住宅ローンの借り換えとは、これまで契約してきた住宅ローンを清算し、新たな住宅ローンを組み直すことです。一度契約した住宅ローンでも、タイミングによっては借り換えをした方がお得になることがあります。
本記事では、一体どのタイミングで借り換えるといいのか、その際の注意点と併せて紹介します。
借り換えを検討する目安とは
まずは、借り換えを考えるタイミングとなる目安をいくつか紹介します。自身に当てはまるものがあれば、借り換えを検討してみてもいいでしょう。
現在の契約と、借り換え後の契約の金利差が大きいとき
現在借り入れている住宅ローン契約の金利と、予定している借り換え後の金利差が0.5%以上あれば、借り換えを検討してもいい目安とされています。
ただし、これは借り換えを検討する時点でのローン残高が1000万円以上あり、住宅ローン完済までの期間が10年以上ある場合です。これよりもローン残高や完済までの期間が短い場合は、借り換えにかかる諸費用などを考慮すると、メリットが少ないと考えられます。
金利優遇キャンペーンが終わる時期
住宅ローンの新規加入時には、当初の数年間のみ金利引き下げを行う優遇キャンペーンを行っている場合があります。もし、そのような期間限定の優遇キャンペーンで住宅ローンを契約しているのであれば、そのキャンペーンが終わる時期に借り換えを検討するのもいいでしょう。
優遇がなくなった後の住宅ローン金利と、借り換えを検討している新たな金融機関での住宅ローン金利でシミュレーションを行い、それぞれを比較してみるのがおすすめです。
ライフイベントの変化があったとき
住宅ローン商品の金利や内容、手数料の面だけが借り換えのタイミングになるわけではありません。住宅ローン契約者自身の変化に合わせて借り換えを検討した方がいい場合もあります。
転職や独立開業に伴う借り換え
長年勤めた会社を退職し、一念発起して独立開業した場合などは、先々で借り換えを検討するといいでしょう。例えば、変動金利で契約していた住宅ローンを固定金利で借り換えることで、この先のマネープランを立てやすくなり、支出と収支の流れを把握しやすくなります。
ただし、年収や勤続年数はローン審査の対象となりますので、転職や独立開業直後に借り換えを行うのは得策とは言えません。勤続年数は、最低でも3年以上が目安とされています。そのため、独立開業ののち、3年以上経って事業が軌道に乗り始めたときが借り換えのタイミングと考えられます。
収入の減少に伴う借り換え
住宅ローンの借り換えは、返済額を減らしたり、返済期間を短くしたりする目的だけではありません。これらとは逆のパターンで、収入の減少に伴い返済期間を長くする目的で借り換えを検討する場合もあります。
住宅ローンは返済が長期に渡り、決して安い金額ではありません。きちんとローンを支払っていくためには、返済期間を長くして毎月の返済額を減らすことも選択肢の一つとなるでしょう。
また、借り換え以外においても、収入が減少して住宅ローンが支払えなくなった場合は、早めに金融機関に相談して対策を話し合うことが大切です。
借り入れ条件を変更したいとき
住宅購入当初のローン契約では、固定金利か変動金利のいずれかを選びます。世の中の情勢が変わり、契約時点で決めた借り入れ条件を変更したい場合は、住宅ローンの借り換えをしなければいけません。
固定金利とは
固定金利とは、借入期間の全体を通して、住宅ローン契約時から金利が変わらないタイプです。返済終了時まで金利が一切変わらないので、住宅購入後のマネープランを立てやすいのがメリットです。
デメリットとして、後述する変動金利よりも金利が高めに設定されている場合が多いことが挙げられます。そのため金利については、住宅ローン契約時によく確認する必要があります。
変動金利とは
変動金利とは、世の中の情勢に応じて半年ごとに金利が見直されるタイプです。毎月の返済額は返済方式によって変動します。一般的に元利均等返済では5年ごとに、元金均等返済では変動金利が見直される半年ごとに、借入金利を計算します。金融機関によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
メリットとして、固定金利よりも金利が低い傾向にあることが挙げられます。デメリットとしては、金利が一定期間ごとに変動しますので、返済総額の目安を立てにくいことです。返済総額を把握できなければ、住宅購入後のマネープランにも立てにくくなるでしょう。
借り換えのメリット
借り換えをすることで、以下のようなメリットがあります。
返済負担の軽減・返済期間の短縮につながる
住宅ローンの借り換えをするメリットでまず挙げられるのが、返済額を減らすことができる点です。例えば、住宅ローン金利が0.5%下がるだけで、月々の返済額が減り、ローン期間中の返済総額もおのずと減ります。
毎月の返済額の負担が減ると、その分の余裕資金が増えます。住宅ローンの返済以外に使えるお金が、たとえ毎月数千円でも発生するのはメリットと言えるでしょう。
保障の充実した団体信用生命保険に加入できる
借り換えを行うことで、当初の住宅ローン契約時とは別の、より保障の充実した団体信用生命保険に新たに加入することもできます。
団体信用生命保険(団信)とは
団体信用生命保険(通称・団信)は、通常は住宅ローン契約時に加入することが前提となっています。
一般的な保障内容は、「住宅ローン契約者の死亡時(または高度障害時)には、ローン残債はなくなるが、家は相続人に遺る」というものです。近年では死亡や高度障害だけでなく、3大疾病保障付き団信やがん団信など、保障の範囲が広がっています。
借り換え時に加入する場合は、健康状態に注意する
団信の加入には、健康状態の告知などが必要です。借り換え時に保障範囲の広い団信に加入しようと思っても、健康状態によっては金融機関が定める審査に通らない場合もあります。
そのため、住宅ローン契約時や借り換え時には、あらかじめ団信について金融機関の担当者に相談しておきましょう。
住宅ローン以外のメリットが受けられる場合がある
住宅ローンの借り換えをすることで、取り扱う他の金融商品の優遇サービスを受けられる場合があります。例えば、借り換えによって、預金商品の金利が上乗せされるなどです。また、金融機関の系列スーパーでの買い物で割引を受けられるサービスを行っているところもあります。
借り換えをすることで、住宅ローンだけではなく、生活全体がお得になる可能性があります。
借り換えのデメリット
借り換えをする際に考えられるデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
● 借り換えに関する手続きに時間がかかる
● 借り換え前と後の金融機関とのやりとりが煩雑である
● それぞれの金融機関で所定の諸費用がかかる
● 新築購入当初より時間が経っている場合は、評価額が下がることもある
● 健康状態によっては希望する団信に加入できない場合もある
借り換えにかかる諸費用とは
借り換えにかかる諸費用の代表的なものは、事務手数料、抵当権設定にかかる費用、それに伴う専門家(司法書士)への報酬、印紙税、保証料などで、総額100万円近く必要な場合もあります。この諸費用は、住宅ローンとは別に現金で支払うことが一般的です。
借り換えの注意点
ここまで、借り換えのメリット・デメリットの両方を解説しました。実際に借り換えをするとなった場合に、注意する点がいくつかあります。
借り換えの諸費用・事務手数料に注意する
借り換えにかかる諸費用について、何にいくらかかっているのか、少々手間でも一つひとつ検証することをおすすめします。例えば、保証料が0円になっていてお得な感じがする見積もりでも、実は事務手数料が他社よりも高い場合もあります。
借り換えのシミュレーションをしっかりと見比べる
諸費用や事務手数料によって損をすることがないよう、借り換えを検討する際には、なるべく詳細なシミュレーションを金融機関で作成してもらいましょう。一つひとつの金額のすり合わせと全体の総額の比較、さらに自身にとってのメリット・デメリットを考慮すれば、より満足のいく借り換えができると考えられます。
諸費用ローンの借り入れは慎重に検討する
借り換えのデメリットでも説明したとおり、借り換えには多くの諸費用が発生します。まとまった手持ちのお金がない場合、金融機関によっては「諸費用ローン」と呼ばれる商品を取り扱っていることがあります。
諸費用ローンを利用して諸費用を支払う場合、住宅ローンの返済と諸費用ローンの返済が並行することになりますので、借り入れは慎重に検討しましょう。
借り換えにかかる期間を考慮する
借り換えの手続きにかかる期間の目安
借り換えをするということは、これまでの住宅ローン契約を清算する手続きと、新たな借入先での新規契約の手続きを並行して行うということです。通常、全ての手続きが終わるのは、1か月前後が目安となっています。
住宅ローンの見直しは時間的な余裕があるときに行う
例えば、個人事業を営む人であれば、確定申告の時期は年間の中で比較的忙しい頃ではないでしょうか。その時期に借り換えの手続きが重なってしまうと、非常に窮屈なスケジュールになると推測され、じっくりと検討することができないかもしれません。
このように、自身の年間行事の中で明らかに繁忙期である時期は、借り換えに適したタイミングとは言えないでしょう。比較的余裕のある時期に、しっかりシミュレーションを行ってから手続きを進めていくのがおすすめです。
新築当初と同じ借入額にならない場合がある
例えば、新築当初は5000万円の価値があるとされていた住宅が、借り換え時には4000万円しか担保価値がないとみなされることも、絶対にないとは言えません。普通に生活をしていても、外壁や屋根の日焼けなど免れられないものもあるためです。
あくまでも審査をしてみなければわかりませんが、新築当初に契約した住宅ローンと同じ額を借り入れできない場合もあるということは、念頭に置いておくといいでしょう。
まとめ
住宅ローンの借り換えは、最適なタイミングで行うことで大きなメリットをもたらします。一方、タイミングを誤ると損をしてしまうこともあります。住宅購入は人生の中でも大きな買い物です。後悔のないよう、しっかりシミュレーションを活用して納得のいく借り換えを行いましょう。
- 住宅ローン
大野翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。