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新紙幣の人物は誰?選ばれた理由や発行時期、導入の目的などを解説

2024年には新紙幣が発行され、3人の人物が新たなお札の顔になります。本記事では新紙幣に掲載される3人について、どんな人物なのかを説明します。新しいお札を手にする前に、3人の人物が起用された理由や新紙幣導入の目的を知っておきましょう。

新1万円札に描かれる人物「渋沢栄一」

渋沢栄一は、「日本経済の父」とも呼ばれる実業家です。2021年(令和3年)に放送されたNHK大河ドラマ『青天を衝け』で主人公として描かれたこともあり、多くの人が名前を聞いたことはあるでしょう。まずは、新1万円札に肖像画が描かれる渋沢栄一について、生い立ちや功績を詳しくみてみます。

渋沢栄一のプロフィール情報

渋沢栄一は、1840年(天保11年)、現在の埼玉県深谷市である武蔵国榛沢郡血洗島村(むさしのくに はんざわぐん ちあらいじまむら)の農家に生まれました。農民出身であったにもかかわらず25歳で幕府に仕えるようになった渋沢栄一は、幕臣としてパリ万国博覧会にも派遣されます。明治政府では官僚も務め、租税や貨幣制度などさまざまな政策立案にたずさわりました。

官僚を退官後は実業界に転じ、第一国立銀行(現みずほ銀行)や東京瓦斯(現東京ガス)、東京証券取引所など500以上の会社の設立にかかわります。その他にも、社会公共事業や教育・研究機関の支援にも尽力しました。公共の利益を追求しながら国の繁栄に貢献した渋沢栄一は、91歳で惜しまれながら亡くなったのです。

なぜ渋沢栄一は「日本経済の父」と呼ばれるのか?

渋沢栄一は、日本最古の銀行である第一国立銀行をはじめ、多数の会社の設立に関与しました。彼がかかわった会社は、日本を代表する大企業に成長してきた実績があります。渋沢栄一は日本経済の発展のために、なくてはならない存在だったと言えるでしょう。そうした功績から、「日本経済の父」あるいは「日本資本主義の父」と称されるようになりました。

渋沢栄一が新紙幣に起用された背景は?

渋沢栄一が設立した第一国立銀行は、国立銀行条例により発券機能も有していました。お札にも縁が深い存在と言えるでしょう。渋沢栄一は企業の利益の追求だけでなく、公共の利益にも目を向けました。渋沢栄一の生き方には現代を生きる我々も学ぶところが多く、新紙幣の顔として起用されたものと思われます。

新1万円札に描かれる肖像画は、70歳の古希のお祝いの際に撮影された写真をもとに作られました。ただし、よりエネルギッシュなイメージにする目的で、60代前半の顔にリメイクされています。これからは日常的に使う紙幣で、若々しく躍動感のある渋沢栄一の顔を目にすることができます。

新5千円札に描かれる人物「津田梅子」

画像:津田塾大学

現行の5千円札の樋口一葉に続き、新しい5千円札でも女性が起用されました。津田塾大学の創立者として知られる津田梅子です。津田梅子の経歴や功績をみてみましょう。

津田梅子のプロフィール情報

津田梅子は、農学者で江戸幕府の通訳も務めていた津田仙と津田初子夫妻の次女として東京で生まれました。先進的な考えを持つ両親に育てられた津田梅子は、わずか6歳のときに親元を離れ、岩倉使節団の一員として渡米します。こうして津田梅子は、日本最初の女子留学生となったのです。

17歳で帰国した津田梅子は、華族女学校の英語教師に就任しました。その後、女子の地位向上のために自分の学校を作りたいと考えた津田梅子は、再度の渡米を決意します。アメリカのブリンマー大学で生物学を学んだ後、帰国して女子英学塾を創設しました。これが、現在の津田塾大学です。津田梅子は64歳で亡くなるまで、生涯を通じて女性の地位向上と女子高等教育の実現のために尽力しました。

津田梅子はなぜ女子教育の先駆者となった?

6歳から17歳までアメリカで最先端の教育を受けた津田梅子ですが、日本に帰国した後、居場所はありませんでした。当時の日本はようやく近代国家の基盤づくりが始まった段階で、女性の社会進出どころではありません。津田梅子に官職が用意されることはなく、大きな失望を味わうことになります。

日本の女子教育の遅れやアメリカとの違いを目の当たりにした津田梅子は縁談も断り、女性の地位向上に一生を捧げる覚悟をしました。津田梅子の功績により、日本の女子教育が大きく進展したことは間違いありません。

津田梅子の新紙幣起用に期待されることとは?

女性の社会進出は進み、男女共同参画社会に向けた取り組みも活発になってきました。とはいえ、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップレポート2023」によると、男女平等度ランキングで日本は146か国中125位となっています。まだまだ他の先進国に遅れをとっている状況です。

日本では、今もまだ男女格差が大きい場面があります。津田梅子の新紙幣起用は、男女関係なく誰もが対等に力を発揮できる社会の実現に寄与するでしょう。男女共同参画に向けて、人々の意識が向上することが期待されます。

新千円札に描かれる人物「北里柴三郎」

画像:北里研究所病院

「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎は、細菌学の分野で多大な功績を上げたことで有名です。日本初である伝染病の研究所「私立北里研究所」を設立した新千円札の顔、北里柴三郎についてみてみましょう。

北里柴三郎のプロフィール情報

北里柴三郎は、熊本県の庄屋の長男として生まれました。藩立の西洋医学所で学んだ後、上京して東京医学校(現東京大学医学部)を卒業し、内務省衛生局に勤務します。その後、ドイツに留学した北里はコッホに師事し、世界初の破傷風菌の培養に成功しました。

日本に帰国後は、私立伝染病研究所の初代所長に就任します。しかし、伝染病研究所の文部省移管に反対して辞職しました。その後私立北里研究所を設立し、狂犬病、インフルエンザ、赤痢などの血清開発に取り組んだのです。

北里柴三郎は、慶應義塾大学部医学科の初代医学科長や日本医師会の初代会長も務め、医学界の発展に大きく寄与しました。門下生には現行千円札の顔、黄熱病の研究で有名な野口英世もいます。

北里柴三郎が近代医学に貢献したこととは?

北里柴三郎が生涯を通じて取り組んだのは、伝染病の研究です。当時の日本では伝染病で命を落とす人が多く、北里柴三郎の2人の弟もコレラで亡くなっています。

伝染病から人を守りたいという強い使命感で研究の道に進み、伝染病の予防や治療へ道を開いたのです。北里柴三郎の功績により、多くの命が救われるようになりました。

北里柴三郎が新紙幣に起用された意味は?

北里柴三郎は、感染症は予防することが大切という考え方を広めました。コロナ禍を経験し、感染症予防の重要性を改めて認識している人も多いのではないでしょうか。北里柴三郎の新紙幣起用には、感染症で命を落とす人が減るようにという願いも込められています。

新紙幣の人物はどうやって決まったの?

新紙幣の肖像画は、誰でもよいわけではありません。ここからは、新紙幣導入時の人物の選定方法や条件について解説します。

財務省が設けた条件がある

紙幣の様式は、財務省、日本銀行、国立印刷局で協議し、最終的には財務大臣が決定します。新紙幣の人物を決めているのは財務省です。新紙幣の人物選定には厳密な基準はありませんが、財務省では概ね次のような理由で人物を決定しています。

新紙幣の人物選定の条件

  • 偽造防止の観点から、なるべく精密な写真を入手できること

  • 肖像彫刻の観点からみて、品格のある紙幣にふさわしい肖像であること

  • 肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること

財務省ホームページ

なお、かつては聖徳太子など古代日本の人物の肖像画が紙幣に採用されたこともありました。近年は明治以降の人物から選ぶ方針が定着しています。

選ばれた3人の共通点

今回選ばれた3人の人物は、教科書にも載っているほか、ドラマなどでもとりあげられています。我々にとってなじみのある人物であり、財務省の基準も満たしていると言えます。さらに3人の人物は、現代にも通じる普遍的な課題に取り組んだ点でも共通しています。3人の人物の功績をたたえながら、これからの社会をよりよくしていくことが、現代の我々にも求められているのです。

新紙幣の目的は?いつから発行される?

ここまで、新紙幣の人物が誰なのかについて説明してきました。ここからは、新紙幣の導入の目的や発行時期について解説します。

新紙幣導入の目的

紙幣や貨幣を刷新する目的は、偽造されたお金が出回らないようにすることです。紙幣については、これまでも20年程度で様式が刷新されてきました。現在の紙幣は2004年(平成16年)に発行開始されたもののため、ちょうど20年ぶりの変更ということになります。

新紙幣の特徴

この20年で、印刷技術も大幅に進歩しました。新紙幣では高精細な「すき入れ」や「3Dホログラム」と呼ばれる技術を新たに採用している点も注目されています。

すき入れ(すかし)の高度化や3Dホログラムの導入

すき入れとは「すかし」とも呼ばれ、紙の厚さを繊細に変えて表現する技術です。新紙幣では、現行のすき入れよりもさらに精密なものになりました。3Dホログラムとは、印刷された肖像が三次元で浮かび上がり、見る角度によって回転する技術です。最新の技術を駆使し、より偽造されにくい紙幣になっているのです。

ユニバーサルデザインの適用

新紙幣では、ユニバーサルデザインを推進していることも特徴です。ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、文化等の違いに関係なく、誰にとってもわかりやすく使いやすい普遍的なデザインを言います。

日常的に使う紙幣は、外国人や目の不自由な方にとってもわかりやすいものでなければなりません。ユニバーサルデザインの考え方をふまえた紙幣デザインは、今や世界的な潮流となっています。

新紙幣の額面の数字は従来の紙幣より大きくなっており、区別がつきやすくなっています。新紙幣は多色刷りですが、新1万円札は茶系、新5千円札は紫系、新千円札は青系と見分けやすい工夫も施されています。

2024年7月発行開始予定

新紙幣の発行開始は、2024年7月3日に決定しました。日本銀行は、2024年3月末までに新紙幣を合計45億3,000枚印刷する予定です。夏には3人の人物を描いた紙幣が出回ることになります。

自動販売機やATMなども、新紙幣に対応できるよう準備が進められています。なお、新紙幣導入後も、従来の紙幣は引き続き使用できます。

まとめ

新紙幣は偽造防止の目的で導入されます。今回の新紙幣では、最新の技術も用いられているほか、ユニバーサルデザイン推進の工夫も施されています。現代に共通する課題に取り組んだ人物の肖像画も採用されました。新紙幣の発行に際し、新たにお札の顔となる人物の功績にも注目しておきましょう。

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