投資初心者の中には「つみたてNISAやiDeCoの違いがわからず、どちらを選ぶべきかわからない」と悩む人が多いのではないでしょうか。つみたてNISAやiDeCoは、税制優遇のある積立投資制度です。この記事では2つの制度の特徴や違い、自分に合った制度の選び方を解説します。
つみたてNISAとは
つみたてNISAはNISA(少額投資非課税制度)の一種で、積立投資によって得られた利益が非課税になる制度です。
つみたてNISA専用口座で毎年40万円の非課税投資枠が最長20年間利用できるため、最大の非課税投資額は800万円となります。
つみたてNISAの投資対象は、「販売手数料は0円」「毎月分配型でない」などの金融庁が定めた基準を満たした株式投資信託に限定されています。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAには以下のようなメリットがあります。
運用益が非課税
投資信託やETFの売却益や分配金は課税されません。20歳以上の人は年齢に関係なく始められて、最長20年間の非課税運用ができます。
いつでも換金可能
つみたてNISAの運用資産は必要に応じて換金でき、使い道の制限もありません。
つみたてNISAのデメリット
一方で、以下のようなデメリットもあります。
非課税投資枠の繰越ができない
つみたてNISAの年間40万円の非課税投資枠は使い切る必要はありませんが、残った場合は翌年以降に繰り越せません。
課税口座との損益通算はできない
つみたてNISAで損失が生じた場合、特定口座などの課税口座との損益通算はできません。損益通算とは、運用で生じた利益と損失を相殺することです。課税口座では損益通算が認められており、利益から損失を差し引くことにより課税所得金額を減らせます。また、損益通算でも控除しきれない損失は、3年間の繰越控除が認められています。
しかし、つみたてNISAでは損益通算も繰越控除も認められていません。
iDeCoとは
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、掛金を拠出する加入者が自ら運用し、60歳以降に受け取る公的年金の上乗せ制度です。
iDeCoの拠出限度額
iDeCoには加入者の属性に応じた毎月の掛金の拠出限度額があります。拠出限度額とは、税制優遇措置が適用される掛金の上限額です。上限となる金額は、個人の属性によって異なります。事前に自分がどこに属するのかを確認しておきましょう。
自営業者、農業者など | 6万8,000円 |
企業型確定拠出年金のない企業の会社員 | 2万3,000円 |
企業型確定拠出年金のある企業の会社員 | 2万円 |
確定給付型年金のある企業の会社員、公務員 | 1万2,000円 |
専業主婦(夫) | 2万3,000円 |
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットは3つの税制優遇です。
掛金は全額所得控除の対象
加入者が拠出するiDeCoの掛金は、その全額が所得控除の対象になります。
運用中の利益は非課税
iDeCoの運用で得られた利益は、つみたてNISAと同様に非課税です。
受け取り時も所得控除の対象になる
iDeCoの運用資産を60歳以降に受け取る場合も、所得控除の対象になります。受け取りは、一括受け取りと年金形式での分割受け取りから選択できます。一括受け取りの場合は退職所得控除、年金受け取りでは公的年金控除の対象となります。
iDeCoのデメリット
iDeCoのデメリットもチェックしていきましょう。
原則として60歳まで引き出しできない
iDeCoは原則として、60歳になるまでは資産を引き出せません。また、60歳から年金を受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要です。通算加入者等期間とは、年金資産の受給資格に必要な期間のことです。50歳以降にiDeCoへ加入する人は、加入期間に注意してください。
手数料がかかる
iDeCoでは、加入時・加入中・受け取り時などにそれぞれ手数料がかかります。費用は定額の他に、金融機関によって異なる場合があります。加入を検討する際は、手数料も確認するようにしましょう。
つみたてNISAとiDeCoの制度を比較してみよう
つみたてNISAとiDeCoでは、どちらが自分に合う制度なのでしょうか。2つの制度を比較してみましょう。
| つみたてNISA | iDeCo |
最低投資金額 | 金融機関ごとに異なるが、数千円から1万円程度が多い | 5,000円 |
年間投資可能額 | 40万円 | 14万4,000円から81万6,000円(国民年金の資格など個人の属性によって異なる) |
投資対象 | 金融庁の基準を満たした投資信託、ETF | 定期預金・保険など元本確保型商品と投資信託 |
税制優遇 | 運用益は非課税 | ・運用益は非課税 ・掛金全額は所得控除の対象になる ・受け取り時も所得控除の対象になる |
資金の引き出し | 可能 | 原則として60歳まで不可 |
最低投資金額はいくらか?
つみたてNISAの最低投資金額は金融機関によって異なりますが、1ヶ月数千円から1万円程度のところが多くなっています。一方、iDeCoの最低投資額は1ヶ月5,000円と決まっています。
どちらの制度も少額から始められ、限度額までは投資金額を変更できます。つみたてNISAの投資額はいつでも変更できますが、iDeCoの掛金の場合は1年に1回までとなっています。
1年間に投資できる金額はいくらか?
つみたてNISAの1年間の非課税投資枠は40万円です。一方、iDeCoの積立限度額は加入者の国民年金の資格や、勤務する会社の企業年金の状況によって変わります。確定給付型企業年金の加入企業の会社員や、公務員の限度額は年額14万4,000円です。老後資金の自助努力の必要性が高い、自営業者の限度額は年額81万6,000円です。
投資できる対象商品は?
つみたてNISAの投資対象は、金融庁が選定した長期・積立・分散に適した投資信託・ETFです。金融機関が取り扱う商品はさらに絞られるため、顧客はあれこれ迷うことなく投資対象を選択できます。初心者にとって豊富なラインナップから選ぶことは、必ずしもメリットとはいえない場合もあります。あえて投資対象を絞ったことは、つみたてNISAの大きな特徴です。
これに対し、iDeCoの投資対象は定期預金・保険商品の元本確保型と投資信託です。商品のラインナップは金融機関ごとに異なりますが、元本確保型が用意されていることは必須となっています。
税制優遇はどうなっている?
つみたてNISA、iDeCoともに運用益は非課税です。通常、運用によって利益を得ると20.315%の税金(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかります。たとえば、投資信託を売却して10万円の利益を得た場合、手取りは約8万円です。しかし、両制度では税金がかかりません。
iDeCoの税制優遇は運用益だけではない
iDeCoの税制優遇はそれだけではありません。拠出した掛金が、全額所得控除の対象になります。これは、所得の高い人ほど有利になるメリットです。さらに積立資産の受け取り時にも、所得控除の対象になります。税制面では、iDeCoはつみたてNISAより優遇されています。
資金を引き出すことはできる?
つみたてNISAでは、運用資産の換金はいつでも自由にできます。急に資金が必要になった場合でも臨機応変に引き出せるので、いざというときにも安心です。ただし、引き出した分の非課税枠は再利用できないことを頭に入れておきましょう。
一方、iDeCoの積立資産は60歳までは原則として引き出すことができません。iDeCoは老後資金を自助努力で準備するという制度の目的があるため、目的外に資金を引き出すことは認められていないのです。iDeCoについてはこの部分を踏まえ、家計やライフプラン全体を見据えた活用を検討しましょう。
どっちがいいの?選び方について解説
つみたてNISA、iDeCoともに税制優遇があり、利用する人にメリットのある制度です。しかし、それぞれ注意するべき点もあります。ここでは、制度の選び方を紹介しますので、自分に合う制度がどちらなのか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
つみたてNISA、iDeCoそれぞれの目的
つみたてNISAの制度の目的は、「自助努力による資産形成の促進」です。資産形成の目的は老後資金でも教育資金でもよく、使途は限定されません。一方、iDeCoは公的年金の上乗せという、明確な目的がある制度です。iDeCoは掛金が全額所得控除になるため、老後資金準備のためには有利です。しかし、掛金額の変更が1年に1回しかできないことや、60歳まで資産の取り崩しができない点も無視できません。老後資金の準備は大切ですが、人によってはそれ以外のライフイベントの資金準備が優先される場合もあります。
子どもの教育費はインフレリスクに注意
子どもの教育費を準備したい場合は、つみたてNISAの活用がおすすめです。子どもの教育費のうち、特に大学の学費は上昇し続けています。金融広報中央委員会によると、大学の授業料はこの40年間で、国立大学で約4倍、私立大学で約3倍に上がっているとのことです。つまり、教育費の準備にはインフレリスクを想定する必要があります。お金がほとんど増えない預貯金だけで教育費を準備すると、長期的には学費の上昇に追いつかない可能性があります。つみたてNISAでの損失発生が不安な場合は、預貯金との併用を考えるのも1つの方法です。
老後資金準備に専念できる人はiDeCoを優先
ライフイベントに必要な資金が準備済みで老後資金準備に専念できる人は、iDeCoの活用を優先するといいでしょう。iDeCoの掛金が全額所得控除の対象になるメリットは、つみたてNISAにはないものです。たとえば、毎月1万円ずつの掛金拠出で年収500万円の人なら、1年間に2万4,000円税額を軽減できます。運用益を確実に出すことはできませんが、所得控除による税額軽減はiDeCoの加入者は必ず受けられます。
積立資産の引き出しが60歳までできなくても問題ない人は、まずはiDeCoでの積立がおすすめです。また、限度額を超えた積立をする場合は他の方法を併用するとよいでしょう。
積立NISAとiDeCoの併用を検討しよう
つみたてNISAとiDeCoは併用することができます。長期で準備する資金は、節税効果のあるつみたてNISAとiDeCoを併用することで、効率の良い資産形成が期待できます。
たとえば、教育資金の準備がメインで老後資金も準備したい場合です。つみたてNISAで教育資金の準備をして、iDeCoを最低限の掛金で積み立てるという方法があります。
また、老後資金をiDeCoで限度額いっぱい積み立て、それ以外はつみたてNISAで準備する方法もあります。
それぞれのライフプランや家計に合わせて、節税になる積立投資を取り入れましょう。
西日本シティ銀行の口座開設アプリでつみたてNISAも申込可能
仕事や育児で忙しい人は、つみたてNISAの口座開設をできるだけ簡単に済ませたいと考えるのではないでしょうか。西日本シティ銀行の口座開設アプリなら、来店不要で投資信託の口座が開設でき、つみたてNISAの同時申込も可能です。わからないことがあれば、店舗で相談もできるので安心です。
まとめ
つみたてNISAとiDeCoはともに、税制メリットのある積立投資制度です。どちらも長期の資産形成に取り入れたい制度ですが、それぞれに長所と短所があります。自分の運用目的に適した制度を選び、場合によっては両制度の併用も視野に入れてください。つみたてNISAとiDeCoの仕組みを理解したうえで、効率的な資産形成をしていきましょう。
- 結婚子育て
松田聡子
群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー
国内生保で法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。