【福岡のFPさんコラム】|独身女性の住宅購入について

2020年の国勢調査によると福岡市の女性の未婚率は、25歳~29歳で68%、30歳~34歳で42%と、全国平均に比べて高いと言われています。最近、私のところにもキャリアを積んだ独身女性からの住宅購入のご相談が増えてきました。賃貸と購入のどちらがいいのか? 住宅を購入する際のポイントや、よくあるご相談のなかから、50代後半の住宅購入について解説します。
独身女性の住まいは賃貸と購入どちらがいいの?
人生の3大支出の一つでもある住宅購入。金額が大きいだけに、そのまま賃貸に住み続けるのか、購入するのか、迷われる方が多いようです。まずは、それぞれのメリット、デメリットを比較してみましょう。
- 賃貸のメリット・デメリット
【賃貸のメリット】住宅ローンの借入や、固定資産税などの税金負担がありません。賃貸ですと設備の修繕費用も大家さんの負担で行われることが多いです。また、今後のライフスタイルの変化に合わせて簡単に住み替えることが可能です。
【賃貸のデメリット】
家賃を一生払い続けなければなりません。高齢になると、入居条件が厳しくなることもあります。また、自分の好みにリフォームすることはできません。 - 購入のメリット・デメリット
【購入のメリット】
自分の資産になります。いざというときに売ったり、貸したりできますし、子どもに残すこともできます。また、好きなようにリフォームやリノベーションができます。住宅ローン控除を受けられる場合があります。
【購入のデメリット】
固定資産税や火災保険料の負担があります。設備の修繕は自分で負担しなければなりません。マンションの場合は、管理費や修繕積立金・駐車場代の負担もあります。戸建ての場合は定期的なリフォームが必要で、庭の草取りが必要になることもあります。また、ライフスタイルの変化による住み替えが難しくなります。

独身女性が住宅を購入する際のポイント
- 無理のない資金計画か?
住宅を購入する場合、多くの方が住宅ローンを利用されると思います。
住宅ローンの返済額は、生活に無理のない範囲に抑えることが大切です。目安としては、手取り年収の20%程度をローンの返済に充てる、または、今まで払っていた賃貸の家賃の範囲内で抑えると無理のない返済ができます。マンション購入の場合、修繕積立金・管理費・駐車場代などが発生するので、その額を合わせて総額で考える必要があります。
また、住宅ローンは毎月の支払いのみをお勧めします。ボーナスが自由に使えれば気持ちの余裕も出てきますし、投資に回して、貯まった分で繰上げ返済をすることもできます。
住宅ローンの期間は35年を選ばれる方が多いようですが、最近は50年ローンも登場しています。期間が長くなれば支払う利息も多くなりますが、毎月の金額は少なく済むのでバランスを考えて選びましょう。また、多くの金融機関は完済時の年齢を80歳未満に定めています。できれば退職までに完済できると老後の住居費の負担を減らすことができます。
自分がどのくらいの金額の住宅を購入できるかは、収入と支出、今後どのような生活をしたいのかによって変わってきます。購入前にファイナンシャルプランナーに相談して、キャッシュフロー表を作成することをお勧めします。
- 将来のライフスタイルの変化に対応できるか?
最近はマンションだけでなく、中古の戸建てを自分好みにリノベーションして、のびのびとペットを飼いながら暮らしたり、ゆったりと在宅ワークをされたりと、ライフスタイルの幅が広がっています。
とはいえ、住宅を購入すれば、簡単に別のところに住み替えることが難しくなります。単身世帯の場合、多くの方がマンションを選ばれると思いますが、今後、結婚も考えられる、または、いずれ高齢になった親との同居が考えられる場合は、1LDKより2LDKを選んだほうがよいかもしれません。また、「いずれ売却や賃貸も考えている」というのであれば、駅の近くなど利便性が高い物件を選んだほうが、売り手や借り手がみつかりやすくなります。
単身世帯専用のマンションの場合、ファミリー層対象のマンションより割安になりますが、専有面積によって住宅ローン控除の対象にならない場合がありますので確認が必要です。
- セキュリティが充実しているか?
独身女性が安心して住むためには、セキュリティが充実していることが重要です。
マンションの場合、オートロックや管理人が24時間いれば安心ですし、複数の監視カメラが設置されていればさらに安心です。戸建ての場合は、特にセキュリティ強化が必要です。監視カメラをはじめ、セキュリティ会社を利用し、安心して暮らせる体制を作りましょう。

よくあるご相談
Q.50代後半ですが、買った方がいいですか?
50代で賃貸物件に住んでいる方が、このまま家賃を払い続けるよりは、住宅を購入したほうがよいのではと、ご相談にいらっしゃいます。
キャリアを重ね、十分な収入と貯蓄がある女性が増えてきました。なかには現金で購入可能な方もいらっしゃいます。50代後半で住宅を購入するかどうかは、住宅ローンの組み方と今後のライフプランがポイントです。
30代で住宅購入すれば、35年ローンを組んでも、定年までにおおよそ支払いが終わります。しかし、55歳で住宅を購入し、20年のローンを組めば支払いは75歳まで続きます。
それまで働くのか?
ローンの期間を短くするために頭金を多めに払い65歳の定年までに完済するのか?
繰上げ返済をしながら短くしていくのか?
など、支払方法をそれぞれの貯蓄残高と今後のライフプランに合わせて考える必要があります。
住宅ローンはなるべく働いているうちに完済した方が安心です。定年後も返済が続くと、家計を圧迫してしまう可能性があるからです。ご自身にとって無理のない返済計画を立てるようにしましょう。
もう一つのポイントは、定年後のライフプラン。
ご自身が望む定年後の暮らしを考えながら物件選びをすることが大切です。たとえば、実家に戻って両親の介護などが必要はないのか?ご自身のからだが不自由になった時にどのようにしたいのか?車がなくても生活がしやすい環境か? など、現在お住まいの賃貸住宅は、長くお住まいのケースが多く、「今のお住まいはどんなところが気に入ってますか?」と尋ねると、「駅が近いから」「窓からの景色が好きだから」などの返事が返ってきます。
新しく住宅を購入するのであれば、今以上に楽しく過ごせる場所であってほしいと思います。物件を探している中で、「なんだか今の住まいのままの方がいいみたい。このままお金を貯めて、動けなくなったら老人ホームに入るわ」と仰る方もいらっしゃいます。
50代後半以降に住宅を購入する場合、自分が高齢になった時のことも考えながら、生活しやすい条件を洗い出して物件を選びましょう。
また、住宅を購入し、将来売却して施設に入所する予定がある場合は、すぐに売れる物件かどうかが大切です。駅からの距離や周辺環境も考えて買い手が見つかりやすい物件を選びましょう。

まとめ
住宅購入と賃貸には、それぞれメリットとデメリットがあります。自分がどのような暮らし方をしたいか考えたうえで決めるとよいでしょう。住宅を購入される場合は、無理のない資金計画が大切です。また、将来のライフスタイルの変化に対応できる物件かどうかも考えましょう。シングル女性の住宅の場合、ご自身の安全、安心のためにもホームセキュリティが整った物件を選びましょう。

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久恒 恵美子
一般社団法人 日本ライフプラン研究所 代表理事 CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、宅地建物取引士、終活アドバイザー
銀行勤務を経て、2016年に独立系FP事務所を開業。現在は、(一社)日本ライフプラン研究所「家計と暮らしと住まいの相談室」で代表理事を務め、多くのお客さまのご相談を受けている。また、官公庁・企業・学校でのセミナー講師や雑誌の執筆などでも活躍中。