住宅ローンは一般的に長期間に亘って返済していくことが多く、その期間に転勤で引越しが必要になる可能性があります。住宅ローンの返済中でも引越しは可能なのか、返済や自宅の扱いはどうなるのか、不安に感じることもあるでしょう。この記事では、住宅ローン返済中の引越しで必要な対応や注意点について解説します。
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住宅ローン返済中の転勤における選択肢
住宅ローン返済中に転勤で引越しが必要になった場合、家族がどうするのか、自宅をどう扱うのか検討して選択することが大切です。まずは、住宅ローン返済中の転勤における選択肢について解説します。
単身赴任で家族が住み続ける
配偶者が仕事の都合で引越しできなかったり、子どもが学校に通っていたりする場合、転勤する本人が引越して単身赴任となり、自宅には家族が住み続けるという選択肢があります。その場合、住宅ローンの返済と自宅の維持費を負担しながら、単身赴任先での家賃や生活費が増えるため、家計の支出は大きくなります。単身赴任先が遠方になる場合、自宅へ帰省するための交通費が大きな出費となる可能性も避けられません。
転勤による引越しや住居費、単身赴任先での生活費などに対して、勤務先からの手当があると負担は軽減されるでしょう。本人が単身赴任して家族が自宅に住み続けるのは、家族の生活を優先したい場合の選択肢になります。
空き家として保守する
転勤の場合、家族全員で引越しして自宅を空き家として保守する方法があります。家族が引越ししても問題ない状況で、全員で暮らしたい場合の選択肢です。転勤の期間が数年であれば、その後の住居として住み続けられます。
空き家として保守する場合は、住宅ローンの返済と転勤先の住居の家賃で、住居費が2重になってしまう点に注意が必要です。転勤先での住居費と生活費、住宅ローンの返済を合わせた支出として、家計に問題ないか確認しておきましょう。
物件を賃貸に出す
家族全員で転勤先に引越す場合、自宅を空き家にせず賃貸物件として貸し出す方法があります。空き家ではなく住人がいるため、メンテナンスや防犯対策での手間は不要です。また、家賃収入が発生するため、転勤先の住居費や生活費などの出費による家計の負担を軽減できます。賃貸にする場合、経年劣化による内装や設備の修繕費を負担する必要があるので、経費が発生する点に注意が必要です。
住宅ローンで購入した物件を賃貸に出したい場合、事前に金融機関への確認が必要です。金融機関や住宅ローンの規約によっては、賃貸に出せない場合があります。また、賃貸で発生する家賃収入は不動産所得となるため、原則として確定申告が必要です。確定申告の手続きをする期限や必要書類について確認しておきましょう。
物件を売却する
単身赴任ではなく家族と暮らしたい状況で、空き家や賃貸といった方法で対応できない場合、物件を売却して引越す手段があります。物件を売却する場合、転勤先で新たに住宅を購入する買い替えも可能です。物件を売却した金額が住宅ローンの残債を超えていれば、一括で返済できます。一方、住宅ローンの残債を下回る場合は自己資金での返済が必要です。
金融機関によっては、買い替えや住み替えのための住宅ローンがあります。物件の評価額を見積もったうえで、残債の返済や転勤先での住居について検討しておきましょう。
住宅ローン返済中の転勤で必要な対応
住宅ローン返済中の転勤で本人が単身赴任しても家族が自宅に住み続ける場合、特に必要な対応はありません。しかし、自宅を空き家にしたり賃貸に出したり、売却したりする場合には、以下の対応が必要になります。
金融機関に相談する
自宅を空き家にする場合、転勤で引越す先の住所を金融機関に届け出ましょう。また、本人と家族全員の住民票を移す手続きを忘れないようにしましょう。
賃貸に出す場合、住宅ローンの規約に違反しないか金融機関への確認が必要です。賃貸用の物件の購入では、一般的にアパートローンが利用されます。住宅ローンは本人やその家族が居住する物件の購入が目的となるため、賃貸に対応できない場合がある点に注意しましょう。転勤が決まった時点で金融機関に事情を説明していれば、住宅ローンで購入した物件を賃貸に出すことが可能な場合もあります。
売却する場合、基本的には住宅ローンを一括で完済します。一括で完済する手続きや売却額が残債を下回った場合の対応策について、金融機関に相談しておきましょう。
住宅を査定して見積もりを立てる
住宅ローン返済中の転勤による自宅の扱い方を検討するために、物件を査定して見積もりを立てることが大切です。賃貸に出したり売却したりする場合、住宅の査定によって家賃収入や売却額の目安が分かります。査定による評価額を見たうえで、自身や家族の状況に沿った方法を選びましょう。
転勤による引越しが必要と分かった時点で、可能な限り早い段階で査定しておくと計画を立てやすいです。
住宅ローンの手続き
賃貸にするためには、住宅ローンからアパートローンへ借り換える手続きが必要な場合もあります。アパートローンの金利や返済する金額の増減を確認したうえで、手続きしましょう。
住宅ローン返済中の転勤で注意すること
住宅ローン返済中には、住宅ローン控除の扱いや自宅の管理について注意することがあります。
住宅ローン控除が適用されない場合がある
転勤先に単身赴任して家族が自宅に住み続ける場合、住宅ローン控除は継続して受けられます。ただし、家族は配偶者や子どもなどで生計が同一の場合のみです。また、扶養に入っている親が住んでいる場合も、住宅ローン控除を受けられます。
家族全員が引越してしまうと自宅に誰も住んでいない状態になるため、住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除を受けるための条件は、本人と家族が住んでいることです。そのため、物件を賃貸に出した場合も住宅ローン控除は受けられません。ただし、勤務先からの転勤の指示などやむを得ない理由であれば、再び自宅に戻ってから残存期間を超えるまで、住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除は年末時点の残債の0.7%が所得税控除となるため、適用がなくなると納税額が数十万円増えます。住宅ローンを返済し続ける方法を選ぶ場合、住居ローン控除が適用されるか確認しておきましょう。
賃貸は広告料や管理費がかかる
物件を賃貸に出して入居者が決まるまでは、広告料や仲介手数料がかかります。入居者が決まるまでの期間は空き家となってしまうため、避けられない経費でしょう。
また賃貸では、建材や設備機器の経年劣化による工事や交換は、貸主が費用を負担します。固定資産税も貸主が納税するため、入居者がいて家賃収入が発生していても、一部は経費として差し引かれる点に注意が必要です。物件を賃貸に出す場合、家賃収入だけでなく広告料や管理費を考慮して収支を試算しておきましょう。
空き家は防犯対策や手入れが必要
自宅を空き家にする場合は、掃除や設備などのメンテナンス、防犯対策などが大切になります。空き家は住人がいる住居より老朽化が早く進んでしまうため、定期的にメンテナンスしましょう。
空き家のメンテナンスや防犯対策を、管理会社に代行してもらう方法もあります。管理会社へ代行を依頼する場合は管理費が発生するため、家計の負担にならないか確認しておきましょう。自宅を空き家として保守するのは、メンテナンスなどに手間や費用がかかる場合もあります。
まとめ
住宅ローン返済中に転勤で引越しする場合、空き家や賃貸、売却とさまざまな選択肢があります。それぞれで必要な対応が異なるため、転勤が決まった際はしっかり確認しておきましょう。また、準備すべき資金や住宅ローンの返済についても理解しておくことが大切です。西日本シティ銀行では住宅ローンに関する相談も可能なため、わからないことがあればぜひ利用してみてください。
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岩崎 祐二
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
ライフとキャリアを総合した視点で、人生設計をマンツーマンでサポート。日々の家計管理から、数十年先に向けた資産設計まで実行支援しています。