日本では100人のうち約6人が生きている間にうつ病を経験すると言われています。現代病の1つとも言えるうつ病ですが、うつ病になったことがある人は生命保険などの保険に加入できないことがあるのをご存じでしょうか?今回は、うつ病の人が加入できる保険や注意点を説明します。
うつ病になると生命保険に入れない?
うつ病などの精神疾患に限らず、病気の人は生命保険に加入しにくくなっています。生命保険は、多くの人が保険料を出し合って相互に助け合う制度です。加入者の中に病気等で健康状態の良くない人がいれば、不公平になってしまうからです。
保険の告知義務とは?
保険に加入する際には、職業、病歴、通院歴、手術経験等で、保険会社が告知を求めた事項について、保険会社に告知する義務を負います。持病や既往症がある場合には、告知することにより、契約を断られてしまうことがあります。
告知義務違反をしたら?
告知義務に違反して告知事項を告知しなかった場合、保険契約を解除されたり、保険金が支払われなかったりします。加入の際には、病気等の告知をきちんとすることが重要です。
うつ病も告知が必要
多くの生命保険商品では、うつ病も告知義務の対象となっています。うつ病と診断されている場合、他の病気につながるリスクあるいは自殺するリスクが高いと判断されることがあるからです。つまり、うつ病にかかったことがあれば、生命保険に加入しにくくなってしまいます。
うつ病でも生命保険に加入できる条件
過去にうつ病と診断されたことがあっても、生命保険に加入できるケースもあります。具体的には、 うつ病が完治して5年以上経過している場合です。生命保険に加入するときに告知の対象となる既往症は過去5年以内のものです。うつ病と診断されたことがあっても、完治して5年以上経過していれば告知の対象とはならないため、加入できる可能性があります。
うつ病でも加入しやすい生命保険はある?
上で説明したとおり、うつ病の人は生命保険には加入しにくくなっています。しかし、医療保険やその他の保険の中には、加入できるものがあります。
引受基準緩和型医療保険
医療保険にも告知義務はあるため、うつ病の人は生命保険と同様、医療保険にも加入が困難です。引受基準緩和型医療保険であれば、加入条件が大幅に緩和されている医療保険なので、うつ病の人でも加入できる可能性はあります。
告知項目が少ない
引受基準緩和型医療保険では、「2年以内に病気やケガで入院したことがない、もしくは手術を受けたことがない」「直近5年間でがんなど特定の病気の診断を受けたことがない」など告知項目は3~4つ程度と少なくなっています。告知の対象となる年数や病気の種類は、保険会社によって異なります。
無選択型医療保険
医師の審査や告知なしで加入できる医療保険で、引受基準緩和型医療保険よりもさらに加入条件が緩和されたものが無選択型医療保険です。うつ病の人でも加入できますが、加入できる年齢や保障期間に制限が設けられていることが多く、保険料も高くなっています。
就業不能保険
病気やケガで働けなくなり収入が減少したときに補償を受けられる保険のうち、生命保険会社が販売しているものが就業不能保険です。うつ病でも加入可能というわけではないですが、収入減少に備えておく意味で早めに加入しておくのが良いでしょう。
うつ病の人が使える5つの公的支援制度
うつ病の人は、生命保険や医療保険に加入しにくいことを説明しました。保険に入れないとなると、万一のときの備えがなく心配になるはずです。不安を解消するために、まずはうつ病の人でも利用できる公的支援制度や補助制度を知っておきましょう。
死亡リスクをカバーする公的保障
家族の生活を支えている人は、自分が亡くなったときの家族の生活の保障が必要になるでしょう。生命保険に入れなくても、遺族年金を受給できる可能性はあります。
遺族年金
遺族年金は、亡くなった人に生計を維持されていた家族が受給できる公的年金です。国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金があります。
入院リスクをカバーする公的保障
日本は国民皆保険制度が導入されており、すべての人が公的医療保険(健康保険等)に加入しています。公的医療保険により、病院の窓口での自己負担額は実際にかかる金額の1~3割となります。さらに、窓口負担額が高額になってしまった場合には、高額療養費制度もあります。
高額療養費制度
長期入院などにより窓口負担額が一定額を超えた場合に、自己負担限度額を超えた分が戻ってくる制度です。民間の医療保険に入っていなくても公的保障があるため、医療費が膨大になってしまうことはありません。
収入が減るリスクをカバーする公的保障
うつ病やその他の病気で働けなくなった場合には、次のような制度を利用できることがあります。
傷病手当金
会社員が病気やケガで働けなくなった場合には、健康保険から傷病手当金が受けられます。仕事を休んで4日目以降、給与日額の3分の2が最長1年6か月支給されます。
障害年金
病気やケガによって生活や仕事に支障が出た場合には、公的年金の1つである障害年金を受給できる可能性があります。障害年金の対象となるのは、目、耳、手足などの障害に限らず、うつ病や統合失調症などの精神障害も対象になります。国民年金から支給される障害基礎年金と厚生年金から支給される障害厚生年金があります。
労災保険
長時間労働やパワハラなど仕事上の原因によりうつ病になった場合には、労災保険による補償が受けられる可能性があります。ただし、うつ病の場合には必ずしも労災認定が受けられるとは限りません。労災の申請を検討する際には、社会保険労務士などに相談しましょう。
知っておきたい注意すべきポイント
うつ病の人でも、公的支援制度により保障が受けられることを説明しました。ただし、公的支援制度をあてにし過ぎないことも大切です。
公的保障が適用されない場合もある
上に書いた公的保障は、必ずしも受けられるものとは限りません。それぞれの制度で適用の要件が決まっており、要件を満たしていなければ受けられないことがあります。公的保障の適用要件を確認し、自分の場合には支援が受けられるかを確認しておきましょう。
自営業者・フリーランスは公的保障が少ない
自営業者やフリーランスの場合、会社員と比べて公的保障が薄くなっています。
傷病手当金が受けられない
会社員の場合には仕事を長期間休んでも傷病手当金がありますが、自営業者等が加入する国民健康保険には傷病手当金の制度自体がありません。仕事を休めばすぐに収入がなくなってしまいます。
公的年金も少ない
自営業者等の国民年金第1号被保険者は、遺族年金は遺族基礎年金のみ、障害年金は障害基礎年金のみしか受給できず、遺族厚生年金や障害厚生年金は対象外です。自営業者等の人は、不足する保障を準備する必要性が高いと言えます。
>> 保険加入は無駄遣い?保険の要否を判断するためのおすすめ記事まとめ|医療保険・がん保険・就業不能保険
対面型保険とネット保険を比較
うつ病の人でも入りやすい保険はあります。それぞれの保険の加入資格や保障の内容を確認し、自分に合った保険を見つけましょう。
対面型とネットはどちらがいい?
保険は申し込み方法の違いにより、対面型保険とネット保険に分かれます。対面型保険とは保険会社の担当者と面談して申し込みや契約をするタイプの保険、ネット保険とはインターネットだけで申し込みや契約が完結するタイプの保険です。
自分に合ったタイプの保険を選ぶ
対面型保険とネット保険は、どちらが優れているというものではありません。それぞれの特徴を知っておき、自分に合ったタイプの保険を選ぶようにしましょう。
対面型がおすすめの人
保険会社や銀行の担当者に詳しく説明を聞きながら保険を選びたいという人は、対面型保険がおすすめです。対面型保険は商品のラインナップが豊富で、特約を付加して自分に合った形に設計しやすくなっています。
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対面型保険のデメリット
対面型保険では、保険会社の人と顔を合わせて手続きを進めることになるため、途中で断りにくいことがあります。ネット保険と比べて保険料が高めになるのもデメリットと言えるでしょう。
ネット保険がおすすめの人
シンプルな保険で保険料を安く抑えたい人は、ネット保険がよいでしょう。24時間来店不要で申込可能な点も魅力的です。
ネット保険のデメリット
ネット保険ではインターネットですべての手続きを行うため、インターネットに慣れていない人は手続きに戸惑ったり入力を間違えたりしてしまう可能性があります。ネット保険に申し込みたいけど不安がある人は、コールセンターへの問い合わせが可能な保険会社を選ぶと良いでしょう。
まとめ
うつ病の人は生命保険や医療保険に入りにくくなっています。保険に入れなくて困っている人は、まずは受けられる公的支援制度を確認しておきましょう。保険加入の場合は、忙しい人でも24時間簡単に申込できるネット保険の利用がおすすめです。
いまうつ病でない人でも、いつどうなるかわからないのも実情です。将来の備えとして、あらかじめ就業不能保険に加入するというのは一手です。就業不能保険の場合は、うつ病になって働けなくなった場合に保障が受けられます。これを機にご検討ください。
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*保険商品に関するご留意事項について
商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号
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森本由紀
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。