新年、明けました。おめでたいはずなのに、世間は相変わらずコロナ一色。一刻も早い終息を願わずにはいられません。さて、さきほど天気予報(1/6時点)を見ていたら、明日の天気はどうやら今冬一番の寒波が襲来するらしく、福岡も大雪・暴風雨に警戒だそうです。ここ数年暖冬が続いていたので、今年の冬は余計に寒く感じますね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
余ったお正月食材・百合根の簡単アレンジ料理3選
先日、友人との会話で、「今年は実家に帰らなかったので、久しぶりにおせち料理を作ったのはいいけれど、おせち用の食材が余って困っている」という話になりました。そこでこの会話がヒントになり、今月はお正月食材で余った百合根を使って、簡単にアレンジできるお料理をご紹介したいと思います。
その前に、百合根の解説をしましょう。百合根とは書いて字のごとく、百合の根のこと。ちょっとイビツに重なりあった丸い球根を鱗茎(りんけい)といいます。
鱗茎は種球から栽培すると、食べられるようになるまでには、6年ほどの時間を要するのだそう。言ってみれば、それだけの年月、土の養分を鱗茎に蓄えるわけですから、百合根が滋養強壮の漢方薬として重宝されているのもうなづけます。
通常はおがくずに包まれて販売されていますが、これはおがくずを入れることで湿度が保たれるので、出荷する時に百合根を乾燥させないためでもあります。したがって、購入してすぐに使わなくても、おがくずに入れたままにしておけば、約1カ月ほどは持ちます。
百合根は薬膳料理でもよく使いますので、うちではお正月以外にも喉の調子がおかしい時、あるいは肌や身体が乾燥しているなと感じた時には、意識して食べるようにしています。百合根は主に秋の食養生で使われる食材ですが、冬でも補陰薬として使われますので、乾燥防止と喉や身体をうるおすのにはおすすめです。
薬膳的見地から見た百合根の効能は、先にも紹介した滋養強壮のほか、咳止めや利尿効果以外にも、精神を落ち着かせたり、安眠などの鎮静効果もあります。百合根の五性は微寒性でうるおいの性質を持ち、熱を収め、陰を補ってくれます。よって、乾燥から呼吸器の粘膜を守るので、微熱があり、空咳がでている人に特におすすめです。
ただし、寒気を感じている人や極度の冷え性、胃腸が冷えて下痢をしている人は控えめにしてください。なお、冬の寒邪や腎を養う冬の食養生の話は、すでに12月号の当コラムでご紹介していますので、今回は割愛します。気になる方は12月号の当コラムをご参照くださいませ。
【料理名①】超カンタンなのに、くせになるうまさ! 百合根のバターホイル焼き
【材料】(作りやすい量)
・百合根………………………………1個
・バター………………………………10g
(バターの量は好みで増やしてもよい)
・ブラックペッパー…………………少々
【作り方】
1 百合根はよく洗って、外側から鱗片を一枚ずつはずしていく。
2 水を流しながらよく洗う。中に土が入り込んでいる場合も多いので注意して。
3 黒くなっている部分は包丁で取り除く。
(★1~3は百合根の下処理部分)
4 アルミホイルにバター、百合根を入れて包む。
5 オーブンもしくはトースターに入れて、15分ほど加熱。
6 火が通ったのを確認した後、ブラックペッパーをかけたらできあがり。
【レシピ考案の裏話】
これは昔、居酒屋さんを取材した時にご主人がご好意で教えてくださったメニューです。
簡単なわりには、百合根がホクホクして甘く、とてもおいしいので、一時期はよく作っていました。お好みで塩や醤油を加えてもいいかもしれません。クセになるおいしさですが、百合根は意外と高カロリーですので食べすぎには注意してください。
【料理名②】精神を落ち着かせ、安眠を誘う 百合根の薬膳粥
【材料】(作りやすい量)
・百合根…………………………………1個
・白米……………………………………1合
・水………………………………………10カップ
・塩………………………………………少々
・黒ごま…………………………………適量
・白ごま…………………………………適量?
【作り方】
1 百合根は★下処理した後、水を切っておいておく。
2 白米を洗ってざるにあげ、30分ほど浸水させておく。
3 土鍋に白米と10倍の水を入れて、最初強火にして
沸騰したら弱火にして、50分ほど炊く。
4 3に百合根を加えて、そのまま弱火で15分ぐらい炊く。
5 4を器によそって、お好みで塩、黒ごま、白ごまなどを
かけて完成。
【レシピ考案の裏話】
百合根粥は薬膳を勉強するようになってから、作り始めた一品です。私が主宰する薬膳うちごはんのレッスンでも、ご紹介したメニューでもあります(レッスンでは、百合根粥をベースにしてトッピングを数種作って、バリエーションを楽しみました)。
百合根には安眠効果もありますので、不眠気味の方はぜひお試しくださいませ。
【料理名③】超手抜きでもおいしさは変わらず! 百合根の蒸し団子
【材料】
・百合根……………………………100g
・エビ………………………………12尾
・山芋………………………………80g
・葛粉………………………………大さじ1
・塩…………………………………小さじ1/2
・グリンピース……………………適量
【作り方】
1 百合根は★下処理した後、蒸籠で蒸す。
2 エビは殻と尾を剥き、背わたをとる。
3 蒸した百合根は粗熱をとって、2のエビと一緒にフードプロセッサーに入れて、
ミキシング。
4 山芋は皮を剥き、鬼おろしでおろしておく。
5 ボウルに3と4、塩を加えてざっくり混ぜ、葛粉を加えてさらに混ぜる。
6 蒸籠にキッチンペーパーを敷き、スプーンを使って5を団子にして、
グリンピースをトッピング。そのまま、15分ほど蒸したらできあがり。
【レシピ考案の裏話】
今はもうない大好きだったある日本料理店。そこのご主人が作る百合根饅頭のあんかけが大好きでした。何度もトライしますが、なかなかあの味を再現することができません。
そこで百合根を裏ごしもせず、饅頭にして素揚げすることもせず、自分流に超簡単に仕上げたのがこの百合根蒸し団子です。あの幻の百合根饅頭の足元にも及びませんが、これはこれでアリ。形は少々無様ですが、ほわほわ、ふわふわの食感が楽しめます。お吸い物に具材として浮かせても絵になりますし、茶碗蒸しに入れてもおいしいですよ。
<まとめ>
お正月料理にだけ使う方が多い百合根をもっと身近に使ってほしくて、今回は特に簡単なレシピをラインナップしました。百合根は滋養もあるし、精神を落ち着かせ、安眠効果もあるので、特に睡眠を削って仕事や育児をがんばっている女性に食べていただきたい食材です。今度、スーパーで百合根を見つけたら、ぜひトライしてみてくださいね。
- レシピ
名原 和見
ライター・エディター・薬膳料理研究家
独立して26年。拠点は福岡だが、全国誌・地方誌を中心に雑誌、新聞、書籍、企業の印刷物, webを中心にインタビューや取材&執筆を行う。最近では企画から編集、ライティング、キャス ティング、調理、スタイリングを含めたディレクション全般を請け負っている。得意分野は食、健 康、美容等。2013年に薬膳アドバイザー、中医薬膳師の資格を取得。長年、食の取材をしてきた 経験値と、薬膳の知識を融合させたオリジナル薬膳料理教室「薬膳うちごはん」を主宰。■https:// yakuzenuchigohan.com