新型コロナウィルス感染症によりマスク生活を余儀なくされた私たち。
もはや、マスクのない生活は考えられないほど、マスク着用が日常となりました。
しかし、マスクを着用することにより表情を読み取ることができず、コミュニケーションに誤解が生じることもあるようです。今回はマスクとコミュニケーションロスについてお話しいたします。
コロナで変わった接客サービス
そもそもコミュニケーションロスとは、コミュニケーションが失われたことではなく、コミュニケーション不足から生じるミスや誤解を表す言葉です。
私は、某商業施設にて接客サービス研修を行っています。
その内容もコロナ禍となり、少し変化しました。その一つがマスク越しの表情です。
接客業にとって笑顔はとても大切。しかし、マスクで口元が隠れ、目元だけで笑顔を伝えるのが難しい方も一定数いらっしゃるのです。
同じ「いらっしゃいませ」という言葉でも、明るい笑顔で言われるのと、不機嫌そうな無表情で言われるのでは、受け取り方は全く変わりますよね。
コロナ禍では、積極的にお客様へお声をかけることもままなりません。だからこそ「いらっしゃいませ」の一言に伴う笑顔はとても重要なのです。
私自身、買い物で目当てのものが見つからないときには、スタッフの方に尋ねるのですが、その際に、目つきの怖い方が時々見受けられます。
本人にはその気はないのでしょうが、私には『そんな面倒なこと聞くな』と思われているように感じるのです。これもコミュニケーションロスの一つと言えるでしょう。
万国共通の7つの表情
現在、万国共通の表情として7つの表情が提唱されています。
『万国共通の表情』というのは、性別・国籍・人種・年齢・文化的背景などが違っていても、その感情が生じたときは、同じように顔面の筋肉が反応し、同じ表情を見せる、というものです。
さて、先述の「万国共通の7つの表情」ですが、これは、幸福・軽蔑・怒り・嫌悪・驚き・悲しみ・恐怖の7つです。こうした感情を抱いたとき、全ての人が顔の筋肉を同じように動かし、同じ表情を見せるのです。将来的には、いくつか増えるのでは?と研究が進んでいるようですが、現在までの研究では、以上7つの表情が万国共通だと言われています。
では、幸福を感じたとき、私たちはどのような表情を作るのでしょうか?
幸福とは、喜び・嬉しい・達成感・やった!などポジティブな感情です。
そのような時、私たちの表情には2つの特徴が現れます。
① 両方の口角が上がる
② 目の周りの筋肉が収縮する(=カラスの足跡のようなシワができる)
そう、幸福表情とは「笑顔」なのです。
ところが、マスクを着用していると①の口角が上がっているか?は相手に見えません。
したがって、その方が笑顔なのかどうかは、目元のシワしか判断材料がないのです。
「あなたに会えて嬉しい」「あなたが元気でいてくれて嬉しい」「コロナ禍にも関わらず、お店に来てくれてありがとう」そんな喜びを伝えるには、目元がポイントなのです。
しかも私たち日本人は「目」をとても大切にします。
1970年、日本に登場したスマイリーフェイス、俗に「ニコちゃんマーク」とも言われますが、あの顔に違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか?
皆さんは「絵文字で笑顔を描いて」と言われたら、目元を山形に描きませんか?
ところがあのスマイリーフェイスは、目元が笑っていないのです。
日本人がデザインしたなら、スマイリーフェイスは目元も笑っていたことでしょう。
マスク越しにも笑顔がわかるためには、『目尻にカラスの足跡』ができているだろうか?
鏡でチェックしてみてくださいね。
では、簡単にですが、殘り6つの表情の特徴を見ていきましょう
まずは、『軽蔑』を表す表情です。
① 片方の口角だけが引きあがる
これだけです。
では、『怒り』の表情はどうでしょう?
苛立ちや煩わしさ、不満など否定的な感情が現れると、私たちは
① 目を見開く
② 下まぶたに力が入る
③ 眉が中央に寄り引き下がる
④ 唇に上下から力が入るようにプレスされる
といった表情になります。
簡単に言うと、目元と唇に力が入るのです。
『嫌悪』の表情の特徴を分析すると
① 鼻にシワがより、眉が下がる。目は細くなる
② 上唇が引き上げられる
となるのですが、わかりやすく言えば「臭い匂いを嗅いだ時の表情」です。
『驚き』の表情は、
① 目が見開かれ、それによって眉も引きあがる
② 口がポカンと開く
といった特徴があります。
目や口といった感覚器を存分に開き、情報収集をする働きがあるのです。
『悲しみ』の表情は
① 眉がハの字になる
② 口角が下がり下唇が引きあがる
③ ②によって、あごに梅干しのようなシワができる
最後に『恐怖』の表情です。この表情の特徴は、
① 顔全体に力が入る
② 両眉が上がった状態で中央に引き寄せる
③ 歯をぐっと横に食いしばる
これで、恐怖表情のできあがりです。
いかがでしょうか?
全ての表情の特徴に『口元の動き』が含まれます。
特に軽蔑の表情に至っては、口元しか動きがありません。
マスクを着用していると、相手の表情が読み取りにくく、それによりコミュニケーションロスが発生しやすいことがお分かり頂けると思います。
子どもたちが感情表現を学べない?
昨年NHKの番組で「マスクが子どもの発達に影響?」というショッキングな内容の放送がありました。
子どもは、周りの大人たちの顔の筋肉の動きを見て、それを真似て表情を学びます。
先述の7つの万国共通の表情にもあるように、表情のポイントとなるのは目・鼻・口の三点です。ところが、マスク着用により鼻と口は見えません。
番組では、保育士さんが「よくできたね」と褒めても、目だけでは意図が伝わりにくく、信頼関係を築きにくくなったとコメントしています。
表情を理解することは、相手の感情を理解することになります。
マスクにより表情理解力が低下することにより、相手の感情を上手く読めず、喧嘩になってしまうこともあると言われています。
大人を対象としたデータですが、表情を読み解く能力は、男女の性差もあります。
日本人男女の表情読解率という研究では、幸福と悲しみの表情は女性の方が正解率が高く、怒りや嫌悪といった表情は男性の方が正解率が高くなっています。
例えば「悲しみ」に関して言えば、多くの日本人男性は、子どもの頃から「男の子はメソメソしちゃだめ」などと、悲しみを表情に出すと叱られることがありました。
すると、自身が「悲しみの表情」を作らないため、悲しみの表情を読むことが苦手になります。自身で作れない表情は、読み取ることも難しいのです。
マスクをすることで、表情を読み取れない、表情を作れないとなると相手の感情をどのように察すれば良いのでしょう?
共感力が求められるこの時代に、マスクは、子ども達にとって感情教育やコミュニケーション能力に大きな壁を作るかもしれません。
子どもの表情読解力を培うために家庭でできること
では、マスク着用の世の中で、お子さんの共感力や表情の読み取り能力をアップさせるには、どのような対策があるでしょうか?
まず、家庭内でもマスクをしているなら、顔の表情だけでなく体の動きでも感情を伝えましょう。
嬉しければ「やった!」とバンザイをする。
悲しければ「え~ん」と泣き真似をする。
怒ったら「プンプン」と腕組みをする。
など、日本人が苦手なボディランゲージですが、お子さん相手なら少々オーバーにできるのではないでしょうか?
また、家庭内でマスクを着用しない場合は、家庭で表情をしっかりと見せるということが大切です。
家庭内感染が心配な場合は、透明のフェイスシールドなどで、飛沫の防止を図りましょう。
親が無表情だと、当然子どもの表情読解力も低下します。
また、スマホばかりを見てお互いの顔を見なければ、やはり表情はわかりません。
子どもにいろいろな表情を見せてあげてください。
感情の感度を高めるには、その感情を理解・経験し、表現することが重要です。相手の気持ちに寄り添える優しい子どもに育って欲しいと願うならば、気持ちと表情をしっかりと伝えることにより、心の距離も縮まることを教えてあげてくださいね。
まとめ
コロナ禍で、人との距離が遠くなったからこそ、自分の感情を表現する力や相手の感情を理解する力がより求められます。笑顔は、マスクの中で思いっきり口角を引き上げることで、目元にカラスの足跡は生まれます。でも、目元だけで相手の感情を理解できるのは大人になってから。子どもの表情育成のためには、親のちょっとした努力も必要なのです。
参考資料:国際ボディランゲージ協会ボディランゲージ2級講座テキスト
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橋詰京美
Office ailes(エール)代表
1997年より福岡のRKBラジオにてリポーター・ラジオショッピングキャスターとして活動。2015年より、ラジオでの経験を活かし経営者・個人事業主を対象とした「ボイストレーニング」「プレゼントレーニング」の個人指導や「企業研修・セミナー」講師として福岡県内だけでなく九州各県、関東、関西圏でも活躍中。2020年春にはオンラインによる「オンライン見え方学校」も開校。