インタビュー

【ぼくたちの子育て】家族も仕事も地域も人との繋がり。楽しませる、緊張をほぐすのが僕の役割|株式会社Chifit千布 宏和さん

プロアスリートのパーソナル指導やチーム指導で多くの選手のパフォーマンスアップに力を注いている千布宏和さん。スポーツトレーナーとして「人を育てる」仕事に携わり、24歳で結婚。現在は妻 環(タマキ)さんと悠仁(ユウジン)くん14歳、遥己(ハルキ)くん10歳、峻叶(シュント)くん3歳と賑やかな5人暮らし。人とのコミュニケーションを大切にしている千布さんの子育て方法についてうかがいました。

■Profile
千布 宏和(ちふ ひろかず)さん 
(株)Chifit 代表取締役  1984年生まれ。糟屋郡篠栗町在住。鹿児島県出身。鹿児島実業高校サッカー部、福岡リゾート&スポーツ専門学校 健康スポーツ科卒業。プロサッカー選手、プロ野球選手パーソナル指導、高校サッカー・野球チーム指導、大学バスケットチーム指導 、多い時には月100名を指導、20年近いキャリアで延べ数千人のスポーツトレーナーとして活躍中。

名門鹿児島実業サッカー部の経験を活かしスポーツトレーナーに

――18歳で単身 福岡へ来られたそうですね。

鹿児島はサッカーがとても盛んで、小学校5年生の時、鹿児島出身の前園 真聖選手や遠藤 保仁選手に憧れて、本気でサッカーを始めて希望の鹿児島実業サッカー部に入りました。プロを目指していたんですが自身の怪我もあり、将来はスポーツで怪我をした人やプロ選手たちのサポートをする人になりたい、そんな仕事につきたいと思って、高校2年生の時には「福岡リゾート&スポーツ専門学校 健康スポーツ科」を受験すると決め、卒業とともに単身で福岡に来ました。当時はスポーツトレーナーという仕事は珍しく、聞きなれない職種でしたが目指すのはここだと思って。

トレーナーという仕事を理解してくれ、支えてくれる存在

――環さんとの出会いをお聞かせください。

スポーツクラブでトレーナーのアルバイトをしていて、彼女も同じスポーツクラブで働いていました。同じ鹿児島出身で実家も近いこともあり意気投合してお付き合いを始めました。

トレーナーの仕事は正面から人と向き合う仕事なので、技術ばかりが先行してもダメで「人との信頼関係をつくること、人を楽しませることが大切だよ」って先輩たちからも教えられていました。なので率先して、いろんな幹事役を務めたり、食事会や飲み会に積極的に参加したり、デートの約束をしていても、トレーナーとして大事な人との会食が急遽入ったりしたらデートはゼロにして、そっちを優先することに理解をしてくれる彼女だったのでとてもありがたかったです。彼女が23歳、私が24歳の時に結婚しました。

働きまくっていた20代。夕方のサッカーが子どもたちとの時間

――悠仁くん、遥己くんとはなかなか遊ぶ時間がなかったようですが。

フリーとしてスポーツクラブなどで一般の方、アスリートの方のトレーナーの仕事をガンガンしていました。するとだんだんいろんな人から仕事の依頼が来るようになって、20代は生活の基盤作りに働きまくっていました。息子二人は奥さんの実家で出産だったので、集中して仕事させてもらえました。子どもたちが福岡に帰ってきてからは、マンツーマンの指導を朝から夕方までして、夕方から主にサッカーで息子たちと遊んで、夜はスポーツクラブで仕事というサイクルでした。僕にとってはやりがいのある仕事でしたが、やっぱり働く時間が長かったですね。

――子どもたちには、やっぱりサッカーをしてもらいたいと思われたのですか?

サッカーを教えたいということより、運動音痴になってほしくないって思うくらいです。自分が運動ばかりしていたので、運動ばかりじゃなくていろんな世界も見てもらいたいって思っています。スポーツが好きでもいいんですが、好きを仕事にして苦しくなるということもありますし、奥さんは学生の頃吹奏楽をしていたので、それぞれがいろんな世界を見ることで将来やりたいことも見つけられたらいいんじゃないかと思っています。

家族ができたら養わないといけないと想いすぎた25歳。

――パパになって自身が変わったと思ったことはありましたか?

悠仁が1歳くらいの時なんですが、家族ができるとやっぱり稼がないといけない、頑張んないとけないって、家族を想いすぎて、それがすっごく重荷になったのを覚えています。それまで好きでやっていたトレーナーの仕事がキツくなって、自然の状態ではなく自分らしさがなくなったのが25歳頃です。

――そこから抜け出せたのですか?

僕って悩みと向き合うタイプなので、20代後半は精神的にキツかったですが、家族との生活があって、たくさんの方のトレーナーを続ける間、ずーっと考え続けていました。結果、家族のために仕事をするのではなく、目の前の人をよくすることに集中しよう。それが僕の自然体だって、クリアになったんです。ぶち当たった経験があるからこそ見つけられたと思います。

三男 峻叶くんは自宅トイレ出産!

――峻叶くんの出産時のエピソードがあるそうですね。

 妻は悠仁の時、遥己の時も早産で分娩も陣痛から1時間ほどで生まれていまして、峻叶もそろそろだという時だったんです。家族3人は家にいて、僕は夕方からマンツーマンの仕事だったのでスマホを横に置いて指導していたんです。もう指導も終わり頃にふとスマホを見ると着信がついていて、なんかいやな予感がしたんで、かけ直すより早く車に乗って家に向かいました。自宅まで20分くらいなんですが、半分くらいのところでハンズフリーで電話をするのですが誰も出なくて、何度もかけてやっと遥己が出たんです。そうしたら遥己が泣きながら「赤ちゃんがトイレで生まれた!」って。

――えっ!側には息子さん二人だけだったんですよね?

もう僕もパニックで、救急隊に電話するのですが「奥さんの電話番号を教えてくだい」って言われても「わからないです。答えられないです」ってなるし。なんとか電話番号を伝えたら、救急隊の方が、息子二人に「赤ちゃんをバスタオルで包んで、ドライヤーで温めていてください」という指示をされたようで、僕が着いた時には二人が言われた通り一生懸命に温めてくれていたという状態でした。

ご褒美はシーチキンマヨネーズのおにぎり

――息子さんたち頑張りましたね。

トイレでまだ臍の緒がついている、もちろん血まみれの状態の中でした。数分して救急車が到着して、三男峻叶と奥さんが運ばれ、僕たちは車で後を追っかけていったんです。病院について「怖かった〜」っていう息子たちをたくさん褒めました。両腕で息子たちの肩を抱いて「ほんとようやった。なんでも買ってあげるよ。ゲームでもおもちゃでもいいけんね」って言ったら二人して「ローソンのシーチキンマヨネーズのおにぎりがいい!」って(笑)。よっぽど空腹だったんでしょうね。忘れられない思い出です。

それぞれの道を歩みだす息子たち。勉学、プロサッカー選手、仮面ライダー?

――悠仁くん、遥己くんもやりたいことが見つかったようですね。

悠仁は勉強熱心で、自分で行きたい高校も決めて、塾も自分で選んで私たちが何にも言わなくても一生懸命頑張ってくれていますね。勉強ができるようになりたいとか、わからないことを解決していきたいとか自分でモチベーションを作れていると思います。宿題などをみてくれる奥さんの期待に応えたいという思いがあるのかなぁ?

――遥己くんはプロサッカー選手を目指していると聞きました。

熱血にしたくなかったので、地域のサッカークラブにもあえて入れなかったんですが、小学校2年生の時、本人からクラブに入りたいと言ってきました。今、4年生ですけど6年生とプレーもできていて頑張っています。きっかけはやっぱり、僕が家に帰ると国内外のサッカーの映像をよく観ていて、今こうだから後半はこの辺りを注意してみたら面白いよとか話すので、より興味を持ったみたいですね。僕の解説はコーチを担当している、地域のサッカークラブの保護者の方にも好評なんです 笑)。本人がプロになりたいという意思があるので、遥己には、今プロを目指したトレーニングを行なっています。

――峻叶くんもすくすくと育っているようですね。

峻叶は、「子どもは元気に育ってくれるのが一番」と改めて思わせてくれました。家で生まれて、臍の緒がついたままの青ざめた顔をした息子を目の前にして、ちゃんと息ができているんだろうか?など本当に心配をした経験から、走り回っている今がすごくありがたいし、それだけで、もういいって思います。本人は仮面ライダーになりたいらしいです(笑)。

一番大事なのは、仲良くなる、心をほぐす人間関係づくり

――Jリーガーなどとご自宅で食事をされるそうですね。

はい、トレーナーをしているプロサッカー選手など、よく家に呼んで一緒にご飯を食べたり、ゲームをしたりします。それは僕にとって自然なことです。プロ選手も一般の方と同じでジムでも初めは緊張しているので、いきなり技術指導から始まってもぐっと構えられて体も硬くなるので、時には楽しく過ごす場を提供することも大切なんです。

そこには子どもたちも地域の人たちも交じることが多くて、子どもたちは憧れの選手に目を輝かせていますし、選手たちは子どもたちと気軽にサッカーしてくれたりするのでそこで人と人が繋がって、地域も明るく、活気がでています。

子どもたちの笑顔や地域の活気や選手たちが心を和ませているのをみると、高校2年生の時にスポーツトレーナーになってプロ選手を診たいという思いは、いろいろな人を介してここに繋がってきているな、と嬉しく思います。

家事も自然にトレーナー視点で

――皆さんが集まる時の料理などはどうされているのですか?

持ち寄ったり、テイクアウトの料理だったり僕も作ったりします。小さい頃から家のことを手伝っていたし、一人暮らしも長かったので、家事をすることは全然気にならないんです。トレーナーは食事の管理や環境づくりというのも大事なので、朝は魚を焼いたりしていますね。奥さんには家事は「別にせんでいいよ」って言います。それでもしてくれるんですが、奥さんがしてない時は「していない」のではなくて、「できない」という精神状態、肉体状態にあると解釈するんです。トレーナーの視点で見る習慣がついているというか、その時は疲れてるのかな?とか時間がないのかな?って思っています。

――そのような捉え方が子育てにも繋がっているように思えますね。

子どもを育てることで 仕事で接するお母さんたちの気持ちにも共感できるようになった

――最後に子育て中のパパに一言お願いします。

トレーナーを始めた頃、ダイエットを目指しているお母さんが、子どもが発熱だから、風邪だからと休むことがあって、正直ズル休みって思ってたんです。でも自分が親になると子どもの体調ってとても変わりやすくて、今では「そうなんですよね」って心から共感できるようになりました。「千布さんのところに行ったら心と体両方元気になるけん行こう」て言ってもらえるようになったり。子育てって正解はないけど、人に優しくなれたり、仕事にも役立ったりしますよね。

編集後記

自分の進路ってなかなか見つけられないと思いますが、宏和さんは高校2年生で夢を決めました。息子さんたちも14歳、10歳でそれぞれ進む道を見つけられているようです。
千布さんがバランスよく家庭も仕事もこなされているのは、やりたいと決め、一生懸命に取り組んできたトレーナーという仕事から培われたものだと感じました。
出会った時から宏和さんの生き方のよき理解者である環さんとともに千布ファミリーはこれからも人と人の繋がりを育んでくれそうです。

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