相談者:Sさん(福岡県在住)
夫55歳(公務員)、妻50歳(パート)、長男22歳(大学生)
Q. 老後資金が不安、貯蓄をできるだけ増やすには?
夫は単身赴任中で、長女は既に独立。大学生の長男と暮らしています。
老後資金に漠然とした不安があり、夫の定年(60歳)までに、できるだけ貯蓄を増やしたいと思っています。
貯蓄は普通・定期預金の他に、給料天引きの積立と財形をここ数年で開始。今年からつみたてNISAも始めました。
銀行が低金利なので、今後は利率のいい天引き積立を10万円に増やし、足りない生活費を普通預金から補おうかと考えています。
夫は60歳まで払い込みの年金共済と、年払いの生命保険に加入。また老後資金用に、夫婦それぞれ貯蓄型の終身保険(払い込み済)に入っています。
医療保険は共済に加入していますが、定年後は掛け金が上がるので県民共済への変更を検討中です。
夫の定年後は、私がフルタイムで働くつもり。老後に向けた貯蓄や保険について、アドバイスをお願いします。子どもの普通預金は結婚時に渡すつもりです。
また一昨年、15年ローンで1000万円を借り、家を建てました。繰り上げ返済は、控除が切れるタイミングでするのがいいでしょうか。
A. 貯め方を考える前に、使い方を考えるべき
希望の老後生活に向けて年金不足額把握、保険の受け取り方の検討を
夫の定年までを貯蓄強化期間と決め、子育て完了前から老後資金準備を本格化したようです。
元本保証商品で2500万円以上貯めたあと、つみたてNISAで投資も始めるなど、いろいろ研究なさっているのは立派です。
でも、生活費が足りなくなるほど天引き積立額を増やし、普通預金の取り崩しで赤字を埋める案は、「骨折り損のくたびれ儲け」かも…。利息がいくらお得か計算しましたか?
そもそも普通預金に多く預けすぎなので、預け替えを考えるのが先でしょう。貯蓄を増やしたいなら、あなたの勤務時間を増やしたり、今からフルタイムで働くのが得策に思えますよ。
一番の問題は、老後資金が「漠然とした不安」の段階にあること。お金は使うためにあるので、貯め方を考える前に、使い方を考えるべきです。希望の老後生活を実現するために、公的年金でまかなえない金額がいくらで、自助努力でどこまでカバーできていて、これから手当てすべき不足額がいくらかを把握しましょう。
老後用に多数の保険や年金に入り、その既払込保険料の合計は600万円に達しているとか。それらをいつ、いくら、どのように受け取るかで、税金や老後の公的保険料が変わります。住宅ローンの繰り上げ返済のベストタイミングも、定年後の夫の課税所得等により判断が分かれるので、夫と一緒に考えて。
なお、親が貯めた子ども名義の預金は、金額や使途によっては贈与税が課されるので気をつけて。渡したお金を結婚関連のイベントに使うなら問題ありません。
回答者 高橋伸子さん
生活経済ジャーナリスト。長年にわたり国の各種審議会委員を歴任。
消費者の声を国や企業に届ける活動にも注力。
相談者募集!家計の悩みを解決してもらいませんか
あなたの家計も高橋伸子さんにズバッと診断してもらいませんか。
1カ月の収支、家計状況と質問を書いて投稿フォームから応募を。
相談内容(保険、ローンなど)に関するデータは詳しく。
確認のため電話番号は必ず明記してください。
採用者には商品券2000円分を進呈。
転載元:
「リビング北九州・熊本・かごしま」2021年7月10日号掲載
- 暮らし
高橋 伸子
生活経済ジャーナリスト
長年にわたり国の各種審議会委員を歴任。消費者の声を国や企業に届ける活動にも注力。2016年に内閣総理大臣より消費者支援功労者表彰を受ける。株式会社西日本フィナンシャルホールディングスの社外取締役監査等委員。