随分、秋も深まってきました。10月も半ばになってくると、気温もぐんと下がり、風邪ひきさんもチラホラ見受けられます。みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
前回の梨のコラムでも少し触れましたが、中医学で考える秋の体調不良というのは大半が燥邪によるもの。喉の違和感は肺の乾燥からくるものなので、いまの季節はとにもかくにも“身体をうるおす”をことが先決。これが秋の食養生になります。
もう少し、薬膳的な観点から説明してみましょう。陰陽五行をベースに五体色体表というものがあるのですが、ここで秋の五色に値する色は「白」になります。したがって、秋は前回のコラムでもご紹介したように、梨や白きくらげ、大根、百合根など、白い食べ物を意識して食べるとよいとされています。
そこで今回は風邪予防にもなるビタミンCや、腸内環境を整える食物繊維も豊富な「蓮根」をとりあげてみます。
写真は8月に糸島へ出向き、生産者さんの蓮根畑を見学させてもらった時のものです。 蓮根はこのような沼地の中に生息しています。
蓮根はあらゆる部位が薬になる万能食材
私たちが一般的に食べている蓮根というのは、蓮の地下茎が肥大したものです。蓮根に穴が空いているのは、水上の葉から酸素を取り入れるため。薬膳では蓮の実もよく調理に使うのですが、実のところ蓮根はあらゆる部位が薬効として用いられています。
例えば花の雌しべは強腎に、節は止血に、果托は血の巡りによく、茎は母乳の出をよくし、葉と花は暑気あたりの解消に、といった具合でまさに蓮根は万能食材なのです。
私事ですが、今年は何かと蓮にご縁があり、蓮畑に出向いたり、友人の計らいで生まれて初めて採れたての蓮の実を食べる機会に恵まれました。皆さん、どんな味がすると思います? 口にしてびっくりしたのですが、予想に反して青りんごのような爽やかな味でとってもフルーティ。薬膳で蓮の実といえば、乾燥しているものを水で戻して使うのですが、火を入れるとどちらかといえばホクホクとした食感なので、生との違いに大変驚きました。
その生の蓮の実は新鮮すぎて、蓮芯が見当たらないものもあり非常に食べやすかったのですが、蓮芯があると苦味があるので、蓮芯だけをとっていただきます。蓮芯は蓮芯茶として商品化もされているほど。実際に実を手にすると、あの蓮芯茶はこのような細かい作業の上に成り立っているのかと感銘深かったです。
さて、そんな万能食材・蓮根を使って、家庭でも簡単に作れるちょっとおしゃれな蓮根レシピを3品ご紹介いたします。
【料理名①】疲れたときには蓮根をすりおろして!蓮根と海老とイカしんじょうの揚げ物
(写真は1人分) 【材料】(2人分)
・蓮根………………………………220g
・海老………………………………70g
・イカ………………………………50g
・卵(卵白と卵黄に分けて使う)1個
・生姜………………………………1片
・天然塩……………………………ひとつかみ
・片栗粉……………………………大さじ2
・小麦粉……………………………1/2カップ
・五色あられ………………………適量
・揚げ油(グレープシード)……適量
・水…………………………………少々
【作り方】
蓮根は皮をむいて半分はすりおろし、もう半分は食感が少し残るように粗みじんにする。
海老は背わたをとって、イカとともにフードプロセッサーに入れてミキサーにかける。
ボウルに2と水気を切ったすりおろしの蓮根、粗みじんの蓮根、みじん切りにした生姜、卵白、片栗粉、塩を加えてしっかり混ぜる。
3.を丸めて、卵黄、小麦粉、水を混ぜたものにくぐらせた後、五色あられをつける。
160度の油で揚げたらできあがり。
【レシピ構築の裏話】
先日、別の撮影に使った五色あられがまだ残っていたので、これを使ってみようと、無理やり考えた料理です。蓮根はすりおろすと蓮根に含まれる酵素のアミラーゼが食べ物の消化を助け、疲労回復にも一役買ってくれますので、しんじょうにしました。しんじょうは日本料理のひとつで、ちょっと手間はかかりますが、とってもおいしいのでぜひ作ってもらいたい料理です。このまま揚げ物として食べてもおいしいですが、お吸い物に入れて、三つ葉と柑橘の皮の千切りを浮かべても美しい一品になります。
【料理名②】 蓮根と蓮の実入り秋の炊き込みごはん
(写真は1人分) 【材料】(2~3人分)
・蓮根…………………………………60g
・にんじん……………………………20g
・油あげ(南関あげ)………………5g
・しめじ………………………………20g
・鶏肉…………………………………35g
・蓮の実………………………………6個
・塩昆布………………………………ひとつまみ
・オイスターソース…………………小さじ1
・お米…………………………………2合
・だし醤油……………………………大さじ1
・赤酒…………………………………大さじ1
・水……………………………………2カップ
【作り方】
お米を洗ってざるに上げておく。蓮の実は水で戻しておく。
蓮根は小口切り、人参は千切り、鶏肉は一口サイズ、しめじは石づきをとって適度にほぐしておく。
フライパンにごま油を入れて、鶏肉、蓮根、人参、しめじ、蓮の実の順で炒めて、オイスターソースを絡めた後、塩昆布をひとつまみ入れる。具材は完全に火が通らなくてもよい。
土鍋にお米と水を入れて、3の具材を入れた後、油あげ、だし醤油、赤酒を入れる。
中火で炊き、吹き出したら火をとめて、10分ほど蒸らしたら完成。
【レシピ考案の裏話】
このレシピは蓮根のかわりにゴボウや大根を使ってもいいです。今回は蓮根を使ったので、特別に蓮の実を加えてみましたが、もっと特別感を出したい時は、このごはんを蓮の葉にくるんで蒸すと、さらに風味が増して美味しくなります。その場合、白米のかわりに、もち米を入れるとおこわのような食感に仕上がります♪
【料理名③】 お正月料理にもおすすめ!れんこんのなます
(写真は1人分)【材料】(2人分)
・れんこん…………………………60g
・酢…………………………………小さじ1
・塩…………………………………少々 <調味料>
・羅臼昆布(10☓10cm)…………1枚
・酢…………………………………大さじ2
・かぼす……………………………半分
・きび砂糖…………………………小さじ2
・唐辛子(輪切り)………………1本 ・
【作り方】
蓮根は皮をむいて、2~3ミリの輪切りにする。
鍋に水を入れて沸騰させて、酢、塩を入れて混ぜ、
1の蓮根を入れて透明になるまで茹でる。茹でた後はざるにあげて冷やしておく。
ボウルに酢、かぼす汁、きび砂糖を入れてよく混ぜ、羅臼昆布を入れた後に、
茹でた蓮根、唐辛子の輪切りを加えて密閉する。
2~3時間ほど漬けたらできあがり。
レシピ考案の裏話
なますの酸味は酢だけで作ったり、レモン汁を入れたりすることもあるのですが、季節柄、冷蔵庫にちょうどかぼすがあったので、今回はかぼすを絞ったもので作ってみました。初めてかぼす汁を使ってみましたが、さっぱり爽快な風味に仕上がりました。
まとめ
蓮根料理といっても、筑前煮といった煮物やきんぴらなどの炒めものだけではなく、いろんな料理に展開できます。また、調理の仕方によってはモチモチ、シャキシャキ、ホクホクといろんな食感が楽しめるのも蓮根ならでは。今回の3品は日常のごはんにもおすすめですが、お弁当にも使える料理なので、ちょっと多めに作っておいてもいいですね。ぜひトライしてみてください。
- 食
名原 和見
ライター・エディター・薬膳料理研究家
独立して26年。拠点は福岡だが、全国誌・地方誌を中心に雑誌、新聞、書籍、企業の印刷物, webを中心にインタビューや取材&執筆を行う。最近では企画から編集、ライティング、キャス ティング、調理、スタイリングを含めたディレクション全般を請け負っている。得意分野は食、健 康、美容等。2013年に薬膳アドバイザー、中医薬膳師の資格を取得。長年、食の取材をしてきた 経験値と、薬膳の知識を融合させたオリジナル薬膳料理教室「薬膳うちごはん」を主宰。■https:// yakuzenuchigohan.com