今や全国区となった糸島産の卵「つまんでご卵(らん)」。一度食べたら、もう今までの卵に戻れないと言われるほどのリピーター続出の理由は?
糸島市の誇るべき卵を作っている有限会社緑の農園にGo!Go!ワンク編集部がお邪魔してきました。
お話を伺ったのは2代目早瀬憲一さん。34歳。がっしりした体格で学生の頃はラグビーとアメリカンフットボールで活躍していたという早瀬憲一さん。2018年12月から代表となり現在は、緑の農園と直売店兼レストランの「にぎやかな春」、直売店の道向かいで「つまんでご卵ケーキ工房」を営んでいます。取材では養鶏への真摯な取り組みと人気の理由を聞くことができました。
年間売り上げ200万個
全国から届く注文は、地元はもちろん、関東、関西が多く、冬季はお歳暮に加えてクリスマスケーキやおせち料理などの材料にも使われるため注文はさらに増え、卵の年間生産量は200万個に上るそうです。
創業は平成元年、33年の老舗
農園ができたのは平成元年。今は亡き父、憲太郎さんが始められた養鶏場です。慢性腎不全を患い透析を行なっていた憲太郎さんは闘病の疲れから10分仕事して30分休むという働き方で仕事を続けられていたそうです。なかなか充分な養鶏の時間が取れないと思われていたそうですが、それでも鶏たちはすくすくと育ち美味しい卵が産まれたのは何より環境が大事と気づかされたとのこと。
「環境8割、えさ2割」
「父の体験から引き継がれている養鶏の指針が「環境8割、えさ2割」なんです。環境とは「生活環境」と「空気環境」を主に指します。この2つの環境を整えることを創業以来大切にしています」
「つまんでご卵」の人気の理由はここ!
環境とえさが大切とのことですが、お話をうかがうとさらに人気の理由がみえてきました。
1、平飼いで自由に動き回れる飼育環境
「多くの採卵鶏は1坪あたり150羽以上も飼える立体ケージで鶏を育てることができますが、緑の農園では1坪あたりに平均13羽を飼育をしています。鶏小屋は傾斜のある屋根にするなど自然な形で空気循環ができるように設計しています」
鶏はストレスによって産む卵の品質が左右されるそうです。ここでは元気に地面の上を動き回り、放し飼いに近い状態で暮らしているのでストレスが少なく、鶏は必然的に良質な卵を産むのだそう。
「砂浴び」がリラックスの目安
砂浴びは砂や土を体につける行為。寄生虫を落とすための行為ですが人間で言えばお風呂に入ってリラックスしている時のような状態です。
「鶏たちは私たちの前でも砂浴びをするんですね。それは私たちに警戒することなく一番気持ちが落ち着いた時間を過ごしているという目安になるんです」
2、飼料もしっかり吟味
「今は、福岡県産の飼料米、遺伝子組換えでない脱脂大豆、広島県産の牡蠣殻、トウモロコシやビタミン、ミネラルなど厳選された原料をそれぞれ集めて、自分たちで配合を考えて飼料を作っています」
3、低カロリー・低コレステロール
自由に動き回る鶏たちは1日1万歩以上歩くそうです。運動量が多く元気だから健康な卵が産まれる、好循環ですね。
「市販の卵と比べて、カロリーは約12%、コレステロールは10%程度少なくなっているという結果も出ているんです」(2002年7月調べ)
4、濃厚な黄味を生で堪能
「ストレスのない飼い方がいいのでしょうか、「つまんでご卵」には、卵特有の生臭さがありません。そのため、生や半生で食べていただくのが一番違いを感じていただけるし、味の濃厚さも楽しんでもらえると思います。卵かけご飯を試してもらいたいですが、初めはいつもかけている調味料の量を少なくして卵本来の旨味を味わってみてください」
5、賞味期限がなんと1ヶ月!
「賞味期限が長い理由の一つは卵殻表面を洗っていないからです。卵は生まれる時に菌が侵入するのを防ぐ「クチクラ層」という膜に覆われています。この膜は洗うと簡単に取れてしまうので「つまんでご卵」は最前線のバリア(膜)を残す意味で、無洗卵として出荷しています。できれば早く食べていただきたいですが、適切な保存をしていただければ1ヶ月、生でお召し上がりいただけます」
こだわりの環境と飼料の配合、鶏のことを楽しそう話す早瀬さんの鶏への愛情を感じながら、こうして美味しい卵が誕生するのだと実感しました。
■ご紹介した緑の農園さんの「つまんでご卵」は糸島市のふるさと納税返礼品でもあるのです。
鶏小屋を見学
静かで匂いもない 鶏小屋
広い敷地に8戸の鶏小屋。現在約8500羽が飼育されています。8500羽もの鶏が目の前にいるとは思えないほど静かで驚きました。耳をすますとわずかに「クークー」という声。これが砂浴びでリラックスしている時の声のようです。そして鶏糞などの匂いも全くないのです。糞も空気の循環や好気性土壌微生物で分解しているので匂いもないそうです。販売店のすぐ近くに養鶏場があるのですが、全く気づきませんでした。
~編集部員が実食~
卵かけご飯作ってみた!
早く食べたくて、取材を終えてつまんでご卵を買って帰宅。さっそく卵かけご飯をつくりました。
白身はさらりとした部分とゼリーみたいにプルンとした部分の2層になっていて、黄身はプリッとして濃いめのオレンジ色が食欲をそそります。
つやつやでとってもきれいで、なんだかくずすのがもったいない気もしましたがご飯と一緒にいただきました。思っていた以上に濃厚な味わいに、これが本当の卵ってことなの?黄身がとろりと舌にまとわりついて、コクと旨味、甘ささえ感じます。早瀬さんの言われていたとおり、始めは調味料をあまり使わないのが正解です!
つまんでみました~!
そして、やってみたかった、つまんでごらん!にトライ!
できました~。これでご褒美をもらえるわけではないですが、なんだかうれしいものですね。これだけ元気な卵と証明された気がします。
つまんでご卵を育んだ糸島市
糸島市は福岡県の北西部に位置し、人口約10万人の街です。海あり山ありと自然豊かな街で、福岡市へは車や電車で40分の距離にある交通利便性の高い街として近年は「移住したいまちランキング」でも上位に入っています。
糸島野菜、果物や糸島牛、豚などは東京の飲食店でも取り扱われるほど、食の宝庫としても有名です。天然真鯛の漁獲高は日本一、牡蠣の養殖が盛んで冬場になると約30軒もの牡蠣小屋が連なり賑わいます。つまんでご卵をはじめ糸島の自然が育んだ美味しさ満載の特産品を通じて、糸島の魅力も発見してみてください。
編集後記
「働いている人たちがつまんでご卵で仕事していることを自慢してもらえるよう農業の価値を高めたい、ニワトリの幸せを考えて養鶏を営んでいきたい」と話された早瀬さんにこれらの目標をうかがうと
「マヨネーズの商品化を進めています。実はお客さんが"オタクの卵で作ったら美味しいマヨネーズができたよ。なんで作らんと"って言われていたんです。生産量は限られますが、自分のところで作るんだったらできるのでは?と考えて、今機械を購入して秋くらいを目処に商品化を予定しています」
2代目としての新たな事業展開を図る早瀬さん、目標実現はもう目の前、「つまんでご卵」のマヨネーズ、とても美味しそうで今から発売が楽しみです。
(取材2022年5月)