相続や譲渡などさまざまな理由から、主に住んでいる住宅以外に住宅を保有することになり、空き家のまま保管する場合もあります。本記事では、空き家の片付け費用の目安となる相場や整理の手順、安く抑える方法についてわかりやすく解説していきます。
空き家を処分する前には片付けが必要
居住用として利用しない空き家の処分方法はいくつかあります。処分をするためには、まず空き家を片付ける必要があります。ここからは、空き家の片付けと処分方法について解説していきます。
自力で片付ける
自力で片付ける方法は、最も低コストです。空き家の所有者である本人や親族で片付けるため、せいぜい荷物を運び出すためのトラックをレンタルする程度のコストで済みます。ただし、自力で片付けるには限界があるということも覚えておきましょう。
粗大ごみに出す
自力で片付ける場合は、事前にその地域のごみ出しのルールを確認しておきましょう。自治体によっては、ごみ分別のルールが細かく指定されていることがあります。また、ごみを出していい曜日もさまざまです。粗大ごみに関しては、地域のクリーンセンターに持ち込むか、自治体窓口で粗大ごみを出す手続きを行い、予約して収集を依頼する場合もあります。
リサイクルショップへ買取依頼
本や衣類など捨てるにはもったいないものがある場合は、自分でリサイクルショップに持ち込むか、大量にある場合は買取依頼をすることもできます。基本的には出張費は無料で行っていることが多く、たとえ買い取り額が少額であっても、追加料金が発生することはほとんどありません。
実家を片付ける場合の注意点
特に相続で所有することになった実家が空き家の場合は要注意です。実家の片付けは、同時に遺品整理でもあるからです。
思い出の品の数々を、どこまで思い切って処分することができるのかについては、精神面でも負担が大きいものです。悩みながら片付けを進めることになるので、通常の空き家の片付けよりも時間がかかることもあります。
清掃業者に委託する
清掃業者への依頼は、基本的にはまず見積もりを取ります。その内容で折り合いがつけば依頼となりますが、業者の見積もり内容は必ず隅々まで確認するようにしましょう。例えば廃棄物の処理法について、オプションなどの別料金などの確認が必要です。
業者へ委託した場合の料金相場などに関して、詳しくは後述しますので、ぜひそちらを参考にしてください。
解体業者に一括依頼する
遠方に住んでいるなどの理由から片付けにいく時間がない場合などは、家財道具ごと解体業者に一括で解体を依頼することもできます。
空き家の処分にかかる費用で最も高いと推測されるのは、この一括解体を依頼する場合です。家の解体費用と、解体した全てのものの処分費用などから、100万円~300万円の費用がかかるのが一般的です。
家財道具を含めて家ごと解体し処分することになるので、事前に処分してほしくないものがあれば伝えておくなどの打ち合わせは必ずしておきましょう。
空き家を処分する方法とは?
一通り片づけが終わったら、その後空き家をどうするか検討します。片付ける前に検討しても良いですが、解体や売却、借家にするにしても家財道具が残ったままでは先に進むことができません。まずは片付けをし、その後具体的にどうするか決めていく流れがスムーズでしょう。
相続で取得した物件の場合、その後の処分について勝手に動くことができないこともあります。処分方法に悩む場合は、行政や不動産業者(宅建士)などの専門窓口に早めに相談しましょう。
賃貸として活用
家を片付けて家財道具を全て出したら、空き家を貸家として一定期間貸し出すという処分方法があります。
賃貸物件として管理していくことになりますので、その後の家の管理費などは家主(持ち主)の負担になります。家を所有し貸し出している間は、いくら家賃収入があるとはいえ継続的に管理に伴う出費もあるということです。
まだ築年数が古くなく、当面の間は自分または親族で住む予定がない場合には、賃貸として活用することも検討してみましょう。
売却
家を片付けたら、そのまま売却するという処分方法もあります。例えば遠方にある実家の処分に際し、現在の持ち主の居住地から遠いなどの理由で今後住むことはないと判断した場合などは、思い切って売却するのも一つです。
相続を原因とした空き家の取得では、法定相続人が複数いるなどの理由で、売却した金額を均等に分ける場合もあるかもしれません。売却する場合の注意点として、思っているような価格で売れないかもしれないという点と、売却までに時間がかかる場合があるため、時間的な余裕を持って進めましょう。
空き家バンクへ登録
売却や賃貸では、民間の不動産業者を介して手続きを行います。一方、近年では国や自治体の協力のもと、「空き家バンク」という制度を利用することができます。
国土交通省が主体となり実施している「空き家バンク」では、空き家のある自治体の「空き家バンク」に登録することで、その地域の定住者を増やすことや、地域活性化を促進する目的があります。
家を解体せずに、そのままの形で希望者に有効活用してもらえることから、所有者にとっても精神的な負担が少ないと人気の制度です。
古民家や空き家を処分するメリット
誰も住んでいない空き家や古民家をそのままにしておくより、処分したほうがメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、項目別にまとめて紹介していきます。
維持費がかからなくなる
住んでいないとはいえ、空き家の所有者には固定資産税の支払い義務があります。この他にも空き家の修繕にかかる費用負担は少なくないため、処分せずに保有したままではデメリットが多くあります。
この場合、空き家を処分することで維持費がかからなくなりますので、金銭的な負担軽減につながります。
管理する手間が省ける
遠方の空き家を所有している場合では、空き家の日常的な管理も時間的に負担が大きい場合があります。台風や豪雨の予報が出ても、すぐに空き家の養生に行くことができない場合もあるでしょう。庭のある一軒家では、草木の管理だけでも大変です。
空き家を処分すれば、このような管理の手間から解放されます。
地域の安全に貢献できる
空き家のある地域の防災・防犯の観点から、住んでいない空き家をそのままにしておくよりも、何らかの形で処分してしまうほうがメリットがあると言えます。
空き家のままにしておくと、台風などの自然災害で近隣に被害を出す可能性も考えられます(瓦が飛ぶ、塀の破損など)。万が一の際に地域に迷惑をかける前に、空き家を処分しておくと安心です。
特定空き家に指定されない
空き家であっても、所定の条件を満たした居住用の家屋に対しては、固定資産税の減免制度が適用されます。しかし、空き家のまま長く放置しているなど管理状況が良くない場合は「特定空き家」に指定されることがあります。
特定空き家に指定されると、固定資産税の減免ができなくなるほか、空き家の状況によっては罰金を支払うことになります。
特定空き家の指定は、2015年(平成27年)5月に施行された「空家等対策特別措置法」に基づくものです。日常的な空き家の管理が難しいなど不安がある場合は、早めに処分を検討しましょう。
業者へ依頼した場合にかかる費用の相場
空き家の処分には、いろいろな種類があることがわかりました。ここからは、その中でも業者へ依頼した場合の費用について紹介します。
一軒家(4LDK以上)の場合
インターネット上で業者のサービス料金を検索したところ、一軒家(4LDK以上)の場合の相場として、平均22万円以上はかかるということがわかりました。
間取り別・費用相場
部屋の広さや荷物の量によって、業者へ依頼した場合の費用は変わります。一軒家以外の費用相場は以下のようになります。
ワンルーム | 3〜8万円 |
1DK | 5〜12万円 |
1LDK | 7〜20万円 |
2DK | 9〜25万円 |
2LDK | 12〜30万円 |
3DK | 15〜40万円 |
3LDK | 17〜50万円 |
必ず複数の業者へ見積もりを依頼する
空き家片付け業者は、事前に空き家の情報を提供することで概算の見積もりを提示してくれます。このとき1か所ではなく、複数の業者へ見積もりを依頼するようにしましょう。
そうすることで、自身の保有する空き家の処分にかかる費用の相場や、どれが必要でどれが必要でない金額なのかが見えてきます。
処分費用を抑える2つのコツ
空き家片付け業者へ依頼する場合、その費用は家の状態や家財道具の多さによって差があります。なるべく処分費用の負担を軽減するためにはどうすればよいか、ここから2つのコツについて紹介します。
事前に片付けをして荷物を減らしておく
業者に依頼する前に、自分で片付けをして、できるだけ多くの荷物を事前に処分しておきましょう。業者へ支払う費用は荷物の多さで変動します。つまり処分を依頼する荷物が少なければ、その分費用が少なくて済みます。
どうしても前もって片付けができない場合は仕方がありませんが、費用負担を極力抑えるためには事前の片付けをおすすめします。
不用品を譲渡する
事前の片付けに関連したコツですが、不用品を譲渡すると、モノを処分できると同時に社会貢献になる場合があります。例えば空き家の近隣住民へ譲ったり、寄付を募っている地域のボランティア団体に譲渡するなどして、モノを減らすといいでしょう。
また、地域の情報掲示板へ告知をし、引き取りに来てくれる人へ譲るという方法もあります。買い取り業者が買い取らなかった品物でも、無料であれば必要とされる場合があります。
まとめ
空き家の処分に関しては、時間や費用の負担が少なくないということがわかったかと思います。早めの対策をすれば時間や費用に余裕を持つことができます。どうすればいいかわからないからといって放置したままだと、特定空き家に該当してしまうリスクもあり、あまり良いことはありません。本記事を参考に、空き家対策を早めに行うことをおすすめします。
- 空き家
大野翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。