今年はどこか季節が巡るのが早いような気がします。
新型コロナウイルスの感染予防から、
春、お花見ができなかったからでしょうか?
梅雨、長雨が続いたせいでしょうか?
夏、レジャーを存分に楽しめなかったからでしょうか?
気がつけば、もう秋分を迎えようとしています。
今年は例年に比べて台風が少ないと思えば、何のことはない。
9月に入るや否や、9号、10号と立て続けに大型台風が九州にやってきました。
その間、スーパーやコンビニのパン類や即席食品の陳列棚が次々と空になっていくさまや、
ホームセンターでは防災用具を抱えたマスクをした人々が、長い列をなしていました。
こういった光景を目にするとしみじみ。
今年は本当に、いまだかつて経験したことのない
異例の年なのかもしれないと思わざるを得ません。
さて、9月は梨を取り上げてみたいと思います。
初秋に感じる喉の乾きは、
寒性で水分が多い梨を食べて!
台風が過ぎた直後から、少しずつ秋めいてきました。
朝、目覚めて起きがけに「あれれ、なんか喉がヘンだな?」と
感じた方はいらっしゃいませんか?
だけど、日中はまだ暑く、そんなに喉の痛みは気にならないので、
そのままやり過ごしている方。
かくいう私もその1人で、こんな時は梨を意識して食べるようにしています。
なぜなら、梨には生津潤燥(せいしんじゅんそう)といって、
唾液の生成を促進して、乾燥した身体をうるおす働きがあるからです。
梨を薬膳的に解釈してみましょう。
梨は五性では「寒性」で、水分が多いので、
身体にこもった熱を収めながら、うるおしてくれます。
陰陽五行での秋の五臓は「肺」、五悪は「燥」になります。
肺は肝・腎・脾・肺・腎といった五臓の中で唯一、
呼吸によって外気に触れる臓器。
したがって、夏の陽気から空気が乾燥してくるのをいち早く察知して、
喉や肺に燥邪が忍び寄ってくるのを知らせてくれます。
先に記した「あれれ、喉がちょっとヘン?」と思ったのは、
まさに燥邪のサイン。
これをほっておくと、風邪をひいたり、肌あれを起こしたり、
何一ついいことはありません。
秋の食養生は燥邪から身体を守るため、
とにもかくにも、“うるおすこと”がポイントになります。
身体をうるおす食材は、百合根や大根、銀杏などいろいろとありますが、
今回は梨に注目して、身体をうるおす梨3レシピをご紹介します。
【料理名①】お手軽なのによく効く
~蜂蜜入り梨ジュース~
材料(1人分)
・梨………………………………1個
・ハチミツ(お好みで)………大さじ1
・水………………………………少々
作り方
梨の皮を剥き、芯をとって、適度な大きさにカットする。
カットした梨と水をジューサーに入れた後、ハチミツを加えてミキシング。
グラスに注いだら完成。
レシピ補足
梨はできる限り完熟の方が、甘味が増しておいしいです。甘いのがお好みの方は、
梨と相性のいいハチミツを加えてください。
【料理名②】梨の酵素が肉を柔らかくする
~すりおろし梨の豚の生姜焼き~
(写真は1人前)
材料(2人前)
・豚の薄切り……………………4枚
・梨………………………………1/2個
(調味料)
・生姜(みじん切り)…………大さじ2
・醤油……………………………大さじ2
・赤酒(ミリン可)……………小さじ2
・ハチミツ………………………小さじ1
・オリーブオイル………………大さじ1
作り方
梨は皮を剥き、芯をとってすりおろす。
ボウルにすりおろした梨と調味料をすべて入れて混ぜる。
トレイに豚の薄切りを入れ、2をかけて全体にまんべんなくつけて15分ほどおく。
フライパンにオリーブオイルをひいて、3の肉を加えて両面焼いたらできあがり。
レシピ発想の裏話
この料理を思いついたのは、15年ぐらい前に見た
韓国ドラマの「宮廷女官チャングムの誓い」から。
肉を柔らかくするために、梨のすりおろしを使ったシーンがあったのです。
調べてみると、これは梨のプロテアーゼという酵素が
肉のタンパク質を分解するため、肉を柔らかくさせるというものでした。
へぇ~と思ったわたしは、以来、梨があるシーズンになると
肉料理には梨を使うようになりました。
これはいつもの豚の生姜焼きにすりおろした梨を加えてみたところ、
さっぱりとおいしかったのです。
ぜひ、お試しください!
【料理名③】秋の食養生の定番デザート
~梨と白キクラゲのコンポート~
材料
・梨………………………………1/2個
・白キクラゲ(乾燥)…………10g
・棗(ナツメ)…………………4個
・水………………………………400cc
・ハチミツ………………………大さじ1
・レモン…………………………1/4個
・桂皮(シナモン)……………2本
作り方
ボウルに水を入れて、乾燥白キクラゲを戻す。
鍋に水(400cc)を入れて、1のキクラゲを入れて中火で若干とろみが出るまでに煮る。
梨は皮を剥き、芯をとって、5mmぐらいのいちょう切りにしておく。
2の鍋に梨と棗(ナツメ)、桂皮(シナモン)を入れてしばらく煮立てた後、火をとめて、ハチミツ、レモンを絞って完成。
レシピ補足
これはオリジナルではなく、薬膳料理の中で秋の食養生の鉄板デザートです。
梨+白きくらげ+はちみつは、身体をうるおすには最強の組み合わせなので、
ぜひ作っていただきたいと思いご紹介しました。
できたての熱々で食べてもいいし、冷やして食べても、
どちらでもおいしくいただけます。
まとめ
秋はとにもかくにも、身体をうるおすこと。
この時季、スキンケアも怠ってはいけません。
じゃないと、見るも無残なシワシワ、カサカサなお肌と身体になってしまいます。
そうならないために、内面からのアプローチとして、
今の時季おいしい梨を存分にご活用ください。
今回は食前ジュース、メイン料理、デザートと3品ご紹介しましたが、
このすべてに梨を加えました。
どれも比較的簡単なお料理ですので、ぜひとも作ってみてください。
- 食
名原 和見
ライター・エディター・薬膳料理研究家
独立して26年。拠点は福岡だが、全国誌・地方誌を中心に雑誌、新聞、書籍、企業の印刷物, webを中心にインタビューや取材&執筆を行う。最近では企画から編集、ライティング、キャス ティング、調理、スタイリングを含めたディレクション全般を請け負っている。得意分野は食、健 康、美容等。2013年に薬膳アドバイザー、中医薬膳師の資格を取得。長年、食の取材をしてきた 経験値と、薬膳の知識を融合させたオリジナル薬膳料理教室「薬膳うちごはん」を主宰。■https:// yakuzenuchigohan.com