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【福岡のFPさんコラム】|中古住宅で叶える賢い住宅購入!その魅力と注意点

公開日 2025.06.02

大きなライフイベントのひとつでもある、住宅購入。

近年、中古住宅の魅力が再認識され、国や自治体が積極的に後押ししていることもあり、中古住宅を視野に入れた住宅購入を考える人が増えています。

 今回は、中古住宅購入を考える時に役立つ、中古住宅の魅力や注意点、補助金制度などをお伝えします。

中古住宅市場の魅力と需要の高まり

地価やコスト上昇などで新築住宅価格が高騰するいま、価格面に注目されがちな中古住宅ですが、魅力はそれだけではありません。

 近年は住宅の購入目的が多様化し、中古住宅は単なる新築住宅の代替ではなく、職住近接(職場と住居が近いこと)でワークライフバランスを重視したい、DIYやリノベーションで住まいの価値向上を楽しみたいなど、自分らしい理想の暮らしのための選択肢として考えられています。

 また、歴史が刻まれた趣のある古民家や個性的なリノベーション物件で暮らしたいなど、最初から中古住宅に限定して探す場合もあるでしょう。

 こだわりをもって探す楽しさも多彩な選択肢がある中古住宅の魅力ですし、新築住宅を検討中の場合でも中古住宅の価格以外の魅力に目を向けると、新しい発見があるかもしれません。

福岡の中古住宅市場のいま

住宅ローン「フラット35」の全国の利用割合で見てみると、中古住宅購入時の割合が、2013年度の13.9%から2023年度は27.4%(2022年度比3.3%増)と、10年間で約2倍になっています(※1)。

 福岡県の場合はどうでしょうか。

成約件数を見ると前年同期比で、戸建て10.3%増・マンション5.5%増、うち福岡都市圏エリアは戸建て15.6%増・マンション3.2%増となり、こちらも中古住宅市場が活発なことがわかります(※2)。併せて、売り出し価格も上昇傾向にあるので、価格が適正かどうかも検討しましょう。

※1 出所: 住宅金融支援機構 「2023年度フラット35利用者調査(2024年7月発表)」
※2 出所: 福岡県宅地建物取引業協会「ふれんず市況レポート(2024年10月~12月期)」

中古住宅の注意点と重要ポイント

ここから、中古住宅購入を考えるうえでの安全・法律・契約面の注意点や重要なポイントをお伝えします。

物件の状態はしっかり確認を

物件や周辺環境は、朝・昼・晩、晴天・雨天など日時を変えて複数回確認し、天候などにより印象がどのように変わるのかを確認しましょう。また、複数物件を回る場合は同じ条件で比較することが大切です。

 構造の状態や設備の状態・数・位置などの確認リストを仲介業者などが準備することもありますが、以下のような情報を参考にしてもいいでしょう(※3)。

※3 参考:東京都 「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」

3つの注意点と重要ポイント

① 物件や周辺環境に関わること

物件や周辺環境で特に注意したいのは、耐震基準とハザードマップです。

 ■   耐震基準
耐震基準とは、地震に対する建物の安全基準です(※4)。
古民家などヴィンテージ住宅として人気の物件などで、旧耐震基準のままの場合は住宅ローン審査などに影響する場合があります。

※4【耐震基準の種類】

東京都 「令和5年3月東京都耐震改修促進計画」 などを基に筆者作成

■ ハザードマップ
ハザードマップとは、自然災害発生時の危険箇所や避難場所などを記す地図で、自治体ホームページなどで閲覧できます。

 これは、契約前に水害ハザードマップの説明義務があるほど重要な情報で、安全確認はもちろん、火災(水災特約)保険料などへの影響が考えられます。

なお、2024年10月に火災保険料の値上げとともに水災特約保険料が全国一律からリスクに応じた5段階評価となりました。

 参考に福岡市のハザードマップを紹介しますので、いざという時のためにも、現在の住まいも含め、定期的に確認をしましょう(※5)。

 ※5 参考:福岡市 「福岡市総合ハザードマップ」

② 法律に関わること

法律に関わる部分では、特に登記の内容と建築物の規制に注意しましょう。

 ■    登記の内容
契約は正式な所有者としなければなりませんが、登記上の所有者が真の所有者と異なる場合もあります。また、前所有者がローン完済後に抵当権の抹消をしていない場合もあり、このように登記の内容が正しくない場合は、速やかに手続きをしてもらう、契約に停止条件を付加する、などの対応をしましょう。

 ■   建築物の規制
大きなリフォームや建て替えなどの予定がある場合、希望の建物が建築可能か、区域区分・用途制限・接道など都市計画法や建築基準法の規制について確認が必要です。

それぞれ自治体ホームページなどで閲覧できますが、複数の規制が関わる場合は後述の相談窓口や金融機関への相談をお勧めします。

 ③ 契約に関わること

ここでの注意点は、「納得しながら進める」ということです。

 契約を判断するうえで重要な情報について説明を受ける「重要事項説明」、契約内容を記した「売買契約書」、「契約不適合責任」の取り決めなどの時は、聞きなれない言葉も多く難しく感じられるので、気になることはその都度尋ねましょう。

 なお、契約不適合責任とは、契約内容と実際の品質や種類などが異なる場合に、売主が負う責任です。

中古住宅の場合、その責任期間を売主と買主との話し合いで決めるため、数か月程度のこともあり(売主が不動産会社などの場合は2年以上)、さらに、売主免責特約の付加も可能なので、内容をよく確認してください。

賢く利用したい住宅ローンや補助金

ここでは、より賢い計画のために知っておきたい制度についてお伝えします。

住宅ローン利用時に知っておきたいこと

住宅ローンは新築住宅だけでなく要件を満たす中古住宅も利用できますが、新築住宅とは異なる要件があるため、具体的な内容についてあらかじめ金融機関へ確認する、または、仮審査を申し込む、などの事前準備をお勧めします。

 以下の情報を大まかに知るだけでも相談がしやすくなるかもしれません。

より賢く利用するための関連制度

フラット35の金利引き下げ制度をご存じでしょうか(※6)。
フラット35利用時に、要件を満たせば一定期間金利が引き下げられる制度です。

 以下の抜粋以外にも、フラット35の金利引き下げ制度と自治体の補助金制度が一体化した「フラット35地域連携型」があり、福岡県では県と16市町が連携しています(※7)。

 また、要件を満たすマンションの購入時に、適合証明書の提出が不要で、要件を満たせばフラット35の金利引き下げ制度と併用できる「中古マンションらくらくフラット35」もあり、福岡県には1700件以上の対象物件があります(※8)。

※6【フラット35 金利引き下げ制度(抜粋)】

住宅金融支援機構 「フラット35 商品ラインナップ」 を基に筆者作成

 ※7 出所: 住宅金融支援機構 「フラット35地域連携型」 福岡県
※8 出所: 住宅金融支援機構 「中古マンションらくらくフラット35」検索 福岡県

件数はいずれも2025年5月筆者確認時点

中古住宅特有の注意点

次に、住宅ローン審査に関する中古住宅特有の注意点です。

 対策として、自己資金を多めに準備する、他の残債を減らす、複数のローンや金融機関で検討する、などがありますので、早めの情報収集や相談をしながら理想のマイホーム購入に向けて頑張りましょう。

 ■ 担保の評価
金融機関は、築年数や市場価値などから物件の担保評価を行います。

評価が一定以下になると、借入可能額が減少する、築年数によっては返済可能期間が短くなるなどの影響が考えられますし、先述した建築物の規制などにより評価ができなければ住宅ローンの利用が難しくなることもあります。

 ■ 物件の状態
安全基準などを満たすことが条件となる場合もあります。

基準を満たすために検査や工事などで対応する場合はその費用も利用可能か、ほかの制度や後述の補助事業などと併用可能かなどの確認をしましょう。

古民家や空き家の場合

理想的な古民家を見つけた、相続や遺贈で古い空き家を取得した、などの場合、物件により一般的な住宅ローンの利用が難しいことがあります。

 そのような時は、金融機関独自のローンを探しましょう。

空き家再利用で空き家問題解決を後押しする空き家専用ローン、古民家利活用で地域活性化を後押しする古民家専用ローンなどがあります。

 例えば、西日本シティ銀行の「NCBヴィンテージ住宅ローン(※9)」は、築50年以上の古民家を対象に、専門機関が文化的な価値を鑑定し、銀行などはその鑑定結果を加味して審査をするため、通常は住宅ローン利用が難しいとされる古民家も利用できる可能性が高まります。

 このような専用ローン以外でも、金融機関など専門家の知識や経験を借りることでより良い方法が見つかるかもしれませんので、まずは相談してみましょう。

 ※9 参考:西日本シティ銀行 「NCBヴィンテージ住宅ローン」

情報収集や相談

では、これらの情報収集や相談はどこでするのでしょうか。

 住宅ローンも含めた相談ができるため、身近な金融機関のローン営業室への相談が効率的ですが、まず一般的な情報を知りたい場合は以下のような相談窓口もあります。予約の有無や無料範囲などを確認して利用しましょう(※10)。

※10【福岡県内の主な相談窓口】

福岡市 「住宅相談コーナー」福岡県宅地建物取引業協会 「不動産無料相談」全日本不動産協会福岡県本部 「不動産無料相談会」福岡県建築住宅センター 「住宅相談」 を基に筆者作成

補助金についても知っておこう

最初に述べたとおり、国は中古住宅の購入を後押ししています。

 安全性などを満たす中古住宅の購入を通じて、ライフスタイルの多様化への対応、資源の有効活用による環境負荷軽減、若い世代や子育て世帯の住居負担軽減による住生活の安定促進などを目指しているからです。

ここから、国と福岡県の中古住宅に関する補助事業についてお伝えします。それぞれ細かい要件があり、予算上限に達し次第受付終了予定なので、気になる場合は金融機関などへ早めに尋ねましょう。

国の補助事業

まず、国の省エネリフォーム補助事業3つを簡単に紹介します(※11)。

 どれも、この事業の登録事業者と施工契約をし、要件を満たす断熱改修などの省エネリフォームを行うことで利用できます。

 また、手続きは登録事業者が行い、交付決定後1~2か月程度で登録事業者へ交付される補助金が購入者(工事発注者)へ還元される仕組みです。

※11【住宅省エネ2025キャンペーンの種類】

国土交通省・経済産業省・環境省「住宅省エネ2025キャンペーンについて」 を基に筆者作成

福岡の補助事業

次は、福岡県と福岡市の補助事業です(※12)。

 ■ 福岡県 「福岡県こどもリノベ補助金」
中古住宅のリノベーションなどの要件を満たせば補助金が受けられる制度で、前述の国の補助事業とも併用可能です。

 対象世帯は2種類あります。
・ 若年世帯:配偶者との合計年齢80歳以下の世帯
・ 子育て世帯:18歳未満の同居者や申請時に妊娠中の人がいる世帯

 さらに、物件により、流通型と持家型とに分かれます。
・ 流通型:購入前に「住まいの健康診断」実施済みの中古住宅
・ 持家型:申請後に同居する親世帯の持家

 特に、流通型の場合、「住まいの健康診断」費用の補助もあり、購入時のフラット35利用で「フラット35地域連携型」との併用も可能です。また、福岡県が提携する金融機関で住宅ローンを利用すれば金利などの優遇もあります。

 なお、「住まいの健康診断」とは、インスペクション(建物状況調査)のことで、建築士が建物の構造や設備などの劣化状態などを調査します。

 ■ 福岡市 「福岡市 子育て世帯住替え助成金」
子育て世帯の中古住宅購入時に要件を満たせば助成金が受けられる制度です。
対象世帯は、扶養する子ども(18歳到達年度3月末日まで)や母子手帳交付済みの妊娠中の人がいる世帯です。

 こちらも「フラット35地域連携型」と併用ができます。

※12【福岡県と福岡市の補助事業の種類】

 福岡県 「令和7年度福岡県こどもリノベ補助金」
福岡市 「令和7年度子育て世帯住替え助成金」 を基に筆者作成

まとめ

今回は、中古住宅購入の魅力と注意点や支援制度についてお伝えしました。

 自分で調べられる内容も多いですが、詳しい情報をもとにより賢い計画を立てるためにも、あらかじめ金融機関などへ相談することをお勧めします。

 ほかにも、リフォームや耐震診断などは設計事務所など、総合的な資金計画はファイナンシャル・プランナーなど、各専門家の活用も有効です。

 なによりも、理想の住まいと出会うために、情報収集や相談、物件探しや下調べを楽しみながら進めましょう!

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