個人から贈与により財産を取得すると、贈与税がかかります。そのため、お年玉も財産の贈与となり、課税されるのではないかと思った人はいるでしょう。そこで今回は、お年玉に贈与税がかかるケースと必要な手続きなどについて解説します。
お年玉は贈与税の対象になる?
お年玉も財産の移動となるため、贈与税の対象になると考えている人もいるかもしれません。では、実際にお年玉には贈与税がかかるのかどうか、確認していきましょう。
お年玉は基本的に課税されない
お年玉は贈与税の課税条件に当てはまらないため、基本的には税金がかかりません。財産の贈与を受けることには違いありませんが、お年玉は課税されない例外として認められているのです。
この例外とは「子どもに渡すから特別に」という意味ではありません。国税庁では、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」について、贈与税がかからないとしています。
お年玉は「年末年始の贈答」に該当するため、相手が子どもかどうかは関係なく贈与税はかかりません。
参考元:国税庁「贈与税がかからない場合」
社会通念上相当の範囲
「社会通念上相当」をわかりやすくいうと、「常識の範囲内」という意味になります。お年玉であれば、数万円程度が常識の範囲内でしょう。この範囲を超える金額になると、課税の対象になってしまいます。
社会通念上相当の基準は明確に定められていませんが、贈与税の基礎控除額となっている110万円を目安にするとよいでしょう。お年玉を財産の贈与としても、1年間の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。
一方、祖父と祖母がそれぞれ100万円のお年玉を孫に渡してしまうと合計が200万円となってしまうため、贈与税の課税対象となる可能性が高いといえます。
お年玉が贈与税の対象になるケースとは
贈与税がかかるお年玉には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、贈与税の基礎控除額を目安として、課税される可能性があるケースを紹介します。
お年玉が車の場合
車のような現金以外のお年玉も、110万円を超える場合は贈与税がかかります。車の価格を考えると、この110万円という金額は微妙なラインといえるでしょう。110万円以下で探すとなれば、新車ではなく中古車になる可能性が高くなります。
一方、車を祖父や祖母の名義で購入して孫が使用すると資産の移動がないため、贈与とはなりません。ただし、「孫に車を貸している」扱いになります。そのため、古くなったり乗らなくなったりした場合、売却や廃車の決定を孫だけでは行えないのです。110万円以上の車をお年玉にしたいのであれば、贈る相手と相談して名義などを決めた方がよいでしょう。
お年玉が有価証券の場合
値動きがある有価証券をお年玉にするケースでは、受け取った際の時価で贈与税を算出します。株であれば、時価に株数をかけた金額が110万円を超えると贈与税がかかります。時価評価額が110万円以下の有価証券は贈与税がかかりませんが、値下がりのリスクや売買取引の手数料を考慮しなければいけないでしょう。
親が管理している場合
親がお年玉を管理している場合、課税対象となる可能性があります。子どものために親がお年玉を預かって貯めておき、成人したときにまとまったお金を渡すようなケースです。
お年玉が親の管理下にある場合、そのお年玉は子どもが受け取ったことになりません。毎年のお年玉は高額でなくとも、何十年も貯めておけば総額が110万円を超えることもあります。子供が成人後にまとめて渡した場合、一括贈与とみなされれば贈与税の対象となる可能性もあります。
この場合、贈与税が課せられるのはお年玉を管理していた親ではなく、受け取った子どもになります。親が管理する場合は、金額や子どもへ渡す時期に注意しておきましょう。
子ども名義の口座に高額なお年玉を入金した場合
一度に110万円を超えるお年玉を子ども名義の口座に入金した場合、贈与税がかかります。
また、毎年少しずつ子ども名義の口座に貯めていく場合でも、贈与税の対象となる可能性があります。口座名義が子どもであっても、親の管理下にあると名義預金とみなされるためです。
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出し入れする人が異なる預金のことです。名義預金とみなされてしまうと相続税が課せられるケースもあるため、お年玉を親が預かる際は注意しましょう。
お年玉で贈与税がかかった場合に必要な手続き
お年玉が贈与税の対象となる場合、税務署に申告して納税しなければなりません。申告しない場合は税額に応じたペナルティが課せられるため、手続きについて確認しておきましょう。
お年玉を受け取った本人が税務署に申告する
贈与税が課せられるのは、お年玉をあげた側ではなく受け取った側です。したがって、お年玉を受け取った本人が、居住する地域管轄の税務署に申告する必要があります。
親が子どもの名前で贈与税の申告書を提出することは避けましょう。不安な人は、税理士に依頼することをおすすめします。
贈与税は、その年の1月1日~12月31日までの1年間で贈与を受けた財産が対象となります。年間合計金額から基礎控除額の110万円を差し引いて、その残額に税率をかけたものがかかる税金です。
申告期間
贈与税の申告は、翌年の2月1日~3月15日までに行います。贈与税申告書の提出先は、居住地域管轄の税務署です。提出方法は窓口に直接持ち込む以外に、郵送やe-taxでも可能です。
申告期限までに申告書を提出しなかった場合は、無申告加算税が課せられます。また、延滞税も課せられるため、期限に遅れないよう早めに準備しておきましょう。
まとめ
受け取ったお年玉が少額であれば、贈与税を気にする必要はありません。しかし、金額が大きい場合は、取り扱いに注意する必要があるでしょう。また、現金以外のお年玉であっても贈与税がかかるケースがあります。贈与税がかかるのであれば、税務署への申告を忘れないようにしてください。
髙井美智彦
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、システムエンジニアを経て通信機器商社の経営戦略室で新規事業の立ち上げに参画。退社後はシステム会社の代表取締役に就任し、パソコン通信サービスを展開。1996年に著書『わかる!イントラネット』執筆後はフリーランスとして活動。事業経験とFP資格を活かしビジネス系ライターとして複数メディアで執筆中。