈与が可能です。

節税効果は相続の方が大きい

配偶者が相続した遺産が1億6000万円以下であれば、配偶者に相続税はかかりません。相続した遺産が1億6000万円を超えても、遺産の2分の1までは非課税です。通常は配偶者控除を利用して生前贈与を行っても、相続税の節税効果はほぼありません。ただし、二次相続まで考えると生前贈与が有効な場合もあるので、税理士に相談するのがおすすめです。

不動産取得税や登録免許税は課税される

配偶者控除を利用して不動産の現物を贈与した場合、贈与税はかからなくても不動産取得税がかかってしまいます。また、不動産の名義変更の際には登録免許税がかかりますが、相続に比べて贈与の登録免許税は高税率です。贈与税以外の税金のことも考慮しておきましょう。

今後は生前贈与による節税ができなくなるかも

近年、相続税と贈与税の課税制度を見直す動きがあります。今後は生前贈与を利用した節税ができなくなる可能性もあるため、注意しておきましょう。

相続税・贈与税は一本化される見込み

近い将来、相続税と贈与税を一体化する法改正が行われるといわれています。与党が2020年(令和2年)12月10日に発表した「令和3年度税制改正大綱」が発端です。「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」旨が記載されていました。

自民党「令和3年度税制改正大綱」

2022年度(令和4年度)の改正は見送り

2021年(令和3年)12月10日に与党が発表した「令和4年度税制改正大綱」では、2022年(令和4年)中の法改正は見送られました。もし今後法改正が行われれば、相続または生前贈与という財産の移転時期に関係なく、同様の課税となることが予想されます。

自民党「令和4年度税制改正大綱」

生前贈与は早めに検討

相続税と贈与税が一本化すると、110万円の基礎控除額を利用した暦年贈与はできなくなる可能性があります。また、贈与税の各種非課税特例はもともと期間限定のものが延長されているので、そのうち廃止されるでしょう。節税のための生前贈与を考えているなら、早めに実行を検討するのがおすすめです。

まとめ

生前贈与と相続では財産が移転する時期だけでなく、かかる税金も変わってきます。タイミングや方法によって節税効果を大きくできるので、よく考えて実行に移すことが大切です。

近い将来、相続税と贈与税を一体化する改正が行われる可能性があります。今後の情報にも注意しておきましょう。


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