いつの間にか、すっかり冬になりました。執筆している今日も、雨こそは降っていないものの、どんよりした曇り空。まさに冬らしい空模様です。中医学ではこのように陰の気が充満する冬は、私たちの身体のエネルギーも低下していくと考えられています。そんななか、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
冬は身体を温めながら、腎を癒やす食材選びを!
五行説で冬に身体に影響を及ぼす外因は「寒」。
つまり寒邪が体内に入ってくると、気や血のめぐりが悪くなり、冷えを招きます。さらに寒邪が皮膚に入ってくると毛穴が収縮して閉ざされ、悪寒がしたり、場合によっては発熱する場合も。
このコロナ時代において体調を壊すと周囲の目もありますので、この寒邪をうまく阻止したいところです。
もう少し、五行説を掘り下げてみますね。
冬に対応する五臓は「腎」です。
肝腎要という言葉もあるように、腎は生命の根源である生殖機能をつかさどる大切な臓器である上に、五臓五腑の司令塔の役割も担っています。
したがって、腎が元気であればほかの臓器も円滑に機能しますが、逆に腎が弱ると全身の活力が失われ、気力が低下するだけでなく、身体のバランスが崩れて、白髪が増える、視力が衰える、忘れっぽくなる、耳が聞こえなくなるなど、老化現象につながっていきます。
言い換えると、腎が健康なのは若さの象徴でもあるので、この時期は特に身体を温めることを意識して、腎を癒やしながらエネルギーを補給することが大切です。
冬の色は五行説に当てはめると「黒」になりますので、冬は意識して黒い食材を食べるとよいとされています。具体的にあげると、黒ごまや黒きくらげ、昆布、わかめ、しいたけ、黒米など。
そこで12月は、腎を養う冬の食養生で代表的な食材「黒豆」を使った料理を取り上げます。
黒豆は利尿効果もあるので、むくみ予防にも。また大豆と同様に、女性ホルモン様作用もあるのでエイジングケアにも最適です。
そのまま湯を注ぎ、黒豆茶としても楽しめますが、今回はお正月にも使える定番料理から普段料理、ちょっと小洒落たカナッペまでをご紹介いたします。
【料理名①】
“まめに働く”という由来のおせち料理・黒豆煮
【材料】(作りやすい量)
・黒豆…………………………………250g
・きび砂糖……………………………180g
(砂糖の量はお好みで。これは甘さ控えめです)
・醤油…………………………………小さじ1
・塩……………………………………小さじ1/2
・重曹…………………………………小さじ1/2
・水……………………………………適量
(鍋に黒豆を入れて浸るぐらい。途中、差し水もします)
・食用金箔……………………………少々
【作り方】
1 黒豆は50℃洗いした後、水を入れたボウルに入れて約7,8時間浸しておく。
(寝る前に仕込んでおけば、朝から調理に取りかかれます)
2 調味料と黒豆をつけ汁を一旦沸騰させた後に、黒豆を入れる。
鍋に黒豆を入れた時に黒豆が顔を出すようであれば、少し水を加えて弱火で煮る。
3 途中、アクが出てくるので、丁寧にアクをとりながら、じっくり1時間ほど煮る。
4 水分が少なくなったら少しずつ差し水して、指で潰せるぐらいに柔らかくなったら
火を止めて、そのまま冷ます。
5 器に盛り、食用の金箔を添える。
【レシピ考案の裏話】
黒豆煮はおせち料理の中でも定番中の定番なので、必要ないかな? とも思ったのですが、おせちが余った時の展開料理をご紹介したいがばかりに、わざわざ作りました。よく黒豆の黒の発色をよくさせるために、煮るときに鉄釘を入れるともいいますが、うちでは入れません。黒豆煮はそのまま食べてもおいしいですが、たくさん余ったら、パンやケーキに加えてみるのもおすすめです。
【料理名②】
黒豆煮と枸杞の実のクリームチーズ薬膳カナッペ
【材料】(2人分)
・黒豆煮…………………………………12個
・枸杞の実………………………………4個
・大葉……………………………………1枚
・クリームチーズ………………………適量
・クラッカー……………………………4枚
【作り方】
1 大葉を縦横に包丁を入れ、4当分にカット。
2 クラッカーの上に大葉、クリームチーズ、【黒豆煮】をのせてできあがり。
【レシピ考案の裏話】
おせち料理の黒豆煮の展開料理です。黒豆と枸杞の実をトッピングした薬膳カナッペは、冬の食養生にピッタリ! ほんのり甘い黒豆煮と塩気のあるクリームチーズとの味のバランスが最高です。お酒のおつまみやちょっとしたおやつにどうぞ!
【料理名③】
ローストした黒豆入り土鍋ごはん
【材料】(3~4人分)
・黒豆……………………………100g(お好みで)
・米………………………………2合
・水………………………………2カップ
【作り方】
1 白米は洗って、ざるに上げておく。黒豆は50℃洗いして、水気をしっかり切っておく。
2 フライパンに黒豆を入れて、弱火でゆっくりローストする。焦がさないように注意。
3 土鍋に白米、ローストした黒豆を入れて、1時間浸水。
4 中火で12~13分炊き、吹いたら火をとめて、そのまま10分蒸すと完成。
【レシピ考案の裏話】
この黒豆ごはんは薬膳を勉強してから、冬の食養生にいかに黒豆が大切かということを理解してから、我が家の冬の定番料理になったもの。黒豆から出るアントシアニンがほんのりごはんをピンク色に染めてくれます。今回は丹波産のいい黒豆を使ったので、調味料は一切入れませんでしたが、お好みで羅臼昆布を加えてもいいです。うちでは少々多めに炊いて、一膳ずつ冷凍保存。食べる直前に蒸籠で蒸すと、まるで炊きたてのような黒豆のホクホク感が楽しめますよ。
まとめ
黒豆はそのままお茶にしても、煮ても炊いてもよい万能食材。その上、腎にいいとなれば、冬はマストの食材といっても過言ではありません。私が主宰する薬膳うちごはんでは以前、黒豆を使ってブラジル料理のフェイジョアーダのレッスンを実施して大変ご好評いただきました。暑い国の定番料理なのに、食材を薬膳的に分析するとなんと冬の食養生にぴったりだということがわかり冬のレッスンに。当時作ったフェイジョアーダの写真を添付しておきます。こんなところも薬膳のおもしろいところです^_^
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名原 和見
ライター・エディター・薬膳料理研究家
独立して26年。拠点は福岡だが、全国誌・地方誌を中心に雑誌、新聞、書籍、企業の印刷物, webを中心にインタビューや取材&執筆を行う。最近では企画から編集、ライティング、キャス ティング、調理、スタイリングを含めたディレクション全般を請け負っている。得意分野は食、健 康、美容等。2013年に薬膳アドバイザー、中医薬膳師の資格を取得。長年、食の取材をしてきた 経験値と、薬膳の知識を融合させたオリジナル薬膳料理教室「薬膳うちごはん」を主宰。■https:// yakuzenuchigohan.com