改正児童手当法が成立し、高所得者世帯の児童手当が廃止となりました。そもそも児童手当とはどのような制度で、いつまでもらえるのかをご存じでしょうか?この記事では児童手当に関する基礎知識を詳しく解説します。
児童手当とは?
児童手当とは、0歳から中学校卒業(満15歳)までの子どもを育てている保護者に対して行政から支給される手当(お金)です。次世代の社会を担う児童に資することを目的とした制度で、外国籍や海外に留学中の児童でも日本国内に住所があれば申請できます。
支給される期間は中学校卒業まで
児童手当の支給期間は、0歳から中学校卒業(15歳に達した後、最初の3月31日)までです。
いくらもらえるかは子どもの年齢や保護者の所得によって変わる
以下に、児童手当の支給額に関する条件を表にまとめています。
出典:内閣府『児童手当のご案内』をもとに筆者作成
特例給付について
児童手当は、前年の所得額が1200万円以下(所得制限限度額以上)なら「特例給付」として、年齢に関わらず児童1人につき月額5000円が支給されます。※所得制限限度額については後述します。
支給される子どもの数え方
18歳に達した後の最初の3月31日までを「児童手当の支給における子ども」と定義して数えます。以下に、4人(19歳・16歳・12歳・6歳)の子どもがいる家庭に支給される児童手当額の一例を表にまとめました。※受給者の所得が所得制限限度額以下の場合
出典:内閣府『児童手当のご案内』をもとに筆者作成
支給月は2・6・10月の年3回
児童手当の支給は毎月ではなく年3回です。前月までの4ヶ月分が2月(10月~1月分)、6月(2月~5月分)、10月(6月~9月分)に支給されます。
共働きの場合の受給者は「所得の高い人」
父母ともに仕事をしている場合は生計を維持する程度が高い人、つまり所得の高い人が受給者となります。所得の高い人が変わった場合は、受給者を変更する必要があります。両親が離婚または離婚協議中で生計を別にしている場合は、児童と同居して養育している人に支給されます。
児童手当の用途
保育料や学校給食費などの納付
受給者が事前に申し出れば、保育や学校関連の費用を児童手当から天引きで支払えます。自治体ごとに実施されるため、希望する人は市区町村役場の担当課に問い合わせてみましょう。
教育資金のために積立する
子どもの将来の教育資金のために、児童手当を使わずに積立することも検討してみましょう。うっかり使ってしまうことを避けるため、児童手当の振込先は生活費用の口座とは別にするのがおすすめです。
以下は、教育費の積立に適した代表的な方法です。
【積立式定期預金】
児童手当を定期預金に積み立てていく方法です。積立方式や積立間隔を選べたり、途中で金額を見直したりできるものなどがあります。低金利の状況で大きく増やすことは期待できませんが、リスクを避けてコツコツと確実に貯めたい人にはよいでしょう。
【積立投資信託】
投資信託で貯金のように毎月コツコツと積立しながら、複利効果で教育資金を増やす方法です。インフレにも対応しやすく、教育資金として長期運用すればリスクの幅を抑えられる可能性があります。
知っておきたい所得制限について
児童手当の支給額は、受給者の所得額によって制限される場合があります。
世帯主の年収が1200万円以上の場合、2022年(令和4年)10月からの支給分が廃止されます。また年収1200万円以下であっても、世帯主に一定の所得があると児童手当が「特例給付」(減額)になる場合もあります。
所得制限限度額とは
児童手当の支給額は、受給者の所得と扶養親族などの数によって決まります。この児童手当における通常の支給額と、特例給付を分ける基準となる所得額が「所得制限限度額」です。
出典:内閣府『児童手当のご案内』をもとに筆者作成
所得や控除の計算方法(児童手当法施行令第3条)
自分の所得が所得制限限度額に該当するかを知るためには、下の図の計算式に当てはめて計算します。
出典:横浜市『令和3年6月から児童手当の所得や控除額の計算方法が変わります。』
扶養親族などの数え方
扶養親族の数とは、前年の12月31日時点に扶養している人数です。
扶養親族などの数が0人とは?
以下の場合は、扶養親族などの数は0人になります。
前年12月31日の時点で子どもが生まれていなかった場合
離婚後、父親の扶養に入ったまま母親と子どもの2人で生活している場合
配偶者の年収は103万円以下であること
配偶者を扶養親族などの数に含めるには、パート収入で計算すると年収103万円以下(年間所得38万円以下)であることが条件です。
70歳以上の人を扶養している場合は限度額が増える
その年の12月31日時点で70歳以上の配偶者または扶養親族がいる場合は、所得制限限度額に1人あたり6万円を加算します。
収入額の目安
収入額は給与所得者を対象とした目安の金額です。自営業者やフリーランスなどの事業所得者は、当てはまりません。所得制限限度額の判定基準となるのは所得額になるため、以下の方法で所得額を確認しましょう。
【会社員などの給与所得者】
源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」
【自営業やフリーランスなどの事業所得者】
収入金額(年間の売上)から必要経費(青色申告特別控除含む)を差し引いた金額