資産運用の必要性を感じていても、「損をするのが怖い」と投資を始められない人は多いかもしれません。投資は元本保証ではないので、損失が生じる可能性があります。
しかし、投資のリスクを正しく理解すれば、リスクを抑えて運用することは可能です。今回は、投資のリスクの種類やリスクヘッジの考え方をお伝えします。
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資産運用の必要性とは
投資のリスクを知るには、なぜ資産運用が必要なのかを理解することが大切です。まずは資産運用の必要性について確認していきましょう。
預貯金だけでお金を増やすのは難しい
かつては金利が高く、銀行に預けているだけでお金が増える時代もありました。しかし、現在は低金利が続いており、預貯金だけでお金を増やすのは難しい状況です。
将来に向けてお金を増やしていくには、預貯金と並行して資産運用に取り組む必要があります。資産の一部を株式や債券、不動産などに振り向けることで、預貯金のみよりもお金が増える可能性が高まります。
教育費や老後資金の確保
教育費や老後資金のように、将来のためにまとまったお金を用意するには資産運用が有効な手段といえます。中長期で投資に取り組むことで、複利効果が期待できるからです。
複利効果とは、運用益を元本に組み入れて運用を継続することで、利益の増え方が大きくなっていく効果のことです。時間をかけて投資に取り組めば、より多くのお金を準備できる可能性があります。
インフレ(物価上昇)への備え
お金の価値は常に一定ではなく、物価の状況に左右されます。インフレになって物価が上がると、同じ商品を購入するより多くのお金が必要になるため、実質的に預貯金の価値は目減りします。
たとえば、物価が2倍に上昇すると、同じ商品を購入するのに今までの2倍のお金がかかるので、預貯金の価値は実質半分になってしまいます。
株式や不動産は物価上昇を上回る利回りが期待できるので、一般的にはインフレに強い資産と言われます。預貯金と併せて株式や不動産を保有すればインフレに備えられます。
投資のリスクが怖い。投資リスクを正しく理解しよう
投資に対して「何となく怖い」という漠然としたイメージを持つ人もいるでしょう。ここでは、投資にはどのようなリスクがあるのかを確認していきましょう。
国内の資産(株式など)に投資するときのリスク
国内の資産に投資するときには、主に以下2つのリスクがあります。
価格変動リスク
価格変動リスクとは、保有資産の価格が変動する可能性のことです。資産の価格は常に変動しているため、値上がりすれば利益を得られますが、値下がりして損失が生じることもあります。
一般的には、大きなリターンが期待できる金融商品は、価格変動リスクも大きい傾向にあります。
信用リスク
信用リスクとは、有価証券の発行体(国、企業など)の財政状態が悪化し、元本や利息の支払いが困難となる可能性のことです。財政破綻や倒産が発生すれば、最悪の場合は債務不履行となり、投資したお金が返還されない恐れもあります。
海外投資のリスク
資産運用では国内の資産だけでなく、海外の株式や債券などに投資することも可能です。海外投資には、価格変動リスクや信用リスクに加えて以下のリスクもあります。
為替変動リスク
為替変動リスクとは、為替レートの変動によって保有資産の価値が変動する可能性のことです。海外資産は外貨で取引されるため、為替レートの影響を受けます。
たとえば、1ドル=100円のときに海外株式に100万円(1万ドル)投資した場合、1ドル=110円になると評価額は110万円(1万ドル×110円)に増えます。しかし、1ドル=90円になると、評価額は90万円(1万ドル×90円)に減ってしまいます。
このように、海外投資では為替レートに応じて資産価値が変動することがあります。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、投資対象国や地域の政治、経済、社会環境の変化によって資産価値が変動する可能性のことです。
たとえば外国債に投資している場合、その国の政治が不安定になったり財政状態が悪化したりすると、元本や利息が予定通り支払われず、債務不履行となるリスクがあります。
一般的には、先進国に比べると新興国はカントリーリスクが高い傾向にあります。
リスクに備えるために。知っておきたいリスクヘッジの考え方
投資にはリスクがありますが、商品選びや運用方法を工夫すればリスクを抑えることは可能です。ここでは、投資を始める前に知っておきたいリスクヘッジの考え方をお伝えします。
まずは少額から投資を始める
初めて投資に取り組むときは、最初から大きな金額を投資せずに少額から始めましょう。投資金額が大きくなると、大きな損失が生じるリスクも高まります。
投資にはまとまったお金が必要だと思うかもしれませんが、中には1,000円程度から投資を始められる商品やサービスもあります。まずは少額から始めて、慣れてきたら少しずつ投資金額を増やしていくといいでしょう。
複数の資産に分散投資を行う
投資のリスクを抑えるには、1つの資産だけに投資するのではなく、複数の資産に分散投資を行うのも有効です。特定の資産の値下がりを他の資産の値上がりでカバーできるので、リスク分散につながります。
たとえば、「株価の値下がりで生じた損失を、債券価格の値上がり益でカバーする」といった具合です。
一般的には、株式と債券は異なる値動きをする傾向にあります。また、資産の価格は投資対象国や地域の状況、為替によってさまざまな値動きをするため、国内外の株式・債券を組み合わせることでリスク軽減が期待できます。
積立投資を長く続ける
資産の価格は常に変動しているので、初心者が投資タイミングを判断するのは難しいかもしれません。毎月一定額を購入する積立投資なら、自動的に買い付けてくれるのでタイミングを考える必要がなくなります。また、積立投資で購入タイミングを分散することで、購入単価を平準化させる効果も期待できます。
金融庁の資料によると、地域・資産を分散した積立投資を長く続けると元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。短期投資で利益を出そうとせず、積立投資で時間をかけて資産を増やすことが大切です。
商品・サービスのコストを比較する
将来のために時間をかけて資産を増やしていく場合は、低コストの商品・サービスを利用することも重要です。
売買手数料や運用管理費用などの運用コストは、投資成果に大きな影響を与えます。資産運用を始めるときは複数の商品・サービスを比較して、なるべくコストを抑えましょう。
自分に合った運用の仕方を選ぶ
リスクの取りすぎを防ぐために、自分に合った運用の仕方を選ぶことも大切です。
たとえば、投資に興味はあっても知識や経験がない場合は、無理に自分で運用せずにプロに任せるのも一つの方法といえます。
知識や経験に合わせて、無理なく取り組める運用方法を選択しましょう。
初心者がリスクを抑えて投資を始めるなら何がいい?
初心者が「リスクを抑えて投資を始めたい」と思っても、具体的にどんな方法があるかわからないのではないでしょうか。ここでは、初心者におすすめの投資商品・サービスをまとめて紹介します。
初心者におすすめの投資商品・サービス一覧
投資信託
投資信託とは、複数の投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。運用で得られた利益は、投資金額に応じて投資家に分配されます。
投資信託を利用すれば、国内外の株式や債券、不動産などに投資ができます。積立縦投資にも対応しており、一般的には1,000円程度から購入でき、初心者でも投資を始めやすいでしょう。
投資信託を保有している間は「信託報酬」という手数料が運用資産から差し引かれるので、なるべく信託報酬が低い商品を選ぶことが大切です。
つみたてNISA
つみたてNISAとは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。投資の利益には通常約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAでは非課税で運用できます。
毎年40万円までの非課税投資枠があり、20年間で最大800万円まで投資可能です。つみたてNISAの対象商品は資産形成に適した一定の投資信託に限定されているので、初心者でも商品を選びやすいでしょう。
つみたてNISAを始める場合は、取扱金融機関で口座開設の手続きを行います。
iDeCo
iDeCo(イデコ)とは、自分で掛金を拠出して自分で運用する私的年金制度です。投資信託や定期預金などで運用を行います。iDeCoは節税効果が高く、以下3つの税制メリットがあるのが特徴です。
● 掛金は全額所得控除
● 運用益は非課税
● 受取時は退職所得控除または公的年金等控除が適用
掛金は月5,000円から1,000円単位で選択でき、掛金の上限額は国民年金や企業年金の加入状況によって異なります。たとえば、自営業者は月6.8万円(年81.6万円)、会社員は勤務先の年金制度に応じて月1.2~2.3万円(年14.4~27.6万円)まで拠出できます。
iDeCoの掛金は、原則として60歳まで引き出せないので注意が必要です。iDeCoを始める場合は、取扱金融機関で手続きを行います。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーとは、人口知能(AI)を活用した資産運用サービスです。最初に簡単な質問に答えて運用プランを選択すると、投資商品の選定や売買、リバランスまで資産運用のほとんどを任せられます。
ロボアドバイザーを利用すれば、専門知識がない初心者でも簡単に投資を始められるでしょう。多くのサービスでは、運用資産の1%程度の手数料がかかります。お金の運用を任せたい場合は、ロボアドバイザーを検討するといいでしょう。
まとめ
投資にはリスクがあるため、損失が生じる可能性があります。しかし、投資のリスクを正しく理解して運用方法を工夫すれば、リスクを抑えながら資産を増やすことも可能です。この記事で紹介した内容を参考に、まずは少額から投資を始めてみましょう。
- 投資
大西 勝士
AFP、2級FP技能士
会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より金融ライターとして活動。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆中。