投資には株式投資や投資信託など、種類がいろいろあります。今回は、投資の中でも老後資金などを見据えて、手堅く運用する場合に選択の一つとして考えられる不動産投資、中でもアパート経営について説明します。
アパート経営は不動産投資の中でも代表的であり、安定した家賃収入を長期にわたって得られる点が魅力です。しかし、無計画に始めると、空室が続いて赤字になるようなリスクも考えられます。
アパート経営は初期投資費用(=不動産購入資金)が大きくなる傾向にありますが、将来の投資の選択の一つとして、どういったものなのか知っておくのもよいと思います。
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今回はアパート経営の目的やメリット、リスク、始め方について解説しますのでぜひご一読ください。
アパート経営とはどんな不動産投資?
アパート経営とは不動産投資の一種で、所有するアパートを第三者に貸して家賃収入を得る不動産貸付業です。最初に、アパート経営の概要を解説します。
アパート経営の仕組み
アパート経営はアパート一棟を取得し、家賃収入を得るのが基本です。アパートオーナーには、それ以外にアパートの管理業務も発生します。多くの場合、アパート経営以外の仕事を持つ人は不動産管理会社に管理を委託します。
アパート経営には火災保険料や固定資産税のようなさまざまな経費が必要です。家賃収入からそれらの経費を差し引いた残りが不動産所得となります。
アパート経営とマンション経営の違い
アパート経営とマンション経営は、所有する不動産を貸付けて家賃を得るという仕組みは同じです。
一般的にアパートはマンションに比べて戸数が少なく、取得費もランニングコストも低めです。そのため、アパート経営は比較的少ない資金で始められる投資といえます。
アパート経営の利回りと収支
ここではアパート経営を成功させるために不可欠な知識である、利回りや収支について解説します。
アパート経営の利回り
アパート経営の利回りとは、物件の取得費用に対して得られる収益の割合を数値化したものです。主な利回りには、表面利回りと実質利回りの2種類があります。
表面利回り
表面利回りは、物件価格に対して得られる家賃収入の割合を表す数値です。計算上、経費や税金は考慮せず、表面的な収益性を示すもので、以下の計算式で求められます。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 |
一般的に不動産の広告に記載される利回りは、表面利回りです。実際に取得してからの利回りは、より低くなることを知っておきましょう。
実質利回り
実質利回りは物件取得時の諸費用や、取得してからの経費や税金も加味した実質的な利回りです。以下の計算式から求めます。
実質利回り=(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 諸経費)× 100 |
実質利回りは表面利回りより数値が低くなり、アパート経営の実態を反映したものとなります。そのため、物件の収益性を判断するには、実質利回りを見るべきといえます。
アパート経営の収入
アパート経営で得られる収入には、以下のようなものがあります。
家賃:アパートオーナーが入居者から受け取るアパートの賃料
共益費:アパートの維持管理に必要な費用
礼金:入居時に入居者からオーナーに対して支払われるお金
更新料:契約更新の際に入居者からオーナーに対して支払われるお金
アパート経営の費用
アパート経営では、収入の他に費用や税金がかかります。それぞれについて解説します。
アパート経営でかかる費用
アパート経営でかかる税金以外の費用には、以下のようなものがあります。
アパートローンの返済:アパートローンを組んだ場合の返済金
管理手数料:不動産管理会社にアパートの管理を委託する場合の手数料
修繕費:物件の修繕費用
減価償却費:アパートを取得した費用を耐用年数で分割して計上するもの
損害保険料:建物にかける火災保険料・地震保険料など
広告宣伝費:入居者募集にかかる広告費用
アパートローンを組む場合の返済で、利子部分は不動産所得の経費として計上できます。しかし、元本については経費として扱われない点に注意が必要です。
アパート経営でかかる税金
アパート経営には物件取得時、保有中、売却時などに、以下のような税金がかかります。
アパート物件取得時 | 不動産取得税・登録免許税・印紙税・消費税 |
アパート運用中 | 所得税・住民税・固定資産税・都市計画税・事業税 |
アパート物件売却時 | 譲渡所得税・消費税 |
アパート保有期間中の事業税は、アパートの独立した室数が10室以上の場合にかかります。
物件取得時にかかる不動産取得税・登録免許税・印紙税、および運用中にかかる固定資産税や都市計画税は、経費として計上できます。
アパート経営の主な目的
アパート経営の目的を明確にすることは、事業計画のうえで重要です。主なアパート経営の目的を紹介します。
相続税対策
アパート経営には税の優遇がいくつかあり、代表的なものに相続税があります。自己所有の土地にアパートを建てると「貸家建付地(かしやたてつけち)」となり、所定の計算式のもとで土地の評価額が下がります。また、貸付事業用の宅地等は相続の際に小規模宅地等の特例の対象となり、200㎡まで50%評価減されるのです。
アパートローンを組んでいた人が返済中に亡くなると、相続人が債務を相続します。その場合、引き継いだ債務の全額を相続税評価額から控除できます。
相続税以外の税金対策
アパート経営は、相続税以外の税の軽減効果もあります。
固定資産税対策
自己所有の土地にアパートを建てると、戸数×200㎡以下の部分が小規模住宅用地となります。小規模住宅用地は、固定資産税評価額が6分の1に軽減されます。多額の固定資産税に悩む人に、アパート経営は有益といえるでしょう。
所得税対策
不動産所得の経費のルールを利用すると、所得税の軽減につながります。不動産所得の計算では支出を伴わない減価償却費など、さまざまな経費の計上が認められているためです。
不労所得の確保
現役世代の中には、働いた収入以外の不労所得で生活を安定させたいと考える人もいるでしょう。居住用の不動産は不況の影響を受けにくいため、アパート経営は比較的安定した投資と考えられます。節税目的に比べ、収益性を重視した計画が必要となるでしょう。
老後の私的年金として
アパート経営の家賃収入を、老後の生活資金に充てる場合もあります。年金収入だけではなく、アパート経営による家賃収入があれば老後の生活にゆとりが持てるでしょう。家賃収入は公的年金の上乗せに適しています。
アパート経営のメリット
安定した収入が見込める
アパート一棟の経営はワンルームマンションなどに比べ、安定した収入が期待できます。
一方で、賃貸経営には空室や滞納のリスクが伴います。
しかし、一室程度の空室の影響は限定的で、全室が空室にならないかぎりは家賃収入がゼロになることはありません。
インフレに対応できる
一般的にアパートなどの不動産投資は、インフレに強いといわれています。物価が継続的に上昇するインフレの状態になると、現金や預貯金の価値は目減りします。一方、アパートなどの不動産は物価の上昇とともに、資産価値や家賃の上昇が期待できるのです。長期的な物価変動が不安な場合、アパート経営は解決策の一つとなるでしょう。
生命保険代わりになる
アパートの取得時にローンを組む人が団体信用生命保険に加入すると、亡くなった場合にローンの残債が一括返済されます。もし、アパートローンの返済中に万が一のことがあっても遺族にローンは残らず、アパートと家賃収入を残せるのです。
節税効果を期待できる
自己所有の土地にアパートを建てると、固定資産税が軽減されます。また、貸家建付地として土地の評価額が下がり、相続税の節税につながります。
家賃収入にはさまざまな経費を差し引けるため、所得税や住民税も抑えられる点もアパート経営の魅力です。
投資効率がよい
アパート経営では借り入れの活用で自己資金以上の物件取得が可能なため、効率のよい投資ができます。これをレバレッジ効果といいます。
たとえば、1,000万円の自己資金で年間60万円の家賃収入が見込めるアパートを買ったとすると、表面利回りは6%です。これに対し、1,000万円の自己資金に借り入れた2,000万円を足して年間180万円の家賃収入が見込める物件を買ったとします。この場合、同じ表面利回り6%だとしても、得られる家賃は3倍です。
借り入れは誰でも利用できるわけではありませんが、レバレッジ効果はアパート経営のメリットの一つです。
アパート経営のリスク
アパート経営では少なくとも数百万円の資金を必要とするため、以下のようなリスクをしっかり理解する必要があります。
空室が発生するリスク
アパート経営で避けられないリスクが、空室の発生です。アパート経営の収入源は家賃なので空室が多かったり、長引いたりすると収入減のダメージは大きくなります。
空室リスクの対策としては賃貸需要のある地域を選ぶことや、適正な家賃設定などが考えられます。そのためには、周辺の状況のリサーチが必要です。また、客付けに長けた仲介会社を見極めて契約することも一つの方法です。
家賃を滞納されるリスク
家賃滞納は、空室と並ぶオーナーの収入減少につながるリスクです。家賃の滞納があっても簡単には退居もさせられないため、不動産管理会社にしっかり入居審査をしてもらう必要があります。また、入居者に連帯保証人を付けてもらう、家賃保証会社と契約してもらうなどの回収対策も重要です。
ローンの金利が上昇するリスク
変動金利のアパートローンを利用して物件を取得する場合、金利上昇で返済額が増えるリスクがあります。対策としては固定金利のローンへの借り換えなどが考えられます。アパートローン借り入れの際は、金利動向を考えて金利タイプを検討しましょう。
資産価値が下落するリスク
アパートのある地域の地価が下降すると資産価値が下落し、売却価格も下がるおそれがあります。人口減少が続く地域では地価は下降する傾向にあるため、物件を取得する際に将来性のある地域かどうかの分析が重要です。
売りたいときに売れないリスク
所有するアパートを売ろうとした場合、すぐに売れるとはかぎりません。株式や投資信託などの金融資産と違い、不動産の売却で適切な買い手を見つけるには時間がかかります。急にまとまったお金が必要になった場合、アパートの売却は現金化の予定が立てにくい方法です。
災害のリスク
アパートの建物については、火災や台風、大地震などの災害で損壊や滅失するおそれがあります。物件を取得する際に周辺のハザードマップなどを調べ、洪水による浸水想定区域に指定されている土地などは避けるほうが無難でしょう。また、中古アパートを購入するなら、耐震性や防火性のチェックも重要です。
アパート経営の始め方
アパート経営を始めるにはどのような準備や計画が必要でしょうか。アパート経営を始める流れを解説します。
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アパート経営の知識を身につける
アパート経営を始めるには、さまざまな知識が必要です。知識ゼロでアパート経営を始めると、失敗して赤字経営を続けることになりかねません。アパート経営に必要なのは、以下のような知識です。
物件の選び方
アパートローンの種類や金利タイプの選び方
優良な不動産管理会社の選び方
アパート経営に関連する税の基本と節税対策
資金計画の立て方
資金計画を立てる
取得する物件の相場を踏まえた資金計画を立てます。アパートローンを利用する場合は、ローンの返済計画も考えなくてはなりません。
また、アパート経営が始まってからの収支シミュレーションも必要です。満室の状態だけを考えるのでなく、空室率が上がった場合の収支も確認しておきましょう。
アパートを取得する
自分の希望に合うアパートを取得します(建設または中古物件を購入)。中古物件を購入する場合、情報収集をじっくり行い、空室になりにくいアパートを見つけましょう。アパートを新築する場合、信頼できる建築会社を選びましょう。
不動産管理会社と契約する
アパートを取得したら、不動産管理会社と契約しましょう。不動産管理会社は入居者募集業務と、建物管理業務を行います。対応が難しい入居者とのトラブルも、管理会社に任せられます。そのため、管理会社選びはアパート経営においてとても重要です。複数の管理会社を比較し、優良な会社を見極めましょう。
入居者を募集する
アパートを新築した場合や中古物件に空室がある場合、入居条件を決めて入居者を募集します。入居者の募集業務を仲介会社に依頼する場合、媒介契約を締結します。
まとめ
アパート経営は比較的安定した投資ではありますが、いくつかのリスクもあります。準備や計画を万全にして、堅実な経営を目指しましょう。その他、戸建、マンション、土地などで自己資金を有効活用したい人は、西日本シティ銀行の「NCB不動産オーナーズローン」を検討してみるのもいいでしょう。団体信用生命保険付きなので、オーナーに万が一のことがあっても安心です。
松田聡子
群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー
国内生保で法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。