結婚や出産などのライフイベントを迎えたときは、保険を検討するタイミングの一つです。代表的な保険に「生命保険(=死亡保険)」と「医療保険」がありますが、違いがよくわからない人もいるでしょう。この記事では、死亡保険と医療保険の違いや、加入すべき保険の見極め方についてわかりやすく解説します。
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死亡保険と医療保険の違いとは
死亡保険は死亡や高度障害に備える保険、医療保険は病気やケガに備える保険です。それぞれの特徴をお伝えします。
死亡保険の特徴
死亡保険では、保険期間中に被保険者(保険の対象者)が死亡または高度障害状態となった場合に、受取人に対して保険金が支払われます。
家計を支える人が亡くなった場合、収入が減少して遺族の生活に支障が出るかもしれません。死亡保険に加入すれば、もしものときにはまとまったお金を遺族に残すことが可能となります。
医療保険の特徴
医療保険では、病気やケガによる入院や手術、治療を対象に保険金が支払われます。
病気やケガで働けなくなれば、仕事復帰までの間は収入が減少し、生活費が不足する恐れがあります。また、働きながら治療を受ける場合も、まとまった医療費がかかるかもしれません。医療保険に加入すれば、病気やケガの医療費を保険金でカバーできるでしょう。
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死亡保険の主な種類
死亡保険にはいくつかの種類があり、保険期間や保険金の受け取り方などに違いがあります。死亡保険の主な種類とそれぞれの特徴は以下の通りです。
終身保険
終身保険とは、保障が一生涯の死亡保険です。年齢に関係なく、被保険者が亡くなったときに保険金が支払われます。保険料を一生払い続ける「終身払い」と、一定期間払い込む「有期払い」の2種類があります。一生涯の保障を確保したい場合は終身保険を選ぶといいでしょう。
定期保険
定期保険は、保障が一定期間の死亡保険です。保険期間中に被保険者が死亡した場合に保険金が支払われます。保険期間は「10年」「60歳まで」のように、年数や年齢で決めることが可能です。保険金額は保険期間を通して変わりません。
子どもが自立するまでなど、一定期間だけ保障を確保したい場合は定期保険を検討しましょう。
収入保障保険
収入保障保険は、「毎月10万円」のように保険金を年金形式で受け取ることができる死亡保険です。保険金額は時間の経過とともに減少します。また、定期保険に比べて保険料が安い傾向にあります。
保険金を年金形式で受け取ることができるので、生活費として使いやすいでしょう。商品によっては保険金を一括で受け取ることも可能ですが、年金形式より受取総額が少なくなる可能性があります。
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医療保険の主な種類
医療保険もいくつかの種類があり、保障内容や対象となる疾病が異なります。医療保険の主な種類とそれぞれの特徴は以下の通りです。
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院したり、手術を受けたりしたときに保険金を受け取ることができます。手術を受けたときは「手術給付金」、入院した場合は入院日数に応じて「入院給付金」が支払われます。
特約を付加して通院治療や先進医療に備えることも可能です。幅広い病気・ケガの医療費に備えたい場合は、医療保険を選ぶといいでしょう。
がん保険
がん保険は、がんの保障に特化した保険です。手術や入院の保障はもちろん、がんと診断されたときや通院治療のときにも保険金が支払われる商品が多いです。
がんは医療保険でも保障されますが、医療保険は入院日数に制限が設けられていることが多く、通院は保障対象外となることもあります。がん保険であれば「入院日数無制限」「通院治療も保障」など、がん治療に対して手厚い保障が用意されています。
女性向け医療保険
女性向け医療保険は、女性特有の病気になった場合に保障が上乗せされます。基本的な仕組みは通常の医療保険と同じですが、乳がんや子宮内膜症など、女性特有の病気に対して手厚い保障が用意されています。
就業不能保険(所得補償保険)
就業不能保険(所得保障保険)は、病気やケガによる入院・在宅療養で長期間働けない場合に備えるための保険です。支払対象外期間(免責期間)を超えても就業不能状態が続く場合に、就業不能状態から回復するまで継続して保険金が支払われます。
通常の医療保険とは異なり、働けない状態であれば在宅療養でも保障されます。長期間働けなくても、当面の生活費を心配せずに治療に専念できるでしょう。精神疾患は保障の対象外、または支払回数に制限が設けられていることがあるので、契約前に保障内容を確認しておくことが大切です。
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保険に加入するなら死亡保険と医療保険のどっちを選ぶ?
これから保険に加入するなら、死亡保険と医療保険のどちらを選べばよいのでしょうか。ここでは、加入すべき保険の見極め方をお伝えします。
死亡保険を検討すべきケース
以下のようなケースでは、死亡保険の加入を検討する必要があります。
家族のために死亡保障を確保したい場合
自身に万一のことがあったときに、遺族が生活費に困る場合は死亡保険を検討しましょう。特に子どもが小さいうちは、これからまとまった教育費が必要になるため、死亡保険の優先度は高いといえます。
夫婦が共働きで家計を支えている場合は、夫と妻がそれぞれ死亡保険に加入しておくと安心です。
教育費や老後資金を準備したい場合
解約返戻金がある貯蓄型の死亡保険は、教育費や老後資金を準備する手段として活用できます。子どもの進学や定年退職のタイミングに合わせて保険期間を設定すれば、必要な保障を確保しながらまとまったお金を準備することが可能です。
積立貯蓄と同じような感覚で、毎月保険料を払いながら必要なお金を準備したい場合は加入を検討しましょう。
葬儀費用を準備したい場合
葬儀費用を準備したい場合も死亡保険を活用することが可能です。自身にもしものことがあれば、葬儀費用をはじめ、入院費用の清算やお墓の購入費用などの経済的負担が遺族に生じる可能性があります。
十分な預貯金があっても、故人の銀行口座は相続手続きのために凍結されてしまうため、引き出せる状態になるまでに一定期間かかります。死亡保険に加入し、遺族が保険金を受け取ることができるようにしておくと安心です。
相続税の負担を軽減したい場合
死亡保険を相続税対策として活用することも可能です。死亡保険の死亡保険金は相続税の課税対象ですが、一定額までは非課税となります。相続税の負担を軽減しながら、少しでも多くの資産を家族に残したい場合は死亡保険を検討しましょう。
医療保険を検討すべきケース
以下のようなケースでは、医療保険の加入を検討する必要があります。
病気やケガに備えたい場合
病気やケガをしたときにかかる医療費や収入減への保障が必要な場合は、医療保険を検討しましょう。種類によって対象となる疾病が異なるため、幅広い病気・ケガに備えたいなら通常の医療保険、がんの保障を手厚くしたいならがん保険など、目的に合った保険を選ぶといいでしょう。
先進医療を受けたい場合
先進医療とは、厚生労働大臣が認めた医療技術のことです。公的保障の対象外であるため、医療費は全額自己負担となり、高額な医療費が発生するケースもあります。病状次第で先進医療を受ける可能性があるなら、先進医療が保障される医療保険に加入しましょう。
必要に応じて死亡保険と医療保険の両方に加入する
死亡保険と医療保険は目的が異なるため、両方に加入するのも選択肢の一つです。
たとえば、十分な預貯金がない子育て世帯で家計を支える人に万一のことがあれば、遺族は生活を維持できなくなるかもしれません。また、病気やケガでまとまった医療費がかかっても、預貯金がなければ支払うことができないでしょう。
家族構成や資産状況によっては、死亡保険と医療保険の両方への加入を検討するのがおすすめです。
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死亡保険・医療保険に加入する際の注意点
保険に加入するときは、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。ここでは、死亡保険や医療保険に加入する際の注意点をお伝えします。
公的保障の内容を理解しておく
保険に加入する前に、まずは公的保障の内容を理解しておきましょう。年金や健康保険の加入者は、死亡時や高額の医療費がかかったときなどに一定の保障を受けられる可能性があります。公的保障を考慮して保険金額を決定すれば、保険料を抑えることが可能となります。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。
国民年金の場合は、子が18歳に到達する年度の末日まで一定の遺族基礎年金が支給されます。また、厚生年金に加入している会社員が亡くなった場合は遺族厚生年金も上乗せされます。死亡保険に加入するときは、必要な生活費から遺族年金の見込額を差し引いて保険金額を決定するといいでしょう。
高額療養費
高額療養費とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になったときに、自己負担限度額を超えた部分が払い戻される制度です。
病気やケガで高額の医療費がかかっても、実際の負担額は一定額までに抑えることが可能となります。医療保険に加入する際は、高額療養費を考慮して保険金額を決めましょう。
傷病手当金
傷病手当金とは、健康保険に加入する会社員が会社を休んだときに受け取れる給付金です。業務外の病気・ケガの療養のための休業など、一定の条件を満たす場合に支給されます。
傷病手当金の支給額はそれまでの給料の約3分の2で、支給期間は最長1年6か月です。会社員が医療保険に加入するときは、傷病手当金の見込額を確認しておきましょう。
障害年金
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事が制限される場合に受け取ることができる年金です。国民年金では「障害基礎年金」、厚生年金では「障害厚生年金」が支給されます。がんや糖尿病などの疾患も対象で、年金額は障害の程度によって異なります。
治療の長期化に備えて就業不能保険を検討する際は、障害年金についても確認しておきましょう。
貯蓄型と掛け捨てはどっちがお得なのか
死亡保険や医療保険に加入するときは、貯蓄型と掛け捨てのどちらを選択するのかも重要です。どちらがお得なのかは、その人の状況や保険の種類によって異なります。貯蓄型と掛け捨ての特徴を理解した上で、ニーズに合うものを選ぶことが大切です。
貯蓄型のメリット・デメリット
貯蓄型は保険と貯蓄の両方を兼ね備えた保険で、解約時に解約返戻金を受け取ることができます。ただし、保険料は比較的高めで、短期間で解約すると元本割れする可能性があります。
掛け捨てのメリット・デメリット
掛け捨ては解約返戻金がない保険です。保険料が比較的安く、貯蓄型より安い保険料で大きな保障を確保することができます。また、保険の見直し(保険の切り替え)がしやすいという特徴があります。
その反面、保険で教育費などを準備したい場合は、解約返戻金がないことはデメリットとなるでしょう。
死亡保険は目的に応じて選択する
たとえば、一定期間の死亡保障を得るのが目的なら、保険料が安い掛け捨てが適しているかもしれません。
一方、教育費や老後資金の準備など、資産形成手段として利用したい場合は貯蓄型がおすすめです。契約時に解約返戻金の概算金額を確認できるので、必要な資金を計画的に貯めることが可能となります。
医療保険は掛け捨てが多い
医療保険は貯蓄型の商品が少なく、掛け捨ての商品が充実しています。掛け捨てのほうが自身のニーズに合う商品を見つけやすく、保険料を抑えながら大きな保障を確保できます。
また、医療保険は新しい医療技術に対応するために、定期的に新商品が発売されています。掛け捨てであれば、新商品が発売されたときに切り替えを検討しやすいというメリットもあります。
まとめ
死亡保険は死亡や高度障害、医療保険は病気やケガの医療費に備えるための保険です。死亡保険は遺族の生活費の保障や資産形成、相続対策などに活用できます。医療保険は医療費や治療中の収入減をカバーできるのが魅力です。紹介した内容を参考に、自身に必要な保険を選んでみましょう。
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*保険商品に関するご留意事項について
商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号
- 保険
大西 勝士
AFP、2級FP技能士
会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より金融ライターとして活動。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆中。