住宅ローンを利用して一定の条件を満たした住宅を購入すると、「住宅ローン控除」の適用を一定期間受けられます。ただし、適用を受けるためには確定申告が必要なため、確定申告の経験がないと不安に思うことも多いでしょう。
本記事では確定申告で住宅ローン控除を受ける方法について、必要書類から申請方法まで詳しく解説していきます。
確定申告で受けられる住宅ローン控除とは
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の概要
住宅ローン控除とは、一定の要件を満たした住宅を住宅ローンで購入することで、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。住宅の購入は多額の費用が必要となることから、住宅を購入しやすいよう減税制度が導入されています。
住宅ローン控除の控除期間と控除率
通常、住宅ローンの控除期間は10年間、控除率は1%です。ただし、2019年(令和元年)10月~2020年(令和2年)12月までの期間に入居した場合、控除期間は13年間となっています。これは、消費税が8%から10%に増税されるのと同じタイミングで拡充されたもので、消費税増税による負担を緩和する目的がありました。
現在のところ、入居期限の延長は2022年(令和4年)12月までとなっていますが、これまでも期間が延長されてきたことから、今後も継続して利用できる可能性は高いといえます。
住宅ローン控除の適用要件
住宅ローン控除の適用要件には以下のようなものがあります。
(1)住宅取得から6カ月以内に居住し、適用を受ける年の年末まで引き続き住んでいること
住宅ローン控除の適用を受けるには、住宅取得もしくは新築から6カ月以内に居住していること、そして適用を受ける年の年末まで居住する必要があります。上記は原則として本人が入居しなければなりません。
ただし、単身赴任の場合には、生計を同一にする親族が入居することで適用を受けられます。 また、適用を受ける年の年末まで住んでいる必要があることから、住宅の完成の翌年に入居したようなケースでは、入居した年からの適用となる点に注意が必要です。
(2)適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
その年の合計所得金額が3,000万円以下であることも、住宅ローン控除の適用を受けるための要件の一つです。給与所得など継続的な所得はもちろん、不動産を売却して得た所得なども対象になる点に注意しましょう。
また、ある年の合計所得金額が3,000万円超であっても、翌年に3,000万円以下であれば、その年は改めて住宅ローン控除の適用を受けられます。
(3)対象となる住宅の面積が50㎡以上であり、かつ対象となる住宅の床面積の2分の1以上が自己居住用であること
住宅ローン控除の適用を受ける際は、住宅の面積が50㎡以上である必要があります。また、住宅の床面積のうち2分の1以上は自身の居住用でなければなりません。逆にいえば、2分の1以下であれば店舗や賃貸物件であっても認められます。
このため、賃貸併用住宅や店舗付き住宅であっても、面積要件を満たせば適用を受けられることになります。なお、2021年(令和3年)度から面積要件が40㎡以上に緩和される方向で検討されています。
(4)住宅ローンの借入期間が10年以上であること
住宅ローン控除の適用を受けるためには、借入期間が10年以上であるかも確認しましょう。
これは、借入当初に借入期間が10年以上である必要があるのはもちろんですが、借入後に繰上返済などを行い、当初の借入日から最終返済日までの借入期間が10年以下になった場合でも、適用要件から外れてしまうことになります。
上記ケースでは、10年以下になった年から住宅ローン控除の適用を受けられません。 住宅ローン控除の適用期間中に繰上返済する場合には、借入期間に注意しておきましょう。
(5)マイホーム売却時の「3,000万円特別控除」などの適用を受けていないこと
住宅を売却して利益が発生すると、その利益額に応じて所得税や住民税を納める必要があります。このとき、売却する住宅がマイホームであるなど一定の要件を満たすことで受けられる特例として、「3,000万円特別控除」などがあります。
このような特例は、住宅ローン控除との重複適用ができません。同年中に重複適用できないだけでなく、前後2年間の計5年間は適用を受けられない点に注意が必要です。なお、2021年(令和3年)4月1日以降に売却した場合、居住の用に供した(実際に住んだ)年と、その前2年・後3年の計6年間は重複適用できなくなります。
住宅ローン控除を確定申告で申請する方法
住宅ローン控除は、住宅に入居した年の翌年2月16日~3月15日の間で、所得税の確定申告時に申請する必要があります。会社員の人の場合、2年目以降は職場の年末調整で申請できますが、1年目は確定申告をしなくてはならない点に注意が必要です。
また、個人事業主など自分で毎年確定申告をする人については、2年目以降も継続して申請する必要があります。
住宅ローン控除を申請する際の必要書類
住宅ローン控除について確定申告をする際には、以下のような書類が必要です。どこで書類を入手できるか、あらかじめ確認しておきましょう。
書類 | 入手先 | 備考 |
住民票の写し | 市区町村 |
|
残高証明書 | 金融機関等 | 毎年年末頃に送付されます |
登記事項証明書 | 法務局 |
|
売買契約書 | 不動産会社 |
|
源泉徴収票等 | 職場 | 毎年年末頃に発行されます |
必要書類における注意点
「登記事項証明書」は、所有権移転登記をした際に司法書士から送付される権利書などの書類に含まれていることがあるため、よく確認するようにしましょう。
「源泉徴収票」については原本を提出しなければなりませんが、後々必要になることもあるため、コピーを取っておくと安心です。
中古住宅の場合、上記書類のほかに「耐震基準適合証明書」などが必要になることもあります。
住宅ローン控除の確定申告の手続き方法
住宅ローン控除の確定申告では、どのように手続きを進めるとよいのでしょうか。ここでは具体的な手順について見ていきます。
確定申告の手順
確定申告の手順は以下の通りです。
(1)各種書類を準備する
先述した住民票の写しや登記事項証明書、源泉徴収票などの書類のほか、確定申告書を用意しましょう。確定申告書は税務署に行けば用紙をもらえますし、国税庁のホームページからダウンロードもできます。
(2)住宅ローン控除の計算明細書を記入する
書類の準備ができたら申告書の記入を進めましょう。まずは住宅ローン控除の計算明細書から記入を進めるとスムーズです。計算明細書では、居住開始年月日や購入費用、床面積などを順番に記入していけば問題ありません。
なお、計算明細書には控除証明書の要否を書く欄があります。不要な場合は「要しない」に〇印を付けますが、控除証明書の発行を受けていると、会社員の人が勤務先で年末調整の手続きをするのに便利です。そのため、要否の欄には〇印をつけず、控除証明書の発行を受けておくとよいでしょう。
(3)確定申告書第二表を記入する
次に確定申告書への記入を進めていきます。なお、確定申告書にはA様式とB様式があり、A様式は簡素な内容、B様式はより幅広く対応した内容となっています。
会社員の人が住宅ローン控除の適用を受ける場合は、A様式で十分でしょう。一方、個人事業主の人で、通常の確定申告と同時に住宅ローン控除の適用を受けるようなケースでは、B様式を選ぶ必要があります。
申告書第二表については、会社員の場合は源泉徴収票の内容をそのまま転記していけば問題ありません。個人事業主の場合は、所得の内訳などを詳細に記入していきましょう。また、住宅ローン控除の適用を受ける際には、「特例適用条文等」の欄に居住開始年月日を記載する必要があります。
(4)確定申告第一表を記入する
最後に申告書第一表への記入を進めます。こちらも会社員の場合は、源泉徴収票の内容をそのまま転記していけばよいでしょう。個人事業主の場合は、事業所得の額や各種控除額などを自分で計算する必要があります。
記入が済んだら、「還付される税金の受付場所」の欄に口座情報などを記入しましょう。
(5)税務署に提出する
必要書類と確定申告書の準備が済んだら、税務署に提出して確定申告は終了です。確定申告の結果、還付金がある場合には指定した口座に還付金が後日振り込まれます。
確定申告書の提出方法・期間
最後に、確定申告書の提出方法や期間についてお伝えします。確定申告書は税務署に提出する必要がありますが、提出の仕方として以下の3つの方法があります。
確定申告書を提出する方法
(1)直接持参する
税務署に直接持参する場合は、期間中に税務署に足を運ばなければなりません。税務署は平日の日中しか開いていないこともあり、土日休みの会社員の場合は、仕事を抜けるか休んで行かないといけない点に注意が必要です。
(2)郵送する
税務署に郵送する方法であれば、休みなどを気にせずに手続きを進められます。ただし、税務署の職員による最低限のチェックも受けられないため、確定申告のやり方に不安がある人にはおすすめできません。
(3)e-Taxを利用する
e-Taxを利用すれば、インターネット上で確定申告を済ませることができます。この方法であれば、事前に確定申告書などを用意する必要もありません。システムに則って記入を進めていくだけなので、初めての人にもおすすめだといえます。
確定申告の期間
所得税の確定申告の期間は、例年2月16日~3月15日となっていますが、2020年は締め切り日が一か月後ろ倒しになりました。
通常土日は税務署が休みのため、期間中の平日のみしか手続きができません。ただし、自治体によっては土日に別会場を設けているケースもあるため、確認しておくとよいでしょう。
まとめ
住宅ローン控除を受ける場合の確定申告について、制度の概要や必要書類、手続きの進め方などをお伝えしました。住宅ローン控除は、会社員の人であっても、1年目は確定申告による方法で手続きを進めなければなりません。期間中は税務署が混み合うため、本記事の内容を参考に早い段階で準備しておくことをおすすめします。
- 住宅ローン
逆瀬川 勇造
宅建士、2級FP技能士(AFP)、相続管理士
地方銀行にてリテール業務や不動産会社にて住宅営業業務に従事した後、金融・不動産を中心としたフリーライターとして独立。得意分野は資産運用や相続関連。