マイナンバーカードを健康保険証として使える「マイナ保険証」がスタートしました。マイナ保険証に切り替えた方がいいのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。本記事では、マイナ保険証のメリットとデメリットについて説明します。登録を検討する際の参考にしてみてください。
マイナ保険証とは?
2021年(令和3年)10月から、マイナ保険証の運用が開始されました。まずは、マイナ保険証とはどのようなものか、なぜ導入されたのかについて説明します。
健康保険証とマイナンバーカードを一体化
マイナ保険証とは、従来の健康保険証の機能をマイナンバーカードに組み込んだものです。マイナ保険証を利用するには、マイナンバーカードを取得したうえで健康保険証としての利用登録を申請しなければなりません。
登録手続きが完了すると、健康保険証とマイナンバーカードは一体化し、別々に持つ必要がなくなります。医療機関で健康保険適用の診療を受ける際には、マイナンバーカードを提示するだけでかまいません。
マイナ保険証導入の背景
我々がかかる医療機関は1か所とは限らず、複数の医療機関にかかるのがむしろ一般的です。しかし、これまで医療機関の間で、患者の医療情報を共有する仕組みはありませんでした。医療機関で患者の医療情報を把握する負担が生じ、重複した投薬や検査が発生するデメリットもあったのです。
マイナ保険証を導入すれば、医療機関の垣根を越えて医療情報を管理できます。国民へのより適切な医療の提供を目的に、マイナ保険証が導入されました。
マイナ保険証の普及状況
厚生労働省の発表によると、マイナ保険証の登録件数は2022年(令和4年)11月6日時点で2,979万536件です。マイナ保険証の登録を完了している人は、まだ国民の2割強です。
なお、マイナ保険証を利用するには、マイナンバーカードが必要になります。マイナンバーカードの交付を受けていない人が多いことも、マイナ保険証の普及が進まない理由です。
出典:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
そもそもマイナンバーカードの普及率は?
マイナ保険証を利用するには、マイナンバーカードの交付を受けなければなりません。政府は「マイナポイント」というポイント事業も行い、マイナンバーカードの普及に努めています。しかし、手続きの手間や個人情報漏えいの心配などのデメリットから、マイナンバーカードを作るのに消極的な人が多いのです。
総務省の公表しているデータによると、マイナンバーカードの普及率は2022年(令和4年)10月末日時点で51.1%です。まだ国民の約半数しかマイナンバーカードを保有していません。
マイナ保険証義務化へ
河野太郎デジタル大臣は2022年(令和4年)10月、2024年に現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を明らかにしました。マイナ保険証への一本化は実質的にマイナンバーカードの義務化であるため、国民から反発の声もあります。
しかし、マイナ保険証はいずれ義務化される可能性が高いと思われます。まだマイナ保険証を持っていない人は、今後の状況に注目しておきましょう。
マイナ保険証のメリット
マイナ保険証には、メリットとデメリットがあります。まずは、マイナ保険証で考えられるメリットについてみてみましょう。
メリット1:病院での受付が簡単
マイナ保険証の場合、病院や薬局へ行って窓口での受付は、顔認証付きカードリーダーで行われます。受付手続きが簡略化され、医療機関でスムーズに診療が受けられるようになります。
メリット2:医療機関で薬の情報を確認してもらえる
他の医療機関でもらった薬の情報は、これまでは「おくすり手帳」で確認していました。マイナ保険証があれば「おくすり手帳」は必要ありません。マイナ保険証で、服薬している薬の情報を確認してもらえます。
メリット3:マイナポータルで情報を閲覧できる
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスのことです。マイナンバーカードを持っていれば利用できます。マイナ保険証の登録をすると、マイナポータルで特定健診や薬の情報の閲覧が可能です。自分の医療情報を確認できれば、健康管理に役立つでしょう。
メリット4:引越しや転職してもそのまま使える
従来の健康保険証は、引越しや転職により加入先が変わると新たに交付を受ける必要があります。マイナ保険証の場合、健康保険の加入先が変わっても届出するだけでかまいません。カードはそのまま継続して利用できます。
メリット5:高額療養費の「限度額適用認定証」が不要に
高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に、超えた分の払い戻しを受けられる制度です。マイナ保険証を提示すれば、医療機関の窓口で「限度額適用認定証」を提示しなくても、限度額を超える支払いが免除されます。
限度額適用認定証とは
高額療養費制度を利用する場合、一旦医療費を立て替えたうえで払い戻し請求することも可能です。しかし、医療費の立て替えは、たとえ一時的にせよ負担になるデメリットがあります。
限度額適用認定証とは、医療機関での支払いを自己負担限度額以内にするために交付される証明書です。限度額適用認定証を医療機関の窓口に提示すれば、医療費の支払いを限度額までに抑えられる仕組みになっています。マイナ保険証は、限度額認定証の代わりになるのです。
メリット6:医療費控除の確定申告が簡便に
医療費控除とは、年間に払った医療費が原則10万円を超えた場合に税金の還付が受けられる制度です。医療費控除を受けるには、確定申告で医療費の明細や金額を申告しなければなりません。これまでは領収証などを保管しておき、自分で金額を計算しないといけないデメリットがありました。
マイナ保険証を登録した場合、マイナポータルからe-Taxに連携し、医療費控除の申告を自動化できます。
マイナ保険証のデメリット
マイナンバーカードを健康保険証として利用すると、さまざまなメリットがあることがわかりました。ここからは、マイナ保険証のデメリットとして考えられることを挙げてみます。
デメリット1:まだ対応している医療機関が少ない
現在のデメリットとしては、使える医療機関が少ない点です。マイナ保険証を利用するには、医療機関側でシステムを整備しなければなりません。2022年(令和4年)11月時点では、マイナ保険証に対応している医療機関は半数にも満たない状況です。
顔認証付きカードリーダーの導入には、費用がかかるというデメリットがあります。対応医療機関を増やすには、補助金(助成金)の拡充が求められるでしょう。
デメリット2:個人情報漏えいのリスクがある
マイナ保険証で考えられるデメリットには、個人情報漏えいのリスクも挙げられます。マイナ保険証を使えば、医療機関の受診履歴や服薬履歴などがわかってしまいます。マイナ保険証により医療機関が医療情報や薬剤情報を閲覧するには、患者の同意が必要です。しかし、個人情報が漏れる不安を感じる人は多いでしょう。
そもそも、マイナンバーカード自体が税金や年金の情報と紐付けされています。マイナンバーカードをいろいろな場所に提示する不安もあるでしょう。
デメリット3:システムエラーで使えなくなる可能性も
マイナ保険証のようにコンピュータで管理するシステムを利用する場合、システムの不具合の影響が大きくなります。システムダウンした場合には、受付ができないだけでなく、過去の医療データなども見られない可能性があります。
デメリット4:再発行に時間がかかる
マイナ保険証を紛失した場合、再発行してもらわなければなりません。再発行のためにはマイナンバーカードを再度交付してもらわなければならず、時間がかかってしまうのもデメリットです。その間、健康保険適用で診療が受けられないとなると、負担が大きくなってしまいます。
マイナ保険証の登録方法
マイナ保険証にはデメリットもありますが、メリットもたくさんあります。マイナ保険証を利用したい人は、マイナンバーカードの交付を受けたうえで、マイナ保険証の登録申請をしましょう。マイナ保険証の登録をすれば、マイナポイントが付与される特典もあります。
登録申請の手続きには、以下の3つの方法があります。
スマホから申し込む方法
マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンを持っている場合、スマホから登録手続きができます。
1. アプリをインストール
まずは、マイナポータルのアプリをインストールします。利用するスマホに応じて、App StoreまたはGoogle Playのいずれかよりアプリを入手しましょう。
2. アプリでマイナポータルにアクセス
マイナポータルのアプリを開き「健康保険証利用申込」をタップして、申し込みページを開きます。マイナポータル利用規約に同意し、申し込みボタンを押します。
3. スマホでマイナンバーカード読込
指示に従って、スマホでマイナンバーカードを読み取ります。マイナンバーカードの4ケタの暗証番号(利用者証明用電子証明書パスワード)を入力し、次の画面に進みましょう。登録状況等が表示され、チェックが入っていれば手続き完了です。
パソコンから申し込む方法
パソコンから登録申請する場合には、ICカードリーダーが必要です。
1. アプリのインストール
利用するブラウザ用のマイナポータルアプリをインストールします。
2. アプリでマイナポータルにアクセス
マイナポータルアプリを開いて「利用を申し込む」ボタンを押し、マイナポータル利用規約に同意します。
3. ICカードリーダーでマイナンバーカード読込
ICカードリーダーをパソコンに接続してマイナンバーカードをセットし「申し込む」ボタンを押します。4ケタの暗証番号(利用者証明用電子証明書パスワード)を入力し、次の画面に進みます。正常に受付、登録完了されていれば終了です。
セブン銀行ATMから申し込む方法
マイナンバーカード対応のスマホ等を持っていない人でも、セブン銀行ATMから簡単に登録申請ができます。
1. 「健康保険証利用の申込み」を選択
セブン銀行ATMで「マイナンバーカードでの手続き」を選択し「健康保険証利用の申込み」ボタンを押して進みます。
2. マイナンバーカード挿入
マイナンバーカードを挿入し、4ケタの暗証番号(利用者証明用電子証明書パスワード)を入力します。
3. マイナンバーカード受け取り
マイナンバーカードと明細票を受け取って完了です。
まとめ
マイナ保険証のデメリットが気になり、申し込みを躊躇している人も多いでしょう。今後はマイナ保険証が義務化される可能性もあります。マイナ保険証により受けられるメリットも知っておき、登録を希望する場合には申請手続きを行うようにしましょう。
森本由紀
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。