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宮田太郎さんは、農業機械メーカーの開発職で、現在5人の部下を率いる中堅社員。仕事の責任もどんどん重くなる時期ですが、第一子の倖(こう)くん(4か月)が誕生してからというもの、育児も軽やかに楽しんでいるご様子。「僕、ぜんぜんマメじゃないんです」と言いながら、得意の早起き習慣を活かした、家事の朝活、そして、夜活、はたまた休日活も実践中です。宮田さんのとびきり明るく元気なパパっぷりを実況します。
■プロフィール
宮田太郎さん
株式会社オーレック 開発職
1987年10月生まれ。北九州市出身。新宮高校卒業後、熊本大学工学部機械システム工学科へ進学。大学卒業後、福岡県八女郡広川町に本社を置く農業機械メーカー㈱オーレックに就職。
同社の農業機械には大きく果樹用、畑作用、水田用の3種類がある。宮田さんは水田チームで5人の部下を率いながら、特に有機農法の米作りに関係する機械の開発に携わっている。近年、健康志向や食のこだわりから脱農薬を目指す農家が増えているが、脱農薬するためには、田んぼに生える雑草との果てしない闘いが続く。農家の雑草駆除をサポートする草刈り機の開発・シリーズ化も宮田さんの重要なミッションだ。
その瞬間、「あ、生まれるんか!」とピッと気合が入る
――宮田さんご夫婦は、入籍、結婚よりも妊娠のほうが早かったとか。
宮田:そうなんです。去年9月に妊娠がわかって、すぐに妻の両親に挨拶に行きました。でも、いわゆる「できちゃった婚」じゃないんです。妻が子どもを欲しがっていたので、妊活はしていたので(笑)。やっとできたって感じかな。2か月後に入籍して、結婚式を挙げたのが今年2月です。コロナ禍の渦中に入る寸前だったので、良いタイミングでした。
――宮田さんは農業機械の開発者、妻の楓(かえで)さんは美容師で仕事上は接点がなさそうですが、どこで出会ったのですか?
宮田:僕の会社の先輩が食事会を企画しまして、若手男性が足りないというので、僕が呼ばれたんです。当時、僕も20代だったので。
――いわゆる合コンですね?
宮田:まあ、そういう言い方が正確ですね(笑)
――交際期間から3年6か月だそうですが、妊娠、結婚、今年5月30日の倖(こう)くん誕生と、この1年は大きな変化の年でした。ご自身で何か感じるところはありますか?
宮田:妻と一緒に暮らし始めたのは今年の1月です。お腹が大きくなるにつれて、いろいろ大変そうでしたが、僕自身は出産の日までそんなに実感はなかったんです。でも、陣痛が始まった時、「あ、生まれるんか!」とピッと気合が入ったのを覚えています。
――立ち合い出産だったんですね。
宮田:うーん、成り行き上そうなりました。というのはもし、仕事中に陣痛が始まっていたら、生まれるぞっていう直前くらいに駆け付ければいいと思っていたんです。でも、陣痛が夜中の2時くらいから始まって、生まれたのが夕方6時。結果的に立ち合うことになりました。正確に言うと、コロナで分娩室の中には入れなかったので、陣痛室までしか行ってませんが。
――陣痛室ではどんなふうに過ごしていたのですか?
宮田:妻がずーっと痛がっていたので、さすり続けていました。その日に出産する人が何人かいて、
助産師さんも忙しく、「じゃ、ご主人さんお願いしますね」と言って、結構いなくなるんです(笑)。助産師さんの見よう見まねで、「はい、息吐いて~」と言いながらさすっていました。
――他の妊婦さんにも夫は付き添っていました?
宮田:いなかったような……気がします。正直言うと、僕も生まれる直前に行くほうがよかったかな。だって、あんなに痛がると思わなかったので。陣痛室移動までに4時間、陣痛室だけで5、6時間付き添っていたので、正直ヘトヘトになりました。仮に分娩室に入れても、僕の方が力尽きていたかもです(笑)。
――倖くんとの対面はどのタイミングだったですか?
宮田:生まれてすぐに部屋の外から見せてもらいました。見た時は、まずその小ささにビックリ! それと出産直後の女性を見たのも初めてだったので、「そっちはそっちで大丈夫?」って妻に対しても心配しましたね。
朝活で育児参加
――出産後のライフスタイルについては、夫婦で話し合っていましたか?
宮田:妻は出産の1か月半前まで働いていましたが、出産を機にいったん仕事を辞めることを決めていました。彼女が1日家にいてくれることになるので、役割分担についてじっくり話し合うことはなかったと思います。
ただ、僕は高校時代から自分でも料理を作っていたので、料理はあまり苦にならないんです。僕の帰宅はだいたい19時。妻が19時半とか20時で僕がわずかに早いので、週2、3日は晩ご飯を作っていましたね。
――自然にそんな流れができるってよいですね。買い物も太郎さんがするのですか?
宮田:いえ、妻が美容師で月曜日がお休みなので、1週間分まとめて買っていたようです。僕は冷蔵庫に入っているものを見て、適当に作る感じです。
――楓さんに大好評な料理などはありますか?
宮田:ユウリンチー(揚げた鶏肉に、醤油ベースのタレをかけた広東省発祥の中国料理)が美味しいようです。簡単ですよ。
――育児参加はどのタイミングで始めたのですか?
宮田:出産後妻が実家にいる間かな。赤ちゃんの荷物を運び込むスペースづくりのために、ひたすら家を片付けていました。部屋は3つあり、リビングの半分が赤ちゃんのスペースになっています。今は、家族3人でそこに寝ています。
――川の字で寝るんですね。夜泣きで眠れないという話も聞きますが、どうですか?
宮田:それが、夜泣きで起きることはなかったんです。たまにふと目が覚めると、妻が授乳してた、なんてことはありましたが。だから、子どもが生まれて生活のペースが狂ったとか、きついとかはなかったです。
――楓さんの方に変化はありましたか?
宮田:僕が仕事から帰ってくると、まあまあグッタリしています。僕は、外に出て仕事をしているからいいけど、妻はずっと家にいますからね。
ですから、家にいる間は、なるべく何かを手伝おうという姿勢で励んでいます。そのほうが後々何も言われないだろうし(笑)。
――どんなことに励んでいるのですか?
宮田:僕は早起きなので、出勤前の時間を使って、洗濯物をたたんだり、朝ご飯を作ったりします。
夜は、僕が赤ちゃんをお風呂に入れて、その後、妻がお風呂に入って、赤ちゃんを9時ころには寝かしつけます。妻はそこからがやっと自分の時間です。その時間帯に洗濯や食器洗いが残っているとくたびれると思うので、僕がやるようにしています。
――結構、細やかに気遣っていらっしゃいますね。
宮田:僕が休みの日にたまに妻だけ外出して、一人で育児することがあるのですが、それだけでも大変なのは分かります。赤ちゃんって上機嫌で笑っていたのが、いきなり大泣きし始めるし、ミルクを作ろうと思ったタイミングで泣き出すんです。抱っこしながらミルクを作る作業ひとつ取っても大変です。
――1分でも妻の自由時間を増やしてあげようという気持ちがうれしいですよね。
宮田:でしょう(笑)。子育てを手伝いたいなら、とりあえず夫は雑用や家事をやるべきだと思います。ただ、自分の周りを見ても、それをやっている夫ってそうそういないんですよね。
息子と一緒に寝っ転がって過ごす幸せ
― 子どもができてよかったなと思う瞬間ってありますか?
宮田:結婚前から、仕事が休みの日は土曜も日曜も何もせずにダラーっと過ごすのが好きだったんです。息子はまだ3か月で外に連れて行けるわけでもないので、今も休みの日は、息子とゴロゴロ寝っ転がって過ごしています。出かけるのが好きな人だったら、育児に拘束されていると感じるかもしれないし、人それぞれだと思うけど、僕の場合は、独身時代と比べると、ゴロゴロダラダラする時間のクオリティが高まったというか、いい感じです。
それと、まだ3か月なのに、寝返りをしたんです。仕事中に妻から動画が送られてきてビックリ。コロコロ転がっているのを見ていると、もう今にも歩き始めそうなんです。親バカですかね。
元気よすぎるくらい元気で、人懐っこくて、明るい子になってほしい。
――倖ちゃんの名前は誰が付けたのですか?
宮田:それにはちょっとした経緯がありまして、僕は男の子なら、「龍」の字をどこかに使う名前にしたいと思っていたんです。理由はカッコいいから(笑)。女の子なら字は何でもいいので、「コウ」と読む名前にしようと思っていました。
でも、生まれた次の日に息子の顔を見たら、顔が龍っぽくないので止めることにしたんです。やさし~い顔をしてたんですよ。同じことを妻も感じていて、「コウ」でいいんじゃないということになりました。「倖」を考えてくれたのは妻です。「人の幸せを願う」という意味があるそうです。
――素敵な名前だし、素敵な共同作業ですね。倖くんにはどんな子に育ってほしいですか?
宮田:妻がいうには、おとなしい子らしいんです。確かに、実家など人の多いところに行くと、すでにおとなしさが出ているような気もする。でも、僕は、おとなしくは育ってほしくないんですよね。暴れん坊といわれるくらいでいいから、元気で、人懐っこくて、明るい子になってほしいな。
――まさに太郎さんがそのタイプだと思いました(笑)。このパパにして、この子あり、となるといいですね。最後に、今子育てに奮闘しているパパにメッセージをいただけますか?
宮田:大層なことはいえないのですが、時々、仕事と子育てが似ているなと感じることがあるんです。僕の会社は農業機械メーカーで、開発部の方針が「現場主義」なんです。
設計者が会社にこもって自分のイメージでモノを作るんじゃなくて、現場に行って農家さんの声を聴け、体感しろということです。体感することで何がどう困っているのか、初めて自分自身で気づくことができます。現場で体感することの積み重ねが発上のアイディアになったりするわけです。
子育てでいうと、夫も家事や子育ての現場に立って、妻が何を考えているのか、何をしてほしいのかを感じ取ることが大事かな、と。そのためには、やっぱりまずは何でもいいからやってみる。「これ、やってよ」と言われてするんじゃなくて、自分から妻の声に耳を澄ませて、言われる前にやる。これができたら、いいんだろうな、とは思いますね。
取材後記
すっかりパパぶりが板に付いた宮田さんですが、倖くんが生まれる前は、「たまにおむつ交換くらい手伝えばいいんだろう」という感じだったとか。外見も一見、九州男児風!?で、ご本人も「大雑把な性格」。その割りには、きめ細やかな育児フォロー、家事フォローが際立っています。仕事で鍛えた現場主義、お客様本位の感性、技術が、家庭の中において妻本位、妻の気持ちになって考える姿勢に応用されている!?
何よりも「生まれるとやっぱり可愛いからやりますよ。やらないのはつまらんですよ(笑)」という最後の言葉に、汲めども尽きぬ家族愛を感じた宮田家取材でした。
- 子育て
吉田 真理子
コピーライター
宮崎市出身。福岡高校、福岡教育大学卒業後、印刷会社に新卒入社。同社出版企画室で書籍・雑誌の校正業務に携わる。その後、出版社への転職を経て、コピーライター・編集ライターとして独立。現在に至る。趣味は、文章の間違い探しとダンス。