はじめまして、福岡県在住のファイナンシャルプランナー(以下FP)、鶴田明子と申します。「お金の話もできる子育ての専門家」として活動しています。これから定期的に、家族や子育てとお金にまつわるお話をしていきたいと思います。よろしくお願いします。
私がFPとして仕事を始めて20年以上が経ちました。その上で「日本人はお金の話が苦手なのだろうな」と感じることが多々あります。FPにお金のことを相談にこられる方もまだまだ少ないと感じています。でも、誰しもお金の悩みってあるのではないでしょうか。
お金のことで悩んだとき、真っ先に相談するのは家族だと思うのですが、結構高いハードルがあるようです。あなたにも心当たりがありませんか?
お金の話はケンカの種になる?
あなたは日常的に家族とお金の話をしていますか?また、そのとき穏やかに話し合えているのでしょうか?
お客様からよく聞くのは「家の中でお金の話をするとすぐにケンカになってしまうんですよね。だからここにきてFPの先生と一緒に話をすると落ち着いて話ができるんです」という言葉です。
家族でお金の話をするとなぜケンカになってしまうのでしょうか。
そもそもお金を使うのはどんな場面かというと、自分にとって価値があると感じたもの(こと)があるときです。それを手に入れるためにお金を使います。
つまりお金のことで言い争いになるのは、お互いの価値観がぶつかり合うからです。さらに家族なので相手に対する甘えもあり、自分の価値観をわかって欲しい気持ちも強くなりがちです。あるいは、自分は間違っていないという気持ちや、なぜわかってくれないのかという悲しい気持ちから、お互いに強く主張してしまい、ケンカになってしまうのでしょう。
お金に対するネガティブな意識
また、お金の話をすることが「卑しいこと」「はしたないこと」などというネガティブな意識もあると感じます。子どものころ、お金のことを口にすると「子どもがお金のことなんか考えなくていい」などと言って叱られた経験がある人もいると思います。
FPとして日常的にお金の話をしている私としては、少し残念な気持ちがします。そもそもお金は卑しいものでも、話すことがはしたないことでもありません。
(もちろんTPOをわきまえず、他人の懐具合をずけずけと聞いてくるようなことは論外ですけれどね)
お金は「人生を幸せに生きるための道具」
お金はあくまでも「道具」です。それ自体が良いものでも悪いものでもありません。けれど時としてお金は、人生を幸せにも不幸にもする大きなエネルギーにもなります。それを扱う人の心の持ち方、お金の使い方が良い方向を向いているのか、悪い方向を向いているのかがとても重要になってきます。
FPの願いとしては、お金を使って幸せになって欲しいと思っているのですが、お金を使った後で不安にかられ、幸せから遠ざかっている人も多いように感じます。
人生の目的は「幸せに生きること」で、お金はそれを叶えるための手段です。大切なのはどんな人生を生きれば自分が幸せになるのかを考えることです。そしてお客様の希望を良く聞き、その人が幸せな人生になるように寄り添っていくのがFPの仕事です。
家族で楽しくお金の話
だからこそ家族で話し合う必要があるのです。つまりどういう暮らしをすれば家族が幸せになれるのかを考えることです。話し合いの一番の目的は、家族が幸せになること。そのためにお金をどう稼ぎ、どう殖やし、どう貯め、どう借りて、どう使うのかを話し合うのです。
けれども「お金の話」を始めたとたんに機嫌が悪くなる人がいると、前向きな話し合いにはなりません。
妻から「今月、少しお金が足りないみたい…」と言われただけで怒りだす夫。妻は事実を伝えただけ。けれど夫はなぜ怒りだしたのか。妻の言葉を「ぼくの稼ぎが少ないと言っている」「もっと働いてこいと言っている」「もっと高給取りと結婚すればよかったと思っている」などと勝手な解釈をし、勝手に責められたと思いこみ、不機嫌になってしまうということもあるかもしれません。
最初の投げかけに夫が「なんで足りないの?」と聞きかえし、妻が怒り出すケースもあるでしょう。夫の言葉を「私のやりくりが下手だと言っている」「こんなに頑張って節約している私のことをちっともわかってくれてない」「物価が上がって足りなくなっただけなのに私が悪いみたいに責めている」とこれまた勝手な解釈でキレてしまうこともあるかもしれません。こうなってくるとお互いにヒートアップしてしまい、言わなくてもいいことまで言ってしまいそうですよね。
お金の話をする時は、冷静に相手の話をよく聞きましょう。状況を確認し、それに対する相手の考えを聞き、その上でどうすればいいかを冷静に考え、具体的な解決策をいくつも考えて、より良い選択をしましょう。
感情的になってしまうとそこからなかなか冷静な話し合いにはなりにくいですよね。日ごろの心がけが大切です。
価値観を理解しあう
お金を使う時にはその人の価値観が大きく影響します。お金の話をするということは、家族の価値観を理解しあうことでもあるのです。
同じものを買うにしても、必要な時に必要な量を買うのがいいと思う人もいれば、大量に購入することで割安になることがいいと考える人もいるかもしれません。どちらの価値観が正しいというわけではありません。でもその買い方の話をきっかけに家族の会話を深めていってほしいのです。それはお互いをより深く理解しあうことにもつながります。
生活のすべてにお金はからんでくるので、意見が違ったときには、まず自分の意見を通そうとするのではなく、相手の意見を理解しようと思って聞きましょう。
人生の終わりに向けての話し合い「介護と相続とお金の話」
そして長い人生の終わりには、介護や相続の問題が出てきます。
まさに「家族でお金の話」をしなければならない場面です。
日常的にお金の話をおだやかにしている家族は、きっと介護や相続の問題も冷静な話し合いになるでしょう。けれどお金の話を避けてきた家族はどうでしょうか。家族の一大事に、さらにお金の話までするのは至難の業です。
それまでに家族に対して不満を抱いていた場合などはさらに話し合いはこじれ、専門家の力を借りないと解決できないことにもなりかねません。
相続に関してはもめていなくても専門家の力を借りた方がいい場合も多くあると思いますが、「相続」が争いが続く「争続」とならないようにしたいものです。
まとめ
一生を通して必要なお金とのつきあい。大切な家族と幸せに生きていくためのお金の話を楽しく穏やかにしていただきたいと思います。
>>相続、資産運用、保険、ローンなど、お金に関することのご相談はプロにお任せください。ご相談はこちらから。西日本シティ銀行ご来店予約サービス
鶴田 明子
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、子育てインストラクター、メンタルケア・スペシャリスト
「お金の話もできる子育ての専門家」として活動中。子育てに必要なのは『愛と技術(コミュニケーションスキル)とエネルギー(お金)』をモットーに経験に基づいた話を得意としている。一般社団法人「日本ライフプラン研究所」とNPO法人「ペアレント・スキルアップ福岡」の2ヶ所で理事を務める。 著書:お金と上手につきあう子になる育て方(自由国民社)