自然豊かな地域で日本の文化や生活にあわせた暮らしができる古民家が注目されています。古民家の風情を残しながら快適に生活するためには、リノベーションが効果的です。この記事では、古民家のリノベーションにかかる費用や使える制度について解説します。
古民家リノベーションにかかる費用の相場
古民家の住居全体を工事するフルリノベーションと、部分的にリノベーションするのとでは費用が異なります。築年数や状態、理想のライフスタイルによって必要な工事が決まるため、必要なリノベーションを把握しておくことが重要です。まずは、古民家リノベーションにかかる費用の相場を解説します。
フルリノベーションの費用
フルリノベーションの費用の相場は、3LDK(60~70平米程度)で1500万~2000万円程度です。古民家のフルリノベーションは基礎と柱だけを残して、他の部分をすべて作り直す「スケルトンリフォーム」という工法が用いられます。
古民家の築年数が数十年以上で誰も住んでいない期間があると、設備の故障や老朽化によって工事箇所が増えて費用が高くなります。直近までの入居者がメンテナンスを丁寧にしていれば、費用は抑えられる可能性が高いです。また、古民家の風情を残すために工事箇所を必要最小限に抑えると、フルリノベーションの費用は安くなるでしょう。
部分的なリノベーションの費用
古民家を部分的にリノベーションする費用は、100万~500万円程度が相場です。リビングや浴室のみ、または複数箇所の組合せなどがあります。
部分的なリノベーションは費用を抑えられるため、フルリノベーションより少ない資金でも対応できる方法です。水回りや電気設備以外の床材や壁紙など、素人でも工事できる箇所を自分でリノベーションすると、さらに費用を抑えられます。
古民家リノベーションのメリット
ここからは、古民家リノベーションのメリットについて解説します。
木材の強度が高く耐久性がある
古民家では、ヒノキやケヤキといった、強度が高く耐久性のある木材を用いていることが多いです。家を支える重要な部分に強度が高く耐久性のある木材を用いていると、築100年たっても住み続けられます。暮らせる期間が長くなれば、古民家リノベーションによって住まいとして再生できるのです。基礎や柱から修繕すると高額な費用が必要ですが、それ以外の箇所では安く抑えられます。
1度リノベーションしてから、数十年後に再生したり修繕したりする方法にも対応できるのは、メリットでしょう。強度が高い木材であってもメンテナンスを怠ると劣化してしまうため、定期的に点検して老朽化対策しておくことも重要になります。
自然豊かな地域で暮らせる
古民家は、都心から離れた郊外に多く建っています。古民家リノベーションによって最新の設備やキレイな内装を整えることで、理想の暮らしに近づくことができるでしょう。
自然が豊かな環境で健やかに暮らせるのが、古民家リノベーションが人気となっている理由の1つです。自然のなかで子育てをしたい親世代、老後を穏やかに過ごしたい世代など、古民家での暮らしには幅広いニーズがあります。自然のなかに立つ木造の古民家であれば、より一層癒やされながら暮らせるでしょう。
住宅の固定費や維持費が安い
築年数が数十年たっている古民家は、固定費を安く抑えられる点がメリットとなります。古民家に住むための固定費や維持費として、税金や火災保険などがあります。持ち家があると固定資産税を納税する必要がありますが、築年数が長いほど税額は安いです。固定資産税は、住宅の固定資産税評価額の1.4%で計算されます。
木造の建物は築25年で固定資産評価額が最低水準まで下がるため、古民家は税金が安くなるのです。新築の木造住宅の固定資産評価額が5000万円だとすると、築25年で1000万円となります。この場合、税率を1.4%で計算すると固定資産税は140万円です。
古民家リノベーションのデメリット
ここからは、古民家をリノベーションするデメリットについて解説します。
耐震性が低い場合がある
古民家は強度が高く耐久性のある木材が使われていることが多いですが、耐震性は低い場合があります。日本の耐震基準を定める建築基準法は1981年(昭和56年)に改正されたため、それ以前の古民家の耐震性は低い可能性があるのです。
そのため、建築当初の基準に適合していても、最新の基準には不適合(既存不適格建築物)となります。既存不適格建築物は合法な建物ですが、耐震性を高める工事をしたほうが安心して入居できるでしょう。ただし、最新の基準を満たすための耐震工事は高額になりやすいです。工事部分の面積が既存部分の2分の1以下であれば、一定の条件を満たすと最新の基準への適合が不要となる緩和制度があります。
耐震性が低い場合はリノベーションを依頼する会社と相談して、耐震工事を検討しましょう。
断熱性が低いと光熱費が割高になる
古民家は木造で壁が薄く、窓ガラスや扉の断熱性能は低いため、光熱費が割高になりやすいです。古民家は夏の過ごしやすさを重視されやすいため風通しがよく涼しいですが、冬は寒くなります。
木造で天井が高い構造になっていたり、断熱材が使われていなかったりする古民家が多いです。古民家リノベーションで断熱工事をすれば、光熱費を抑えられるでしょう。
入居までに時間がかかる
古民家リノベーションは一般的な住宅より工事の期間が長く、入居までに時間がかかります。古民家リノベーションの工事を始める前に、劣化の程度や耐震性などを診断する必要があるのです。また、修繕箇所が多かったり大規模な工事だったりすると、長期間かかってしまいます。
人気のある古民家リノベーションで理想の暮らしを始めたいときに、入居までに時間がかかってしまうのはデメリットでしょう。古民家の修繕箇所や工事の優先順位を確認し、入居までの期間を事前に把握しておくことが重要です。
古民家リノベーションの工事箇所別の費用
ここからは、古民家リノベーションでかかる費用の相場について、工事箇所別で解説します。
水回り
キッチンやトイレ、浴室、洗面所などの水回りのリノベーションにかかる費用は、20万~150万円程度が相場です。
水回りのリノベーションにかかる費用
工事箇所 | 金額 |
キッチン | 50万~150万円 |
トイレ | 20万~50万円 |
浴室 | 100万~150万円 |
洗面所 | 20万~50万円 |
水回りをすべてリノベーションすると、300万円程度となります。最新の機能を備えている設備になると費用が高くなるため、注意しましょう。生活のなかでの使用頻度や快適性など、費用をかけたい箇所の優先順位を検討しておくことが重要です。
耐震・断熱工事
耐震性や断熱性を高めるための工事は見た目には分かりにくいですが、安全で快適な暮らしのためには重要なリノベーションです。耐震工事は100万~300万円程度になります。古民家の構造や老朽化の進行具合を確認するための診断にも費用がかかるので、高額になりやすいです。
断熱工事は壁や天井に断熱材を入れたり、複層ガラスに付け替えたり、工事する範囲が広いと500万~1000万円程度となります。二重窓にする工事のみでは、10万~15万円程度に収まることが多いです。古民家での生活をイメージしながら、暑さや寒さへの対策として優先順位を検討しておきましょう。
屋根・外壁
古民家を再生して住むために、構造部分への浸水や雨漏りの対策として屋根のリノベーションは必須です。屋根のリノベーションは塗装、ふき替え、カバー工法という3種類が一般的になります。塗装だけで対策できる場合は10万~50万円程度の費用です。ふき替えとなると、120万~200万円程度の費用が必要となります。
古民家の外壁は損傷や劣化の激しい場合が多く、リノベーションが必須となる可能性が高いです。外壁の塗装や補修のみであれば30万円程度ですが、全体的に再生させるために張替えると300万円以上かかる場合があります。
古民家の大きさや劣化状況で屋根と外壁のリノベーション方法や費用は異なるため、十分に情報収集して検討しておきましょう。
内装
古民家の内装のリノベーションでは、以下のような費用がかかります。
内装のリノベーションにかかる費用
リノベーション内容 | 金額 |
畳の交換 | 6万~10万円 |
壁や天井のクロスの張替え | 10万~20万円 |
和室を洋室化 | 50万~200万円 |
段差をなくす | 2万~20万円(1ヶ所) |
手すりを設置 | 3万~10万円(1ヶ所) |
内装を変えると雰囲気が大きく変わるため、最新のデザインや個性を活かすリノベーションの人気が高くなっています。
古民家リノベーションで使える制度
古民家リノベーションで住宅としての機能を再生したり、人気のデザインにしたりする工事では高額の資金が必要です。最後に、古民家リノベーションで使える制度や費用を準備する方法について解説します。
補助金と税制優遇
古民家のリノベーションでは、国や自治体の補助金をもらえる場合があります。耐震診断や耐震補強工事に対して、補助金を設けている自治体が多いです。
バリアフリー化のためのリノベーションでは、介護保険の補助金で最大20万円がもらえます。また、耐震や省エネ、同居のためのリノベーションでは所得控除が適用されるため、節税方法としても人気です。
古民家専用の住宅ローンで資金を準備する
古民家のフルリノベーションは1500万~2000万円程度、部分的でも数100万円は必要なため、資金を準備するのは大変です。自己資金で準備すると長期間かかってしまったり、用途が自由なフリーローンでは金利が高くなったりします。
古民家の購入やリフォーム専用の住宅ローンは、低い金利で借り入れられてお得です。古民家鑑定など古民家の購入やリフォームのサポートを受けられるサービスもあるため、事前に検討しておきましょう。
>>古民家の購入・リフォームには西日本シティ銀行のNCBヴィンテージ住宅ローン
まとめ
古民家リノベーションは木造の雰囲気を残しつつ、自然のなかで快適に暮らせる方法として人気があります。リノベーションが大規模になると費用が高くなりますが、補助金や古民家専用ローンといった制度を利用すると準備しやすいです。古民家リノベーションにかかる費用の相場や、使える制度の参考にしてみてください。
岩崎 祐二
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
ライフとキャリアを総合した視点で、人生設計をマンツーマンでサポート。日々の家計管理から、数十年先に向けた資産設計まで実行支援しています。