太陽光発電の設置費用はいくら?工事の内訳や抑える方法を知っておこう
太陽光発電システムの導入を検討する際、気になるのはその設置費用ではないでしょうか。設置機器や工事の内訳を知り、費用を抑える方法を知っておけば、スムーズに太陽光発電を導入できます。この記事では、太陽光発電の設置費用の目安と、費用を抑えるための方法をわかりやすく解説します。
太陽光発電の設置費用

まずは、太陽光発電に必要な設置機器・工事の種類と、それぞれの費用の目安を紹介します。
設置機器・工事
太陽光パネルで発電して電力を供給するためには、専用の機器が必要です。
一般的に、次のような機器を設置します。

また、これらの設置機器を正常に稼働させるためには、工事が必要です。
太陽光発電における主な工事は、次のようなものです。

これらの機器や工事にどのくらいの費用がかかるか、次の章で確認します。
設置費用・運転維持費の平均額
ここでは、調達価格等算定委員会の調達価格に関する資料を参考に、設置費用や運転維持費の平均額を紹介します。
新築住宅に設置する太陽光発電機器について、2022年設置の平均値は28.0(値引後26.1万円)/kWです。その内訳は、太陽光パネルが約51.8%、パワーコンディショナー約15.0%、架台約7.5%、その他約0.7%、工事費が約25.4%です。また、住宅用太陽光発電のシステム費用は、新築・既築ともに低減傾向にあります。
一方、太陽光発電の運転維持費では発電量維持や安全性確保を目的に、3~5年ごとに1回の定期点検が推奨されています。1回当たりの定期点検費用の相場は、約3.5万円程度です。また、パワーコンディショナーについては、20年間に1度の交換が目安で、29.2万円程度が相場となっています。
太陽光発電を検討する際には、これらの費用について詳しく調べ、資金計画を立てておくと安心です。
出典:調達価格等算定委員会「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」p22~p23
太陽光発電のメリット・デメリット

太陽光発電には、メリットとデメリットがあります。導入する際には、メリットを最大限活かせるか、デメリットに対応できるかを検討しましょう。
太陽光発電のメリット
太陽光発電を活用する主なメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 環境にやさしい:CO2排出量を削減し、地球温暖化対策に貢献できる
- 電気代の節約:発電した電力を自家消費すれば、節電につながる
- 売電収入:余剰電力を電力会社に販売することで、副収入を得られる
- メンテナンスが少ない:比較的メンテナンスの手間が少ない発電方法で、長期間使用できる
- 災害時の電源:停電時でも、電力を確保できる
このほかにも、住宅の資産価値が向上するなどのメリットも挙げられます。
太陽光発電のデメリット
太陽光発電のデメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 高い初期費用:太陽光発電システムを導入するには、ある程度のまとまった資金が必要
- 天候や時間帯に左右される:曇りや雨の日は発電量が減少し、夜間は発電できない
- 設置場所の制約:日当たりの良い場所が必要で、屋根の形状や強度によっては設置できない
- 景観への影響:太陽光パネルの設置により、建物の外観が変わってしまう
太陽光発電の設置費用を抑える方法

太陽光発電システムの導入を検討する際、自分に合った設置費用を抑える方法を知っておくのがおすすめです。ここでは、さまざまな太陽光発電の設置費用を抑える方法について解説します。
自治体の補助金
太陽光発電システムの導入を考える際、まずは自治体による補助金制度を確認してみましょう。さまざまな自治体で、個人向けや法人向けそれぞれに補助金制度を実施しています。ただし、制度の利用には条件を設けている場合もあるため、注意が必要です。
福岡県内の補助金
太陽光発電は南に行くほど日射量が多く、九州では他の地域より導入が進んでいます。福岡県内の太陽光発電を含む再生可能エネルギー発電設備導入容量は、平成22年度末の約30万kWから、令和4年度末には約309万kWまで増えています。特に、太陽光発電の導入容量が多くを占めている状況です。
福岡市では「住宅用エネルギーシステム導入支援事業(令和6年度)」として、最大75万円(戸建て)の補助を受けられました。こちらはすでに、補助交付予定額が補助枠に達し、受付終了となっていますが、今後も福岡県内の自治体で補助金制度を実施する可能性がありますので、随時確認をしておきましょう。
出典
福岡県「福岡県の再生可能エネルギー導入状況」
福岡市「住宅用エネルギーシステム導入支援事業(令和6年度)」
電力販売
太陽光発電システムで発電した電力は、電力会社への販売が可能です。住宅用の場合、固定価格買取制度(FIT)によって、10年間16円/kWhで固定されています。10年経過後は各自が好きな電力会社と契約して売電できますが、価格は会社によって異なります。
次の大手電力会社の買取価格を参考にしてみてください。
FIT終了後の買取価格(一部)
- 九州電力:7.0円/kWh
- 東京電力:8.5円/kWh
- 中国電力:7.15円/kWh
- 関西電力:8.0円/kWh
出典
資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2024年度以降)」
九州電力「新たに当社への売電を希望されるお客さま」
東京電力エナジーパートナー「再エネ買取標準プラン」
中国電力「FIT制度による買取期間満了後の余剰電力について」
関西電力「買取期間が終了する太陽光発電の取り扱いについて」
リース
太陽光のリースとは、毎月リース料金を支払うことで、初期費用(設置機器・工事)の負担が不要となるサービスのことです。また、余剰電力を売電することも可能です。一般的に、一定期間終了後にはリース料金はなくなり、太陽光発電システムの所有者になれます。
初期費用の負担を回避したい人向けですが、総費用は通常と比べると高くなる傾向にあります。
屋根貸し
屋根貸しは、太陽光発電のために専門業者に屋根を貸し出す方法です。初期費用の負担はなく、専門業者からリース料金を受け取れます。
ただし、リースとは異なり、業者が売電収入を受け取ります。
グループ購入
グループ購入とは、太陽光発電を導入したい家庭が共同でシステムを購入する仕組みです。設置機器をまとめて購入するため、安い単価で購入できる点がメリットです。
グループ購入を推進している自治体もあります。福岡県でも「グループパワーチョイス」として、自治体によるサポートを受けられます。
出典:福岡県「みんなのおうちに太陽光」
太陽光発電を設置する際の注意点・ポイント

太陽光発電システムを設置する際には、いくつか重要な注意点とポイントがあります。これらの点に注意を払うことで、効果的かつ安全に太陽光発電システムを導入できるでしょう。
信頼できる施工業者の選定
太陽光発電システムを長く安心して使うためには、信頼できる施工業者を選ぶことが重要です。
次の点を踏まえて、選定してみてください。
- 業者の実績や評判
- 提案内容や見積価格
- アフターサービスの内容
- 設置する機器の種類、性能 など
複数の施工業者から見積もりをとり、比較検討して吟味しましょう。
設置前の確認事項
太陽光発電システムを設置する際には、次の点に注意します。
- 屋根の形状や強度、日当たりの良さなどを確認し、太陽光パネルを効果的に配置できるかどうか
- 建築基準法や消防法などの関連法規の確認
- 近隣住民への反射光による影響
- 景観を損なっていないか など
これらのポイントは、太陽光発電システムについて調べる過程で、気になる点として出てくるでしょう。不明な点や気になる点は、自治体や専門業者に確認してみてください。
システムの選定
太陽光発電システムを選定する際には、いくつかの重要な点を考慮する必要があります。
- 自家消費型か売電型か
- パネルやパワーコンディショナーなどの機器選定
- 将来的な拡張性やメンテナンスのしやすさ など
使用する機器が安価なものの場合、故障のリスクが高くなったり発電効率が低くなったりする可能性があります。長期的な視点で、品質の高い機器を選ぶことが重要です。メンテナンスのしやすさなど、長く使うことも念頭に置くと良いでしょう。
導入後のメンテナンスと管理
太陽光発電システムを導入したあとは、適切なメンテナンスと管理が不可欠です。
- 定期的な点検とメンテナンス(パネルの清掃や電気系統の点検など)
- 発電量や売電収入などの運用状況の確認
- 発電量の変化や異常値の確認
- 異常や不具合発見時の速やかな専門業者への連絡 など
これらを実施することで、発電効率の低下や故障のリスクを最小限に抑えられます。慣れていなければ気づかないこともあるため、心配な場合はアフターサービスが充実した業者を選定するようにしましょう。
まとめ
太陽光発電システムを導入する際は設置費用や工事内容を把握し、費用を抑える方法を調べておくのがおすすめです。また、信頼できる施工業者と適切なシステムの選定や設置前の確認、導入後のメンテナンスなど管理に注意が必要です。これらの点に留意することで、安心して長く太陽光発電システムを使うことができるでしょう。

藤 孝憲
CFP®・宅地建物取引士(未登録)・住宅ローンアドバイザー・証券外務員2種・DCプランナー2級・エクセルVBAエキスパートなど
2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。