出産・子育て

子どもの自信を育てる!【後編】ほめることの効能と効果的な叱り方

子どもたちが自分らしく生きていく上で支えとなる「自信」。その「自信」は、お父さんお母さんを始めとする身近な人との日常的なコミュニケーションの中で育むことができます。前編では、子どもにとって効果的な「ほめ方」を中心にお伝えしました。後編では、ほめることの効能と、効果的な「叱り方」についてお伝えしましょう。

ほめると何がいいの?ほめることの効能って?

「子どもはほめて育てましょう」とよく言われていますよね?人は、ほめても育つ、叱っても育つ、放置しても育つ。

ではなぜほめて育てるのが良いのでしょう? その答えがわかる、こんな実験があります。

1925年にエリザベス・ハーロック博士によって、一つの実験が行われました。

小学校4年生~6年生の生徒を3つのグループに分け、算数のテストを繰り返し行ったのです。出す問題、テスト時間などの条件は、すべて同じ。ただ一つ違うのは、答案を返すときの先生の態度です。

Aグループは、どんな点数であってもできていた部分をほめる

Bグループは、どんな点数であってもできていないところを叱る

Cグループは、どんな点数であっても何も言わない(無視する)

テストは5日間にわたって行われました。結果はどうだったのでしょう?

3つのグループには成長の度合いに大きな差が見られました。

ほめられたAグループの生徒は、71パーセントも成績が上昇しました

叱られたBグループの生徒の成績上昇率は、19パーセントにとどまりました

無視されたCグループの生徒は、なんと5パーセントしか成績が上がりませんでした

この実験結果は「ほめると伸びること」を明確に示しています。もちろん、叱られても、何もいわれなくても、伸びることは伸びるのですが、その成長率はご覧の通りです。ほめると伸びる!

なぜほめると伸びるのか?

なぜほめると子どもは伸びるのか?

ほめられるとセロトニンが分泌され、気分が高揚する

ほめられると気分が高揚しますよね。これは、セロトニンという神経伝達物質が増えることによる作用です。時には、ほめすぎると調子に乗ったり、過活動になったり、ハイになりすぎることもあります。これは、このセロトニンの過剰分泌が躁状態を引き起こすせいです。

ちなみに、セロトニンの不足は鬱状態を引き起こすと言われています。ほめられると嬉しくなる、心が整う、ワクワクする、モチベーションが上がることも効果としてはあるのですが、実はそれ以上に大きな「ほめる」効果を、この実験は教えてくれています。

ほめられるとドーパミンが放出され、心地よいと感じる

それは、「ほめると記憶に留まりやすくなる」ということです。

脳には報酬系と呼ばれるシステムが存在します。ほめられると、その報酬系からドーパミンが放出されます。すると、脳は「心地いい」と感じるのです。脳は心地よくなるためにドーパミンを得たい。

だから、ドーパミンを得やすいように脳自ら構造を変化させていく性質があります。要するに、「できた自分」「頑張った自分」を定着させようとするのです。だから、生徒たちは、「できていた部分」をほめられたことで、記憶が定着したのです。

ほめられると成長がスピードアップする

ほめるというのは、感情を刺激するだけではなく、「できたこと」を確実にし、次のステップへとつづく足場をつくっていくようなものでもあり、それによって成長が促されたり、成長スピードがアップしたりします。

「いいな!」「すごい!」「頑張ってる!」「成長した」と感じたら、タイミングを逃さずすかさずほめてみましょう!

できることが増えたり、成長が実感できたりすると、「やっていることは間違いない」「無駄でない」「まだまだできる」「もっと頑張りたい」という子どもの自信にもつながります。

ほめるところがうまく見つからないときは「プラスの焦点」

とはいえ、「足りないことやダメなことばかり目につく」「ほめるところが見当たらない」「どうやったらほめるところが見つかるんですか?」という方もいらっしゃるでしょう。

大丈夫、見つからないのは見ていないだけです。見ようとしていないだけです。

人は欠点に目が向きがち

人は、欠けているところに目がいく、という習性があります。経験や知識があるときはなおさらです。大人である私たちは、既に何十年分も子どもたちより多くの経験をし、成功も失敗もし、学習をしてきています。

「できれば失敗したくない」「うまくいってほしい」と願うのは、親としては当然のことでしょう。だから、「こうすればいいのに」「それじゃダメだ」「もっとこうしなきゃ」と子どもの欠けているところを見つけて修正したくなってしますのです。そこに目が行くのは当然のことと言えます。

長所を探そうとする意識が大切

しかし、欠けているところばかり指摘されるとモチベーションが下がりますよね。考える力も育ちません。

ですから、あえて「プラスの焦点」を持って欲しいのです。先にお伝えした「ありがとう」「すごいね、頑張ってるね、成長したね」「あなたのここが好き」を「伝えるために探す」意識をしてみましょう。

ないのではありません。見えていないだけ、隠れているだけです。見ようと思えば、探そうと思えば、必ずあります。

ほめるだけでいいの?ちゃんと叱ろう

ほめるだけでいいの?ちゃんと叱ろう

「叱る」とは「期待」であり「軌道修正」でもある

ほめると子どもは伸びるし、自信が育つ。では、ほめるだけ、認めるだけでいいのか?というと、もちろん、それだけでいいわけがありません。一定の割合で「叱る」ことも必要です。

一生懸命に何かを頑張っていると、方向がずれてしまうこともあるでしょう。間違っていることに気づけないこともあるでしょう。そういうときに「ちょっとずれてるよ、こっちだよ」「ここを修正すると正しい方向に進むよ」「こうするといい軌道に乗るよ」と正しい軌道に修正してあげることは必要です。

今できていないこと、足りていないこと、間違っていることに対して、「期待」や「軌道修正」という言葉で叱るのです!

期待しているからこそ愛をもって叱ろう

質問です。どうでもいい人、どうでもいいことに対して、あなたは期待をしますか?

きっとしないと思います。愛情があるからこそ、期待するのです。

人は、期待されたい生き物です。大人も子どもも同じで、期待されないことは寂しいこと、認められていないこと、自分に対する愛情がないと感じます。

叱り方さえ間違えなければ、きちんと伝わります。恐れず、愛をもって叱りましょう。

「叱る」と「怒る」を明確に区別しよう

ついつい感情的になってしまう。叱った後に自己嫌悪に陥ってしまう。やめておけばよかった…と反省することが多々ある。叱ることが苦手、と悩む方からよく寄せられる声です。

もしかしたら、「怒る」と「叱る」の区別が明確にできていないのかもしれません。

この二つは、目的に大きな違いがあります。

「怒る」は、自分の感情を処理するため

「叱る」は、相手の成長や変化や気づきのため

叱るの背景には、子どもの成長を望む気持ち、応援する気持ち、健やかさを願う気持ちなど、要するに愛情があります。愛情が欠けていたり、自分の気分や感情に任せて言葉をぶつける行為は「怒る」であり「叱る」ではないのです。

子どもへの愛情を背景とした「期待」や「軌道修正」と考えると、「叱る」ことは必ず必要なことです。

叱るタイミングが難しい、という声もよく聞きます。「ずれている」と気づいたときがそのタイミングです。少しのずれは、先に進めば進むほど大きなずれになっていきます。一番簡単に修正できるのは、気づいたそのときです。子どもの成長を願うからこそ、タイミングを逃さず、きちんと叱りたいですね。

子どもの成長と自信を促す叱り方のコツ

子どもの成長と自信を促す叱り方のコツ

では、どんな叱り方が望ましいのでしょう。

例えば、一生懸命に勉強していた子どもが100点満点中60点だったとしましょう。一生懸命取り組んだことをしっかりほめた上で、次は何点を期待しますか?70点?80点?もしかして100点満点を目指しますか?

小さな成功体験が子どもの自信を育む

高すぎるハードルは、「難しそう」「やっても無理なんじゃないか」「やめておこう」とチャレンジする気持ちを奪う可能性があります。

一方、低すぎるハードルは、「こんなの楽勝」「頑張らなくてもこのくらいできる」と頑張る気力を奪います。

そこで、少し頑張ればクリアできるハードル(目標)を設定し、期待しましょう。「よし、やってみよう」と思えるかどうか、「何をどうしよう」とイメージできるだけ具体的に伝えられているか、努力をすればクリアできて成功体験となるか、が鍵です。

ちょうどいい高さの「ハードル」を準備する

60点をとってきた子どもに次に期待するのは61点か62点かもしれない。取れた60点はサボった結果ではなく、一生懸命勉強した結果です。その次に目指すのはプラス1点でもいいんです。子どもの頑張りと、もう少しどこまで頑張れるか、どのくらい伸びそうか、そこを見極めて、ちょうどいい頑張りたくなるハードルを設定しましょう。

 

ほめっぱなし、叱りっぱなしはやめよう!

ほめた後、叱った後が肝心です。

ほめた後に放置してしまうと、調子に乗ります。叱った後に放置すると、落ち込んだり、やってみてもできないことで自己嫌悪や自信喪失に陥ったりします。

これでは逆効果!

ほめた後、叱った後は、しっかりと見守りましょう。そして、時にはフォローをしましょう。「ちゃんと見ているよ」「失敗しても大丈夫だよ」「頑張ってる姿を見守ってるよ」と伝えることが子どもたちにとっては必要です。


ほめると叱るの黄金比率とは?

ほめると叱るの黄金比率とは?

普段、ほめると叱る、どちらが多いですか?どのくらいの比率が理想的なんでしょうか?

ほめることと叱ることの間には、「黄金比率」があるといわれています。アメリカの心理学者ジョン・ゴットマン博士によると、ほめると叱るの黄金比率は5:1

つまり1つ叱るのであれば、その5倍ほめる必要があります。この割合が守られていることで、ほめたことと叱ったことが効果的に響き、行動を促し、子どもとの関係が長く深く継続する可能性が上がるというのです。

逆に割合が1:1に近づくにつれて、その人間関係は破綻に近づきます。叱るという行為には、それくらいのパワーがあるのだと理解してください。

そう聞くと、ほめればほめるほどいいんじゃないか?と思うかもしれません。しかし、そんなに単純ではありません。ほめることと叱ることの割合が13:1以上になると、これまた関係が破綻する、というレポートがあります。

折に触れてほめ、必要なときには、しっかり叱ること。バランスが大切です。「言っても言っても改善されない」「何度言ったらわかるの?」は、叱りすぎが原因なのかもしれません。

いやいや、私がほめられたい…というお父さんお母さんこそ

そんなお父さんお母さんにこそ、「まずほめてみる」ということをお勧めします。

なぜなら、「脳は人称を認証できない」と言われているからです。

人称とは、「私、あなた、彼ら」のこと。もし、あなたが「○○くんすごいね!」と子どもをほめたとします。すると、あなたの脳は「自分がほめられた」と勘違いするのです。

誰でもほめられると気分が高揚します。これは、セロトニンという別名「幸せホルモン」が分泌されるからです。だから、子どもをほめるとあなたも元気になるのです。子どもを励ますとあなたも励まされるのです。

ほめられたい、認められたい、自信を持ちたいと感じていらっしゃるお父さんお母さん。まずは、子どもを愛情いっぱいにほめて叱ってみませんか?

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