日本の金融市場では、低金利の状況が続き、安全な預金だけでは十分な利益を得ることが難しくなっています。このような状況の中、より高い利息を提供する外貨預金に関心を示す人が増えています。
今回は、外貨預金の基礎や上手な運用法についてご紹介します。これから外貨預金にチャレンジする人は、ぜひ参考にしてみてください。
>>外貨預金の初心者さんでも大丈夫!わかりやすく教えちゃいます。
外貨預金の基本をおさらいしよう
米ドルやユーロなどの外国の通貨で預金をするのが、外貨預金です。円預金にはないメリットがあるのですが、注意点もあります。まずは、外貨預金の基本をご説明します。
外貨預金の特徴・メリット
外貨預金を始める前に、その特性をしっかり理解することが重要です。外貨預金が多くの人々の注目を集める理由について詳しくまとめました。外貨預金のメリットが今までよくわからなかった人は、この機会に以下のポイントを確認してみてください。
円預金よりも高い金利での運用に期待
外貨預金は、一般的に円預金よりも高い金利で設定されていることが多いです。これは、同じ金額を預けた場合、外貨預金の方がより高い利息を得られる可能性があることを意味します。では、実際に円預金と外貨預金の間にどれほどの差が存在するのか、西日本シティ銀行の各種商品を例に取り、比較してみましょう。
商品 | 利率 | |
円預金 | 普通預金 | 0.001% |
スーパー定期 | 0.002%(1年) | |
外貨預金 | 外貨普通預金(米ドル) | 0.1% |
スーパー米ドル定期預金 | 2.5%(1年) | |
スーパーユーロ定期預金 | 0.45%(1年) |
外貨預金にかかる手数料や税金を加味したとしても、大きな差があります。特に外貨定期預金は金利が高く、余裕資金の効率的な運用が可能です。
※金利は金融情勢等により変動する場合があります(上記は2024年2月15日時点の金利となります)。
為替差益が期待できる
外貨預金には、為替差益を狙えるメリットがあります。為替差益とは預け入れたときより円安が進んだ場合、円へ払い出しした際に変動した分の利益が生じることです。金利が高いだけでなく、為替差益が期待できる点も外貨預金の魅力といえます。
例えば、1ドル100円のときに100万円(10,000ドル)を預け入れるとします。払い出しの際に1ドル120円だったとすると120万円となり、20万円(税引前)の為替差益が得られるのです。反対に円高が進んだ場合は、為替差損が生じる可能性があります。こうした為替相場の影響は、円預金にはない特徴といえるでしょう。
自由に預け入れ・払い戻しができる
外貨預金は初めての人にとって少し難しそうに感じられるかもしれませんが、株式投資のような複雑な銘柄選びは必要ありません。外貨預金は、銀行を通じて通常の預金と同様に行うことができます。特に外貨普通預金なら、入金や出金が自由に行えるため、投資初心者にも手軽に始めることができます。
さらに、一定期間使う予定のない資金がある場合、外貨定期預金も良い選択肢です。外貨定期預金は、原則満期まで引き出すことはできませんが、1か月、3か月、6か月と短期間から選ぶことができ、自分の資金計画に合わせた運用が可能です。
外貨預金利用時の注意点
外貨預金は高金利ばかりに目を奪われがちですが、円預金にはない注意点もあります。「払い戻してみたら思ったより少ない…」ということにならないよう、外貨預金の仕組みやデメリットもしっかり押さえておきましょう。
為替手数料がかかる
外貨預金に円から入金・円へ出金する際は、ドルやユーロなどの外貨と円を交換します。このとき金融機関に支払うのが、為替手数料です。
外国に旅行するときは、日本円と米ドルなどを両替する際に手数料を支払います。それと同様に、外貨預金では為替手数料がかかるのです。
外貨預金の場合はTTS(日本円を外貨に交換する際の為替レート)とTTB(外貨を日本円に交換する際の為替レート)が用いられます。どちらにも各金融機関の手数料が上乗せされていると考えておくとよいでしょう。
為替変動のリスク
外貨預金では、預け入れた時点と比較して円の価値が下がれば、為替差益のチャンスがあります。しかし、反対に円の価値が上がると、為替差損が生じるリスクも考慮する必要があります。そのため、外貨預金に投資する際は、最初の入金だけでなく、その後の為替相場の動向にも注意を払うことが重要です。
このように、外貨での資産価値が為替レートの変動によって増減するリスクを「為替変動リスク」と呼びます。外貨預金は、外国株式や債券と同様に、この為替変動の影響を直接受けるため、投資のタイミングによっては損失が生じる可能性があることを理解しておくことが大切です。
ペイオフの対象外
ペイオフとは、銀行やその他の金融機関が破綻した場合に、預金者を守るための制度です。これは預金保険制度の一部であり、各預金者は1つの金融機関につき元本1,000万円とその利息までを保障されます。この制度は、預金者の資産を一定額まで保護することで、金融システムの安定を図ることを目的としています。
ただし、外貨預金に関してはこのペイオフの保護対象外です。つまり、金融機関が破綻した場合、外貨預金に対する払い戻しの保証はありません。払い戻しは金融機関の財産状況によって決まりますが、全額または一部が返金されないリスクが存在します。
対象となる通貨
世界には約180種類の通貨が存在すると言われていますが、外貨預金でこれらすべてを取り扱っているわけではありません。対象となる通貨は金融機関によって異なりますが、一般的には米ドル、ユーロ、豪ドルなどがよく取り扱われています。
政治的な不安や紛争がある国々の通貨は、もしその金融機関で取り扱われていたとしても、投資リスクが高いと見なされがちです。そのため、為替レートが比較的安定している通貨が、外貨預金において選ばれる傾向にあります。
例えば、西日本シティ銀行の外貨預金では、米ドル、ユーロ、豪ドルなどが取り扱いの対象となっています。これらの通貨は、国際的に流動性が高く、安定性があるため、多くの投資家にとって魅力的な選択肢となっています。
外貨預金はタイミングが重要
外貨預金でタイミングが重要とされる主な理由は、不確実性が伴うという点にあります。円預金と異なり、外貨預金は為替レートの変動によって為替差益を得ることができますが、同時に為替差損のリスクも背負っています。預け入れや払い戻しのタイミングを間違えると、期待していた利益が損失に転じる可能性があるのです。
しかし、このようなリスクを避けることは不可能ではありません。外貨預金は基本的に円を外貨に変えて預けるだけで、預金という基本的な仕組みは変わりません。世界経済の動向や為替市場の仕組みについてしっかりと学び、理解することで、適切なタイミングでの預け入れや払い戻しを自分自身で判断する力が養われます。
外貨預金を預け入れ・払い出しタイミングの判断基準
外貨預金における預け入れや払い戻しの最適なタイミングを見極めるためには、世界の政治や経済情勢に関する情報収集が欠かせません。どの情報をチェックし、どのように分析するかは、賢い投資判断のために非常に重要です。以下に、情報収集の際に役立つポイントをまとめましたので、参考にしてみてください。
円預金の金利
外貨預金が注目される一つの理由は、その提供する金利の高さにあります。これは、日本の円預金の金利が極めて低いという事実と対照的です。日本銀行の時系列統計データによると、2016年(平成28年)に普通預金の店頭表示金利は0.02%からわずか0.001%まで低下し、2023年(令和5年)12月現在もこの低水準が続いています。メガバンクや大手地方銀行でも、預金金利は同様に0.001%という状況です。
外貨預金では、より高い金利を享受することが可能であり、特に低金利が続く日本の市場環境では、その魅力は一層際立つものとなっています。
参考元:日本銀行「時系列統計データ 定期預金・普通預金の平均金利」
円相場
外貨預金は円高のときに預け入れをして、円安のときに払い出しをすれば為替差益が得られます。預け入れタイミングは、今が円高なのかを考えるより、これから円安に向かいそうかどうかを見極めるポイントにするとよいでしょう。
払い出しのタイミングのポイントは、預け入れのときより円安になっていることです。円高だと為替差損が生じるため、円安になるまでしばらく様子をみることも必要になります。また、為替手数料のことも忘れないようにしましょう。
円安・円高のトレンドの見極めには、世界各地に拠点がある通信社の情報が参考になります。例えば、ロイターのWebサイトでは外国為替の他に、金利・国債、各国マーケットなどのデータを取得できます。
日本の政治・経済状況
為替相場を動かす要因には、貿易収支や物価変動といった経済的な要因、政権交代や外交政策といった政治的な要因があります。これらの要因は、外貨預金の適切な出し入れタイミングを判断する上で重要な指標となります。
例えば、もし日本から米国への輸出が増加し、貿易収支が黒字に転じると、代金のドルが売られ円が買われることにより、円高・米ドル安が進む傾向にあります。同様に、インフレによって通貨の価値が下がり、デフレでは価値が上がります。米国がデフレで日本がインフレになると、米ドル高・円安へと進む可能性が高くなります。
さらに、中央銀行の為替介入や政府関係者の発言も為替相場に大きな影響を与えることがあります。外貨預金を運用する際は、こうした経済的、政治的な動きに注意を払い、為替変動に関する最新の情報を見逃さないようにすることが重要です。
外貨預金を賢く運用するコツ
高金利が魅力の外貨預金ですが、為替変動によるリスクは無視できません。上手に運用するためには、リスク管理が重要です。そこで、リスクを軽減する方法や運用時に心がけたいポイントについて紹介します。
複数の外貨に分ける
投資の世界では、リスクを回避するために分散投資が行われます。外貨預金は投資ではありませんが、同じような考え方でリスク軽減が可能です。その一つが、複数の外貨に分けて預金する方法です。
為替相場は国ごとに違います。値動きの異なる複数の外貨を組み合わせることで、偏りをなくすことがポイントです。一つの外貨が預け入れ時より円高になったとしても、その他の外貨が円安ならマイナス分をカバーできます。
預金のタイミングを分散
為替相場は毎日変動するため、外貨預金を時間で分散するのもリスク軽減には有効です。外貨を一括購入するのではなく、例えば、毎月1万円といったように一定額を定期的に購入する方法があります。
これは「ドル・コスト平均法」と呼ばれるもので、ドルが安いときは多く、ドルが高いときは少ない購入になるため外貨の購入レートを平準化できます。
西日本シティ銀行にも「外貨de積むつむ」という定額自動振替サービスがあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
余裕資金の範囲で運用
外貨預金がどれほど高金利で出し入れがしやすくても、生活費も含む全ての資金を預け入れることはおすすめできません。為替リスクがゼロになることはなく、頻繁に出し入れすると手数料負担が増えることがその理由です。
生活費は円預金などで確保しておき、しばらく使う予定がない余裕資金を外貨預金に充てることはリスク軽減にもなります。為替の変動も毎日一喜一憂するのではなく、長期的な視点で考えることが大切です。
こまめに情報収集をする
外貨預金は、長期にわたる利息の複利効果により、為替リスクを相対的に低減することができます。このため、長期運用が一般的に推奨されます。しかし、ただ預け入れた後に放置するのではなく、運用中は積極的に世界の政治・経済情報をチェックし続けることが肝心です。
為替変動は日々の国際情勢や経済動向に左右されるため、常に最新の情報を得ておくことが迅速なリスク管理と適切なタイミングでの運用調整に繋がります。この点で、情報収集が容易で、世界的に流動性が高く安定している米ドルやユーロなどの主要通貨を選ぶことは、堅実な運用戦略の一つと言えるでしょう。
自身で情報収集するのが苦手という人は、外貨預金を扱う金融機関の窓口で相談するとよいでしょう。
外貨預金の気になる疑問点
外貨預金でお金を増やしたいけれど、さまざまな不安もあって始めるタイミングを逃しているという人もいるでしょう。ここでは初心者でも安心して外貨預金ができるように、よくある疑問点について解説します。
外貨預金の利用に手数料はかかる?
外貨預金の取引では、預け入れ・払い出しの際に為替手数料がかかります。多くの場合、TTS(買付レート)・TTB(売却レート)に手数料が含まれるため、別途手数料が請求されることはありません。
TTSとは仲値(公表相場)に手数料を上乗せしたレートで、TTBは仲値から手数料引いたレートです。例えば仲値が1米ドル=140円で、手数料が1米ドルあたり1円だとすると、円から米ドル交換の際にTTS・1米ドル=141円が適用されます。
外貨預金で得た収益には税金がかかる?
外貨預金では、為替差益と利息に税金がかかります。為替差益は雑所得として扱われ、総合課税の対象となります。また、利息には20.315%の源泉分離課税(国税15.315%、地方税5%)も適用されます。
為替差益は確定申告が原則必要ですが、利息は確定申告は必要ありません。また、為替差益を含め給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合は、為替差損と同様に確定申告が不要です。
外貨預金にはどのようなリスクがある?
外貨預金には元本割れのリスクがあります。これは、預け入れ時の円貨額よりも払い出し時の円貨額が下回ることです。元本割れが起きる要因としては、為替相場の変動や為替手数料によるものがあります。
こうしたリスクがある一方で、大きなリターンも期待できるのが外貨預金です。円預金と同じ感覚で入金・出金を繰り返すと失敗しますので、外貨預金のリスクをしっかり把握したうえで、タイミングを考えた運用を心がけましょう。
まとめ
外貨預金は、確かに為替変動などのリスクを伴いますが、その基本的な仕組みは決して複雑ではありません。適切なリスク軽減策を理解して実践することで、利益を得る可能性を高めることが可能です。世界の経済情勢や為替レートの動向を追うことは、外貨預金の運用においてだけでなく、経済知識を深める絶好の機会となります。
これらの情報収集は、資産運用の成功に不可欠であり、経済や金融の世界への理解を深めることで、自己の知識を拡充し、より賢い投資判断を行う基盤を築くことができます。資産を増やすだけでなく、知識の拡張を図るためにも、外貨預金は有効な手段と言えるでしょう。
※外貨預金には、為替変動による元本割れなどのリスクがあります。 詳しくは
「外貨預金についてのご留意事項」をご確認下さい。
商号/株式会社 西日本シティ銀行
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髙井美智彦
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、システムエンジニアを経て通信機器商社の経営戦略室で新規事業の立ち上げに参画。退社後はシステム会社の代表取締役に就任し、パソコン通信サービスを展開。1996年に著書『わかる!イントラネット』執筆後はフリーランスとして活動。事業経験とFP資格を活かしビジネス系ライターとして複数メディアで執筆中。