インバウンド消費とは?外国人観光客が訪れるメリット・デメリットを紹介
近年、日本を訪れる外国人観光客の姿を頻繁に見かけるようになりました。彼らによる「インバウンド消費」は、私たちの暮らしや地域経済に大きな影響を与えています。本記事では、インバウンド消費が注目される理由や、地域にもたらすメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
インバウンド消費とは

最近では、ニュースなどで「インバウンド」という言葉を頻繁に耳にします。英語のインバウンド(Inbound)とは、「外から中に入って来る」という意味で、観光においては「訪日外国人旅行」を意味します。インバウンド消費とは、外国人観光客が日本を訪れ、滞在中に行う消費活動のことです。
インバウンド消費、つまり外国人観光客が日本滞在中に支出する項目には、次のようなものがあります。
- 宿泊費
- 飲食費
- 観光施設の入場料
- 交通費(電車、バス、レンタカーなど)
- おみやげ、買い物
- 体験型サービス
宿泊費、飲食費、買い物代、交通費、観光施設の入場料や文化体験など、外国人観光客が日本国内で使うお金すべてがインバウンド消費に含まれます。以下で、インバウンド消費の現状や福岡県のインバウンド事情について説明します。
インバウンドが注目される理由
観光地や繁華街で外国人観光客に出会う機会が増えたのを実感している人も多いでしょう。外国人観光客の訪日はコロナの影響で大幅に減っていましたが、コロナ禍明けの2023年頃から急回復しました。訪日外国人観光客の数はコロナ前の水準に近づいており、インバウンド消費にも注目が集まっています。
政府は観光立国を掲げ、ビザの緩和やインフラ整備を進め、訪日旅行のハードルを下げているのです。これにより、インバウンド消費への注目がさらに高まっています。インバウンド消費は、経済成長を促進する効果があります。日本の少子高齢化や国内市場の縮小が懸念される中、外国人観光客によるインバウンド消費は、新たな需要を創出する柱として期待されているのです。
円安の影響で、外国から日本への旅行は割安になっています。SNSを通じた情報拡散により、日本の魅力は世界中に広がっています。また、多様な観光資源を持つ日本には、リピーター観光客も多く訪れるようになっています。インバウンド消費拡大は、地方創生の観点からも重要視されているのです。
インバウンドが我々の暮らしに与える影響
インバウンドは地域経済の活性化や雇用の創出など、私たちの暮らしに多くの恩恵をもたらします。飲食店や小売業、交通機関などの需要が高まり、地域の文化や伝統が見直される契機にもなります。飲食店や宿泊施設の多言語対応が進むなど、地域のサービスの質の向上も期待できます。
一方で、観光地の混雑や公共交通の混み合い、文化の違いによるマナーの問題など、課題もあります。また、宿泊施設の不足や生活インフラへの負担が地域住民の生活に影響を及ぼすこともあります。インバウンドを地域の持続的な発展につなげるために、観光客と住民双方にとって快適な環境づくりが求められているのです。
インバウンド消費の現状
日本を訪れる外国人観光客は2013年に初めて1,000万人を超え、それ以降も増加を続けています。コロナ禍の2020年から2022年にかけては落ち込んだものの、2023年には約2,500万人の外国人観光客が日本を訪れました。訪日外国人旅行者数は、2024年には約3,700万人となっています。

観光庁の発表によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は8.1兆円と過去最高を記録しています。1人あたりの消費額は約22.7万円です。国別では、中国、台湾、韓国、アメリカ、香港の順に消費額が多く、これら5か国・地域で全体の約66%を占めています。

出典:観光庁「【インバウンド消費動向調査】2024年暦年の調査結果(速報)の概要」
インバウンド消費を費目別で見ると、宿泊費が最も多く、次いで買物代、飲食費が続きます。特に宿泊や娯楽サービスへの支出の増加が顕著で、体験型観光への関心が高まっていることがわかります。

出典:観光庁「【インバウンド消費動向調査】2024年暦年の調査結果(速報)の概要」
福岡県のインバウンド事情
福岡県でも外国人延べ宿泊者数はコロナ禍で大きく減少しましたが、2023年には全国よりも早い回復傾向が見られました。2024年の外国人延べ宿泊者数は691万6,340人で、全国の都道府県で第6位です。福岡県は多くの外国人観光客が訪れる人気の地域の一つとなっています。
福岡県では、外国人延べ宿泊者数の約8割が東アジアからの旅行者で、特に地理的に近い韓国からの観光客が多いのが特徴です。一方、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアからの観光客は少なく、欧米豪での認知度の低さがうかがえます。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2024年・年間値(速報値))」
出典:福岡県庁「インバウンドの現状および誘客の取組について」
インバウンド消費のメリット

訪日外国人観光客の増加により活発化するインバウンド消費には、どのようなメリットがあるのかをまとめます。
経済効果の拡大
外国人観光客による消費は、飲食店、小売店、宿泊施設、交通機関など、あらゆる産業に恩恵をもたらします。これにより、企業の売上増加や利益向上につながるだけでなく、税収の増加にもつながります。少子高齢化で国内消費が伸び悩んでいる日本にとっては、非常に大きなメリットといえるでしょう。
雇用の創出
インバウンド需要の増加は、ホテルや旅館、飲食店、観光案内所などで新たな雇用を生み出します。特に、多言語対応スタッフやインバウンド専門の企画担当者など、新たな職種の需要が高まります。これにより、地域での雇用機会が拡大し、地域定住や人口流出防止につながります。若者のUターンやIターンを促進する効果も期待できるでしょう。
地域文化の見直しと発信
外国人観光客の訪問により、地域に眠る独自の文化や伝統、歴史、景観などを再認識するきっかけとなります。外国人観光客に地域文化の魅力を伝えることで、地域文化の保護・継承の意識が高まります。世界に向けて地域の魅力を発信する機会も増えるでしょう。
インバウンド消費のデメリット

インバウンド消費の拡大には課題も伴います。インバウンド消費のデメリットや今後求められる対策を知っておきましょう。
観光地の混雑・渋滞
外国人観光客の急増により、人気観光地では「オーバーツーリズム」と呼ばれる問題が発生しています。これは、観光客の数が地域の許容量を超え、住民の生活や自然環境、観光体験に悪影響を及ぼす現象です。
バスや電車が観光客で混雑すれば、地元住民の通勤や通学に支障が出ることもあります。観光地周辺の道路では慢性的な渋滞が発生し、移動の利便性や安全性も低下するでしょう。オーバーツーリズムは観光客自身の満足度を下げ、結果的に観光地の魅力を損なうことにもつながります。
今後は、観光客の分散化や受け入れ体制の整備など、持続可能な観光を目指した取り組みが求められるでしょう。
宿泊施設の不足
外国人観光客の増加に伴い、都市部や人気観光地では宿泊施設の需要が供給を上回っています。そのため、宿泊施設の予約が取りにくくなったり、宿泊料金が高騰したりする問題が発生しています。
宿泊料金の高騰には、円安の影響もあります。外国人観光客にとっては日本での宿泊費が相対的に安く感じられるため、高価格帯のホテルも予約が取りづらくなっています。人件費や光熱費、食材費などの運営コスト上昇も、ホテル側が料金を上げざるを得ない要因となっています。
国内の旅行者やビジネス利用者は、これまで手頃だったホテルを予約しにくくなり、高額な宿泊費を負担せざるを得ない状況に直面しています。今後も需要は高まると思われるため、宿泊施設の供給拡大や地域分散、多様な宿泊形態の提供などの対策が求められています。
インフラ整備の負担
外国人観光客の増加に対応するため、空港、鉄道、道路などの交通インフラやトイレの整備、多言語対応の案内表示の設置、無料Wi-Fiの拡充など、さまざまなインフラ整備が必要です。受け入れ環境の整備には多額のコストがかかり、自治体にとっては大きな財政負担となります。
インフラ整備の負担を軽減するには、国や自治体、民間企業が連携し、計画的な取り組みを進める必要があります。老朽化対策に加え、デジタル技術を活用した利便性向上や、地方分散を促すための交通網整備など、多角的な視点での対策が求められているのです。
福岡県のインバウンドにおける取り組み

福岡県では、インバウンド消費のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるためのさまざまな取り組みを行っています。
出典:福岡県庁「インバウンドの現状および誘客の取組について」
魅力的な観光コンテンツを開発
太宰府天満宮では、禰宜が現代アートを案内するツアーなど、歴史や文化を深く体験できる高付加価値な旅行商品を展開しています。また、広域サイクリングルートの整備によるサイクルツーリズムの推進、「食べる」「遊ぶ」「泊まる」を一体的に楽しめる地域づくりの推進なども行っています。
海外現地でのプロモーション
海外での観光セミナーの開催や旅行博への出展、商談会への参加など、現地での直接的なプロモーションを行っています。海外の旅行会社を招請し、モデルコースや観光スポットを巡るモニターツアーなども実施しています。
SNSで観光情報を発信
海外利用者の多いSNSを活用したプロモーションに力を入れています。各国の利用者の好みに合わせた情報の発信や、現地で影響力のある海外インフルエンサーの起用により、福岡の魅力を世界に届けています。
外国人観光客の受け入れ環境を整備
外国人観光客の受け入れのためのインフラ整備として、多言語対応の電話通訳サービスの提供、多様な食文化への対応、ユニバーサルツーリズムの推進などを行っています。
福岡県では、外国人旅行者の受け入れに積極的な飲食店や宿泊施設を「インバウンド協力店」として登録する仕組みも設けています。インバウンド協力店にはステッカーが掲げられており、特設ホームページから検索も可能です。
まとめ
外国人観光客の増加は、経済の活性化や雇用の拡大といった多くのメリットをもたらします。一方で、オーバーツーリズムなどの課題も抱えており、対策が求められます。インバウンド消費の恩恵を地域全体で享受できるよう、持続可能な観光と受け入れ体制の整備が不可欠です。今後の福岡県のさらなる取り組みにも期待が高まります。
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森本 由紀
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。