2024年(令和6年)から、NISA制度が大きく変わります。なかでも、2023年(令和5年)まででジュニアNISA制度が廃止されることは、子どもを持つ親にとって関心のある事柄ではないでしょうか。本記事では今後廃止されるジュニアNISAをテーマに、制度廃止後の流れについても解説していきます。
ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)ってどんな制度?
ジュニアNISAとはどんな制度なのか、概要について解説します。
子どものために非課税で資産形成できる制度
ジュニアNISA制度は2016年(平成28年)に始まった、子どもの将来のために非課税枠を利用して資産形成ができる制度です。しかし、利用者数が少ないことなどが背景にあり、2023年(令和5年)までで制度廃止が決定しています。
対象は未成年者
ジュニアNISA制度の対象者は、0歳から19歳までの未成年者です。子ども本人が投資をするのではなく、親や祖父母など二親等以内の人が代理で資産形成をして、将来の教育資金などに備えて運用する仕組みです。
年間80万円の非課税投資枠
ジュニアNISAの特徴のひとつに、「年間80万円の非課税投資枠」があります。年間80万円の投資金額に対して、得られた配当金など利益の金額が非課税になるという意味です。後述しますが、80万円の非課税投資枠は最長5年間設けられるので、最大で400万円の投資額に対して非課税になります。
最長5年間の非課税期間
ジュニアNISAでは、最長5年間の非課税期間が設けられています。この期間内に非課税投資枠の80万円までの資金で得られた利益に関して、非課税になります。
制度廃止後の運用はどうなるの?
2023年(令和5年)に制度廃止となるジュニアNISAですが、その後の運用はどうなるのでしょうか。ここからは、廃止以降の流れについて解説します。
制度廃止時点の年齢によって取り扱いが変わる
2023年(令和5年)末までに20歳の成年者になる場合は、基本的に成年者本人のNISA口座が自動開設されます。一方、制度廃止時点でまだ20歳までに年数がある場合には、20歳になるまで非課税口座として保有し続けられます。それぞれについて、もう少し詳しく説明しましょう。
制度廃止までに20歳を迎える場合
制度廃止前に20歳を迎える場合、自動的に子ども名義でのNISA口座が開設されます。その際、これまでジュニアNISAで投資をしてきた商品はNISA口座へ移管が可能です。なお、NISA口座開設時に一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶ必要があり、ジュニアNISAの移管ができるのは一般NISAを選んだ場合のみです。子ども用のNISA口座から大人用のNISA口座へ、バトンタッチをするとイメージしてください。
制度廃止までに20歳に到達しない場合
子どもが20歳になるまでにNISA制度が廃止してしまう場合でも、20歳になる年まで非課税口座で資産を保有し続けられます。もちろん、2023年(令和5年)までは非課税枠を利用して年間80万円の投資が可能です。その後は継続管理勘定(ロールオーバー用)にて、資産をロールオーバーできます。5年を経過した資産からロールオーバーしていくことで、子どもが20歳になるまで非課税で保有継続ができます。
年齢によらずできること
制度廃止までの年齢にかかわらず、共通してできることもあります。主にロールオーバーに関する内容です。以下ではポイントを紹介します。
非課税期間の5年が終了した後は、運用資産を翌年のジュニアNISA口座の非課税投資枠にロールオーバー可能
ジュニアNISA口座から払い出し制限付き課税口座(未成年口座など)へ金融商品を移管することが可能
払い出し制限付き課税口座から非課税口座へ再投資が可能
ジュニアNISAを利用する際の6つの注意点
ここからは、ジュニアNISAを利用する際の主な6つの注意点について解説します。以下は一般的な注意点であり、個別の不明点や商品ラインナップに関しては西日本シティ銀行の窓口に相談しましょう。
子ども1人に1口座
ジュニアNISA口座は、子ども1人あたり1口座のみ開設できます。両親や祖父母など、運用できる人が複数人いる場合でも、開設できるのは子ども1人あたり1口座のみと決まっています。誰が開設するのかを明確にしておきましょう。
途中で金融機関の変更不可
一般NISAやつみたてNISAは口座開設後に別の金融機関に変更できますが、ジュニアNISAではできません。もしどうしても変更を希望する場合は、いったん開設したジュニアNISA口座を廃止し、他の金融機関で再開設しなければなりません。さらに、それまでの非課税資産については課税されるので注意しましょう。
18歳まで払い出し不可
ジュニアNISA口座に資産があっても子どもが18歳になるまで、原則として払い出しできません。このことから、ジュニアNISAは使いづらいというイメージが定着してしまったことも否めません。もし途中で払い出しをした場合は、口座廃止と同時に非課税資産に対して課税されます。
配当金などの受け取り方法が決まっている
証券会社で口座開設をしたジュニアNISAで運用する商品のうち、国内上場株式の配当金、ETF(上場投資信託)REIT(不動産投資信託)の分配金に関して非課税とするには、受け取り方法を「株式数比例分配方式」にしておかなければいけません。
株式数比例分配方式とは
上記のような配当金や分配金を、一般の銀行口座ではなく証券取引口座で受け取る方法のことです。注意点として、一度株式数比例分配方式を選ぶことにより、対象口座以外の特定口座や一般口座で発生した配当金・分配金も自動的にこの方式で受け取ることになります。
非課税投資枠の繰り越しは不可
年間の投資額が上限の80万円の非課税投資枠に満たない場合でも、残りの枠を翌年に繰り越せません。初年度は60万円を投資し20万円の非課税枠が残った場合、翌年の非課税枠80万円に前年の残り20万円を繰り越して100万円の投資をするのは、できないということです。あくまでも、繰り越しは不可で毎年新たに80万円の非課税投資枠が与えられるのです。
非課税枠の再利用も不可
すでに保有していた金融商品を売却して空いた金額分を、別の商品を買い増しして再利用することはできません。残った分の繰り越しや手放して空いた枠を再利用することは、一切できないので注意しましょう。
特定口座などとの損益通算は不可
ジュニアNISA口座での運用に関して、売買損失はないものと考えられます。そもそも非課税口座内での運用ですので、税法上損失はないと考えられるからです。このことから、性質の違う一般口座や特定口座との損益通算ができません。重ねて、3年間の譲渡損失の繰越控除の対象にはならないということになります。
まとめ
2023年(令和5年)末をもって廃止となるジュニアNISAですが、制度廃止後に救済措置があることで安心できたのではないでしょうか。どう対応するかのひとつの目安は、制度廃止時点の子どもの年齢です。本記事を参考に、非課税制度のメリットを最大限活かした納得のいく運用を進めていきましょう。
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大野翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。